【2021年版】調剤薬局 売上高ランキング
(【最新!2022年版 】調剤薬局 売上高ランキングはこちらから)
2020年度は診療報酬改定と改正薬機法が同時に行われ、その目玉のひとつである「オンライン服薬指導」に調剤薬局業界の注目が集まりました。また2019年度3月以降の新型コロナウイルス感染拡大により、オンライン服薬指導のニーズは当初の予測を超えて急速に拡大。受診控えの長期化による処方箋受付枚数の減少で経営が悪化する企業も多く、逆風のなかでオンライン服薬指導体制の整備に追われることとなりました。このような厳しい情勢下で、2020年度に最も大きい売上高を記録したのはどの調剤薬局でしょうか。売上高ランキングの結果を見てみましょう。
目次
売上高ランキング上位10社中7社が減収
順位 | 企業名 | 売上高(百万円) | 対前年度比 | 店舗数 |
---|---|---|---|---|
1 | アインホールディングス | 263,095 | 99.8% | 1065 |
2 | 日本調剤 | 244,072 | 105.7% | 670 |
3 | クオール | 148,778 | 97.1% | 811 |
4 | メディカルシステムネットワーク | 99,214 | 99.6% | 416 |
5 | 東邦ホールディングス | 91,098 | 94.8% | 777 |
6 | スズケン | 90,090 | 93.4% | 371 |
7 | トーカイ | 44,098 | 97.9% | 138 |
8 | ファーマライズホールディングス | 42,530 | 105.2% | 298 |
9 | シップスヘルスケアホールディングス | 27,070 | 100.1% | 109 |
10 | メディカル一光 | 22,038 | 96.2% | 93 |
※各社の売上高と店舗数は、下記のセグメントで集計
アインホールディングス…ファーマシー事業 日本調剤、東邦ホールディングス、トーカイ、ファーマライズホールディングス、シップヘルスケアホールディングス、メディカル一光…調剤薬局事業 クオール、スズケン…保険薬局事業 メディカルシステムネットワーク…地域薬局ネットワーク事業
※ランキングは有価証券報告書提出企業と売上高を公表している企業のみで作成
各社オンライン服薬指導に乗り出すも、コロナ禍の逆風は強い
ランキング上位10社中9社が前年度比増収となった2019年度から一転、2020年度は10社中7社が減収しました。減収の大きな要因は、新型コロナウイルスの感染拡大による患者の受診抑制および処方箋受付枚数の減少です。患者の受診控えに伴い長期処方が増えたため処方箋単価は上がったものの、処方箋受付枚数の減少による減収を補えるほどではありませんでした。
今回、売上高が前年度から増加した3社についても、業績が好調な企業のM&Aが増収の主因として挙げられており、コロナ禍の荒波を乗り越えているとは言い切れないでしょう。
こうした厳しい情勢のなか、各社が活路を見出しているのが「オンライン服薬指導」です。オンライン服薬指導は、改正薬機法により当初2020年9月1日に解禁される予定でしたが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受けて、2020年4月10日より電話や情報通信機器を用いた服薬指導(0410対応)が認められました。
患者が来局せずに薬を手に入れられるオンライン服薬指導は、外出自粛が長期化するなかでも処方箋受付枚数の増加が期待できるため、各社で急速に体制整備が進みました。
では、ランキング上位3社の取り組みについて、「出店戦略」と「コロナ禍の対応」を詳しく見ていきましょう。また、実際に各企業で働く薬剤師が、自社をどのように評価しているのかがわかるクチコミもご紹介します。
ランキング1位 アインホールディングス
売上高2,630億9500万円
薬局ブランド/法人名:アインファーマシーズ / あさひ調剤 / 葵調剤 / アインメディオ / コム・メディカル / メディオ薬局 / ダイチク / 西日本ファーマシー / アイン信州
出店戦略:大型店舗の出店と不採算店舗の撤退
アインホールディングスはM&Aの対象となる年商基準を引き上げ、大型案件のみに絞りました。その結果、2020年度のM&A件数は前年度より8店舗少ない14店舗となりました。出店数はM&Aと新規出店を合わせて40店舗、一方で閉店数は57店舗であり、店舗数は17店舗の純減でした。不採算店舗の閉店によりコストカットに臨みましたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響による処方箋枚数減少が痛手となり総売上高は2,630億9500万円で前年度比99.8%、営業利益は191億6200万円で前年度比94.9%となりました。
コロナ禍の対応:全店舗でオンライン服薬指導を可能
アインホールディングスでは調剤薬局全店においてオンライン服薬指導の対応体制を整えました。さらに、今後の医薬品受け取りニーズの多様化に備え、ドローンや自動配送ロボットによる医薬品の配送、当日配送のスキーム構築、宅配ロッカーの活用等の実証を積極的に実施しました。
薬剤師のクチコミ
ランキング2位 日本調剤
売上高2,440億7200万円
薬局ブランド:日本調剤
出店戦略:大型店舗出店と高度医療への対応で売上高増加
日本調剤は2020年度の出店戦略として、大型店舗の出店と高度薬学管理機能を担う店舗に集中しました。出店数はM&Aと新規出店を合わせて29店舗、閉店数は9店舗であり、店舗数は20店舗の純増となりました。2020年度に出店した店舗が売上に寄与し、売上高は2,440億7200万円と前年度比105.7%を達成。
コロナ禍の対応:自社開発の電子お薬手帳がオンライン服薬指導に寄与
日本調剤は、オンライン服薬指導の解禁を受け自社開発のオンライン服薬指導システム「日本調剤 オンライン薬局サービス」の運用を開始しました。日本調剤では電子お薬手帳「お薬手帳プラス」も自社開発しており、オンライン服薬指導に合わせて柔軟にアップデートができる体制が整っています。こうしたオンライン服薬指導の体制整備が、コロナ禍でオンライン服薬指導の需要が増大した患者のニーズを捉え、処方箋受付枚数の増加に寄与しました。
薬剤師のクチコミ
企業分析
製薬部門やコンサルティング部門もあり多角化が上手く進んでいます。また、大病院の前の門前薬局が多く、閉院のリスクも少ないため、将来も安定した経営ができるのではと思います。
ランキング3位 クオール
売上高1487億7800万円
薬局ブランド/法人名:クオール薬局 / 共栄堂 / アルファーム / ニチホス / フクシメディカル / あいファーマシー / セラ・メディック / ファルマスター / 琉球クオール
出店戦略:新規出店は東名阪エリアが中心
2020年度のクオールの出店戦略は関東地方・東海地方・関西地方の店舗網を拡充しました。2020年8月に調剤薬局茨城県内で6店舗、大阪府内で1店舗を取得したほか、2021年1月には勝原薬局(兵庫県姫路市)を買収。2020年度の出店数は新規出店とM&Aを合わせて34店舗、閉店数は事業譲渡を含めて28店舗です。前年比の総店舗数は6店舗の純増となりました。
新規出店による規模の拡大を図りましたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響による処方箋受付枚数の減少が大きく、売上高は1487億7800万円で前年度97.1%でした。
コロナ禍の対応:非対面・ 非接触の薬受け渡しに取り組む
オンライン服薬指導への対応として、調剤薬局窓口支援システム「Pharms(ファームス)」をはじめとした、複数のオンライン服薬指導支援システムの導入を進めています。
そのほか、ナチュラルローソンクオール薬局豊洲三丁目店で、QRコードを使うことで非対面・非接触でお薬の受け取りを可能にするロッカーを試験的に導入するなど、コロナ禍での新生活様式に合わせた薬局づくりにも取り組んでいます。
薬剤師のクチコミ
入社理由・入社後ギャップ
大きな病院の門前のところの立地であり、いろんな科の処方が見れるので勉強になると思った。さらに自動分包機やその他の機材も新しいものを取り揃えており非常に効率よく調剤業務が行える環境であったと思い入社を決めた。
仕事のやりがい・教育体制
クオール株式会社は調剤業務だけではなく、予防医学や地域への教育にも力を入れている。また健康食品の臨床試験にも取り組んでおり、総合的に医療に携わろうとしている感覚がある。
ランキング4位 メディカルシステムネットワーク
売上高992億1400万円
薬局ブランド/法人名:なの花薬局(なの花北海道 / なの花東北 / なの花東日本 / なの花中部 / なの花西日本 / トータル・メディカルサービス )
事業戦略:店舗数は横ばい、処方箋受付枚数の減少が痛手に
メディカルシステムネットワークでは、2021年4月に有限会社クリニクス(北海道北見市)をはじめ6店舗を買収、新規出店は7店舗でした。一方で、閉店や事業譲渡が13店舗あり店舗数は据え置きの416店舗となりました。
長期処方化で処方箋単価は伸びたものの処方箋受付枚数の減少が響き、売上高は992億1400万円で前年度比99.6でした。
薬剤師のクチコミ
給与・評価制度
大手なのにすごく融通がききます。昇級、手当もきちんとでます。給与形態が変わるときもきちんと説明会が開かれ個人面談なども行われ一方的なことがひとつもありません。普通にとってもいい会社です。
ランキング5位 東邦ホールディングス
売上高910億9800万円
薬局ブランド/法人名:ファーマみらい / スター・システム / セイコーメディカルブレーン株式会社 / 明徳ケアワーク / オージープラン / 青葉堂 / 社厚生 / ベガファーマ / セイコーメディカルブレーン /ファーマダイワ / ヴェルデ / ストレチア
事業戦略:顧客支援システムで収益性改善を図る
東邦ホールディングスでは、薬局本部システム「ミザル」などの顧客支援システムの活用により、在庫の適正化や店舗業務の標準化・効率化に取り組み、収益性の改善を図りました。しかし患者の受診抑制に伴う処方箋受付枚数の減少は大きく、売上高は910億9800万円で前期比94.8%でした。
薬剤師のクチコミ
職場環境・設備
調剤は機械化(自動化)が進んでおり、レセコンは監査システム、音声入力ツールなどは独自に開発されたシステムが使われている。現場の声を反映した他にはないシステムとツールであると思う。
社風・組織
他店舗との交流、ヘルプなどでいろいろな方とお話が出来たり、スキルアップもできると思う。自店舗のスタッフとも雑談などしたり、ピリピリした感じはどの店舗に行ってもない感じです。
売上6位以降の企業の薬剤師クチコミ
6位スズケン
7位トーカイ
8位ファーマライズHD
9位シップスヘルスケアHD
10位メディカル一光
調剤薬局業界上位10社の占有率は前年度から変わらず
厚生労働省の最新データでは、調剤医療費は約7兆7,025億円、薬局数は6万171件です。これに対して、調剤薬局売上高ランキング上位10社の合計売上高は1兆720億円、合計店舗数は4,748店舗でした。上位10社の市場に占める割合は売上高13.9%、店舗数7.9%です。これは、ドラッグストア業界がいずれも6割程度を占めていることを考えると、低い水準といえるでしょう。
2020年度は新型コロナウイルス感染拡大の影響で、M&Aの基準を引き上げる企業や新規出店に慎重姿勢を見せる企業が目立ちました。2021年度もしばらくは同様の状況が続く見込みですが、アインホールディングスでは2022年4期以降の事業計画で80店舗の新規出店を計画するなど、コロナ禍からの回復を視野に入れる企業もいます。各社がどのような出店戦略をとるのか注目です。
上位10社の市場占有率(売上高)
上位10社の市場占有率(店舗数)
今後の調剤業界-2021年8月より「連携薬局」が開始
改正薬機法の施行により、2021年8月より連携薬局の知事認定制度が開始されます。これは地域の医療機関・医療従事者と積極的に連携している薬局を都道府県知事が認定する制度であり、連携薬局は機能別に次の2種類があります。
- 地域連携薬局…入退院時や在宅医療に他医療提供施設と連携して対応できる薬局
- 専門医療機関連携薬局…がん等の専門的な薬学管理に他医療提供施設と連携して対応できる薬局
この制度は患者自身が自分に適した薬局を選択できるようになることが目的であり、認定された薬局は連携薬局であることを局内やホームページ等で広告できます。そのため、患者に向けて「より充実したサービスを提供できる薬局」だとアピールできるのです。現状、連携薬局の認定自体に診療報酬はありませんが、患者から信頼される薬局づくりの一環として、各社がどのように取り組んでいくか動向に目が離せません。
今後求められる調剤薬局薬剤師像
前年度に引き続き新型コロナウイルスの感染拡大の影響は大きく、調剤薬局業界全体が打撃を受けています。厳しい環境で薬局運営を続けていく企業が増えるため、薬剤師にはこれまで以上に「質」が求められるでしょう。
質の高い薬剤師とは、端的に言えば「対人業務」を担える薬剤師です。今後は、オンライン服薬指導を導入する企業が増えることも十分に考えられ、対面だけでなく遠隔でも信頼関係を構築できるコミュニケーション能力が必要と言えそうです。
いまの職場に対する不安・不満や、キャリアプランに関するお悩みがある方は、お気軽に薬キャリエージェントのコンサルタントまでお問い合わせください。薬剤師専門の転職コンサルタントが、薬剤師一人ひとりのご経験・ご希望に沿った求人をご紹介します。
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<参考>
参考資料:アインホールディングス「2021年4月期決算短信」「2021年4月期決算説明会資料」、日本調剤「2021年3月期決算短信」、クオール「2021年3月期決算短信」、スズケン「2021年3月期決算短信」、東邦ホールディングス「2021年3月期決算短信」、トーカイ「2021年3月期決算短信」、メディカルシステムネットワーク「2021年3月期決算短信」、ファーマライズホールディングス「令和2年3月期決算短信」、シップヘルスケアホールディングス「2021年3月期決算短信」、メディカル一光「2021年2月期決算短信」
厚生労働省「令和元年度衛生行政報告例」「平成30年医師・歯科医師・薬剤師調査の概況」「調剤医療費(電算処理分)の動向の概要~平成30年度版~」
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