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株式会社阪神調剤薬局 岩崎代表取締役社長

患者さまに寄り添う「医療人」としての信念

創業以来変わることのない「医療」の提供者としての念(おも)い── 阪神調剤薬局が目指す「街のかかりつけ薬局」にはお客さまへの篤い心遣いがある。

医薬分業のこれから、門前型薬局のこれから

──本日はよろしくお願いします。さっそくですが、御社の市場予測についてお教えください。近年、医薬分業が成熟期を迎え、分業率も頭打ちになりつつあると言われていますが、保険薬局の経営環境は今後どのように変わっていくでしょうか。

岩崎 賀世子(いわさき かよこ)
株式会社阪神調剤薬局 代表取締役社長

昭和51年に弊社が創業した当時、医薬分業率はわずか6%でしたが、それから38年後の現在はおよそ67%にまで上昇しています。分業率7割弱というこの数値は、保険薬局の出店がなく、やむをえず院内処方を行っている一部の地方を含めたものであり、実際は少なくとも都市部に関しては、医薬分業がおおよそ浸透したと言えるでしょう。医薬分業が頭打ちになりつつある現状で大切なのは、数ある保険薬局のなかから患者さまにあえて自社の薬局を選んでいただくための取り組みではないでしょうか。患者さまはどの薬局に行っても同じ価格で薬をお求めになれますので、薬局は患者さまのためにどのような価値をご提供するべきなのかを考え、それを実行していくことが急務です。

弊社につきましては、新たに開業する医師や既存の医療機関から直接出店のお誘いをいただくことが以前よりも多くなっています。分業率が伸び悩み、同業・異業他社との競争が激化する厳しい状況のなかにあっても、医師や医療機関とのつながりのなかで新たな出店のチャンスに恵まれることは、創業当時から一貫してブレない弊社の理念に対する信頼の証であると、心より感謝しております。

在宅医療への需要も、超高齢社会の到来を背景にして引き続き高まっていくことになるでしょう。弊社も医療提供者としてこの分野で貢献できることがあると考えています。たとえば、これまでご通院され処方せんを持って弊社の薬局をご利用いただいていた患者さまが、お年を召して介護施設に入られた場合、そこへお薬をお届けに伺ったり、弊社自らが病院に近接した土地を確保してサービス付き高齢者向け住宅をご用意し、そこにご入居いただいたりと、処方せんの応需のみを役割とするのではなく、医療提供者としてなすべきことを模索していかねばならないと思います。

――昨今、保険薬局業界では、門前型薬局から調剤併設ドラッグストアが主に展開するような面対応薬局の出店に注力していく流れがあると言われています。門前型薬局を主に展開する御社としては、この傾向についてどのようにお考えでしょうか。

確かに業界では、患者さまの生活圏に出店して広域からより多くの集患を図る面対応薬局にシフトする流れがあります。しかしながら、門前型薬局が患者さまから必要とされなくなるわけでは決してありません。門前型薬局には面対応薬局にはないメリットがあり、それを好まれる患者さまも多いのです。たとえば、処方せんをお持ちの方はどこかしらお体の調子がすぐれない方がほとんどですので、病院から遠くにあって店舗も広い面対応薬局へ行くよりは、病院からすぐ近くの薬局で落ち着いて薬を受け取ることを望まれる患者さまも多くいらっしゃいます。また、疑義照会の結果、処方薬の追加や変更の必要性が生じた場合、処方せんを発行した病院との距離の関係上、門前型薬局のほうが迅速かつ確実に対応できるのです。医師と薬剤師による処方せんのダブルチェックにより、患者さまの投薬の安全性を高めてより良い医療を提供することが、医薬分業の本来の目的です。弊社を含め門前型薬局を主として展開する保険薬局は、門前型薬局、ひいては医薬分業のメリットを最大限発揮し、患者さまのご期待・ご要望により一層お応えしていかなければなりません。

「街のかかりつけ薬局」として信頼される阪神調剤薬局のビジョンと取り組み

――御社の市場予測を踏まえまして、御社が実現していくビジョンについてお教えください。

弊社の経営理念の根底には「私たちの仕事はあくまで医療である」という、創業者の念(おも)いが流れており、それが今日に至るまで受け継がれています。他業種への参入や物販で事業拡大を図るのではなく、あくまでも調剤にこだわって地域の患者さまに貢献し、会社を発展させてきました。「医療」の提供者としてのスタンスを守りながらも、今後予想される社会保障制度の変化に合わせて薬局の機能を高め、高度先進医療から在宅医療、小児から高齢者まですべての世代のあらゆる医療のニーズに応え、信頼される「街のかかりつけ薬局」であり続けることが、弊社のビジョンです。

――創業時から一貫してブレることのない「医療」へのスタンスを示し、地域の患者さまに信頼される「街のかかりつけ薬局」であり続けるための御社の取り組みをお教えください。

薬局に訪れる患者さまは文字通り何かしらのご病気を患っていて、通常より心身ともに活力が失われていることがほとんどなのです。薬局にいらっしゃる患者さまがどのような方か、想像してみてください。ほとんどの患者さまは、体の不調をこらえながら家を出て医療機関で受診し、処方せんを受け取りに薬局にいらっしゃいます。だからこそ、ただお薬をお渡ししてお体を元気にしてもらうだけでなく、薬局にいらっしゃったことで少しでも安心感を得ていただき、心も元気にしていただけるように、弊社では従業員の接遇教育に非常に力を入れて取り組んでいます。「接遇の重視」はただ会社が掲げている目標では決してございません。私自身が頻繁に店頭に立って患者さまをお迎えしたり、現場の従業員の直接指導したりすることもあります。阪神調剤薬局だからこそできる接遇を会社全体で考え、実行しています。

――患者さまの体だけでなく心も元気にする、御社の接遇は具体的にはどのようなものでしょうか。

患者さまが薬局にいらっしゃるとき、あるいは薬局から帰られるとき、薬局のドアを開けるのは患者さまでなく薬剤師をはじめとする薬局内の従業員です。薬をお渡しする際は、患者さまをお呼びしてカウンターに来ていただくのではなく、薬剤師自らが紙薬歴(一部店舗ではタブレット端末の薬歴)と薬を持ってカウンターを出て、お待ちしている患者さまのもとに行き、そこで膝をついて説明しています。これらは創業のころから全く変わらない光景で「患者さまひとりひとりに寄り添う」弊社の接遇に対する考え方を示したものだと思います。患者さまが薬局や薬剤師のもとを「訪れて」薬をもらい説明を受けるのではなく、薬局や薬剤師が患者さまを「お迎え」する接遇の姿勢によって、患者さまには「阪神調剤薬局とそこにいる薬剤師は、ほかの誰でもなく自分のことを考えてくれている」と感じていただけるのです。

また、画一的なマニュアルを覚えさせ、それに基づいて患者さまに接するのではなく、一人ひとりの症状やお悩みなどを薬剤師が親身なコミュニケーションで丁寧にヒアリングし、得られた情報を薬歴に蓄積していくことで、患者さまと薬局との関係を深めていくことにも重きを置いています。薬局をご利用いただく患者さまには、軽い風邪のためにいらっしゃる方もいれば、長年にわたって癌と闘っていらっしゃる方もいます。自分の病気を治そうと強い意思を持っている方も、一向に良くならないからと少し気持ちが萎えてしまっている方もいらっしゃいます。症例はもちろん、治療に対する気構えや考え方、医師との関係など、どれをとっても患者さまはひとりとして同じではないのです。画一的なマニュアルで機械的に対応するのでは、すべての患者さまに気持ち良く薬局を後にしてもらうことはできません。だからこそ、薬剤師と患者さまのコミュニケーションのなかで積み重ねられた情報を財産にして、一人ひとりに寄り添った接遇をもっとも大切にしています。

弊社の薬局は薬剤師の一日あたりの処方せん応需枚数があまり多くありません。これは薬剤師が患者さまの接遇にかける時間を長くとっているためです。効率を考えれば薬剤師が時間あたりに対応する患者さまの人数は多いほうが良いのかもしれませんが、効率ばかりを追い求めた薬局経営は、地域の方々に信頼される「街のかかりつけ薬局」を目指すという弊社のビジョンにはそぐわないものだと考えています。

「私たちの仕事はあくまで医療」ブレることのない信念に基づいた薬局運営

――接遇や待ち時間の有効活用のほかに取り組みはありますか。

どのような医療機関をご利用になる患者さまにも阪神調剤薬局の「医療」をお届けしたいという思いがあり、また薬剤師ひとりひとりの働く薬局の希望に添いやすくなることから、弊社は大学病院から小さな診療所まで幅広い処方せん応需先を持っていますが、とりわけ中規模~小規模の民間医療機関の処方せん応需先を多く持ち、それらとの緊密な連携体制が強みにもなっています。

患者さまが処方された薬について医療機関で受けた説明と、薬局で受けた説明に食い違いがあっては、患者さまを不安にさせてしまいます。薬はメーカーから来る能書という説明書に基づいて患者さまに説明するのが基本ですが、医師が実際に説明する内容と異なることも少なくありません。ですから、医師が患者さまに薬についてどのような説明をしたのか、逆にこちらがどのような説明をしたのかをしっかり情報交換できるつながりが大切なのです。

また、冒頭でもお話いたしましたように、病院の老朽化に伴う改築・移築の際に薬局の移築も行いますが、その移築先も医師との相談の上で決定したり、医療機関と連携してサービス付き高齢者向け住宅の提供を行うなどしています。薬局との位置を患者さまの利便性の観点でベストな位置に調整したり、医療機関にアクセスしやすいサービス付き高齢者向け住宅を提供したりすることによって、地域医療の質のさらなる向上に貢献しています。

薬局の屋上緑化や災害用備蓄庫を持った薬局なども設けています。屋上を緑化した薬局は、その薬局が隣接する病院に入院する患者さまが、緑に彩られた薬局を見下ろす形で楽しんでいただければと考えて設置しています。災害用備蓄庫を持った薬局は2011年の東日本大震災の際に弊社が行った被災地への薬剤師派遣の教訓から、被災地でとくに需要が高かった医薬品・衛生品・食料などの備蓄を少なくとも6日分用意しています。これらはいずれも、薬局として薬をお渡しし服用していただく以外の形でも、「医療」の提供者として地域の患者さまの安心・安全な生活に貢献したいという弊社の理念に基づいた施策です。

迎え入れたい薬剤師像と、薬剤師が成長できる環境

――薬剤師をはじめとする店舗従業員の接遇教育、薬局と医療機関の連携や店舗形態の工夫など、いずれの施策も「街のかかりつけ薬局」を目指す御社のビジョンと、創業以来一切変わることない「阪神調剤薬局は医療の提供者である」という信念が伝わりました。日々変わっていく医療環境のなかで、変わることのない医療提供者としての価値を作り出す仲間として、御社が迎え入れたい薬剤師はどのような方でしょうか。

患者さまの心身を癒す「医療」の担い手としてのプロ意識と心遣いを持った方です。いらっしゃった患者さまに快く薬局をご利用いただき、お薬を安心して服用してもらうことが、薬剤師として何より大切な仕事です。そのためには、患者さまに薬局と薬剤師を信頼してもらうことが重要です。患者さまが求めている情報をきちんと提供できるよう常日頃から知識の研鑽を怠らず、また患者さまひとりひとりにやさしく寄り添う気持ちを忘れない薬剤師が、患者さまとの信頼を築くことができるのです。

弊社の薬局は、街のクリニックはもちろん、医療モール、大学病院など、幅広い規模・処方せん応需先があります。開業医とともに地域密着の医療を志向する方、大学病院の門前で先進医療の処方を経験したい方など、薬剤師ひとりひとりの働く環境の希望をかなえ、キャリアを積める環境を用意しています。弊社が迎える薬剤師が、自分の志向する環境で心おきなく専門性を発揮してくれることで、弊社はさらに「医療」の提供者として、地域の患者さまに価値をご提供できるのです。

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