【2020年版】調剤薬局 売上高ランキング
売上高ランキング首位はアインホールディングス
~処方箋単価の向上と後発医薬品がカギ~
調剤基本料に関する締め付けや基準調剤加算の廃止など、調剤薬局業界に厳しい向かい風が吹いた2018年度診療報酬改定から1年。2019年度は、各社診療報酬改定に合わせて体制整備を進めながら売上高の伸長を目指しました。
2019年度に最も売上高が大きかったのはどの調剤薬局でしょうか。売上高ランキングの結果を見てみましょう。
(【最新!2021年版】調剤薬局 売上高ランキングはこちらから)
◆10社中9社が増収
順位 | 企業名 | ||||||
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1 | アインホールディングス
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2 |
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3 |
共栄堂・ アルファーム・ ニチホス・ フクシメディカル・ あいファーマシー・ セラ・メディック・ ファルマスター・ セラ・メディック・ 琉球クオール |
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4 | メディカルシステムネットワーク
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5 | スズケン
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6 | 東邦ホールディングス
ファーマみらい・ 株式会社スター・システム・ セイコーメディカルブレーン株式会社・ 株式会社明徳ケアワーク・ 株式会社オージープラン・ 青葉堂・ 株式会社厚生・ ベガファーマ・ セイコーメディカルブレーン・ ファーマダイワ |
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7 | トーカイ
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8 |
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9 | シップヘルスケアホールディングス
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10 |
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※各社の売上高と店舗数は、下記のセグメントで集計
アインホールディングス…ファーマシー事業
日本調剤、東邦ホールディングス、トーカイ、ファーマライズホールディングス、シップヘルスケアホールディングス、メディカル一光…調剤薬局事業
クオール、スズケン…保険薬局事業
メディカルシステムネットワーク…地域薬局ネットワーク事業
※ランキングは有価証券報告書提出企業と売上高を公表している企業のみで作成
ランキング上位10社中7社が前年度比減収となった2018年度から一転、2019年度は10社中9社が増収。各社、2018年から診療報酬改定に合わせて進めてきた体制整備が形となり、売上が伸びました。
なかでも、「後発医薬品調剤体制加算※」は増収につながる項目として注目され、多くの企業で後発医薬品の使用割合85%以上を目指した取り組みがみられました。
各社の売上高は伸びているとはいえ、上位10社のなかで前年度比110%以上の成長をした企業は、2位の日本調剤と3位のクオールのみ。調剤薬局業界の財源である調剤医療費は縮小傾向であり、生存競争はいっそう厳しくなっていきそうです。
では、ランキング上位3社の取り組みについて、売上高の肝となる「改定への対応」と「出店戦略」を詳しく見ていきましょう。
ランキング1位 売上高2,637億5000万円 アインホールディングス
改定への対応:処方箋単価の向上に取り組む
アインホールディングスの2018年度診療報酬改定への対応としては、処方箋単価を上げるため、「後発医薬品調剤体制加算3」および「地域支援体制加算」の算定に注力。「後発医薬品調剤体制加算3」を算定した薬局は2019年4月時点の342店舗から、2020年4月には505店舗へと増加。「地域支援体制加算」の算定薬局も2019年3月の303店舗から2020年4月は315店舗へと着実に増やしました
出店戦略:M&Aの基準を変更し、大型案件の投資へ集中
アインホールディングスの2019年度の出店戦略の特徴は、M&Aの対象を大型の案件のみに絞ったこと。従来、年商の基準は1.5億円(法人の場合)でしたが、これを2.0億円以上に引き上げ、一定の売上を確保している法人のみをM&Aの対象とするように厳格化しました。そのため、M&Aによる出店は6店舗にとどまり、閉店や譲渡を含めて店舗数は44店舗の純減。店舗数は減ったものの、既存店舗・新規店舗の寄与により、前年度から187億円の増収を達成しました。
ランキング2位 売上高2,310億100万円 日本調剤
改定への対応:後発医薬品使用率は驚異の89%
日本調剤の2018年度診療報酬改定への対応は、後発医薬品調剤体制加算3の算定を積極的に推進。2020年3月時点で日本調剤全体での後発医薬品使用率は驚異の89%を達成しています。
出店戦略:高度薬学管理機能型と健康サポート機能型をバランスよく展開
日本調剤の2019年度の出店戦略は、兼ねてからの強みである、総合病院門前の高度薬学管理機能を果たす薬局の出店に加え、2019年度は首都圏を中心に、かかりつけ機能と健康サポート機能を兼ね備えた「ハイブリッド型薬局」を積極的に展開しました。
さらに、薬栄(東京都新宿区)、新栄メディカル(東京都武蔵野市)、センチュリーオブジャスティス(東京都渋谷区)の3社M&Aをはじめ、同社過去最高となる合計30店舗のM&A出店を実施。自力出店についても2014年以降で最多の出店となりました。
ランキング3位 売上高1532億2100万円 クオール
改定への対応:約3割が地域支援体制加算の算定薬局に
クオールの2018年度診療報酬改定の対応としては、「地域支援体制加算」「後発医薬品調剤体制加算3」の算定に注力。全店舗のうち「地域支援体制加算」算定の3割、「後発医薬品調剤体制加算3」の算定4割をほぼ達成し、処方箋単価の向上を実現しました。
出店戦略:北陸・西日本エリアへの出店強化
クオールの2019年度の出店戦略としては、セラ・メディック(大阪府堺市)のM&Aをはじめ、北陸・西日本エリアを中心に展開。また、2019年8月には薬局経営者に向けて「承継公募」をして業界の注目を集めました。結果、新規出店を含めて39店舗の純増を達成し、売上高の向上に大きく貢献しました。
売上高占有率は1割強。中小規模薬局の多さは変わらず
厚生労働省の最新データでは、調剤医療費は約7兆4,279億円、薬局数は5万9,613件です。これに対して、調剤薬局売上高ランキング上位10社の合計売上高は1兆755億円、合計店舗数は5,222店舗。
上位10社が市場に占める割合は売上高14.5%(前年比+0.5%)、店舗数7.9%(昨年比-0.9%)と、前年とほぼ同水準でした。
ドラッグストア業界と比較すると、売上高・店舗数ともに占有率はまだまだ低いと言えるでしょう。
これまで大手チェーン薬局は、新規出店やM&Aによる拡大戦略を継続してきました。コロナ禍を受けて、各社が慎重姿勢となるのか、依然として積極的に拡大していくのか注目です。
今後の調剤業界-コロナ禍によりオンライン服薬指導の普及が加速
2020年2月以降の新型コロナウイルスの流行により、調剤薬局業界にも大きな影響がありました。
患者の受診控えで長期処方が増えて処方箋単価は上がったものの、それ以上に処方箋受付枚数の減少が深刻です。
来年度の売上については厳しい見方が多勢を占めているものの、注目すべきトピックとしてオンライン服薬指導の「0410対応」があります。
アインファーマシーズでは全店舗で電話による服薬指導を実施するなど、早速薬局運営に取り入れている企業もあり、こうしたオンライン服薬指導への体制整備が売上を左右する重要なファクターとなる可能性があります。
各社がコロナ禍でどのような戦略で舵取りをするのか注目です。
※「0410対応」
オンライン服薬指導は、改正薬機法により2020年9月1日に解禁される予定でした。しかし、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受けて、厚生労働省は2020年4月10日「新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱いについて」を発出。
一時的な対応として、条件を緩和したうえで、電話や情報通信機器を用いた服薬指導(0410対応)を認めました。
◎0410対応の特徴
・全国すべての薬局が対応可能
・映像がない電話対応が可能 ※本来は映像が必須
・新規患者への対応可能 ※本来は既に服薬指導経験がある患者のみ
・服薬指導計画の作成なしでも対応可能 ※本来は必須
今後求められる薬剤師像
新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、業界全体が打撃を受けています。厳しい環境で薬局運営を続けていく企業が増えるため、薬剤師にはこれまで以上に「質」が求められるでしょう。
質の高い薬剤師とは、端的に言えば「対人業務」を担える薬剤師です。今後は、オンライン服薬指導を導入する企業が増えることも十分に考えられ、対面だけでなく遠隔でも信頼関係を構築できるコミュニケーション能力が必要と言えそうです。
< 参考資料 >
アインホールディングス「2020年4月期決算短信」「2020年4月期IR資料」、日本調剤「2020年3月期決算短信」、クオール「2020年3月期決算短信」、スズケン「2020年3月期決算短信」、東邦ホールディングス「2020年3月期決算短信」、トーカイ「2020年3月期決算短信」、メディカルシステムネットワーク「2020年3月期決算短信」、ファーマライズホールディングス「令和2年3月期決算短信」、シップヘルスケアホールディングス「2020年3月期決算短信」、メディカル一光「2020年2月期決算短信」
厚生労働省「平成30年度衛生行政報告例」「平成30年医師・歯科医師・薬剤師調査の概況」「調剤医療費(電算処理分)の動向の概要~平成30年度版~」
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