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調剤薬局 売上高ランキング(2019年版)

売上高ランキング首位はアインホールディングス
~診療報酬改定の影響で業績を落とす企業が続出~

調剤薬局業界において、売上を左右する最大の要因は2年に1度行われる診療報酬改定です。
改定のない年は各社前年度の改定に沿って体制整備を進め増収する傾向がある一方で、マイナス改定が続く近年では、改定のある年は体制が整うまで減収となる傾向があります。2018年度診療報酬改定も例にもれず厳しい内容が並びました。
兼ねてより提唱されている「かかりつけ薬剤師・薬局化の推進」という方針自体に変更はありませんでしたが、2016年度改定での「かかりつけ薬剤師指導料」新設のような“アメ”は少なく、各種加算について要件の厳格化や減算といった“ムチ”が目立ちました。
そんな向かい風のなか、2018年度に最も売上高が大きかったのはどの調剤薬局でしょうか。
早速、売上高ランキングの結果を見てみましょう!
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◆対前年度比増収はわずか3社

順位 企業名
1
アインホールディングス
売上高(百万円) 前年度比(%) 店舗数(店)
245,003 102.7 1,132

アインファーマシーズあさひ調剤葵調剤コム・メディカルダイチク西日本ファーマシー 土屋薬品

2
売上高(百万円) 前年度比(%) 店舗数(店)
208,622 101.7 598
3
売上高(百万円) 前年度比(%) 店舗数(店)
134,148 99.3 766

共栄堂アルファームニチホスフクシメディカルあいファーマシーセラ・メディックファルマスターどんぐり琉球クオール

4
売上高(百万円) 前年度比(%) 店舗数(店)
106,283 96.3 698

総合メディカルファーマシー中部祥漢堂あおば調剤薬局タイコー堂薬局本店ヤタヤ薬局ファーマシステムズトラストみよの台薬局グループケイエスメディスン

5
スズケン
売上高(百万円) 前年度比(%) 店舗数(店)
94,657 95.1 345

ファーコスエスマイル

6
東邦ホールディングス
売上高(百万円) 前年度比(%) 店舗数(店)
93,222 95.1 773

ファーマみらいベガファーマセイコーメディカルブレーンファーマダイワ青葉堂

7
メディカルシステムネットワーク
売上高(百万円) 前年度比(%) 店舗数(店)
90,706 104.1 420

なの花北海道なの花東北なの花東日本なの花中部なの花西日本トータル・メディカルサービスアポス

8
トーカイ
売上高(百万円) 前年度比(%) 店舗数(店)
41,817 97.2 127

たんぽぽ薬局

9
売上高(百万円) 前年度比(%) 店舗数(店)
40,613 94 258

北海道ファーマライズ新世薬品ファーマライズテラ・ヘルスプロモーション

10
シップヘルスケアホールディングス
売上高(百万円) 前年度比(%) 店舗数(店)
25,585 99.2 105

シップヘルスケアファーマシー東日本グリーンファーマシー

※各社の売上高と店舗数は、下記のセグメントで集計
アインホールディングスは医療事業、日本調剤、東邦ホールディングス、メディカルシステムネットワーク、トーカイ、ファーマライズホールディングス、 シップヘルスケアホールディングスは調剤薬局事業、クオール薬局、スズケンは保険薬局事業、総合メディカルは薬局部門
※ランキングは有価証券報告書提出企業と売上高を公表している企業のみで作成

ランキング上位10社すべてが前年度の売上高を上回った2017年度から一転、2018年度に対前年度比で増収した企業はわずか3社でした。各社を苦しめた主な要因は、次の2点です。

(1)調剤基本料1の「特例除外」が廃止

調剤基本料は調剤薬局の収益の土台部分で、処方箋受付枚数や集中率によって決まります。
改定前「調剤基本料2(25点)」「調剤基本料3(20点)」の調剤薬局は、「かかりつけ薬剤師指導料」などの実績が一定数あると、「特例除外」として「調剤基本料1(41点)」を算定できました。しかし、2018年度改定で特例除外が廃止。処方箋受付枚数が多く、集中率が高い門前薬局は調剤基本料1の算定が不可能になりました。これまで多くの大手薬局チェーンは特例除外を利用して調剤基本料1を算定していたため、経営に大きな打撃を受けました。

(2)調剤基本料1以外の薬局では「地域支援体制加算」の算定がほぼ不可に

2018年度改定では、地域医療に貢献する薬局を評価する「地域支援体制加算(35点)」が新設され、これまで同じ役割を担っていた「基準調剤加算(32点)」が廃止されました。調剤基本料1の調剤薬局は基準調剤加算と同程度の水準で地域支援体制加算を算定できますが、調剤基本料1以外の調剤薬局は算定のため「8つの実績」を満たす必要があります。問題はこの実績要件の達成が極めて困難だったこと。2018年6月時点で、調剤基本料1以外の調剤薬局で同加算を届け出たのは1件のみだったという事実が、ハードルの高さを如実に現しています。よって、(1)で調剤基本料1から外れた大手チェーンの調剤薬局は、同時に基準調剤加算の算定も不可能になり、“ダブルパンチ”で減収となりました。

より詳しい内容は「2018年度調剤報酬改定!地域包括ケア時代に求められる薬剤師・薬局とは」をご覧ください。

2018年度改定において、大手チェーン各社は打撃を受けました。
こうした状況下で、各社はどのような取り組みで生き残りを図ったのでしょうか。ここで売上ランキング上位3社の今年度の取り組みについて詳しく見ていきましょう。

ランキング1位 アインホールディングス 売上高2,450億300万円

  • 新規出店とM&Aにより、店舗数103店舗の純増
  • 新卒薬剤師を257人採用、かかりつけ薬剤師として育成
  • 後発医薬品の使用促進

後発医薬品調剤体制加算

前年に引き続き売上高首位のアインホールディングス。
2018年度は株式会社コム・メディカル(新潟県三条市)、土屋薬品株式会社(長野県長野市)のM&Aを実施するなど、事業規模の拡大を推進しました。103店舗と大幅な拡大戦略を支えているのは、積極的な新卒採用。2018年度は257人の新卒薬剤師を採用し、かかりつけ薬剤師として育成を進めています。
2018年度改定の対応策のポイントとしては、「後発医薬品調剤体制加算3」の算定に注力。施設基準である「後発医薬品使用割合85%以上」の達成に向けて体制整備に取り組みました。その結果、「後発医薬品調剤体制加算3」を算定した薬局は2018年4月の132店舗から、2019年4月には396店舗と3倍に増加。同時に、加算なしの店舗は281店舗から189店舗に減少しました。
こうした取り組みが奏功し、売上高は2,450億円で前年度対比102.7%を達成しました。

※後発医薬品調剤体制加算とは

後発医薬品の使用割合が高い薬局を評価する加算。
2018年度調剤報酬改定で使用割合が85%を超えている薬局が算定できる「加算3」が新設されました。一方で「加算1」「加算2」は施設基準が引き上げられたため、使用割合75~80%未満の薬局は減算、75%未満の薬局は算定できなくなりました。
各項目の施設基準と加算点は以下の通りです。

項目 施設基準 点数
従来 2018年度改定 従来 2018年度改定
後発医薬品調剤体制加算1 65%以上 75%以上 18点 18点
後発医薬品調剤体制加算2 75%以上 80%以上 22点 22点
後発医薬品調剤体制加算3 - 85%以上 - 26点

ランキング2位 日本調剤 売上高2,086億2,200万円

  • 在宅医療の実施店舗96.6%
  • 後発医薬品の使用割合は全社平均87%
  • かかりつけ薬剤師在籍店舗割合81.0%

日本調剤は国内最大規模の調剤薬局チェーンであり、「特例除外」を積極的に活用して調剤基本料1を維持していました。そのため、前述の「特例除外の廃止」の影響は大きく、調剤基本料1の店舗割合は2018年3月85%から、4月48%に激減。同時に基準調剤加算から地域支援体制加算へ切り替えられない店舗も多く、2018年3月58%から4月32%へと減少しました。
こうしたなか、日本調剤はアインホールディングスと同様、後発医薬品調剤体制の整備に注力。2019年4月時点で後発医薬品調剤体制加算3の取得店舗は全体の62%まで増加しました。また、「かかりつけ薬剤師・薬局化」も継続的に推進。かかりつけ薬剤師が在籍している店舗は全体の81.0%、在宅医療の実施店舗の割合は96.6%へと増加しました。結果、売上高は2086億円と対前年度比101.7%をマークしました。

ランキング3位 クオール 売上高1,341億4,800万円

  • クオール+ローソンの出店強化による売上拡大
  • 2019年1月に株式会社ニチホスをM&A

クオールは、これまでローソンやJR西日本グループ、ビックカメラなど異業種と連携し、さまざまな業態の調剤薬局を展開してきました。2018年度は、なかでもローソンとの連携を強化。首都圏、大阪府、京都府への出店に積極的に取り組み、同業態の売上高が100億円を突破しました。また、2018年4月に有限会社どんぐり(大阪府茨木市)、10月にあいファーマシーグループ(山形県酒田市)、2019年1月に株式会社ニチホス(大阪府大阪市)をM&A。
中部・近畿地方を中心に事業規模拡大にも積極的に取り組ました。
しかしながら診療報酬改定の影響は大きく、売上高は1341億円で対前年度比99.5%となりました。

 

売上高占有率は1割強。中小規模薬局の多さは変わらず

厚生労働省の最新データでは、調剤医療費は約7兆7,129億円、薬局数は5万9,138件です。 これに対して、調剤薬局売上高ランキング上位10社の合計売上高は1兆807億万円、合計店舗数は5,222店舗。上位10社が市場に占める割合は売上高14.0%、店舗数8.8%と、昨年とほぼ同水準でした。
ドラッグストア業界と比較すると、売上高・店舗数ともに占有率はまだまだ低いと言えるでしょう。アインホールディングスは2020年4月末までに70店舗の純増、クオールは84店舗の純増を目指すなど、ランキング上位各社は新規出店やM&Aによる拡大戦略は継続する構え。各社がどの地域で展開を強めていくのか注目です。

調剤薬局上位10社の市場占有率(売上高) 調剤薬局上位10社の市場占有率(売上高) 調剤薬局上位10社の市場占有率(店舗数)

 

薬局の機能別評価への備えが不可欠。目指す薬局像を明確に

2019年8月時点で国会成立はしていないものの、医薬品医療機器等法(薬機法)改正により「特定の機能を有する薬局の認定」が示されました。調剤薬局は特定の要件を満たすことで、かかりつけ薬剤師・薬局を担う「地域連携薬局」、高度薬学管理機能を担う「専門医療機関連携薬局」を名乗れるようになります。名称が患者に浸透すればブランド強化に利用できるでしょう。逆に言えば、どちらの機能別評価も受けられない調剤薬局は、厚生労働省が薬局に求めている「患者本位の医薬分業の実現」に反しており、今後生き残りが難しくなるとも言えます。
2020年度改定で機能別に診療報酬上の点数差をつける議論は出ていませんが(2019年8月時点)、決して楽観視はできません。各社はそれぞれの店舗でかかりつけ機能、高度薬学管理機能どちらを強化していくのか、もしくは両方の機能を担うのか、いずれかの方針を固めて体制を整える必要があるでしょう。
2020年度改定に向けて、各社がどのような「薬局ビジョン」をもって事業を進めていくのか、今後も目が離せません。

< 参考資料 >
アインホールディングス「平成31年4月期決算短信」、日本調剤「平成31年3月決算短信」、クオール「平成31年3月期決算短信」、スズケン「平成31年3月期決算短信」、2018年3月期スズケングループ統合報告書、総合メディカル「平成31年3月期決算短信」、東邦ホールディングス「平成31年3月期決算短信」、メディカルシステムネットワーク「平成31年3月期決算短信」、ファーマライズホールディングス「平成31年3月期決算短信」

厚生労働省「平成29年度衛生行政報告例」「平成26年医師・歯科医師・薬剤師調査の概況」「調剤医療費(電算処理分)の動向の概要~平成29年度版~」

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