業種別!1日のタイムスケジュールからみる薬剤師の勤務実態
薬剤師とひと口に言っても、業種によって勤務時間帯や1日の働き方、業務内容は全く異なります。皆さんは他業種の薬剤師が実際にどんな時間の使い方をしているかご存知でしょうか?
未経験の業種の働き方を知ることは、薬剤師としてのキャリアデザインを考えるうえできっと役に立つはずです。
目次
業種別薬剤師の働き方
薬剤師の働き方早見表
調剤薬局 | ドラッグストア | 病院 | |
残業が少ない | ◯ | ◯ | ◯ |
夜間勤務がない | ◎ | △ | △ |
日曜日勤務がない | ◯ | △ | ◯ |
勤務パターンが豊富 | ◯ | ◎ | △ |
多職種とかかわる時間が多い | ◯ | △ | ◎ |
各業種の特徴
今回は、薬剤師業界のなかで就業している人の割合が多い「調剤薬局」「ドラッグストア」「病院(急性期)」の3つの業種について比較検討していきます。
調剤薬局
調剤薬局は近隣の病院や診療所の外来受付時間に合わせて営業する店舗が多いです。そのため、ドラッグストアや病院に比べると日曜日や夜遅くまで営業する職場は少なく、薬剤師としてワークライフバランスを保ち働ける職場が多い傾向があります。また在宅を行う場合には医師・看護師・ケアマネジャー等、異業種と連携して患者さんをサポートします。
ドラッグストア
ドラッグストアは、休日や深夜も営業しているのが特徴。営業時間が長いため、薬剤師はシフト制の勤務体制をとっていることが多いです。また、契約社員やパートでの短時間勤務や、副業で深夜だけのアルバイト勤務などの選択肢も豊富です。
ドラッグストアは客層が幅広く、処方箋を持たない患者さんへ症状に合ったOTC医薬品を提案するなど、調剤以外の幅広い業務に携わる時間もあります。
病院
病院薬剤師は、業務の大部分で医師・看護師、作業療法師など他の医療従事者と一緒に患者さんの治療に参加、チーム医療の一員として薬剤師としての専門性を発揮する事が求められます。その為、特に急性期病院では夜勤のある病院も多くあります。他の業種に比べ、患者さんと密な関わりを持つ時間が多いといえます。
では、各業種について1日のタイムスケジュールと、実際にどんな働き方をしているのか見ていきましょう。
「調剤薬局薬剤師」
終業時間は早め、プライベートと両立しやすい
調剤薬局薬剤師の勤務時間
午前
調剤薬局は近くの医療機関の診療時間に合わせて営業するのが一般的です。開局前の準備などがあるため、朝は8時30分~9時に出勤する薬剤師が多いです。午前中は病院で診療を終えた患者さんの処方箋を受け付け、調剤や服薬指導を行う業務が中心。OTC医薬品を扱っている場合は、処方箋を持たない患者さんにも対応します。
昼休みは調剤薬局の営業スタイルによって異なります。
通し勤務の場合
通し営業の場合は薬剤師同士が交代で休憩を取りますが、営業が午前と午後で分かれる場合は、1~2時間の休憩を薬剤師や医療事務が一緒にとるケースが多いです。
中抜けありの場合
店舗によっては近隣の医療機関の診療開始時間に合わせるため、2時間以上の長い昼休みを設けていることがあります。そうした店舗の場合、一度自宅に戻って食事や家事をするといった「中抜け」が認められているケースがほとんどです。
午後
午後は、調剤薬局に来局する患者さんの対応に加え、薬剤師が患者さんや施設を訪れて服薬指導を行う在宅訪問を行います。2016年度診療報酬改定で「かかりつけ薬剤師・薬局」制度がスタートして以来、在宅訪問を実施する調剤薬局は増加傾向にあります。
閉局後は医薬品の在庫管理や、薬歴などのデータ整理を行います。また、在宅患者の情報について調剤薬局内だけでなく医師や看護師、ケアマネジャーなどに連絡し、情報共有します。最後に調剤薬局内の片付けをして退勤します。
なお、かかりつけ薬剤師として登録されている場合は、患者さんからの連絡に対し24時間対応することが求められるため、勤務時間外のオンコール対応などの業務が発生することもあります。
調剤薬局薬剤師の休日
医療機関は日曜・祝日休診が多いため、調剤薬局も日曜・祝日を定休とする店舗が一定数あります。有給休暇については、他店舗とのシフト調整が必要になる一人薬剤師の調剤薬局よりも、複数の薬剤師が在籍している調剤薬局の方がとりやすい傾向にあります。
その他
地域包括ケアシステムの推進やかかりつけ薬剤師・薬局制度の導入により、薬剤師の業務は対物業務から対人業務へと変化しています。そのため、薬剤師には従来よりも勤務時間に対して柔軟な対応が求められています。
調剤薬局のなかでも、就業先によって時間の使い方や休日、薬剤師として求められる業務内容も異なります。転職先を決める前に、薬剤師のクチコミなどを確認して、就業先の実情をリサーチしておくと安心です。
調剤薬局で働く薬剤師のクチコミ
時期的なものはもちろんあるが、比較的有給休暇はとりやすい。基本的には希望する日に有給が取れるし、会社も取得率100%を目指して、取得できていない店舗には有給を取得するように連絡がくるシステム。(30代後半 女性)
派遣薬剤師として短期間での勤務でしたが、 勤務時間や休日については最初の規定どおりの時間で働くことができ、 非常に助かりました。残業もほとんどなく、 まれに業務終了間際に急な患者さんの来局があった場合に少し残業する程度で、その短時間でも残業代をいただけました。(20代後半 男性)
ノルマに追われてピリピリしている感じもなく、かといって緩すぎることもなく、場の雰囲気に合わせて臨機応変に対応できる社員が多い気がする。店舗内での団結はもちろん、他店舗からのヘルプ体制が手厚いので、店舗間の団結も強い。(30代後半 男性)
総合病院門前であった。近所にスーパー、コンビニが隣にあり、休憩時間に利用できて便利だった。自動分包機があり、一包化処方にも迅速に対応できる設備が整っていて働きやすい環境となっている。(30代前半 男性)
在宅を行っているところも多く、日々の外来患者に対応する業務だけではなく薬局から外に出て直に患者や医師・看護師・介護ヘルパー等とコミュニケーションを取ることで、受動的ではなく能動的に業務を行っていると自分の仕事にやりがいや達成感を感じることができた。(20代後半 男性)
地域に根付いた薬局として、患者さんとの距離が近く、ひとりひとりの患者さんと丁寧に向き合い、患者さんに寄り添った調剤および服薬指導業務を行うことが出来ています。また、周辺医院との信頼関係もあります。(40代前半 男性)
派遣就業から見た印象になるが、割と自由度が高いと感じた。例えば、子育て世代の管理薬剤師の場合、時短勤務での就業ができるし、子供が体調を崩したなど急な用事の際にもスタッフ間で協力のもと柔軟な対応をとっていた。(30代前半 男性)
調剤薬局業界の代表的な企業
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「ドラッグストア薬剤師」
営業時間が長く、シフト制で柔軟な働き方が可能
ドラッグストア薬剤師の勤務時間
日中
一般的に、調剤薬局に比べてドラッグストアは営業時間が長いため、シフト制の勤務形態をとる企業がほとんどです。シフト制の勤務パターンは早番と遅番に分かれるケースが多いです。
早番の場合
早番勤務の場合は9時に出勤し処方箋の受付、調剤、服薬指導、薬歴の入力など、調剤薬局とほぼ同じ業務を行います。その他、処方箋をもっていない患者さんに対しても、OTC医薬品の説明や健康相談などを行います。
遅番の場合
企業によって違いはありますが、遅番勤務は13時から始まる店舗が多いです。業務内容は早番と変わらず、休憩は18時頃に取得します。
夕方~夜
多くの場合、調剤の受付は夕方に終了。その後は薬剤師もOTC医薬品の販売を担当します。ドラッグストア薬剤師は、調剤業務の他、要指導医薬品や第一類医薬品の販売など、薬のプロとして薬学知識を活かした業務がメインですが、ドラッグストアによっては、商品の品出しやレジ打ちといった業務を任されることもあります。
在庫管理やその日の業務日誌を作成し。早番業務の場合は遅番への引き継ぎ、遅番業務の場合は閉店作業を行います。繁忙期などは前述した品出しなどの業務が増えるため、残業が発生する場合もあります。
ドラッグストア薬剤師の休日
日曜日も営業している店舗が多いため、薬剤師の勤務も土日を含むシフト制(早番/遅番など)がほとんどです。「土日必ず休みたい」という薬剤師にはあまり向かないかもしれませんが、営業時間が長いぶん勤務時間を調整しやすいというメリットもあります。ダブルワークやブランク明けなど、短時間だけ働きたいという薬剤師にとって、多様な勤務パターンがあるドラッグストアはおすすめの職種です。
その他
近年、コンビニエンスストアやスーパーマーケットなど、他業種の医薬品販売参入により、ドラッグストア業界は競争が激化しています。そこでドラッグストア各社は、企業ごとにさまざまな取り組みを行って差別化を図っています。
ウエルシア薬局では、地域の人たちにスペースを開放した「ウエルカフェ」や、ネイルサロンを併設したシティ型ドラッグストア「B.B.ON(ビビオン)」を運営。また、マツモトキヨシでは管理栄養士やビューティースペシャリストと協力して健康と美容をサポートする「matsukiyo LAB」を展開しています。
こうした取り組みはドラッグストア企業の差別化だけでなく、薬剤師にとっても他職種と交流を持つ、よい機会になっているようです。
このように、ドラッグストアでは企業によって勤務パターンや薬剤師に求められる役割、業務内容が異なります。
ドラッグストアで働く薬剤師のクチコミ
勤務時間についてはシフト制です。年中無休店舗ではありますが、調剤については休みもあるので、まだ休暇はある方だと思います。有給休暇も取れないことはないですが、シフト制である以上、いきなり長期の休みを取るなんてことは厳しいです。(40代前半 男性)
勤務時間は比較的余裕を持たせており、過度な負担を感じることはなかった。まれに残業が発生する程度で、仮に残業が発生しても残業手当が貰えるので苦ではなかった。(30代前半 男性)
仕事内容は、初めてであれば覚えることややるべきことがとにかく多いという一言に尽きる。調剤だけでなく、店舗でのOTCやコンタクトレンズの販売もあるため業務マニュアルが多岐にわたっている。(20代後半 男性)
休暇は特にとりにくいというほどでもなく、計画的に休暇申請すれば、比較的とりやすいほうだと思います。長期の連休とかは厳しいですが、そうでなければ問題なく取れます。(30代後半 男性)
店舗によっても違うと思いますが、私の場合はそれほど残業もなく、シフトと有給の組み合わせによっては長期で休暇も取れました。残業はあっても1時間程度だったかと思います。(30代前半 男性)
社員の雰囲気は普通です。よいも悪いもなく、サバサバとした感じですので、自分次第でなんとでもなります。仕事は仕事と、プライベートと一線を引いて仕事をしている方も多くいます。飲み会や付き合いなどはほぼないです。(30代前半 男性)
立地はよく、駐車場も完備しており、店舗も改修しているので清潔です。ドラッグストアなので、終業後に生活必需品を買って帰ることができるので便利です。(30代後半 女性)
関東圏では駅前店舗が多く立地は良いです。どの店舗に配属されても駅から数分でした。狭い調剤併設店舗でも機械は充実してるので調剤業務で困ったことはありません。総合病院の門前薬局はより設備が充実しています。(20代後半 女性)
ドラッグストア業界の代表的な企業
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基本的には夜勤のあるシフト制勤務
「急性期型病院薬剤師」
病院薬剤師の勤務時間
午前
急性期型病院に勤める病院薬剤師は、基本的に夜勤があるため、多くの場合日勤と夜勤のシフト制です。日勤の場合、朝は8時30分~9時頃出勤します。朝礼から始まり、医師や看護師、栄養士など、病棟チームでミーティングを行います。入院している患者さんが夜間に使用した薬や、夜間に入院した患者さんの薬を確認するほか、退院患者への服薬指導なども行います。
午後
午後からは入院患者の持参薬の確認や、手術患者の術前休薬期間のチェック、院内での情報共有などが中心となります。また、病棟で患者さんの服薬指導にも従事します。その後、日勤の場合は夜勤の薬剤師に引き継ぎを行い、17時頃退勤となります。
残業は病院によって事情が異なりますが、基本的に病院では多めに人を配置することがないため、多少なりとも残業が発生する職場が多いようです。
夜勤の場合
夜勤の場合、薬剤師は17時頃出勤し、夜間外来の対応をします。医師や看護師と比べると夜間の緊急対応は多くないため、日中にできなかったカルテの確認作業などが中心になるようです。入院患者への急変時などの薬物療法はもちろん、救急搬送患者を受け入れた場合などは、医師や看護師と協働しながら薬物療法を行う病院もあります。
翌朝は、日勤の薬剤師への申し送りなどを済ませて、朝9時ごろに勤務終了となります。
病院で働く薬剤師のクチコミ
勤務時間は8時50分始業と少し遅めですが、終業は17時と普通の時間に帰れます。残業もほぼなしで定時に帰れます。土曜日は8時50分~12時30分までの午前中勤務です。(40代前半 男性)
調剤業務だけではなく、病棟業務やチーム医療、外来化学療法への関与などなど多岐にわたっている。そのため多忙ではあるが学べることが多い。(30代前半 女性)
1ヶ月の休日日数が11日くらいあり、年間120日以上休みがあったため、ライフワークバランスはとても良いと思います。主婦の方が多く、子育てをしながらでも続けられる環境だと思います。(20代前半 女性)
早朝に脳外科医によるカンファレンスがあり、自由参加でした。前日に救急搬送された患者さんの病状やオペ中の画像などを見ることができました。(20代前半 女性)
院内勉強会、薬局内勉強会が定期的に行われます。
特に、毎月1回行われる薬局内勉強会は、所属している薬剤師が持ち回りで講師をすることになっており、スライドの作成と発表という、貴重な経験を積むことができます。(20代前半 男性)
癌患者等のターミナルケアーを重点に置いた、終末医療病院としての特殊がある。その為、癌治療をおこなっており、抗がん剤の調剤が特に多い。(20代後半 男性)
調剤、病棟業務、在庫管理、DI、NST、ICT、薬剤師業務だけではなく医者並みの業務をこなさないといけない環境でした。薬剤の選択については薬剤師の意見が通ることが多く、患者様に最適な薬を提案でき、感謝された時にやりがいを感じます。(20代後半 女性)
クチコミ情報から業種ごとの薬剤師の働き方を情報収集しよう
このように、同じ薬剤師でも、業種によって勤務時間や勤務形態が異なります。ワークライフバランスを考えた職場を選ぶうえでも、それぞれの1日の流れや時間の使い方を知るのはとても大切なこと。たとえ同じ業種だとしても、企業や医療機関ごとに特徴があり、関わる人や業務内容、職場の雰囲気なども変わるため、転職をする際は事前の情報収集が極めて大切です。
そうした実態を知るためにも、実際に現場で働く人たちのクチコミから情報を収集して、薬剤師としてのキャリアデザインを考える際の参考にしてみてください。
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