薬剤師の求人・転職TOP > 薬剤師の転職成功ガイド > 2018年度調剤報酬改定!地域包括ケア時代に求められる薬剤師・薬局とは

2018年度調剤報酬改定!地域包括ケア時代に求められる薬剤師・薬局とは

2018年度調剤報酬改定は、2016年度改定の「かかりつけ薬剤師・薬局」新設のようなドラスティックな変化はありませんでした。 とはいえ、薬剤師業界を取り巻く状況が安穏としているわけもなく、今次改定ではこれまで以上にかかりつけ機能・健康サポート機能の推進が求められています。前回が新たな枠組みをつくる改定だとすると、今回はその実績を問う改定と言えるでしょう。 今回は2018年3月18日に開催された「じほう 薬局・薬剤師 セミナー2018」より、中医協委員を務める日本薬剤師会の安部好弘常務理事の発表から、今次改定のポイントをご紹介します。

2018年度調剤報酬改定!地域包括ケア時代に求められる薬剤師・薬局とは


【1分簡単登録】最新の業界事情について転職エージェントに相談する

目次

  1. 薬剤師に求められるのは地域医療への貢献
  2. 減薬・残薬の取り組みをさらに評価
  3. 後発医薬品の使用を加速させる評価の見直し
  4. 門前薬局には調剤基本料で大きな打撃
  5. 門前だけで経営できる時代は終わった
  6. 2020年度改定の進捗について ※2019年8月追記

薬剤師に求められるのは地域医療への貢献

患者との信頼関係の維持が「かかりつけ薬剤師」の課題

改定ポイント:かかりつけ薬剤師の要件

  • 在籍期間「6カ月以上」→「1年以上」に延長
  • 「週32時間以上」の勤務→ 育児・介護中の薬剤師は「週4日以上24時間」の勤務に緩和

安部常務理事は、かかりつけ薬剤師・薬局について、「かかりつけ薬剤師調査」のデータをもとに、「疑義照会の割合や医師との連携について実績を上げており、患者調査でも一定の評価を得られた」と述べました。

一方で、かかりつけ薬剤師1人当たり指導料の算定回数が1カ月 100回以上を超えている薬局についても言及。当該薬局のうち4割が特例除外(※1)の対象となっていることから、「特例除外によって調剤基本料1を算定することが目的化しているのではないか」との懸念が示されているとしました。

※1特例除外とは
(1) 当該保険薬局に勤務している保険薬剤師の5割以上が、かかりつけ薬剤師指導料の施設基準に適合している薬剤師であること。
(2) 区分番号13の2かかりつけ薬剤師指導料又は区分番号13の3かかりつけ薬剤師包括管理料に係る業務について、相当の実績を有していること。

上記を満たすことで、調剤基本料2、3に区分されている薬局も調剤基本料1を算定することができます。(2)にある「相当の実績」とは、かかりつけ薬剤師1人当たり指導料の算定回数が1カ月 100回以上を指します。
調剤基本料1は41点、調剤基本料2は25点、調剤基本料3は20点もしくは15点となっており、調剤基本料1を算定できると収益性が大きく上がります。

かかりつけ薬剤師の要件は、「勤めている薬局の在籍期間が6カ月以上」から「1年以上」に延長。
代わりに、育児・介護休業法に定められた期間については、週4日以上かつ24時間以上の勤務でも認められるよう緩和されました。

安部常務理事は「かかりつけ薬剤師は、患者と信頼関係を構築し、それをどれだけ維持できるかが重要。その目的に沿って要件が見直された」と説明しました。

かかりつけ薬剤師として活躍できる職場をコンサルタントに紹介してもらう

地域支援体制加算

改定のポイント:地域支援体制加算

  • 同加算の新設に伴い、基準調剤加算は廃止
  • 従来の基準調剤加算の要件に「地域医療への貢献」「医療安全への取り組み」が追加
  • 調剤基本料2、3の薬局には8つの実績要件が求められる

今次改定の目玉の1つである地域支援体制加算は、廃止された基準調剤加算に代わる形で新設されました。下記のスライドから分かるように、算定にはさまざまな体制整備と実績要件が求められています。

2018年度調剤報酬改定!地域包括ケア時代に求められる薬剤師・薬局とは(療報酬改定-39)

同加算について、安部常務理事は「地域包括ケアシステムのなかで地域医療に貢献する薬局とは何かを再定義した」と話しました。
具体的な項目としては「ヒヤリハット事例収集・分析への参加」「副作用報告の実施」を挙げ、特に副作用報告については、「本来すべての薬局がやっていなければいけないこと」と強調しました。

減薬・残薬の取り組みをさらに評価

改定のポイント:減薬・残薬に関する項目

  • 「服用薬剤調整支援料」をはじめ、減薬・残薬について評価の新設や点数アップ
  • お薬手帳による管理を怠る薬局には大幅な減算規定
  • 調剤基本料2、3の薬局には8つの実績要件が求められる

薬剤師の対人業務については、減薬と残薬調整に取り組みがいっそう評価されるようになりました。

2018年度調剤報酬改定!地域包括ケア時代に求められる薬剤師・薬局とは(療報酬改定-50)

2018年度調剤報酬改定!地域包括ケア時代に求められる薬剤師・薬局とは(療報酬改定-59)

6種類以上の内服薬が出されている患者に対して、薬局薬剤師の疑義照会で2種類以上減少した場合に算定できる「服用薬剤調整支援料」が新設。
また、「重複投薬・相互作用等防止加算」では、残薬調整以外の評価が「30点」から「40点」に加算されました。

安部常務理事は、「患者に処方されている医薬品の管理」が医師に大きな負担となっているという中医協資料を示したうえで、「薬剤師が患者の一元的な服薬管理を行うことで、医師の負担は下がり、医療の質は上がる」と力を込めました。

一元的な服薬管理に取り組む薬剤師・薬局を評価する一方で、実績がみられない薬局に対しては厳しい減算で臨むことにも触れました。

2018年度調剤報酬改定!地域包括ケア時代に求められる薬剤師・薬局とは(療報酬改定-61)

6カ月以内に再度処方箋を持参した患者のうち、お薬手帳をもってきた患者が50%以下の薬局は、「薬剤服用歴管理指導料」が「38点」から「13点」に大幅に引き下げられます。「地域医療に貢献しない薬局は評価しない」と、安部常務理事も明言しました。

後発医薬品の使用を加速させる評価の見直し

改定のポイント:後発医薬品調剤体制加算

  • 後発医薬品の割合85%以上の薬局は点数アップ
  • 同加算の算定自体のハードルは高くなった
  • 後発医薬品の割合20%以下の場合は減算

後発医薬品の使用促進については、「後発医薬品調剤体制加算」の評価が見直し。

2018年度調剤報酬改定!地域包括ケア時代に求められる薬剤師・薬局とは(療報酬改定-72)

現行では、後発医薬品の調剤数量割合について「65%以上(18点)」「75%以上(22点)」の評価。これが「75%以上(18点)」「80%以上(22.点)」「85%以上(26点)」に変更されました。
一方で、後発医薬品の割合が20%以下の薬局については、「調剤基本料から2点減算」も新たに設けられました。

安部常務理事は「後発医薬品の使用による医療費削減は非常に大きい」と指摘。
診療報酬で一般名処方加算の評価が見直されたことから、今後はさらに後発医薬品への切り替えが進むとの見方を示しました。

門前薬局には調剤基本料で大きな打撃

改定のポイント:調剤基本料

  • 調剤基本料2の対象範囲が拡大
  • 調剤基本料3は「大型薬局」「超大型薬局」に細分化

いわゆる門前薬局に関する評価については、厳しい項目が並びました。

2018年度調剤報酬改定!地域包括ケア時代に求められる薬剤師・薬局とは(療報酬改定-74)

調剤基本料2については、集中率にかかわらず同じ医療機関から月4,000枚以上の処方箋を受け付けている、すべての薬局が対象となります。
さらに、病院門前に複数店舗を展開している場合はそれぞれを合算した枚数で計上するなど、細かい規定が新設されました。

調剤基本料3は「大型薬局」「超大型薬局」を分類するため、「調剤基本料3-(イ)20点」「調剤基本料3-(ロ)15点」に分かれました。
安部常務理事は近年の大手薬局の不祥事などをかんがみると、こうした措置もやむを得なかったとしています。

門前だけで経営できる時代は終わった

安部常務理事は、「医薬分業が進められた当初、信頼できる薬剤師に処方してもらいたいという医師の思いもあり、門前型の薬局が拡大していった」と持論を展開。
そのうえで、こうした門前薬局は“ガラパゴス的な進化”であり、かかりつけ機能・健康サポート機能が求められているいま、新しい環境に適応できなければ生き残れないと主張しました。

「対物業務から対人業務への転換」を題目に、薬剤師業界は変革の時を迎えています。
対人業務への転換とは、薬剤師一人ひとりが「かかりつけ機能」を発揮すること。そのためには、患者に寄り添うコミュニケーション能力の重要性はこれまで以上に増していくでしょう(詳しくは「薬剤師の転職市場に異変!今後評価される市場価値とは」 をご確認ください)。

さらに近年の調剤報酬改定では、調剤基本料をはじめ大手チェーンを“狙い撃ち”するような傾向があり、「大手だから経営は安泰」と楽観的に言える状況ではありません。一方で、中小規模の薬局は星の数ほどあり、経営状態も文字通り千差万別。これまで以上に転職先の経営状態を調べる重要性が増しています。

各薬局の事業方針を踏まえた将来性について情報収集をするのであれば、自身で調査するよりも転職エージェントを上手に利用するのが「賢い」転職と言えるでしょう。

「いま勤めている薬局はかかりつけ薬局になっていないけど大丈夫かな」「在宅経験を積める薬局に転職したほうがよいかな」と悩んでいる薬剤師の方は、一度、転職エージェントに問い合わせてみてはいかがでしょうか。

2020年度改定の進捗について ※2019年8月追記

2019年7月24日に、診療報酬改定のこれまでの議論がまとめられました。

医療費削減という国を挙げた課題が未解決のなか、前回改定時と同様に、2019年度も大手薬局チェーンの不祥事が発覚。薬剤師業界に対する風当たりは依然として強いままであり、2020年度も厳しい改定内容が想定されます。

薬剤師・薬局に関する議論の主な項目は下記の通り。

  • 「かかりつけ薬剤師・薬局機能」
  • 「ポリファーマシー、後発医薬品の使用促進、薬剤耐性などの対応」
  • 「病院薬剤師の不足」

「かかりつけ薬剤師・薬局機能」の強化という方向性は、前回の改定から継続しています。現状、「かかりつけ薬剤師指導料」の算定実績は、処方箋受付枚数全体の約1.5%にとどまっており、さらなる拡大が求められています。

薬局薬剤師に関する項目に大きな変化がない一方で、病院薬剤師に関しては新たに「フォーミュラリー」が注目されています。

フォーミュラリーとは「最も有効で経済的な医薬品の使用指針」のこと。エビデンスや経済性をもとに、病院、地域単位で後発医薬品の基準薬を決定することで、「薬物治療の標準化」「薬剤費の削減」につながります。その有用性から加算の新設もあり得るでしょう。

そのほか、医師団体の委員から薬剤師の病棟業務について加算を求める声も上がっており、今次改定では病院薬剤師を取り巻く環境が大きく変わるかもしれません。

今後12月に向けて、個別項目について詳細が決まっていきます。薬剤師の働き方にどのような影響が出るのか議論の行方に注目です。


自宅付近の薬局の将来性について、薬剤師専門のコンサルタントに相談する

薬剤師の転職に関する総まとめはこちら
出典:厚生労働省保険局医療課 平成30年度診療報酬改定の概要 調剤

LINE友だち獲得キャンペーン

調剤報酬改定に関する記事一覧を見る

転職で迷っているなら
コンサルタントに転職相談
こんな場合におススメ
  •  今後のキャリアプランを考えたい
  •  適正年収の職場を紹介してほしい
  •  非公開求人も紹介してほしい
ご相談はこちら

ページの先頭へ戻る