普段一緒に働く機会の多い医師や看護師の平均年収は気になりませんか?今回は医師や看護師・コメディカルといった他の医療職と薬剤師の平均年収を比較し、その理由もあわせて考察していきます。
(単位:万円)
全体 | 10~99人 | 100~999人 | 1000人以上 | |
---|---|---|---|---|
平均年収 | 561.7 | 535.6 | 548.5 | 618.0 |
※参照:厚生労働省「令和元年度賃金構造基本統計調査」
2019年度の薬剤師の平均年収は561.7万円です。ただし、企業規模(従業員数)によって約80万円の年収差があり、企業規模が小さいほど薬剤師の年収は高くなっています。企業規模と年収の関係については<徹底調査!薬剤師の平均年収比較>の記事で詳しく解説していますのでぜひ併せてご覧ください。
また、薬剤師の年収は勤務先によっても変化します。一般病院と診療所に勤務する薬剤師の年収は以下の通りです。
開設者 | 年収(円) |
---|---|
国立 | 5,652,620 |
公立 | 5,959,059 |
公的 | 5,924,662 |
医療法人 | 5,246,187 |
全体平均 | 5,695,632 |
開設者 | 年収(円) |
---|---|
個人 | 9,242,857 |
医療法人 | 10,531,452 |
全体平均 | 9,887,155 |
※参考:令和元年実施 第22回医療経済実態調査 (医療機関等調査)
病院勤務と診療所勤務では約400万円以上の年収差があります。診療所は規模が小さく、雇用する薬剤師数が少ないため高収入につながっていると考えられます。
次に保険薬局に勤務する薬剤師と管理薬剤師の年収を規模別に見ていきましょう。
全体平均 | 1店舗 | 2~5店舗 | 6~19店舗 | 20店舗以上 | |
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管理薬剤師 | 7,518,472 | 8,250,804 | 8,053,307 | 7,338,326 | 6,802,625 |
薬剤師 | 4,738,925 | 4,449,514 | 4,721,781 | 4,580,168 | 4,891,469 |
管理薬剤師、薬剤師ともに薬局の規模が大きくなるほど年収は低下する傾向があります。これは規模が大きいほどチェーン展開をしており新卒採用の薬剤師の割合が多く、平均年齢が低くなるためと考えられます。
一方、管理薬剤師は薬剤師よりも280万円、全体の平均年収よりも190万円ほど高収入です。管理薬剤師は薬局に必ず一人いなくてはならず、薬局の運営や薬剤師のマネジメントなど業務の幅が広く、求められる能力も多くなるため、高年収を得られています。
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薬剤師の平均年収と、医師やコメディカル各職種の平均年収を比較して見ていきましょう。
(単位:万円)
医療職種 | 企業規模計 (10人以上) |
1000人以上 | 100~999人 | 10~99人 |
---|---|---|---|---|
薬剤師 | 561.7 | 535.6 | 548.5 | 618.0 |
医師 | 1169.2 | 968.9 | 1462.6 | 1748.1 |
歯科医師 | 570.1 | 344.2 | 299.1 | 847.8 |
看護師 | 482.9 | 512.4 | 468.2 | 440.4 |
准看護師 | 403.0 | 441.2 | 403.3 | 391.9 |
放射線・X線技師 | 502.0 | 518.2 | 482.5 | 525.7 |
臨床検査技師 | 461.2 | 496.6 | 433.6 | 438.5 |
理学療法士、 作業療法士 |
409.6 | 419.4 | 401.3 | 428.7 |
歯科衛生士 | 370.5 | 433.6 | 391.9 | 358.4 |
歯科技工士 | 384.8 | 561.3 | 362.2 | 372.0 |
栄養士 | 356.5 | 365.0 | 355.9 | 349.6 |
コメディカルの 平均年収 |
421.3 | 468.5 | 412.4 | 413.1 |
※参照:厚生労働省「令和元年度賃金構造基本統計調査」
※年収の算出方法は以下の通り。なお、年収は千円未満を四捨五入。
年収=「きまって支給する現金給与額」×12ヶ月+「年間賞与その他特別給与額」
日本では1,000万円を超える高収入を得られる職業は数少ない中給与所得者のうち、年間所得が1,000万円以上の人はわずか5%未満*というなか、医師の平均年収は1,169.2万円です。歯科医師は開業医と勤務医の年収差が激しく平均年収は570.1万円です。薬剤師の平均年収は医師・歯科医師に次いで医療職全体で3番目に高くなっています。これは、コメディカル全体の平均年収よりも100万円以上も高く、高年収を得やすい職種と言えます。
薬剤師の次に平均年収が高いのは放射線・X線技師の502.0万円です。夜勤手当などで年収が高くなる看護師の平均年収は、薬剤師と比較して約80万円低く482.9万円。月額換算すると毎月約6~7万円の違いです。准看護師や理学療法士、作業療法士、歯科技工士の平均年収は薬剤師より100万円以上低く、さらに歯科衛生士と栄養士は約200万円も低くなっています。このように同じコメディカルの中でも薬剤師の年収は高さが際立っています。
※2017年「民間給与実態統計調査」より算出
医師の年収は企業規模による最高年収と最低年収の差が大きく表れています。一方、コメディカルの企業規模による年収差は医師に比べて小さいと言えます。中でも薬剤師はその年収差が小さい部類の職種です。そして、薬剤師の平均年収は従業員数が少ない企業ほど高いということが特徴です。これは放射線技師やX線技師、歯科技工士にも同じような傾向が見られます。
一方、看護師・准看護師・臨床検査技師・歯科衛生士・栄養士はその反対に、大きな規模の企業の方がより高い年収を得ています。その幅は30万円~60万円ほど。理学療法士や作業療法士の平均年収は企業規模による差はあまり見られません。なぜ薬剤師の年収が小さな規模の企業の方が高い傾向にあるのでしょうか。
要因として考えられるのは、薬局をはじめとする従業員数の少ない小さな現場では、実務経験のある中途薬剤師が求められるケースが多く、それゆえ平均年収が高くなる傾向にあることです。一方、ドラッグストアをはじめとするチェーン展開ができる大企業においては新卒薬剤師の採用が積極的に行われ、まだ年収が低い年齢層の割合が高くなるため平均年収が低くなると考えられます。
薬剤師の年収が高い理由の一つが、薬剤師業務は薬剤師資格保有者にしかできない専門業務である、ということです。さらに2012年の薬学教育制度の変更では、教育期間が4年から6年に長期化し、医療機関での実務実習が拡大。薬剤師は「薬物治療の専門家」として業務範囲を広げています。目下、かかりつけ薬剤師をはじめ、減薬・残薬への取り組みなど、薬剤師に求められる役割は年々広がっており、そうした業務の専門性の高さが年収の高さの一因になっているのです。
(単位:千円)
全体 | 1,000人以上 | 100~999人 | 10~99人 | |
---|---|---|---|---|
大学院修士課程修了 | 238.9 | 242 | 232.1 | 229.3 |
大卒 | 210.2 | 213.1 | 208.6 | 203.9 |
薬剤師 | 391.0 | 391.73 | 403.6 | 357 |
さらに、薬剤師が活躍できる現場は他のコメディカルに比べて幅広くあります。病院などの医療機関に限らず、ドラッグストアや製薬会社といった一般企業でも薬剤師の存在が必要とされています。
薬剤師の需給バランスは地域によって大きな差があります。特に都市部よりも地方の方は薬剤師の採用が難しいため、賃金面で好条件が提示されている場合が多いです。地域による平均年収の違いについての記事<都道府県別 薬剤師年収ランキング(2020年版)>もご覧ください。
ここまで見てきたように、薬剤師は医療職の中でも高年収の部類です。この薬剤師の年収は企業規模や勤務先によっても変化しています。中でも病院よりも規模が小さい診療所勤務の場合、薬剤師全体の平均年収を大きく上回っています。そして医療の現場で活躍する他職種の平均年収では医師が断トツでしたが、その他コメディカルの中では薬剤師がコメディカル全体の平均年収よりも100万円ほど上回り、最も高年収であることがわかりました。
薬剤師のこうした高年収の理由には様々な要因が関係しています。もっと他の角度から薬剤師の年収について知りたい方は<徹底調査!薬剤師の平均年収比較>の記事もぜひ参考になり、ご自身の今後の薬剤師のキャリア設計にお役立てください。