2019年に厚生労働省から発出されたいわゆる「0402通知」により、薬剤師が行ってきた業務の一部を一定の条件下で非薬剤師が実施できるようになりました。しかし、2021年3月時点で当通知に関する公的な調査データは出ておらず、各社の取り組み状況は不透明な状況です。
はたして0402通知によって、実際に非薬剤師の業務は増えたのでしょうか。また、非薬剤師の業務拡大は、非薬剤師や薬剤師の雇用や働き方にどのような影響を与えたのでしょうか。 今回、薬キャリでは調剤薬局136社に0402通知に関するアンケートを実施しました。ここでは、0402通知の概要およびアンケート結果についてご紹介します。
アンケート対象:調剤薬局企業136社(OTC併設を含む)、実施期間2021年2月
目次
「0402通知」とは2019年4月2日に厚生労働省から発出された「調剤業務のあり方について」という通知を指します。
当通知では、「調剤機器や情報技術の活用等も含めた業務効率化のために有効な取組の検討を進めるべき」という主旨のもと、薬剤師の行う対人業務を充実させる観点から、一定の要件を満たすことで非薬剤師によるピッキングなど一部業務の実施が認められました。
非薬剤師の実施可能な業務は以下の通り。
参考:調剤業務のあり方について
ここからは、調剤薬局136社に実施したアンケート結果を紹介します。0402通知を契機に非薬剤師に拡大した業務としては、「ピッキング」「納品された薬を調剤室内の棚に納める」「患者宅等への薬の郵送」の回答が多く集まりました。ピッキングについては79%もの企業で非薬剤師への業務移管が進んでおり、多くの企業で非薬剤師への業務拡大が進んだと言えそうです。
また、非薬剤師による「患者宅等への薬の郵送」が43%の企業で実施されていることも注目です。これまで薬の郵送に取り組む薬局は限定的でしたが、オンライン服薬指導が解禁されたことで、急速にその数を増やしています。そのような状況下で、非薬剤師が郵送作業を担えることは薬剤師の負担軽減に貢献しています。
【0402通知を契機に、非薬剤師に拡大した業務】
非薬剤師の業務拡大は無条件に認められているわけではなく、一定の要件を満たす必要があります。要点をまとめると、以下のような体制の整備が必要です。
アンケートで非薬剤師の業務拡大について苦労した点をうかがったところ、「薬剤師の指示・確認体制のフロー・体制整備」と回答する企業が目立ちました。特に複数の店舗を有する企業では、店舗ごとに理解度や熱意に差が出てしまい、足並みがそろわないケースもあるようです。
そのほか、「非薬剤師のスキル不足」「薬剤師の当該業務のタスクシフトに関する忌避感」などに苦労しているという声も寄せられました。
【非薬剤師への業務拡大で苦労した点】
40代以降の転職難易度や高い要因としては、「少ない求人に薬剤師が殺到しており、企業が若い人材を選べる」「ベテランは人件費が高いので採用控えが起こっている」などの意見がありました。
先述のように、0402通知は業務の効率化で生まれた時間を「薬剤師の行う対人業務を充実させる」ために発出されました。では、実際に現場では非薬剤師へのタスクシフトについて、どのような手応えを感じているのでしょうか。
結果は、「充実した」「どちらかと言えば充実した」の合計が51%、「変わらない」が48%とほぼ同程度でした。企業規模別に見ると、10店舗未満の企業では「変わらない」の割合が多い一方、50店舗以上の企業になると「充実した」系の回答割合が多くなりました。
「充実した」「どちらかと言えば充実した」と回答した調剤薬局からは、「患者さんとのコミュニケーションが増えた」「服薬指導に集中できるようになった」という声があり、一部では対人業務の充実に成果が出始めているようです。
【非薬剤師の業務拡大により、薬剤師の対人業務は充実したか】
次に、0402通知が非薬剤師および薬剤師の配置人数や稼働時間に与えた影響を見てみましょう。
非薬剤師の人数や稼働時間については「増えた」という企業が32%、「変わらない」が68%、「減った」という企業はゼロでした。一方、薬剤師の人数や稼働時間については「増えた」が4%、「変わらない」が83%、「減った」が13%でした。
ほとんどの調剤薬局では、非薬剤師の業務拡大に対して薬剤師の人数・稼働時間は変わっていないことから、タスクシフトによって余裕ができた時間を、薬剤師配置数の減少ではなく対人業務への注力に当てていると推測できそうです。とはいえ、全体で13%、100店舗以上の企業にいたっては22%で薬剤師の配置数や稼働時間が減っています。今後、人件費の安い非薬剤師の雇用が増え、薬剤師の雇用が抑えられる可能性を否定できないのも事実です。
【0402通知に伴う、「非薬剤師」の人数や稼働時間の変化】
【0402通知に伴う、「薬剤師」の人数や稼働時間の変化】
最後に、今後の非薬剤師の採用について見てみましょう。結果は、「現状維持」が61%、「強化していく」が37%、「控えていく」が2%でした。企業規模別に見ると、ほとんどの事業規模で「現状維持」の回答が最も多くなるなか、50~99店舗以上の企業では67%と過半数が「採用強化」の意向を示しました。
現状維持の理由としては、「現状で過不足なく運営できている」という回答のほか、「コロナ禍の処方箋受付枚数の減少による業績悪化」で採用を強化できないという内容が目立ちました。
一方、採用強化の理由としては、「対人業務への注力」に関する内容が多かったものの、一部薬局からは「人件費の高い薬剤師の人員削減し、非薬剤師に転換する」という声も寄せられました。
【今後の非薬剤師の採用意向】
0402通知に伴い、多くの調剤薬局では非薬剤師の業務が拡大し、雇用も増えていることがわかりました。これは、薬剤師が対人業務に集中できる環境が整ってきたことを意味するとともに、対物業務しか担えない薬剤師はより人件費の安い非薬剤師に業務を移管されてしまう可能性も示しています。
0402通知の主旨にあったように、これからの薬剤師は対人業務に精通することが必要です。その指標としてわかりやすいのは、「かかりつけ薬剤師」を目指すこと。かかりつけ薬剤師になるためには、3年以上の調剤薬局勤務経験、研修認定薬剤師の取得などいくつかの要件があります。まだ要件を満たしていない人は、早めに経験を積める職場に移ることをおすすめします。キャリアに関する悩みは無料で転職エージェントに相談できます。ぜひ有効活用してください。