薬剤師が活躍する職場の一つとして、私たちの生活に身近なドラッグストアがあります。ドラッグストアには、調剤併設型とOTC医薬品の販売だけのものがあり、それぞれにメリット・デメリットがあります。「ドラッグストアで薬剤師はどんな仕事をするの?」、「給与や福利厚生は?」といった疑問を持つ薬剤師の方に向けて、ドラッグストア薬剤師の仕事内容、メリット・デメリット、大手ドラッグストアチェーンの概況を解説します。
調剤併設型ドラッグストアでは、調剤薬局と同様に医師からの処方箋に従って薬を調剤します。
ドラッグストアが併設されているという特性上、院内薬局や病院併設型の調剤薬局よりも、処方箋の内容やお客様の年代が幅広いものとなる傾向があります。
また、病院へ行く時間のないお客様も多く訪れるため、薬剤師が症状を聞き取り、OTC医薬品のアドバイスをすることも重要な業務の一つになります。
調剤以外のドラッグストアの業務として、たとえば品出しや接客、レジ打ち、POPの制作・設置、清掃などがありますが、調剤業務を担当するスタッフと店頭業務を担当するスタッフが完全に分かれているドラッグストアもあります。
調剤業務がないドラッグストアでは、接客などの店頭作業とOTC医薬品のアドバイスが主な業務となります。薬剤師としてのスキルを活かしつつ、店舗の一員として経営を支えていくイメージです。
ドラッグストアで扱う商品は、医薬品以外にも食品やサプリメントなど様々なものがあり、訪れるお客様もそれぞれの目的を持っています。そのため、商品に関する知識やコミュニケーション能力も大切です。
ドラッグストアで働く薬剤師は、病院や調剤薬局で働く薬剤師と比較して年収が高いです。平均年収を比較してみましょう。
『薬キャリ 職場ナビ』が①5大都市を有する都道府県(北海道・東京・大阪・愛知・福岡)と、②その他エリアに分けて調査を行ったところ、ドラッグストアで働く薬剤師の平均年収は都市部エリアで542.2万円、その他エリアで556.3万円でした。都市部エリアよりその他エリアの方が高年収なのは、病院や薬局の少ない地域では薬剤師の需要が高くなるからです。
都市部エリア | その他エリア | |
---|---|---|
ドラッグストア | 542.2万円 | 556.3万円 |
調剤薬局 | 507.1万円 | 522.1万円 |
病院 | 467.2万円 | 490.8万円 |
企業(製薬会社・医薬品卸・治験関連) | 504.8万円 | 532万円 |
調剤薬局、病院、企業に勤める薬剤師の年収と比較したとき、ドラッグストアで働く薬剤師はより年収が高いことがわかります。年収が高い理由として、ドラッグストアの薬剤師は調剤業務以外にも様々な業務を担うこと、夜間や土日にも営業する店舗が多く勤務時間が長くなりやすいことなどが挙げられます。
ここで、ドラッグストアで薬剤師として働くメリットをまとめてみましょう。
前述したとおり、ドラッグストアに勤務する薬剤師の年収はほかの職場よりも高くなっています。
給与にはシフト制や深夜勤務が影響していることもあり、ハードな環境と感じる方もいるかもしれません。しかし担う業務の量や幅広さがそのまま給与に反映されるのは大きなメリットと言えます。
また、OTC医薬品の中には薬剤師がいなければ販売できないものがあるため、ドラッグストアにとって薬剤師を確保できるかどうかは死活問題。そのため、アルバイトやパートであっても時給3,000円を超えることも珍しくありません。
薬剤師の年収については以下の記事でさらに詳しく紹介しています。
業種別にみる薬剤師の平均年収|特集|薬キャリ 職場ナビ by m3.com
薬剤師がお客様から症状をヒアリングし、適切な薬をおすすめするのはドラッグストアならでは。健康に関するちょっとした悩みを気軽に相談してもらえ、頼りにされていることを実感できるのは嬉しいことでしょう。病院や調剤薬局とは違った方面から地域の健康を支えている実感を持てます。
ドラッグストアの店頭業務は多岐に渡ります。接客やレジ打ちなど、一般的な接客業に必要な業務をこなす力や、品出しや在庫管理など商品販売のために必要な知識などを得られるため、薬剤師として働きながら店舗運営のノウハウを身に着けることができます。
大手チェーンのドラッグストアでは、安定した店舗運営のために1店舗あたりのスタッフ数を多く配置するのが一般的です。同じ店舗にスタッフが多ければそのぶん休みも取りやすくなるでしょう。また、多くのドラッグストアはシフト制のため、平日休みが多くなります。混雑を避けたい人にとってはメリットと感じるかもしれません。
ドラッグストアには薬剤師以外のスタッフも多く勤務していますので、閉鎖的な環境になることが少ないと言われています。実際に働いている人が、メリットとして雰囲気の良さを挙げることも。もちろん職場によって状況は大きく異なるので一概にはくくれませんが、立場や役割の違う人が混ざって働く環境は風通しが良く、働きやすい環境となりやすいのでしょう。
多くのメリットがある一方で、もちろんデメリットもあります。ドラッグストアで働き始める前に理解しておきたいデメリットをまとめました。
ドラッグストアでは、薬剤師もシフト勤務となることがほとんどです。365日営業する店舗も多く、土日や祝日、お盆や年末年始、GWなどは休みにくい場合もあります。メリットで「休みがとりやすい」と述べましたが、休日日数が多いことと好きなタイミングで休みが取れることは、イコールではありません。休みを希望する人が多い期間に思い通りに休むことは難しいこともあるので注意が必要です。
調剤併設型ドラッグストアの場合、調剤のお客様が多ければ店頭業務まで手が回らないことも。反対に、調剤なしの場合には様々な店頭業務がありますので、混雑する店舗では忙しさを負担に感じる人もいるでしょう。
最後に、ドラッグストアで薬剤師として働くなら理解しておきたい業界動向をまとめてご紹介します。
ドラッグストア業界では大手企業によるM&Aが盛んになり、業界全体で寡占化が進んでいます。
ただし他業界と比べると寡占率が高いとは言えず、現在のシェアが今後入れ替わっていく可能性はあります。
ドラックストア業界上位各社の売上高と店舗数(2018年)
企業 | 売上高 | 店舗数 | |
---|---|---|---|
1位 | ウエルシアホールディングス | 6,952億6,800万円 | 1,693 |
2位 | ツルハホールディングス | 6,732億3,800万円 | 1,931 |
3位 | コスモス薬品 | 5,579億9,900万円 | 912 |
4位 | マツモトキヨシホールディングス | 5,384億800万円 | 1,604 |
5位 | スギホールディングス | 4,570億4,700万円 | 1,105 |
特に動きが大きいのは2位のツルハHD。2017年に杏林堂グループを買収、2018年は176店舗を新店舗として出店するなど業界シェア獲得へ向けて精力的な経営が見てとれます。
4位のマツモトキヨシHDはかつて業界1位を22年間守り抜いてきましたが、2016年以降ウエルシアHD、ツルハHD、コスモス薬品に次々と抜かれて低迷しています。都内の駅チカ店や好立地店舗で利益を上げてきたマツモトキヨシHDですが、2019年3月にウエルシアHDがウエルシア薬局と都内を中心に展開する一本堂を吸収合併したことで競合が激しくなることが予想されます。ホテル内出店や免税店舗を増やすなどインバウンド需要に応える戦略で再建が期待されます。
5位のスギHDは地域密着型の経営が特徴的です。調剤業務支援機器の導入による業務効率化に取り組み、その分イベント開催や健康相談に注力し、ファンを増やしています。高齢者が自分のペースで働ける「シルバーアソシエイト制度」を導入するなど、人材活用にも積極的に取り組んでいます。
ドラッグストア各社の動向については以下の記事より詳しく紹介しています。
ドラッグストア売上高ランキング(2018年版) | 特集 | 薬キャリ 職場ナビ by m3.comドラッグストアは、薬剤師が活躍する場所としてまっさきに思い浮かぶ病院や調剤薬局とは大きく異なる環境です。調剤以外の業務が多いとも言われますが、それは必ずしもデメリットではなく、店舗の運営方法や接客などを身に着けることで、キャリアの幅が広がるとも考えられます。
ドラッグストアで働くメリットがデメリットを上回る可能性を感じたら、ぜひ実際に勤務経験のある薬剤師の口コミを見てみてください。同じドラッグストアとはいえ、企業によって労働環境には差があります。
薬キャリ職場ナビの法人ページでは採用情報や基本的な企業情報に加えてリアルな口コミ、薬剤師が評価するポイントを見ることができます。
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