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日本調剤株式会社 小柳薬剤本部長兼取締役

「医薬分業」の旗手が目指す「真の医薬分業」

「医薬分業」が成熟期を迎えつつある今、薬局としての専門性、薬剤師の独立性をさらに追求する日本調剤の目指す薬局とは──

医薬分業が飽和する先にある「差別化」の時代とは

――本日は宜しくお願い致します。早速ですが、御社の市場予測をお聞かせ下さい。

小柳 利幸(こやなぎ としゆき)
取締役 薬剤本部長
平成2年入社 東北支店薬剤部部長
薬剤本部購買部部長などを経て現職

薬局に求められることがより専門的になっていくと考えています。医薬分業率はそろそろ成熟期に入ってきていまして、さらには医薬分業そのものを問い直すような声もあります。そのような状況下でどのように存在価値を出していくかということから「差別化」というのが重要なキーワードになってきます。より一層、医療としての専門性を持った薬局づくりをしていかなければならないのではないかと考えています。現在、国の医療保険制度は財政危機の状態であり、国からはローコストで効率的な医療サービスの提供を求められています。薬局としてもそれに応えていかなければならないのです。したがいまして、高機能・多機能・ローコストな薬局運営をし、きちんと患者様にメリットを提供できるような薬局でなければならない時代になってくる、そのように予測しています。

――薬局の医療としての専門性とは、具体的にはどのようなことでしょうか。

薬をお渡しするためだけに存在するのではなく、患者様の健康そのものをサポートするということに、薬局の専門性が活かせるのではないかと考えています。たとえば、医師に診察を受ける前にも気軽に健康相談ができるような、情報収集のコミュニティとして薬局を利用してもらえるようになれば、患者様にとってもメリットになると思います。医薬分業そのものは、病院の外来部門の下請けという側面で見られていましたが、病院では提供できないような専門性をメリットとして具現化して患者様に提供できなければ、薬局として生き残ることはできません。「調剤のみ」という形式にこだわりますと、それでは病院とあまり変わりません。

――単純に調剤だけをしていくだけの薬局では、今後苦しくなってくるということですか。

医薬品の調剤というのは、私たちの仕事の中核をなす部分ではありますが、そこにとどまるのではなく、さらなる広がりを持っていかなければ薬局として生き残るのは難しくなってきます。たとえば、薬局は医療提供施設ですが、医療機関でいう「インフォームド・コンセント」のような期待を、薬局としても担っていくのではないかと考えています。近頃の患者様は、ご自身が処方されるお薬について、インターネットで調べて質問をされることが多くなりました。患者様にご安心してお薬を使っていただけるよう、情報提供の場として薬局は機能しなければならないのだと考えます。

医薬分業の旗手・日本調剤の目指す「真の医薬分業」とは

――「医薬分業」を経営理念にしていらっしゃる御社ですが、公式サイトや決算資料を拝見しますと「真の医薬分業」という言葉をお見かけします。真の医薬分業とは何でしょうか。医薬分業には、さらなる高みがあるということなのでしょうか。

弊社は「医薬分業」を理念として創業以来推進してまいりました。ビジョンとして持っていたのは「医薬分業の実現」です。薬剤師が自律して医療の機能を提供するということです。これは今日でも全く変わりがありません。では「真の医薬分業」とは何かということですが、「薬剤師が医療人としての独立性をもって仕事をすること」です。数字上・制度上の医薬分業ではなく、薬局側の「マインド」が独立するということです。

――「マインド」が独立する、とはどういうことでしょうか。

100%患者様のメリットのために医療を提供するということです。

医療機関が診察を受けた患者様に処方箋を手渡す際、特定の薬局を案内することは皆様にもご経験があるかもしれません。医薬分業が進んできたとは言いましても、医療機関と薬局は一体となって機能している側面がありました。薬局側からすれば、医師・患者と良好な関係を築くことで、薬局がより効率的に機能するというメリットがあります。ですが、文字通り医療機関と薬局の癒着関係でもあり、薬局の薬剤師が独立して専門性をもって業務にあたりにくくなってしまうことも生じうるのです。制度上は医薬分業が確立していたとしても、医師との関係に薬局が依存してしまうのは、薬剤師が専門性を以て医療に貢献するという「医薬分業」の精神からはかけ離れたものだと考えています。

――医療機関との依存的関係から独立して、薬局は薬局としての価値を患者様に提供する、それが「真の医薬分業」ということでしょうか。

そうです。真の医薬分業を推し進めていくということは、働く側としては今よりずっと責任が重くなると思います。どこからも依存せず、自分たちで価値を創らなければなりませんから。しかしながら、国が薬剤師に本来求めているのは、このように薬剤師が独立して医療を提供し、患者様への職責を全うすることです。

――「真の医薬分業」を推進するということは、医療機関から薬局へ患者様を流してもらうのではなく、薬局自らが患者様に選んで来ていただくような取り組み、すなわち差別化が必要ということになりますね。では「真の医薬分業」という御社のビジョン実現するための取り組みや戦略について教えて下さい。

一番はやはり教育です。教育なきところに施策はありません。教育にはもちろん薬学知識の座学を含みますが、主に企業風土の教育という意味です。企業風土の教育とはつまり「患者様第一」という意識と「薬剤師としてどうあるべきか」という意識を教えるということです。中途入社の方に関しても、企業風土の教育を徹底して行っています。薬局は人があってはじめて成り立つものですから、薬剤師の教育を重要視しているのです。そこで働く薬剤師がその店舗のすべてに影響します。優秀な薬剤師がいると、その店舗は「良い店」になります。

――「良い店」とは何でしょうか。

薬剤師が自ら考え、主体的に仕事をしているところではないでしょうか。そのような薬剤師がいると、店舗の質の向上にもつながり、結果として患者様へのサービスが良くなります。そうして患者様からの評価が高まり、店舗の売り上げにつながるという好循環が生まれます。店舗をご利用いただいた患者様に対して匿名のアンケートを実施しても、やはりそのような薬剤師がいる店舗への評価は高くなります。

――医薬分業の推進のために「薬剤師の教育」というソフト面に力を入れていらっしゃることがわかりましたが、患者様に御社の薬局に足を運んでもらうためのハード面の戦略はありますか。

店舗の立地としては、基本的には病院から近い門前型でしたが、最近では面対応型店舗に力を入れています。たとえるなら、イトーヨーカドー様とセブンイレブン様の関係に似ています。イトーヨーカドー様は駅前に大きな店舗を構え、駅からいらっしゃったお客様にまとめて買い物をしていただこうという狙いがあります。しかしながら、これからますます超高齢社会が進み、患者様の生活範囲は非常に狭まってきますので、セブンイレブン様のように、これからはより患者様の生活圏のお近くまで出店を進めていこうと考えています。首都圏を中心として、現在急速に面対応店舗を出店しています。昨年度は面対応店舗を36店新規開局し、累計でおよそ100店舗ございます。面対応薬局の出店は一昨年から始めましたが、これは他社様の3~4年分の出店ペースと同じくらいですから、かなりのハイペースで出店したことになります。

また、冒頭でお話した、薬局を患者様の情報収集のコミュニティとして利用していただく試みとして、生命保険のアフラックサービスショップを併設しはじめました。薬局内に保険会社となると……一見すると直接関連はなさそうな組み合わせですが、患者様からはよい反響をいただいております。ご利用されるのは患者様ご本人というよりもむしろ、患者様のご家族様の場合が多いです。ご家族様が、患者様と同じような病気に将来的にかかってしまったらと考えたときに、このアフラックサービスショップがあると、将来のことや保険のことについて、気軽に相談できるとご好評です。我々としましても、薬局に保険という組み合わせに当初、戸惑いもありました。こうしたアイデアは、薬局の将来のあり方を見据えた長期的な取り組みの一つです。

――他社の中には、調剤とドラッグストアの垣根をなくしていくような動きや、コンビニエンスストアとの提携を模索する動きがあります、御社にはそういった方向性はありますか。

弊社はドラッグストアを全く意識していません。調剤併設型ドラッグストアが弊社の脅威になるのでは? と聞かれることもありますが、両者に対して患者様が求めているものが違うと考えています。我々が考えているのは、より多機能、高機能な調剤薬局です。また、コンビニエンスストアとの提携も考えてはいません。あくまで独立して運営していこうと考えています。

ヨーロッパのファーマシーは、売り場の7割でOTCを取り扱っていると聞きます。しかしアメリカ型ドラッグストアのように日用品や雑貨が置いてあるわけではありません。お客様の医療・健康の関連商品を取り扱い、あくまでも医療を提供する立場をとっています。我々はヨーロッパ型ファーマシーのように、あくまで医療を提供する立場として運営を続けたいと考えていますので、日本のドラッグストアの方向性とは異なると思います。

医療のプロフェッショナルとしての誇りと信念。それが薬剤師のあるべき姿

――日本調剤様の一員として迎え入れるにふさわしい薬剤師像についてお教え下さい。

社会人としての側面と、医療人としての側面があります。

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社会人として望ましいのは、挑戦を怖がらない人、好奇心がある人、世の中の変化に関心がある人です。医療制度は時々刻々と変化していくものです。新たな課題に出会ったときに、可能性を追求する人と、不可能だとすぐに考えてしまう人がいます。変化を恐れず、挑戦心のある前者の姿勢が弊社にとっては望ましいと考えます。採用では、薬剤師の多少の能力差よりも、そのようなメンタリティーを、弊社は評価したいと考えています。

医療人としての側面では、患者様の側に立って物事を考えるという態度です。患者様を第一に考えて行動するというのは、一見当然のようですが、それができる人は多くはありません。自分の考えだけで行動をしてしまうと、きちんと患者様のお気持ちに寄り添って仕事をすることができなくなります。自分は薬剤師免許を持っているからこの仕事をやる、というのではなく、社会人・医療人としての資質と、薬剤師として誇りと信念を持ち、プロフェッショナルとして仕事ができる人が望ましいですね。本来、大学を卒業する時には皆さんそういった意識をお持ちだと思います。ましてや薬学部が6年制となった今、自分がどういう薬剤師になるのかというビジョンを描いていない人はいないはずです。たしかに現在、薬剤師が空前の売り手市場のなかで、薬剤師の職業人としての意識が熟成されづらい雰囲気はあるのかもしれません。しかし、その前には薬剤師が就職難だった時代もありました。今の売り手市場は一過性のものだと思います。そうなったとき、自分の仕事に信念を持つ薬剤師が生涯を通じて、薬剤師としての技能を社会に対して発揮する存在となるのではないでしょうか。