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株式会社ミック 中川代表取締役社長

地域医療の連携を深める「真の地域密着」

地域で最も頼りにされる薬局になるため、新たな取り組みを推し進める ミックの「真の地域密着」のビジョンとは──

医療費の削減、大手の寡占化 ─── 変化する業界のなか、ミックは「真の地域密着」を掲げ、薬局の新たな価値を提供する

――はじめに、御社の市場予測をお教え下さい。

中川 春原(なかがわ はるもと)
株式会社ミック 代表取締役社長

今日に至るまで、保険調剤の市場規模は右肩上がりで、企業は安定的に成長してきたように思われますが、今後はこのような状態は続かないと考えています。その背景として、国による医療費の削減方針や、異業種からの競合企業の新規参入があります。抑制される医療費や激化する競争により、これまでのような調剤報酬点数が取れなくなるため、各々の調剤薬局が生き残っていくための方策を考えなければならなくなるでしょう。とりわけ、資本力のない中小あるいは個人薬局には厳しい経営環境となります。また、地域には後継者がおらず廃業してしまう個人薬局も出てくることになるでしょう。このような状況下で、経営が行き詰ったり、後継者不足に陥った薬局の経営支援の一環で、大手調剤薬局チェーンが中小規模の薬局をM&Aすることにより、業界の寡占化が進むと我々は見込んでいます。しかしながら、現時点では大手調剤薬局チェーン数社のシェアがわずか10パーセント程度なので、今なら我々にも展開する地域でのシェアを拡大する余地は残されていると考えています。我々がマーケットでのシェアを伸ばしていくためには、大手の薬局と同様に、M&Aによって店舗数を増大していくことはもちろんですが、何より地域に根差した医療の担い手としての薬局の姿をさらに追求していかなければなりません。厳しい環境下においても、ミックがビジョンに基づき地域に根差した薬局として信頼され、着実にシェアを伸ばしていく取り組みを実行していくことが急務となっています。

――「地域に根差した薬局」を追求されるというお話がありましたが、御社の資料やサイトを拝見しますと「真の地域密着」というビジョンを掲げていらっしゃるようにお見受けします。「真の地域密着」とはどのようなものなのでしょうか。

※クリックして拡大表示

我々は創業以来「真の地域密着」としてあるべき地域医療の姿を追求してきました。そこで我々が出した答えが「地域密着型チーム医療体制」です。地域の病院・診療所・介護事業者と連携し、地域に必要な医療サービスを患者様に提供する体制を構築しています。こちらにお示しした関係図のようなイメージです。地域密着型チーム医療体制我々が運営する薬局の各店舗が、地域の各医療機関・介護施設とマンツーマンの連携をとっています。例えば、患者様ひとりひとりが、現在どのような健康のご不安を抱えているのか、どのような薬の情報を得たいとお望みなのかといったニーズをきめ細かく把握してデータを集め、集めたデータを各医療機関や介護施設に対して提供します。また、逆に各医療機関や介護施設から薬局に対する要望をフィードバックいただくことで、薬局において患者様に対するサービスに反映させたりすることが出来ます。このように、緊密な情報交換により、各医療機関・介護施設・薬局それぞれが提供する医療の質を向上させることができるのです。

かつて薬局は街の最初の健康相談窓口でした。街の人が体調に異変を感じた時、まず薬局に行って薬剤師に体調や健康のことを相談した後で、病院や診療所にいくかどうかを判断していたのです。しかしながら、お客様からも周辺の医療機関からも、今の調剤薬局は処方箋をただ持ってきて、薬を受け取るだけの場所と認識されている向きがあります。図で示したような、各医療機関・介護施設との緊密な情報交換やフィードバックを可能とする関係を築くためには、薬局や薬剤師がかつてのように地域医療の担い手として信頼されることが不可欠です。そのため、我々は薬局・薬剤師の職域を拡大・確立し「地域密着型チーム医療体制」のなかで、地域医療の担い手として信頼されるための取り組みを現在も推し進めています。さらに、もう一つ大切なこととして、患者様のライフステージに対応した薬局サービスに力を入れています。

「真の地域密着」実現のための「地域密着型チーム医療」「ライフステージに対応した調剤・OTC・在宅」の取り組みとは

――「地域密着型チーム医療体制」「ライフステージに対応した調剤・OTC・在宅」について御社の具体的な取り組みについてお教え下さい。

※クリックして拡大表示

今後の調剤薬局では、“処方箋を調剤して終わり”ではなく、患者様の全てのライフステージに対応した薬局サービスが益々必要となります。その一つが、年々重要度が増す在宅医療での役割です。我々も在宅医療でのサービス拡充を考えています。直近の大きなプロジェクトとして、静岡に「在宅調剤センター」という、在宅事業専門の施設を立ち上げました。我々の設立する在宅調剤センターでは、在宅調剤業務を中心として専従する薬剤師が往診に同行し、医師や介護事業者・ケアマネージャーとの連携を強め、地域の患者様の在宅医療の質の向上に貢献します。これまでの在宅医療の現場では、医師が薬を出し、ケアマネージャーや介護士がそれを患者様に服用させる――それで完結していたのです。「薬」を扱う現場でありながら、薬剤師がそこに介入することはほとんどなく、必要性や地位がそれほど認められていなかったという事実があります。我々は、地域の在宅医療における「薬」の領域に薬剤師が積極的に介入して、その役割や価値を発揮する機会を作りたいと考えています。例えば、患者様に服用する薬についての情報を提供することはもちろん、介護関係者に対してこの患者様にはなぜこの薬が必要なのか、どのように飲ませればよいのかを伝えたり、場合によっては医師に対してこの患者様はなぜこの薬を飲めないか、この薬を処方してはいけないかといった意見を申し立てたりするのは、薬のスペシャリストである薬剤師の仕事です。

また在宅調剤センターでは無菌調剤室も用意していますので、例えば末期がんの患者様への往診のための調剤に利用される当社以外の薬剤師がいれば、ご利用いただくよう地域の薬剤師会にも伝えてあります。薬局・薬剤師が医療人としての価値を発揮して地域医療に貢献するためには、我々だけではなく他の薬局・薬剤師とも連携する体制を作っていかなければいけません。各医療機関や介護事業者だけでなく同業他社とも連携して地域の患者様の医療を向上させ、関係するすべての方から「ミックがあって良かったね」と思っていただけるくらいのイメージがつけば良いなと考えています。

――たしかに今後高齢者が増加し、在宅医療へのニーズが高まることは予想されます。しかしながら、御社ほど積極的に在宅調剤専門の施設を立ち上げるという例は少ないと思いますが、何か意図があるのでしょうか。

地域の患者様に貢献するにはそれが最善だと考えたからです。薬剤師が通常の調剤業務の合間に往診に同行するよりも、ある程度の規模の専門施設を立ち上げた方が、患者様により良いサービスをご提供できます。また「ミックは在宅医療にも本当に力を入れているんだな」という会社のイメージを地域の皆様にも持っていただけるのではないかと考えています。

――ライフステージへの対応として、在宅医療以外にも今後薬局に求められるものとして、セルフメディケーションやプライマリケアなどが言われていますが、御社の推し進めていることは何かありますか。

先ほど申しました、患者様のライフステージに対応した薬局サービスの柱の一つ、セルフメディケーション、プライマリケアに関する取り組みとして、今年の3月から40店舗でOTCの取り扱いをはじめました。人員やスペースの兼ね合いもありますが、引き続き取り扱い店舗は増やしていきたいと考えています。この取り組みは、店舗におけるOTCの購入を促すというよりむしろ、患者様が普段ドラッグストアで買っていらっしゃるような医薬品や健康についての相談のきっかけになることを期待しています。

患者様からすれば、処方箋を持っていく以外は何もない薬局での相談はなかなかできないものですが、処方箋を持っていく薬局に普段使っている見慣れたOTCがあれば「この薬局でそれについての相談をしても良いのかな」と考えていただけるようになります。OTCをきっかけとした、患者様と薬剤師とのコミュニケーションの環境を作ることによって、薬局の相談窓口としての機能を強化していきます。これにより、日常的な健康相談の役割はもちろんですが、将来的な機能としては例えば、待ち時間が長いクリニックの患者様はこちらでバイタルチェックをある程度引き受けて、データを向こうの待合に持って行っていただければ、医師の業務負荷軽減に貢献できるかもしれません。我々がOTCの導入を進めていく先には、そのような試みの可能性も模索しているのです。

――在宅やOTCはこれまで御社の薬剤師の業務にはなかった領域ですが、これらに関する現場の薬剤師の対応状況はいかがでしょうか。

「地域密着型チーム医療」「ライフステージに対応した調剤・OTC・在宅」の構築のために、現在我々が取り組みを進めている在宅にしましても、薬局の相談機能向上のために導入を開始したOTCにしましても、今いる薬剤師の育成が急務です。在宅医療であれば、在宅医療の基本的な業務の流れを知ることに加え、往診する医師やケアマネージャーに対してしっかりと自らの意見を伝えることができる必要があります。またOTCであれば、薬局を訪れる患者様の薬や健康の相談にきちんとした接遇でお応えする必要があります。それらを実現するためには、薬や健康に関する知識だけでなく、高いコミュニケーション能力も備わった、専門職として自信と信頼を持った薬剤師が必要になってきます。会社が在宅専門の施設を作ったり、OTCを導入したりしていくことは、薬剤師自身の成長はもちろんですが、医療人としての職域を拡大し、その役割・価値を確立するきっかけとなると考えています。現場での成功事例を全社的に共有し、現在は調剤業務だけを行っている薬剤師にも積極的に新しい職域への挑戦を促しています。

医師やケアマネージャー、患者様などとのコミュニケーションの中で、薬局や薬剤師への信頼は向上していくものだと考えています。処方箋どおりに調剤をしてお薬をお渡しするだけではなく、在宅・OTCをきっかけとして薬剤師の医療人としての価値を発揮し、地域の患者様や連携する医療機関からの信頼を獲得することで「真の地域密着」のビジョンを実現して参ります。

ミックが地域でもっとも頼られる薬局になるために求める薬剤師像

――「真の地域密着」を実現するため、ミックの一員として迎え入れたい薬剤師像をお教え下さい。

新しいことに対して抵抗を持たず、チャレンジ精神が旺盛な人であることが望ましいと考えています。もちろん会社のビジョンや方向性については、中途採用の方であっても入社時のオーダーメイド研修を用意し、しっかりと理解していただくようにしています。OTCにしても在宅にしても調剤業務とは別の分野ですので、なかにはそういった新しいことに取り組んでいくことにためらいがある薬剤師もいると思います。しかしながら、最初に申し上げましたように、淘汰が進むマーケットのなかでも、我々が医療の担い手として地域の患者様・連携する医療機関からの信頼を得るための新たな職域に挑戦し、ともに成長してくれる薬剤師を歓迎します。地域の患者様・医療機関に一番頼りにされる薬局を、一緒に働く人とともに目指したいと考えています。

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