高年収を実現する方法は「自社で評価を上げる」もしくは「高年収の条件で転職する」に大別されます。 現在の年収に不満がある方の場合、ギャップのある職場にとどまっても年収アップを見込むことは難しいです。「高年収転職のコツ」のチェックして年収アップを実現させましょう。
厚生労働省の「第21回医療経済実態調査」によれば、薬剤師(調剤薬局勤務・正社員)の平均年収は約501万、前回調査から0.3%減となりました。
近年、医療費削減は国を挙げた課題となっており、調剤報酬もマイナス改定が続いています。そうした厳しい環境のなかで、人件費にも徐々に影響が出始めているといえそうです。
「m3.com」の意識調査「現在の収入は、妥当?」によると
雇用関係は薬剤師と派遣会社とで結ばれているため、給与は派遣会社から支払われ、福利厚生は派遣会社の制度が適用されます。
51%と約半数が600万円以上の年収を得ていることが分かります。年収800万円以上に限ってみても17%、約6人に1人の割合となっています。
また、「現在の年収は妥当だと思うか」の質問については、「とても少ないと感じる」「やや少ないと感じる」と答えた割合は54%となりました。
これらの結果から、薬剤師は年収501万円という全体の平均は上回っていても、「年収600万円以上」もしくは「年収800万円以上」のステージに上がることを望む人が多いといえそうです。
高年収を実現する方法は「自社で評価を上げる」もしくは「高年収の条件で転職する」に大別されます。
とはいえ、現在の年収に不満がある方の場合、ギャップのある職場にとどまっても年収アップを見込むことは難しいです。それよりも、高待遇を期待できる職場に転職する方が、高年収に繋がる可能性が高いでしょう。
そこで、今回はエムスリーキャリアのベテランコンサルタントに「薬剤師の高年収転職事情」について聞きました。 多くの薬剤師の高年収転職を手掛けたその知見をご紹介していきます。
Q1
今回の調査で年収600万円以上を目指す薬剤師が多いことが分かりました。調剤薬局・ドラッグストア業界で年収600万円の転職を実現するために必要なスキルや条件はどういうものですか?
A1
年収600万円レベルの転職として一般的なケースは、調剤経験がある薬剤師の「地方の勤務薬剤師」もしくは「都市部の管理薬剤師(候補)」への転職です。ここで言う地方とは、「過疎地ほどではないが、人口が少なく薬剤師の集まりにくい地域」のイメージです。
一方、都市部での勤務を希望する場合、管理薬剤師の求人が中心。管理薬剤師の経験自体は必須ではありませんが、引き受ける姿勢を見せることが必要になってきます。
そのほか、調剤未経験の薬剤師でも実現することは不可能ではありません。
しかし、「過疎地での勤務」「全国転勤をいとわない」「残業・休日出勤する」など、一般的な薬剤師が嫌がることでもやる、という覚悟が求められるでしょう。
Q2
では、さらに高年収である800万円を得られる薬剤師はどんな人たちなのでしょうか?
A2
800万円以上になると、都市部では管理薬剤師よりも上のエリア長やブロック長など「複数店舗のマネジメントを任せられるポジション」の年収といえるでしょう。
このクラスは、基本的に社内人材の昇進によって選出されます。転職で受け入れる場合は、「急激な拡大戦略に伴い、ポストが空いた」「本来の担当者が急に従事できなくなり、代わりをこなせる人材がいない」などの稀なケース。そのため、急募求人として突発的な募集がほとんどで、競争率も極めて高くなります。
それ以外だと、過疎地での1人薬剤師勤務という選択肢もあります。たとえば、山間部の豪雪地帯で、調剤業務はもちろん、掃除も雪かきもシフト管理もやるというようなケースです。
過疎地に定住は難しいという人は、過疎地を含めた全国転勤可能なラウンダーという働き方もあります。800万円以上は少し厳しいかもしれませんが、調剤業務に精通している薬剤師ならば、高年収での転職を期待できます。
いずれにせよ、年収800万円以上の求人は恒常的にあるわけではないので、あらかじめ転職エージェントに登録して、当該求人が出たらすぐにコンサルタントから知らせてもらう、という対応をおすすめします。
Q3
先ほどから「地方なら~、都市部なら~」といったお話が出てきますが、高年収での転職という面では地方の方が有利なのでしょうか。
A3
薬剤師の年収は「薬剤師数が不足している地域」になるほど高くなる傾向があります。人口が多い都市部は人材確保が地方よりも容易なため、相対的に給与は低くなります。よって、地方の方が高年収を実現しやすいといえるでしょう。
しかし、高年収を得るうえで都市部の方が有利なケースもあります。
それは、ダブルワークの就職先が豊富という点です。
ダブルワーク先としてよく選ばれるのはドラッグストア。営業時間が長い店舗が多く、休日や夜間などのスポット勤務が可能であり、調剤薬局と比較して時給が高めの職場が多いため人気を博しています。都市部の場合、店舗数が多いだけでなく薬剤師数も多いため、週1日勤務から可能など、臨機応変に働きやすいこともダブルワークに有利な要因となっています。
Q4
現在、「かかりつけ薬剤師」の役割が大きくなっています。ほかにも専門資格がありますが、こうした認定資格は高年収の転職に有利になるのでしょうか?
A4
たしかに、「かかりつけ薬剤師・薬局」に期待される役割は今後大きくなっています。しかしながら、かかりつけ薬剤師の要件を満たすと手当があるという話はほとんど聞きません。
むしろ、かかりつけ薬剤師の要件である研修認定薬剤師資格は取得者が年々増えているため、将来的に「中途採用は研修認定薬剤師しか取らない」という企業が出てくる恐れはあります。
その他の専門資格については、現行の調剤報酬で算定要件となる項目がほとんどないため、あくまで自己研さんのものという印象です。
Q5
今回の調査のなかで、「責任、ポジションに見合った年収がもらえない」という薬剤師の声が目立ちました。転職先の選び方で注意するポイントはありますか?
A5
参考にしていただきたいのは、転職先企業において同じような責任、ポジションの人の年収です。「働き方次第」など抽象的な提示しかない場合は、後々トラブルのもとになりかねません。
もしくは、はじめからポジションごとの給与レンジが明確になっている大手・準大手企業に転職先を絞るというのも1つの手段です。
Q6
企業規模は、やはり中小規模よりも大手に転職した方がいいのでしょうか?
A6
一概にそうとも言い切れません。スタートは低めの年収でも、昇進していくことで大きく年収が上がるのが大手企業の特徴です。中小企業はその逆で、高めの年収でスタートできる代わりに昇進や年次昇給が大きく見込めません。
自分の年齢や働き方を踏まえて、生涯年収の視点で考えることが大切です。
Q7
高年収での転職について理解できてきました。しかし実際のところ、1社で長く務めるのと転職するのはどちらが高年収になるのでしょうか?
A7
年収で考えた場合、多くの薬剤師にとって1社に長くとどまるメリットはあまりありません。というのも、薬剤師業界は年次昇給が極めて小さいからです。 公的資料はありませんが、経験上、年次昇給1%という企業は決して珍しくありません。もちろん、長く勤めて役職に就き、役職手当で大きく年収が上がるならば残留するメリットはあります。しかし、中小規模の場合、管理薬剤師の次の役職は社長というケースも多々ありますし、大手の場合でもポジションの数は限られています。 であるならば、ほぼ頭打ちの年収で働き続けるよりも、職場を変えた方が年収アップに繋がる可能性が高いといえます。
Q8
ありがとうございました。最後に、薬剤師が高年収転職をするうえで、上手な転職エージェントの利用方法を教えてください。
A8
複数の転職エージェントを利用することをおすすめします。複数社から求人を探してもらうなかで、自分の市場価値を客観的に把握できると思います。
「どんなコンサルトに頼めばいいのか分からない」というご質問もよく寄せられますが、選び方はいたってシンプル。
「その希望年収は相場に合ってない」と単純に否定するのではなく、その年収を獲得するためにどうすればよいのかアドバイスしてくれるコンサルタントを選ぶことをおすすめします。
なぜなら、お伝えした通り薬剤師は年次昇給が少ない職種だからです。転職のタイミングで年収にこだわることはとても重要です。
いちコンサルタントとしては「ほかのエージェントでは、あなたの提案より何万円高い求人を紹介された」ということがあれば、すぐにお伝えいただきたいです。そうしていただくと、コンサルタントは転職先との再交渉などから、より良い条件をご提案できる可能性も広がります。
ぜひ、上手に転職エージェントを活用して、高年収転職を実現させてください!
いかがでしたでしょうか。
高年収を獲得するためには、地域性、求められる役割などさまざまな特徴がありました。
また、キャリア的には手が届かない部分があっても、「ダブルワークをする」「ラウンダーとして活躍する」など、働き方の工夫次第で高年収を実現できる可能性はあるといえそうです。
今回取材したベテランコンサルタントをはじめ、薬キャリは、年収にこだわる薬剤師を支援するコンサルタントがそろっています。
高年収の求人は数が少ないうえに競争率も高く、サイト公開前に応募が締め切られてしまうことも珍しくありません。当該求人が出てきたらすぐに分かるように、コンサルタントを活用することをおすすめします。
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