なの花薬局(メディカルシステムネットワークグループ)
温もりと安心をかたどる”あかり”のような薬局を増やしたい
代表取締役副社長・薬剤師
秋野 治郎
(あきの じろう)
代表取締役副社長・薬剤師
秋野 治郎(あきの じろう)
「なの花薬局」を中心に全国440店舗以上を展開する、株式会社メディカルシステムネットワーク。同社が掲げる”まちのあかり”という理念には、北海道小樽市のひとつの薬局から始まった「地域へのまごころ」がつまっていました。薬局業界を牽引する大手グループのひとつとなった今も受け継がれている経営理念に込められた思いや、これからの地域薬局事業の展望について秋野治郎副社長に話をうかがいました。
“まちのあかり”の原点は、災害復興の中に灯った薬局のランプ
医療過疎化が進む北海道興部町にある「なの花薬局興部店」。オレンジ色の“あかり”が地域住民に温もりと安心を与えている
Q. 
御社の経営理念に込められた思いを教えてください
メディカルシステムネットワークの経営理念は「良質な医療インフラを創造し、生涯を見守る『まちのあかり』として健やかな暮らしに貢献します」です。この「まちのあかり」というフレーズには、元となったエピソードがあります。1954年9月、1761人もの死者・行方不明者を出した洞爺丸台風により、私が暮らしていた北海道小樽市も大規模停電に見舞われました。一刻も早いインフラ復旧のために地域住民の皆さんが身を粉にして働きましたが、被害の大きさから一筋縄ではいかず、辺り一帯はどんどんと暗くなっていきました。皆さんの胸中に不安と焦りが生まれる中、父が薬局の倉庫からガソリンランプを取り出して灯すと、その光は数百メートル先からも見ることができ、近所の皆さんはその灯りを見て、ホッとしたような顔を浮かべるのです。子ども心に、薬局から広がる“あかり”が人々に温もりと安心を与える光景に感動したことを覚えています。この理念には、地域の方々が生涯安心して暮らせる「まちづくりに貢献する地域薬局でありたい」という思いが込められています。
Q. 
“まちのあかり”は秋野副社長の原風景なのですね
そうですね。ですが、この理念は私がトップダウンでつくったものではありません。社員達が「なの花薬局の理念をつくろう」と額を集めて考えてくれたものです。だからこそ、多くの薬剤師に共感を得られているのではないでしょうか。1999年の設立以来、さまざまな会社が仲間に加わりましたが、その一因として理念への共感を挙げていただくケースも多いです。各々がもっていたポリシーを尊重しつつ、新たに「まちのあかり」の下でより力強く地域薬局(コミュニティファーマシー)づくりを進めています。
Q. 
地域薬局(コミュニティファーマシー)とはどのような薬局でしょうか
端的に言うと、「地域ごとの『風土』と『歴史』を理解し、地域住民の健康・治療に貢献できる薬局」です。その地域は1年を通じてどんな気温なのか、人々は普段どんな物を食べているのか、そうした地域特性に精通することが大切です。たとえば、かつて私が現場にいた頃は、雪道に悩む患者さまを見る中で何かできないかと考え、先端がスキーストックのようになっている「雪で滑りづらい杖」を考案し販売しました。その結果、薬局内はおろか全国から注文が届くようになりました。

ほかにも、本州では一般的なスギ花粉が北海道に上陸した際に、薬局の屋上で毎日花粉を採取していたためいち早く気づくことができ、医療機関からも大変感謝されました。地域に精通しているからこそ、その変化を敏感に感じ取ることができたのだと思います。このように、医薬品を売ることだけが仕事と視野を狭めるのではなく、地域の方々のために何ができるのかを考える薬局を常に目指しています。
“競合”と捉えず、地域医療を支える仲間とつくる「ネットワーク」
なの花薬局の”あかり”は数十キロ離れた西興部村にも届く。薬剤師が毎月、健康相談会を実施して人口約1,000人の同村の健康を支えている
Q. 
今後の事業計画について教えてください
私達は、「地域薬局事業」と「医薬品ネットワーク事業」の両輪から成る「地域薬局ネットワーク事業」として薬局事業を捉えています。

「地域薬局事業」では、地域に根差した医療サービスを提供するため、それぞれの医療課題の把握に努め、地域の皆さまや患者さまに必要とされ、信頼され、愛される地域薬局づくりを進めています。「医薬品ネットワーク事業」では私達のネットワークに加盟することで、薬局経営のノウハウや医薬品の購入に関するサポートを受けられる取り組みを進めています。

薬剤師育成に関する知見の共有も実施しており、たとえば心不全療養指導士取得の勉強会に他社の薬剤師が参加することができます。超高齢社会が進む中で心不全に関する専門家の育成は急務であるという考えから、なの花薬局では「心不全療養指導士」の育成支援に力を入れています。いまでは薬局業界で最多*となる13人の有資格者の薬剤師が活躍しており、こうした実績のある私達の勉強会は好評をいただいています。

よく「競合他社の薬剤師・薬局にノウハウを提供することは『敵に塩を送る』ようなものではないか」と言われますが、それは地域医療を守るという点で本質的ではありません。地域に根ざした薬局が安定して店舗運営できるよう支援する、それが医薬品ネットワーク事業の大きな役割のひとつです。

*2023年6月時点。メディカルシステムネットワークグループ調べ
Q. 
地域薬局事業の中で注力していく分野を教えてください
25年以上の歴史をもつ在宅医療を引き続き強化していきます。自宅で家族が看取るというかつては当たり前だった習慣を取り戻すことは、在宅医療の一翼を担う薬局業界が果たすべき役割だと考えているからです。

看取りとは、看取られる本人はもちろん、残される家族にとっても重要な儀式です。看取りに際してかけた言葉が、「最期に伝えられて良かった」と悲しみを乗り越える力になるのです。患者さまが希望する限り、自宅での看取りができるようサポートすることが、メディカルシステムネットワークグループの目指す地域薬局のあり方です。
Q. 
入社する薬学生にどんな活躍を期待しますか
メディカルシステムネットワークグループの薬剤師に必ず伝えていることは、「自分の感受性を高めなさい」ということです。そして、そのためには五感を研ぎ澄ますことが重要です。経口摂取できなかった人が大好きだったワインだけは飲めたり、鎮痛剤が効かなくて唸っていた人が「アヴェ・マリア」を聞いたら寝息を立てて寝始めたりと、こうした例はたくさんあります。そして、こうしたケアは患者さま一人ひとりのことを深く理解しなければ対応できないのです。

ですので、医薬品の知識を備えていることは大前提ですが、そのうえで患者さま一人ひとりに寄り添えるよう成長することを期待したいですね。私は現場に出ていた頃、お亡くなりになった患者さまのご家族から「あなたに骨を拾って欲しい」と火葬場に呼んでいただいたことが何度もあり、そのたびに薬剤師としての本懐を果たした気持ちになりました。こうした体験に共感してくれる薬学生と是非、”まちのあかり”になる地域薬局をつくっていきたいです。
就活アドバイザーからひと言
全国展開の大手企業ならではの充実した環境の中で、地域に寄り添った薬剤師として働ける
メディカルシステムネットワークはエリアごとに分社化しているため、全国展開の大手企業でありながら、地域特性に柔軟に対応できる仕組みが整っています。さらに、黎明期から在宅医療に注力しているほか、2022年には教育制度の刷新や手厚い認定専門薬剤師の資格取得支援(30種類サポート)など、大手企業ならではの充実した教育・研修制度があります。「薬剤師としてのスキルアップ」「地域に根差して働きたい」の両方を叶えたい皆さんにぴったりの企業です。
なの花薬局(メディカルシステムネットワークグループ)