自分に合った職場の選び方 病院編
薬学生の就職先としてもっとも多い業界が「病院」と「薬局」。ここでは「仕事内容」「スキルアップ」 「働き方」のテーマ別にして、病院の選び方をご紹介します。病院を選ぶ際は、病院の機能や規模(病 床数)、専門医・専門薬剤師の有無などをしっかりチェックしましょう。
仕事内容で選ぶ
◆高度医療に携わりたい!
- 高度急性期を担う特定機能病院
- 専門分野に特化した地域医療支援病院
最先端の技術を用いた高度医療に携わりたいなら、高度急性期を担う特定機能病院がよいでしょう。高度急性期病院では、診療密度が特に高く、心臓病など侵襲性の高い治療を提供しているため、医師だけでなく薬剤師も論文などを読みながら治療法を研究するケースが少なくありません。プレッシャーは大きいですが、そのぶんやりがいも大きいのが特徴です。また、「循環器科」「脳神経外科」など特定の分野に強い急性期病院では、その分野に関する最新設備が整った環境で働くことができます。
病院の専門性と実績は?
病床数が減少するなか、これからの急性期病院には専門性が求められます。裏を返せば、専門性のない(弱い)病院は生き残りが厳しいともいえるのです。ですから、病院見学や説明会では、その病院の「得意科目」と「その科目の手術の実施症例数」もぜひ聞いてみましょう。「病院概要」などに科目別の手術件数が掲載されている場合もあります。
また、DPCデータ*を見れば「どの病院がどの症例に強いのか」を数値で確認できるので合わせてチェックしてみましょう。*DPC データ:全国共通の患者臨床情報と診療行為情報の電子データセット
◆患者と深く関わりたい!
- 病棟業務を実施している病院
- 急性期、回復期の病院
患者一人ひとりをじっくりケアする、そんな関わり方をしたいのならば、病棟業務を実施している病院を選びましょう。また、患者との関わり方、薬剤師の職能の発揮の仕方は、病院の機能によって異なります。急性期病院の場合は、がん認定薬剤師や糖尿病療養指導士など、専門スキルを活用して患者一人ひとりのケアに携わります。その他、高齢者の多剤投与の減薬など、ポリファーマシー*改善も薬剤師の役目です。
一方、回復期の病院では、患者やその家族とコミュニケーションを取りながら業務に携わります。患者がきちんと薬を飲めるよう、服薬アドヒアランス*の向上などで薬剤師のスキルを発揮します。*ポリファーマシー:多剤併用 *服薬アドヒアランス:患者が積極的に治療方針の決定に参加し、服薬すること
スキルアップで選ぶ
◆専門性を高めたい!
- 専門医や専門薬剤師が在籍している病院
- 専門・認定薬剤師の資格取得サポートが整っている病院
病院のホームページの「病院概要」や「施設紹介」「手術の実施症例数」などを確認し、自分が興味のある分野の専門医や専門薬剤師がいる病院を選びましょう。また、専門・認定薬剤師の資格取得支援がある病院を選ぶのもおすすめです。
なお、全国の特定機能病院や地域医療支援病院の専門医・専門薬剤師の有無は「薬キャリ1st 2020」で検索可能です。ぜひチェックしてみましょう。
◆学会で論文を発表したい!
- 学会参加に積極的な病院
- 専高度急性期病院
学会や研究会へ積極的に参加している、もしくは参加支援制度が整った病院がおすすめ。また、難病患者の治療が多い高度急性期病院では、薬剤師が論文などで治療法を研究したり、その成果を学会で発表したりといった機会も少なくありません。
◆薬剤師のゼネラリストを目指したい!
- 中小規模の病院
ゼネラリストとは多方面の能力や知識を持つ人のこと。幅広くいろいろな業務経験を積みたいという場合は、中小規模の病院がよいでしょう。大規模病院では、院内調剤や病棟業務、薬剤管理など、役割ごとに担当者を分けるパターンがほとんど。一方、中小規模の病院は薬剤師一人が担当する業務の種類が多いため、負担は軽くありませんがゼネラリストとして活躍できます。
働き方で選ぶ
◆結婚・出産しても働きたい!
- 回復期・療養型の病院
- 育児設備や制度が整った病院
回復期や療養期の病院は、患者の状態が比較的安定しているため、夜勤や当直があっても負担が少ないのが特徴です。それから、育児休暇などの制度が充実している病院、保育室を完備している病院なども女性にとって働きやすい職場といえますので、福利厚生の内容をチェックしてみてください。
働くなら大規模? 中小規模?
「大規模病院」といった場合、病床数400 床以上が目安となり、主に特定機能病院や地域医療支援病院がそれにあたります。ただ、病床数だけでなく急性期や回復期など機能によって業務内容が異なりますから、「規模」だけでなく「機能」もきちんと確認をしましょう。