
妊娠中のママ薬剤師は、これまで気にならなかった立ち仕事でも「長時間立っているのがつらい」「仕事の後に疲れがたまる」と感じることがあるでしょう。
この記事では、妊娠中のママ薬剤師が調剤の立ち仕事で感じやすい負担や、仕事中にできる対策について解説します。妊娠中も無理なく仕事を続けるための参考にしてください。
記事のポイント
・妊娠中は立ち仕事による身体的負担が大きくなりやすい。
・休憩をとったり、座ってできる業務を組み合わせることが大切。
・立ち仕事がつらいときは、無理せず主治医や職場に相談を。
調剤の立ち仕事が妊娠中のママ薬剤師に与える負担

薬剤師は、1日の大半を立ったまま過ごすことも多い仕事です。妊娠中は、身体の変化に伴って疲れやすくなったり、同じ姿勢を続けることがつらくなったりするため、普段と同じ業務でも負担が大きくなることがあります。
ここでは、薬剤師のどのような業務が立ち仕事になりやすいのか、妊娠中にどのような身体的負担が生じるのかを解説します。
立ち仕事になりやすい薬剤師の業務
薬剤師の仕事のうち、次のような業務は、基本的に立った状態で行うことが多いでしょう。
・医薬品のピッキング・取り揃え
・調剤
・調剤後の監査
・投薬・服薬指導
・医薬品の検品や補充
特に、患者さんの来局が集中する時間帯は、調剤と投薬を繰り返すことで、座って休む時間を取りにくくなりやすいです。
立ち仕事が妊娠中の身体に与える負担
妊娠中の立ち仕事は、腰や足などに負担がかかり、さまざまな身体的不調につながることがあります。
厚生労働省が小売業に従事する妊娠中の女性を対象に実施したアンケートによると、約60%が妊娠中の立ち仕事を「つらかった」と回答しており、具体的な症状として「お腹が張った・痛かった」「腰の痛み」「むくみ」などが挙げられていました。
また、立ち仕事の合計時間が長くなるほど、つらいと感じる人が多くなる傾向も示されています。
参照:長時間の立ち仕事/働く女性の心とからだの応援サイト(厚生労働省)
妊娠初期・中期・後期で、立ち仕事の負担はどう変わる?
妊娠中は、時期によって身体の変化や体調が異なるため、立ち仕事の負担の感じ方も変わることがあります。
【妊娠時期ごとの主な症状の例】
| 時期 | 主な症状の例 |
| 妊娠初期(4〜15週) | つわり、眠気、疲労感など |
| 妊娠初期(16〜27週) | 貧血、手足のむくみなど |
| 妊娠初期(28〜40週) | 背中や腰の痛み、胸焼け、動悸・息切れなど |
ただし、症状の種類や程度には個人差があるため、妊娠週数だけで立ち仕事の負担を判断することはできません。一律に考えるのではなく、その時々の体調に合わせて働き方を工夫することが大切です。
参照:企業の担当として…、働く女性として…いつ、何をすればいい?~妊娠スケジュールに沿って~/働く女性の心とからだの応援サイト(厚生労働省)
妊娠中のママ薬剤師が立ち仕事の負担を減らす3つの方法

妊娠中も薬剤師として働き続ける場合、立ち仕事を完全になくすことは難しいかもしれません。しかし、立ちっぱなしになる時間を減らしたり、こまめに休憩を取ったりすることで、身体への負担を軽減できる場合があります。
無理せず働けるよう、立ち仕事の負担を減らす3つの方法を確認していきましょう。
こまめに座って休憩する
立ち仕事が続く場合は、こまめに座って休憩する時間を確保することが大切です。
妊娠中は長時間立ち続けることが身体への負担になりやすいため、「疲れてから休む」のではなく、疲れを感じる前に休憩を取るよう心がけましょう。
忙しい時間帯は、「少し休ませてください」と自分から言い出しにくいと感じるかもしれません。妊娠中の体調や休憩が必要なことをあらかじめ職場に伝えておくと、必要なときに休憩を取りやすくなります。
立ち仕事と座ってできる業務を組み合わせる
立ち仕事だけが続かないように、立って行う業務と座ってできる業務を組み合わせることもおすすめの方法です。
座って行いやすい業務には、薬歴の記入や在庫管理・発注などがあります。調剤や投薬が続いた後に薬歴入力や事務作業を行うなど、立ちっぱなしになる時間を短くできるように業務の順番を工夫してみましょう。
体調に合わせて勤務時間・休憩時間を調整する
立ち仕事による負担が大きい場合は、勤務時間や休憩時間を調整できないか、職場に相談することも選択肢の一つです。
たとえば、有給休暇を取得して勤務日数や勤務時間を減らしたり、休憩を分けて取ったりするなど、身体を休める時間を確保する方法があります。
妊娠中のママ薬剤師が「立ち仕事以外」にも気をつけたい業務

妊娠中に注意したいのは、立ち仕事による身体的な負担だけではありません。感染症患者への対応や薬剤への曝露、粉じん、匂い、重量物の運搬なども、妊娠中は負担になることがあります。
業務内容や体調に応じて、必要な対策を検討しましょう。
インフルエンザなど感染症の患者への投薬
インフルエンザや新型コロナウイルス感染症などの流行期には、感染患者への投薬や対応をする機会が増えます。
妊娠中は感染症への罹患にも注意が必要であるため、手洗いや手指消毒、マスクの着用など、基本的な感染対策を徹底することが大切です。
薬剤への曝露に注意が必要な業務
薬剤師は日常的に医薬品を取り扱うため、妊娠中は薬剤への曝露にも注意が必要です。
特に、抗がん剤など細胞毒性を持つ薬剤や、一部の生殖毒性が懸念される薬剤では、調製や分包、粉砕などの作業で曝露する可能性があります。
薬剤の性質や施設の安全管理手順を確認し、必要な防護具も使用しましょう。
散剤・粉砕など粉じんが発生する調剤
散剤の調剤や錠剤の粉砕では、薬剤の粉じんが発生することがあります。薬剤によっては妊娠中の曝露に注意が必要なものもあるため、薬剤の性質を確認し、マスクなどを適切に使用することが大切です。
また、つわりの時期には、薬剤の粉じんや匂いによって気分が悪くなることもあるため、体調に合わせて無理をしないよう注意しましょう。
匂いの強い医薬品の調剤
妊娠初期など、つわりがある時期には、これまで気にならなかった医薬品の匂いがつらく感じることがあります。
散剤や水剤、外用薬、消毒薬などの匂いで吐き気や気分の悪さを感じる場合は、換気や業務分担など、できる範囲で負担を減らす方法を検討しましょう。
在宅・重い物の運搬など身体的負担の大きい業務
在宅医療を担当していると、移動を伴うことで薬局内での業務と比べて身体的な負担が大きくなる場合があります。また、薬局内の業務においても納品された医薬品や段ボールを運ぶなど、重い物を持つ場面には注意が必要です。
負担が大きい場合は無理をせず、ほかの薬剤師やスタッフに協力してもらいましょう。
立ち仕事がつらい妊娠中のママ薬剤師が職場に相談するときのポイント

妊娠中に立ち仕事がつらいと感じた場合は、職場に相談して勤務時間や業務内容を調整してもらうことも大切です。
ここでは、立ち仕事の負担が大きくなったときに活用できる制度や、職場への相談方法について紹介します。
医師の指導に応じて職場に必要な配慮を求められる
妊娠中に立ち仕事がつらい場合、まずは主治医に相談してみましょう。
妊娠に伴う症状などについて、医師から勤務時間の短縮や休憩、作業の制限などの指導を受けた場合、事業主はその指導に応じて必要な措置を講じなければなりません。
立ち仕事によって腰痛やむくみ、強い疲労などを感じている場合は、「まだ我慢できる」と無理をせず、主治医に相談して必要な配慮を確認しましょう。
「母健連絡カード」を活用する
医師から勤務について指導を受けた場合は、「母性健康管理指導事項連絡カード(母健連絡カード)」を活用する方法もあります。
母健連絡カードとは、主治医等が行った指導事項を、妊産婦である女性労働者から事業主へ的確に伝えるためのカードです。事業主は、母健連絡カードの記載内容に応じ、男女雇用機会均等法第13条に基づいて適切な措置を講じる義務があります。
【母健連絡カードの使い方】
(1)妊娠中または出産後の健康診査等で、通勤緩和や休憩、勤務時間の短縮などの措置が必要と主治医等から指導された場合、母健連絡カードに必要事項を記載してもらう。
(2)女性労働者が事業主に母健連絡カードを提出し、必要な措置を申し出る。
(3)事業主は、母健連絡カードの記載内容に沿って、時差通勤や休憩時間の延長など必要な措置を講じる。
口頭で「立ち仕事がつらい」と伝えるだけでは、どのような配慮が必要なのか職場に伝わりにくいこともあります。医師から具体的な指導を受けた場合は、母健連絡カードを活用して職場に伝えるとよいでしょう。
参照:母性健康管理指導事項連絡カードの活用方法について/厚生労働省
参照:母健連絡カード(母性健康管理指導事項連絡カード)について/働く女性の心とからだの応援サイト(厚生労働省)
有給休暇を使って早めに休むことも検討する
立ち仕事による負担が大きく、勤務を続けることが難しい場合は、有給休暇を使って産前休業より早く休むことも選択肢の一つです。
産前休業は原則として出産予定日の6週間前(双子以上の場合は14週間前)から取得できますが、有給休暇は産前休業とは別の制度です。残っている有給休暇を利用して、産前休業より前から休むこともできます。
「産休に入るまでは働きたいけれど、立ち仕事がつらくなってきた」という場合は、無理をして働き続けず、有給休暇の取得も含めて今後の働き方を検討してみましょう。
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妊娠中のママ薬剤師は立ち仕事の負担を減らすことが大切

妊娠中のママ薬剤師にとって、立ち仕事は身体への負担が大きくなりやすいものです。こまめに休憩を取ったり、座ってできる業務と組み合わせたりしながら、体調に合わせて負担を減らすことが大切です。
立ち仕事がつらいと感じた場合は無理をせず、主治医に相談したうえで、職場にも勤務時間や業務内容の調整を相談しましょう。母健連絡カードや有給休暇なども活用しながら、無理なく働ける方法を検討してみてください。



