
医療の専門職である薬剤師は高年収ですが、ママ薬剤師として働く女性の場合、出産や子育てのためフルタイムで働き続けることが難なり、パートやアルバイトといった働き方を選ぶ人も少なくありません。
ママ薬剤師はパートや派遣といった働き方でも比較的時給が高く、ライフスタイルに合わせながら安定した収入を得やすい職種です。
この記事では、パートやアルバイト、派遣薬剤師の時給相場について紹介し、自分らしい働き方を見つけるためのヒントをお届けします。
| 記事のポイント ・パート・アルバイト薬剤師の時給は高水準 ・「年収の壁」を正しく理解する ・必ずしも扶養内がベストとは限らない・最新の制度改正に注意 |
パート・アルバイト薬剤師の平均時給はどのくらい?

薬剤師は資格職のなかでも時給水準が高く、家事や育児と両立したいママ薬剤師にとっても、パート・アルバイトとして働く場合でも安定した収入を得やすい職種です。
まず平均的な時給の目安と、その決まり方について解説します。
パート・アルバイト薬剤師の平均時給
パート・アルバイト薬剤師の平均時給は、薬キャリエージェント調べによると、2079円です。
地域差はあるものの、ほかの一般的なパートのように最低賃金程度の時給になることはありません。たとえば、ドラッグストアでも、薬剤師と登録販売者の間の時給には差がありますし、そのような資格を持たない一般パートとは2倍以上の差があることが多くなっています。
パート・アルバイト薬剤師の時給は何で決まる?
パート薬剤師の時給は、このように基本的に高水準ですが、そのほかにも以下のような要素で金額が変わってきます。
まず大きいのが地域差です。一般的なパートの場合、地方よりも東京や大阪のような都市部のほうが時給は高くなっています。最低賃金を見ても、都市部と地方には数百円の差があります。
しかし、薬剤師の場合はそうではありません。
たとえ地方であっても薬の専門家である薬剤師のニーズは高いので、薬剤師不足が深刻な地方では、都市部より高い時給が提示されることも珍しくありません。
そのほかに時給に影響する要素としては業種があります。
薬剤師の場合、パート先としては調剤薬局の人気が高くなっています。
ただ、人が集まりにくいぶん、調剤薬局よりもドラッグストアのほうが時給は高めになりやすい傾向があります。
また、病院は薬剤師のなかでは給与が低めなので、パートに関しても高時給になりにくい傾向はあります。
さらに、経験年数やスキルも影響します。
在宅医療の経験、管理薬剤師経験、電子薬歴の操作スキルなどは評価されやすいポイントです。ただし、薬剤師の場合は「未経験可」「ブランク可」の求人も多く、経験が少なくても一定の時給が保証されやすい職種といえます。
派遣薬剤師の平均時給はどのくらい?

ママ薬剤師の働き方の選択肢として注目されているのが派遣社員です。
あまり知られていませんが、派遣薬剤師の時給水準はパート・アルバイトよりもさらに高くなります。
派遣薬剤師の平均時給
派遣薬剤師の平均時給は、薬キャリエージェント調べによると3341円となっています。
勤務地や勤務時間などの条件次第では4000円以上の求人もあり、短期間で高収入を得たい人に向いた働き方といえます。
特に、地方の薬剤師不足エリアや急募案件では、時給が大きく上がる傾向があります。
派遣薬剤師の平均時給が高いのはなぜ?
派遣薬剤師の時給が高い理由は、即戦力として「今すぐ人手が欲しい」というニーズに対応しているからです。
派遣先が薬剤師を必要とするのは、欠員補充や繁忙期対応といった緊急性の高いケースです。
そのような場合に、パート募集を出したり、教育したりするコストをかけることなく、必要な期間、必要な人材が確保できるため、高時給となっています。
また、現在は「同一労働・同一賃金」という考えが広がっています。
派遣薬剤師は正社員のような賞与・退職金・昇給といった待遇がない代わりに、時給に報酬を集中させた形になっています。
そのため、月収ベースで見ると正社員を上回るケースも少なくありません。
正社員薬剤師の年収と比較

このようにみると、1年間フルで働けば、パートや派遣の年収も悪くはなさそうです。では、正社員と比べるとどの程度の差があるのでしょうか。
パート薬剤師と正社員薬剤師の差はどのくらい?
厚生労働省の調査によると、正社員薬剤師の平均年収は599万円となっています。
では、正社員とパート薬剤師の間にはどのくらい差があるのでしょうか。
出典:厚生労働省「賃金構造基本統計調査/ 令和6年賃金構造基本統計調査」の、「きまって支給する現金給与額」12か月分に、「年間賞与その他特別給与額」を足した金額を平均年収として算出
パート薬剤師の時給を2000円として計算してみましょう。
1日8時間、1カ月20日働いたとすると、月給32万円、年収384万円となります。
ボーナスがなかったり、正社員のように昇進して昇給といったことがなかったりするため、正社員との間には大きな差があります。
フルタイムで働くのなら、正社員をめざしたほうがよさそうです。
ただ、たとえば1日8時間、週3日だけ働いたとしても、月給19万2000円、年収約230万円となります。
パートとして自分の都合に合わせて働いても十分な収入が得られるといえるのではないでしょうか。
実は派遣薬剤師のほうが正社員薬剤師より高収入?
次に、派遣薬剤師について正社員との差を確認してみましょう。
派遣薬剤師の時給を3300円として計算してみます。
1日8時間、1カ月20日働いたとすると、月給52万8000万円、年収は約633万円となります。
この年収は正社員の平均年収よりも高くなっていて、派遣薬剤師が高収入であることがわかります。
正社員の場合、年収には残業代も含まれていることを考えると、派遣薬剤師のほうが効率的といえるかもしれません。
ただし、派遣の場合は契約期間が限られているため、このような年収が常に期待できるわけではありません。一定の期間で職場が変わり、安定性の面では正社員には及ばないことには注意が必要です。
パート・アルバイト薬剤師の年収の壁

高時給な薬剤師であっても、子育ての合間に働くママ薬剤師は「年収の壁」によって手取りが減るのではないかという不安を抱える方は少なくありません。
損をせず、自身のライフスタイルに合った働き方を実現するために、正しい知識を整理しておきましょう。
年収の壁とは
よく耳にする「年収の壁」ですが、実際の「年収の壁」には、大きく分けて「自分にとっての壁」と「配偶者がいる場合の壁」の2種類があります。損をしないように働き方を考えるためには、それぞれの「年金の壁」の違いを理解することが大切です。
自分にとっての年収の壁
自分にとっての年収の壁とは、収入が一定額を超えたことで、本人に所得税や住民税、社会保険料の負担が発生するラインのことを指します。このラインを超えると、収入自体は増えていても、手取りの増え方が緩やかになったり、一時的に減ったりすることがあります。パートやアルバイトで働く場合は、「どこから自分の負担が増えるのか」を把握したうえで、勤務時間や年収を調整することが大切です。
配偶者がいる場合の年収の壁
配偶者がいる場合には、自分の収入が増えることで、配偶者が受けている税金の控除や手当が減る・なくなるラインがあることも意識する必要があります。
代表的なのが配偶者控除や配偶者特別控除です。これらの壁を超えると、自分の手取りは増えても、世帯全体の手取りが思ったほど増えない、あるいは減ってしまうこともあります。年収の壁については、個人の問題としてだけでなく、家計全体で考える視点が欠かせません。
税金に関する壁
これまでは所得税に関するものとして知られていたのは「103万円の壁」でした。これは、年収103万円までは基礎控除と給与所得控除の範囲内に収まるため所得税は発生しないというものです。
2025年の税制改正により、所得税がかからないラインが段階的に最大178万円まで引き上げられました。このラインを超えると所得税がかかりますが、税率は低く、実際の負担額は数千円〜数万円程度に収まるケースがほとんどです。
薬剤師の場合、時給が高いため比較的超えやすい壁ですが、超えたら大きく損をする壁ではない点は押さえておきましょう。
住民税の年収の壁は、自治体によって基準が異なりますが、おおむね年収110万円前後から課税されるケースが多くなっています。住民税は前年の所得に対して課税され、少額でも均等割が発生する点も特徴です。住民税は見落とされやすいものですが、きちんと確認しておくようにしましょう。
社会保険に関する壁
「130万円の壁」とは、社会保険で配偶者の扶養のままでいられるかどうかの境目です。
具体的には、年収が130万円未満であれば、配偶者の健康保険や年金の扶養に入り続けられることが多く、その場合は自分で社会保険料を負担する必要がありません。扶養のままでいることで、社会保険料の自己負担を避けられるメリットがあります。
年収が130万円を超えると、配偶者の扶養に入ることができないため、原則として健康保険・年金を自分で負担することになります。保険料の負担は年間で数十万円になるため、手取りが一時的に減ると感じやすい壁でもあります。
所得税や住民税に比べて、社会保険に関する「130万円の壁」のほうが手取りが減る金額は大きくなります。そのため、特に気を付けておきたい壁だといえます。
配偶者の控除に関する壁
配偶者控除、配偶者特別控除とは、妻の年収が一定より低い場合に、夫の所得税を安くできる制度です。
2025年からの制度改正により、配偶者が受けられる配偶者控除が適用される年収の上限は、これまでの103万円から123万円に引き上げられました。配偶者特別控除の上限も201.6万円となりました。年収がこのラインを超えると、段階的に配偶者の所得税・住民税の控除額が減っていく仕組みになっています。
薬剤師でも扶養内に納めたほうがおトク?
時給が高い薬剤師の場合、必ずしも自分の年収を配偶者の扶養内に収めることが最善とは限りません。
確かに扶養内であれば税金や社会保険料の負担は抑えられますが、働く時間を制限することで、得られる収入も大きく減ってしまいます。
一方、壁を超えてしっかり働けば、税金や社会保険の負担は増えるものの、自分の収入がそれ以上に増え、世帯全体で見ても収入増となるケースが多くあります。
配偶者の収入や社会保険の加入状況を踏まえ、時給や自分が働ける時間を考え併せて、世帯単位で損か得かを考えることが重要です。
年収の壁についてはこまめに情報チェックを
近年、年収の壁を見直そうという動きが大きくなっています。
実際に、税金の控除額や社会保険の適用条件はこれまで何度も変更されてきました。
古い情報のまま判断してしまうと、本来得られるはずの収入を逃してしまう可能性もあります。
特に働き方を変えるタイミングや、勤務時間を増やす前には、最新の制度を確認することが大切です。
まとめ

パート・アルバイトや派遣で働く際には「年収の壁」や社会保険の負担など、収入が増えることで生じる影響も考慮しなければなりません。
目先の時給だけで判断するのではなく、最新の制度を理解し、自分のライフスタイルや家庭の状況に合わせて「扶養内で働くべきか、壁を超えて働くべきか」を判断することが大切です。
薬剤師のメリットを活かして、無理なく続けられる最適な働き方を選んでいきましょう。



