
かかりつけ薬剤師として患者さんを担当している場合、産休・育休に入ると「担当していた患者さんはどうなるの?」「育休明けはまたかかりつけ薬剤師になれるの?」と気になる方もいるでしょう。
この記事では、育休明けのママ薬剤師がかかりつけ薬剤師として働くための要件や、産休・育休前にしておきたい準備、復帰後に注意したいポイントについて解説します。育休明けも変わらずかかりつけ薬剤師として働きたい方は、ぜひ参考にしてください。
記事のポイント
・育休明けでも、勤務時間などの要件を満たしていればかかりつけ薬剤師として働ける。
・産休・育休前に、患者さんへの説明や後任への引き継ぎを済ませておく。
・育休明けは育児との両立や急な休みに備えておくことが大切。
育休明けのママ薬剤師がかかりつけ薬剤師になるための要件

かかりつけ薬剤師として働くには、一定の要件を満たす必要があります。
育休明けに時短勤務を利用するママ薬剤師でも、勤務時間などの要件を満たしていれば、かかりつけ薬剤師として働くことが可能です。
【かかりつけ薬剤師の要件】
・保険薬剤師として3年以上の保険薬局勤務経験がある
・勤務先の保険薬局に週31時間以上(育児・介護による時短勤務の場合は週24時間以上かつ週4日以上)勤務している
・勤務先の保険薬局に継続して6カ月以上在籍している
・薬剤師認定制度認証機構が認証している研修認定制度などの研修認定を取得している
・医療に係る地域活動に参画している
2026年度の診療報酬改定では、かかりつけ薬剤師の勤務時間要件が「週32時間以上」から「週31時間以上」に、在籍期間が「1年以上」から「6か月以上」に見直されました。これにより、ママ薬剤師にとっても、産休・育休明けにかかりつけ薬剤師として復帰しやすくなったといえるでしょう。
また、産前産後休業や育児休業から復職する場合、復職後に勤務する保険薬局が休業前と同じであれば、休業前の在籍期間を含めることができます。そのため、育休を取得したことで在籍期間を一から数え直す必要はありません。
参照:特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて(令和8年3月5日保医発0305第8号)/厚生労働省
【2026新設】かかりつけ薬剤師フォローアップ加算をわかりやすく解説
かかりつけ薬剤師が産休・育休前にしておくべきこと

かかりつけ薬剤師として担当の患者さんがいる場合でも、産休・育休を取得すること自体は問題ありません。ただし、休業中は担当患者さんへの対応や薬局内の業務体制を調整する必要があります。
育休明けにスムーズにかかりつけ薬剤師として復帰するためにも、休業前から必要な準備を進めておくことが大切です。
担当患者に産休・育休の取得や復帰予定を説明する
かかりつけ薬剤師として担当している患者さんには、産休・育休を取得することや、休業開始時期をあらかじめ説明しておきましょう。
休業中に別の薬剤師をかかりつけ薬剤師として指名するかどうかについても、患者さんの希望を確認しておくことが必要です。
また、復帰後も自分をかかりつけ薬剤師として指名することを希望する患者さんには、現時点での復帰予定を伝えておくとよいでしょう。
後任のかかりつけ薬剤師がいる場合は引き継ぎを行う
休業中に別の薬剤師がかかりつけ薬剤師として担当する場合は、患者さんの服薬状況やこれまでの相談内容、注意点などの引き継ぎが欠かせません。
また、後任のかかりつけ薬剤師が決まっていない場合でも、これまでの患者情報や経過を薬歴に記録し、誰が見てもわかるようにしておくことが大切です。
かかりつけ薬剤師の変更に必要な手続きを済ませておく
産休・育休中に別の薬剤師が担当する場合は、情報の引き継ぎだけでなく、かかりつけ薬剤師の変更に伴う同意の取得など、必要な手続きも確認しておきましょう。
2026年度の診療報酬改定では、かかりつけ薬剤師について、患者さんからの同意取得の方法に変更がありました。
これまでは同意書で同意を取っていたところ、お薬手帳に必要な記載を行い、これらが記載されたページのコピー等を薬局で保管することで同意を得たことになります。
新しく別の薬剤師をかかりつけ薬剤師として指名する場合はお薬手帳の記載変更などの手続きが必要です。
関連記事26改定・かかりつけ薬剤師の変更点を解説・お薬手帳貼付けテンプレ付
勤務先の地域支援・医薬品供給対応体制加算の算定に影響がないか確認する
地域支援・医薬品供給対応体制加算2~5の施設基準として、かかりつけ薬剤師による地域医療への貢献に関する実績要件が求められています。
かかりつけ薬剤師が算定する服薬管理指導料1のイおよび2のイの算定回数について、それぞれ区分に応じて以下の算定実績が定められています。
| 区分 | 服薬管理指導料1のイおよび2のイの算定実績 |
| 地域支援・医薬品供給対応体制加算2・3 | 処方箋1万枚当たり年間20回以上 |
| 地域支援・医薬品供給対応体制加算4・5 | 処方箋1万枚当たり年間40回以上 |
かかりつけ薬剤師による算定実績が勤務先の施設基準を満たすために活用されている場合は、産休・育休によって算定実績に影響が生じないか、あらかじめ確認しておきましょう。
必要に応じて、休業中の体制や他の薬剤師による対応について、勤務先と相談しておくことも大切です。
関連記事【2026新設】地域支援・医薬品供給対応体制加算の算定要件を解説
育休明けにかかりつけ薬剤師を再開するための準備

続いて、産休・育休から復帰する際に、再びかかりつけ薬剤師としての業務を再開するために必要な準備についても確認していきましょう。
制度の変更点の把握や以前担当していた患者への対応、研修認定薬剤師の更新状況など、かかりつけ薬剤師として復帰する前に確認しておきたいポイントがいくつかあります。
復帰時点のかかりつけ薬剤師の制度・要件を確認する
産休・育休中に調剤報酬の改定などが行われると、休業前と復帰時では、さまざまな制度や要件が変わっている可能性があります。
実際に2026年度の調剤報酬改定でも、かかりつけ薬剤師に関する算定項目や同意取得の方法などが見直されました。
育休明けにかかりつけ薬剤師として業務を再開する際は、復帰時点の最新の制度や要件を確認しておきましょう。
以前担当していた患者が再びかかりつけ薬剤師を希望するか確認する
復帰後は、産休・育休前にかかりつけ薬剤師として担当していた患者さんに、再び担当を希望するか確認しましょう。
以前担当していた患者さんであっても、休業中に担当薬剤師が変わっている場合があります。再び担当を戻すのであれば、現在のかかりつけ薬剤師の指定状況を確認したうえで、必要な手続きを行います。
また、復帰後はこれまでの服薬状況や体調の変化なども確認し、現在の状況を把握してから対応することが大切です。
研修認定薬剤師の資格は維持しておく
かかりつけ薬剤師の要件の一つとして、「薬剤師認定制度認証機構が認証している研修認定制度などの研修認定を取得していること」が求められます。
そのため、育休中も研修認定薬剤師の認定を維持できるよう、更新が必要な場合は手続きを忘れずに行いましょう。
ただし、育児などのやむを得ない事情で更新に必要な研修の受講が難しい場合は、認定制度によって更新期限の延長などの措置が設けられていることがあります。
公益財団法人日本薬剤師研修センターの研修認定薬剤師制度でも、一定の条件を満たす場合、各年5単位以上の取得要件の免除や、認定期間の1年間延長が認められています。
育休中に更新時期を迎える場合は、利用できる措置も含めて確認しておくとよいでしょう。
参照:やむをえない事情により研修が困難になった場合の措置について/公益財団法人日本薬剤師研修センター
育休中は認定薬剤師の更新期限を延長できる!特例措置をわかりやすく解説
育休明けにかかりつけ薬剤師を続ける場合の注意点

育休明けは、勤務先や勤務時間などが育休前と変わることがあります。かかりつけ薬剤師を続ける場合は、復帰後の勤務条件が要件を満たしているか確認するとともに、育児との両立についても考えておくことが大切です。
ここでは、育休明けにかかりつけ薬剤師を続ける際に注意したいポイントを解説します。
育休前と異なる薬局に復帰した場合は在籍期間に注意する
かかりつけ薬剤師の要件として、「施設基準の届出時点で勤務先の保険薬局に継続して6カ月以上在籍していること」が求められています。
育休明けに勤務する保険薬局が休業前と同じであれば、休業前の在籍期間を合算できます。つまり、育休を取得したことによって、同じ薬局での在籍期間を一から数え直す必要はありません。
一方、育休明けに休業前とは異なる保険薬局へ異動した場合は、休業前の在籍期間を合算できません。そのため、ほかの要件を満たしていても、異動先の薬局で6カ月以上在籍するまでは、かかりつけ薬剤師としての算定はできないため注意が必要です。
かかりつけ薬剤師の業務と育児の両立が負担になる場合がある
かかりつけ薬剤師は、患者さんの服薬状況を継続的に把握し、相談に対応するなど、継続的なフォローが求められます。また、かかりつけ薬剤師を選択した患者さんからの時間外の電話相談などにも、薬局として対応できる体制が必要です。
そのため、育休から復帰した後は、通常の調剤業務に加えて、かかりつけ薬剤師としての業務と育児の両立が負担になる場合があります。
急な休みに備えて店舗内で患者情報を共有しておく
子どもの急な発熱などで、予定していた勤務を休まなければならないこともあります。不在時でもほかの薬剤師が対応できるよう、普段から必要な患者情報を薬歴などに適切に記録・共有しておきましょう。
服薬状況やこれまでの相談内容、注意点などを共有しておけば、急な休みの場合でも、ほかの薬剤師が患者さんの状況を把握して対応しやすくなります。
関連記事保育園からの呼び出しや急な休みへの対応について解説
育休明けにもかかりつけ薬剤師として活躍するために

かかりつけ薬剤師は、産休・育休を取得しても、復帰後に必要な要件を満たしていれば再びかかりつけ薬剤師になることができます。休業前には患者さんへの説明や引き継ぎ、必要な手続きを行い、復帰前には最新の制度や要件、研修認定薬剤師の資格などを確認しておきましょう。
また、育休明けは育児との両立や不在時の対応についても勤務先と相談しておくことが大切です。早めに準備を進め、無理なくかかりつけ薬剤師としての復帰を目指しましょう。



