
管理薬剤師として働きながら、副業で収入を増やしたいと考える方もいるでしょう。
ただし、管理薬剤師には、一般の薬剤師とは異なる兼務制限があります。
ポイントは、副業の名称ではなく、実際に行う業務が「薬事に関する実務」に当たるかどうかです。
この記事では、管理薬剤師が副業を検討する際の法令上の注意点、兼務許可の確認方法、勤務先で必要な手続きを解説します。
管理薬剤師の副業は薬事実務の兼務が原則制限。例外と確認手順
管理薬剤師は、法律によって他の薬局などでの薬事に関する実務が原則として制限されています。
ただし、すべての副業が禁止されているわけではありません。業務内容によっては副業が可能な場合もあり、一定の条件のもとで兼務が認められるケースもあります。
副業を検討する際は、まず仕事内容が薬事に関する実務に該当するかを確認しましょう。そのうえで、勤務先の就業規則を確認し、必要に応じて管轄の保健所に兼務許可の要否を相談することが大切です。
ここでは、管理薬剤師の副業に関する法律上の制限や例外的に兼務が認められるケースとともに、副業の可否を判断するための具体的な手順を解説します。
薬事に関する実務の兼務は、薬機法で原則として制限されている
薬局の管理者は、原則として管理する薬局以外の場所で薬局の管理その他薬事に関する実務に従事できません(医薬品医療機器等法〔薬機法〕第7条第4項)。
別の薬局での調剤や服薬指導は、休日の短時間勤務や単発アルバイトであっても、この制限を踏まえて判断する必要があります。
まずは副業先で担当する業務を具体的に確認しましょう。
参考:医薬品医療機器等法第7条第4項/厚生労働省「薬局の管理者の兼務許可の考え方について」(平成31年3月20日、薬生総発0320第3号)
※通知は当時の条文番号(第3項)を引用しています。
管理薬剤師が法律で禁止されている副業とは
管理薬剤師であっても、すべての副業が法律で禁止されているわけではありません。
薬機法による兼務制限は、主に管理する薬局以外の場所で行う薬局の管理や薬事に関する実務を対象としています。
それらに該当しない仕事であれば、副業として取り組める可能性があります。
例えば、医療・健康記事の執筆や監修、薬学に関する教材制作、一般事務、データ入力などが挙げられます。
ただし、具体的な業務内容や責任の範囲によって、薬事に関する実務に該当するかどうかの判断が異なる場合があります。
副業を始める前に、依頼内容や担当業務の範囲を明確にし、判断に迷う場合は管轄の保健所に確認しましょう。
勤務先の就業規則による制限は別に確認が必要
勤務先の就業規則や雇用契約も確認が必要です。
副業の届出・承認手続き、競業に関する規定、患者情報や勤務先の内部情報の守秘義務を確認し、必要な手続きを済ませてから始めましょう。
都道府県の許可で兼務が認められるケース
管理薬剤師でも、非常勤の学校薬剤師、夜間・休日に地域の輪番制で行う調剤業務、へき地で薬局管理者の確保が困難な場合の営業時間外の他薬局勤務などは、都道府県知事などの許可により兼務が認められる場合があります。
ただし、これらの仕事がすべて許可の対象になるわけではありません。業務の公益性や薬局の管理業務への影響などを踏まえ、個別に判断されます。
兼務を希望する場合は、仕事を始める前に管轄の保健所へ相談し、許可の要否や申請方法を確認しましょう。
ここでは、兼務が認められる可能性のある仕事と、許可申請の流れについて解説します。
学校薬剤師
学校薬剤師については、薬局の管理に支障がないことなどを踏まえ、例外的な兼務許可が検討される場合があります。
許可の対象や判断は個別の事情によって異なるため、引き受ける前に薬局所在地を管轄する保健所へ相談しましょう。
夜間・休日の地域輪番制とへき地での例外的な勤務
厚生労働省通知では、地域の輪番制に基づく夜間・休日の調剤業務や、へき地で管理者の確保が困難な場合に営業時間外に他の薬局で勤務する例が示されています。
いずれも自動的に認められるものではなく、管理する薬局の業務に支障がないかなどを踏まえて個別に判断されます。
ただし、求人があることと、管理薬剤師として従事できることは別です。
仕事内容と勤務日時を整理し、事前に許可の要否を確認してください。
兼務許可の申請の流れ
【確認の具体例】
副業先から「土曜の午前中だけ調剤を手伝ってほしい」と依頼された場合でも、短時間であることだけで兼務の可否は決まりません。
勤務場所、担当業務、曜日・時間帯、管理薬局の勤務体制を整理し、薬局開設者と相談したうえで保健所に確認しましょう。
兼務を希望する場合は、まず副業先の業務内容、勤務場所・日時、本業への影響を整理します。
次に薬局開設者と相談し、薬局所在地を管轄する保健所へ許可の要否、申請者、必要書類、審査の流れを確認しましょう。
必要な許可がある場合は、取得後に業務を開始してください。
副業の種類別|できる仕事・注意が必要な仕事
管理薬剤師が検討できる副業には、医療・健康記事の執筆や監修、研修講師、教材制作、一般事務などがあります。
一方、他の薬局での調剤や服薬指導は、薬機法上の兼務制限に抵触する可能性があるため注意が必要です。
副業の可否は、職種名だけでなく、実際の業務内容によって判断することが大切です。薬剤師資格を生かす仕事でも、薬事に関する実務に該当するかを確認し、必要に応じて管轄の保健所に相談しましょう。
ここでは、副業の種類ごとに、主な仕事内容と注意すべきポイントを整理します。
副業の種類別・確認ポイント(一般的な目安)
| 副業の例 | 管理薬剤師が確認したいこと |
|---|---|
| 他の薬局での調剤・服薬指導 | 原則として兼務制限の対象。短時間・単発でも事前確認が必要 |
| 非常勤の学校薬剤師・地域輪番制・へき地の例など | 例外的に許可が検討される場合がある。保健所に許可の要否を確認 |
| 医療記事の執筆・教材制作 | 業務内容が薬事実務に当たらないか、勤務先の副業規定に抵触しないか確認 |
| 翻訳・一般事務など | 就業規則、労働時間、本業への影響を確認 |
他の薬局での調剤・服薬指導アルバイト
別の薬局で調剤や服薬指導を行うアルバイトは、管理薬剤師の兼務制限に関わる代表例です。
「休日だけ」「短時間だけ」という勤務条件で判断せず、具体的な業務と許可の要否を保健所に確認しましょう。
医療・健康記事の執筆や監修
在宅でできる仕事の種類や探し方は、関連記事で詳しく紹介しています。
管理薬剤師の場合は、その中から薬事実務に該当しない仕事内容を選ぶ視点が必要です。
医療・健康記事の執筆や監修は、在宅で取り組める副業の一つです。
薬学知識を生かせる一方、個別の薬事実務に当たる内容を含む場合は確認が必要です。
患者情報や勤務先の内部資料は、許可なく使用しないようにしましょう。
薬剤師の在宅ワーク・医療記事ライティングの働き方
講師・教材制作・オンライン業務
研修講師や教材制作、オンライン講座なども選択肢です。
仕事内容が情報提供や教育にとどまるのか、薬事に関する実務を含むのかを確認してください。準備時間、納期、報酬、育児との両立もあわせて検討しましょう。
薬剤師資格を使わない副業
翻訳、データ入力、一般事務など、薬剤師資格を必要としない仕事もあります。
薬機法上の兼務制限に加えて、勤務先の副業規定や、本業の管理業務に支障が出ない勤務時間かどうかを確認しましょう。
管理薬剤師が副業を始める前に確認したい5項目
管理薬剤師が副業を始める際は、法律上の制限だけでなく、勤務先の就業規則や本業への影響なども確認する必要があります。副業の種類によっては、事前に兼務許可を受けなければならない場合もあります。
また、育児や家事と無理なく両立できるか、副業収入によって税金や社会保険にどのような影響があるかも重要なポイントです。
ここでは、副業先での業務内容、勤務先のルール、保健所への相談、時間の確保、税金・社会保険の5項目について解説します。
副業開始前の5ステップ
| 確認する順番 | 具体的な行動 |
|---|---|
| ① 業務内容を整理 | 副業先で行う作業・場所・勤務日時を書き出す |
| ② 勤務先に確認 | 就業規則・副業届・承認手続きを確認する |
| ③ 必要に応じ保健所へ | 兼務制限に該当するか、許可の要否・申請方法を相談する |
| ④ 両立できるか検討 | 管理業務・育児・休息との兼ね合いを確認する |
| ⑤ 税務・保険を確認 | 収入区分、申告、社会保険の取り扱いを確認する |
①副業先で行う業務の具体的内容
募集職種名だけで判断せず、調剤・服薬指導・薬局管理など、実際に担当する業務を確認します。判断が難しい場合は、業務内容を書面にまとめて保健所に相談しましょう。
②勤務先の就業規則と届出・許可
勤務先の就業規則や雇用契約書で、副業の可否、届出先、承認の要否を確認します。
競業や情報管理に関する規定にも注意し、必要な手続きを書面で残しましょう。
③保健所への事前相談の要否
【相談時に伝える情報】
1.現在管理している薬局の所在地
2.副業先の施設と所在地
3.調剤・服薬指導などの具体的な業務
4.勤務予定日時
5.管理薬局での不在時の対応体制
自治体から求められる資料は異なるため、申請書の様式も併せて確認します。
薬事に関する実務を別の場所で行う可能性がある場合は、開始前に薬局所在地の保健所へ相談します。
許可の要件や申請方法は個別に確認してください。
④本業・育児と両立できる時間
管理薬剤師としての責任を果たしながら、育児や休息の時間を確保できるか検討しましょう。
急な子どもの体調不良に対応できるよう、納期や稼働時間に余裕のある仕事を選ぶことも大切です。
⑤税金・社会保険への影響
副業の所得区分や収入額によって、所得税の確定申告や住民税の申告が必要になる場合があります。雇用される形の副業では、労働時間や社会保険の扱いも確認しましょう。
詳しい税務手続きは税務署や自治体に相談してください。
ママ管理薬剤師が副業を選ぶときのポイント
育児や家事と両立しながら副業に取り組むには、収入だけでなく、勤務時間の柔軟性や仕事の負担を考慮することが大切です。
特に管理薬剤師は、本業での責任も大きいため、無理なく続けられる働き方を選ぶ必要があります。
在宅で取り組める仕事や短時間でできる仕事は選択肢になりますが、報酬に見合う負担かどうかも確認しましょう。
また、育休中の就業や扶養に関わる場合は、給付金や税金・社会保険への影響にも注意が必要です。
ここでは、育児との両立、収入と負担のバランス、制度面での注意点を中心に、副業選びのポイントを解説します。
短時間・在宅で始められるか
在宅で作業時間を調整できる仕事は、子育てとの両立を考えるうえで候補になります。ただし、オンライン会議や急な修正対応が必要な案件もあります。応募前に実際の稼働時間や連絡対応の頻度を確認しましょう。
継続できる単価と負担か
【報酬の見方】
例えば原稿料が1本15,000円でも、調査・執筆・修正・打ち合わせに合計10時間かかれば、単純計算の時給は1,500円です。
提示額だけでなく、実際の作業時間と継続性を踏まえて比較しましょう。
報酬は作業時間だけでなく、打ち合わせ、調査、修正対応まで含めて時給換算すると比較しやすくなります。高単価でも拘束時間が長い仕事は、家庭や本業への負担が大きくなることがあります。
育休中の副業は育児休業給付金に影響する
育休中に働く場合は、就業日数・時間や賃金額などによって育児休業給付金の支給に影響することがあります。休業中の就業を検討するときは、勤務先とハローワークに具体的な条件を確認しましょう。
扶養内で働く場合は、副業収入による税金・社会保険への影響を確認する
扶養の判定基準は税制と社会保険で異なり、副業収入の種類によって取り扱いも変わります。扶養内勤務を検討する場合は、副業の収入見込みと所得区分を整理し、加入する健康保険や税務窓口に確認しましょう。
関連記事扶養内勤務と確定申告の基礎知識
副業をしたいなら、働き方そのものを見直すのも選択肢
管理薬剤師として働きながら副業を始めたいと思っても、薬機法上の兼務制限や本業の責任がネックになる場合があります。そのようなときは、管理薬剤師の役職を外れることや、副業を認めている職場への転職など、働き方そのものを見直すのも一つの方法です。
ただし、役職を外れると管理薬剤師手当がなくなるなど、収入面にも影響します。
現在の給与と副業で見込める収入を比較し、勤務時間や育児との両立も踏まえて判断することが大切です。
ここでは、管理薬剤師以外の働き方や収入面の比較、副業をしやすい職場の選び方について解説します。
管理薬剤師を外れた場合は、他の薬局で働ける可能性が広がる
管理薬剤師の役職を外れれば、管理者に課される兼務制限の対象ではなくなる場合があります。
ただし、勤務先の就業規則や労働時間の管理、健康面への配慮は引き続き必要です。働き方の変更は、勤務先と相談して判断しましょう。
管理薬剤師手当と副業収入を比べてみる
役職を続ける場合と副業を組み合わせる場合の比較
| 比較項目 | 管理薬剤師を続ける | 役職変更+副業 |
|---|---|---|
| 収入 | 給与+管理薬剤師手当 | 変更後の給与+副業収入 |
| 時間 | 管理業務・残業の負担 | 副業の稼働・移動・準備時間 |
| 家庭との両立 | 急な休みへの対応 | 納期・勤務時間の調整しやすさ |
| 注意点 | 管理責任の継続 | 就業規則・副業条件の確認 |
管理薬剤師を続けた場合の手当と、役職を外れた場合の給与・副業収入を比較しましょう。
金額だけでなく、勤務時間、責任の範囲、育児や家庭への負担も判断材料になります。
薬キャリmamaの転職Q&A(副業が可能な職場について)
「副業OK」の職場を探す
管理薬剤師として採用される場合は、「副業可」の表記だけで判断せず、希望する副業の仕事内容を採用担当者に伝え、社内規定上の扱いを確認しましょう。
薬事実務を伴う場合の法令上の判断は、勤務先の承認とは別に必要です。
転職先の求人票に「副業可」と書かれていても、管理薬剤師の法令上の兼務制限がなくなるわけではありません。
管理薬剤師の副業に関するよくある質問(Q&A)
管理薬剤師が副業を検討する際は、兼務許可の申請方法や勤務先への届出、税金の手続きなど、具体的な疑問が生じることもあるでしょう。
特に、副業が勤務先に知られる可能性や、収入が少ない場合に確定申告が必要かどうかは、事前に確認しておきたいポイントです。
ここでは、管理薬剤師の副業についてよくある質問を取り上げ、手続きや注意点をわかりやすく解説します。
Q.兼務許可は誰が申請する?
A.申請の主体や必要書類は、業務内容や自治体の手続きによって異なります。管理薬剤師本人だけで進めず、薬局開設者や副業先と調整し、保健所に申請方法を確認しましょう。
Q.副業が勤務先に知られる可能性は?
A.副業の届出や税務手続きなどを通じて、勤務先に副業が把握される可能性があります。隠すことを前提にせず、就業規則に沿った手続きを行いましょう。
Q.副業の収入が少なければ確定申告は不要?
A.所得税の確定申告が必要かどうかは、副業の所得区分や金額、本業以外の給与の有無などによって異なります。
また、所得税の申告が不要でも住民税の申告が必要な場合があります。
税務署や自治体で確認しましょう。
法令と職場のルールを確認し、無理のない副業を選ぼう
管理薬剤師は、管理する薬局以外で薬事に関する実務に従事することが原則として制限されています。
一方、記事執筆や教材制作など、業務内容によって検討できる副業もあります。
まずは副業の仕事内容を明確にし、勤務先の規定と兼務許可の要否を確認しましょう。
本業の責任と育児の時間を両立できる働き方を選ぶことが大切です。
参考資料一覧
1. 医薬品医療機器等法 第7条第4項(薬局の管理者の兼務制限)/厚生労働省・法令本文
2. 薬局の管理者の兼務許可の考え方について(平成31年3月20日・薬生総発0320第3号)/厚生労働省・通知(発出時は第7条第3項)
3. 薬局等の管理者兼務許可申請について/浜松市・自治体における申請手続きの例
4. No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人/国税庁・確定申告の要否
5. No.1906 給与所得者がネットオークション等により副収入を得た場合/国税庁・副収入の税務上の取扱い
6. Q&A~育児休業等給付~/厚生労働省・育児休業給付金と就業日数・賃金
7. 育児休業中の就労について/厚生労働省・育休中の一時的な就労
※兼務許可の申請窓口・様式・運用は自治体により異なります。浜松市の資料は一例であり、実際には勤務先薬局を管轄する自治体へ確認してください。



