
出産や育児をきっかけに、「扶養内で働きたい」と考えるママ薬剤師は少なくありません。しかし、扶養内と一言で言っても、税金や社会保険など複数の制度が関係しており、「年収はいくらまで?」「確定申告は必要?」と疑問を感じる方も多いでしょう。
特に薬剤師は時給が高いため、勤務時間を少し増やしただけで年収の壁を超えてしまうこともあります。
この記事では、扶養の基本から年収の壁、確定申告が必要なケースまで、ママ薬剤師向けにわかりやすく解説します。
記事のポイント
・扶養には、税制と社会保険の2種類がある。
・薬剤師は時給が高いので、年収の壁にとらわれないほうがいい場合もある。
・基本的にパート勤務の場合は確定申告不要。
ママ薬剤師が知るべき「扶養内」とは
パート勤務をする際にまず気になるのが「扶養内で働くかどうか」ではないでしょうか。

その判断をするためには、まず「扶養」についてきちんと理解しておくことが必要です。
そもそも「扶養」とはどういうこと?
「扶養」とは、自分の力だけでは生計を維持できない親族を、経済的に援助することを指します。
共働き・子育て世帯においては、「夫の経済力によって、妻が養われている状態」が多く見られるかたちです。
配偶者の扶養に入ることで、支払う税金が安くなったり、自分で社会保険料を納める必要がなくなったりといった、経済的なメリットを受けることができます。
この記事では、このケースを対象として解説していきます。
※ 内容は便宜上、扶養者を「夫」、被扶養者を「妻」としていますが、男女の立場が入れ替わっても内容は変わりません。
※ 薬キャリmamaの本ページにおける「社会保険」は「厚生年金・健康保険料」をさします。
「扶養内」には2種類ある
扶養内勤務には大きく分けて次の2種類があります。
1つ目は「税法上の扶養」です。これは所得税や住民税に関係する制度で、妻が一定以下の所得であれば夫の側が配偶者控除や配偶者特別控除の対象となり、夫が払う税金が安くなります。
2つ目は「社会保険上の扶養」です。こちらは健康保険や年金に関する制度で、扶養の範囲内であれば妻の側が自分で保険料を負担する必要がありません。
同じ「扶養内」でも対象となるものが異なり、いわゆる「年収の壁」の金額も違うため、両方を理解しておくことが大切です。
参考記事:現在の状況別 お金と制度解説
ママ薬剤師がチェックしておきたい年収の壁とは

扶養内で働くことを考えているママ薬剤師にとって、「年収の壁」を理解しておくことは重要です。年収が一定額を超えると税金や社会保険料の負担が発生し、手取り額に影響する場合があります。ここでは、特に知っておきたい「税金の壁」と「社会保険料の壁」について解説します。
税金の壁
税金の壁とは、所得税や住民税、配偶者控除などに関わる収入基準のことです。一定額を超えると妻が払う税金が発生したり、夫が受けられる控除額が変わったりします。
ただし、税金は収入全体にかかるわけではなく、基準を超えた部分に対して課税されるため、壁を超えたら大きく損となるわけではありません。働き方を考える際は、税金だけでなく手取り額全体で判断することが大切です。
・100万円の壁:
自治体によって多少金額は変わりますが、年収が約100万円を超えると妻自身に住民税がかかり始めます。
・178万円の壁:妻自身の所得税がかからないラインです。妻の年収が178万円以下であれば、所得税が0円になります。
これまでは「年収103万円の壁」でしたが、2026年から178万円へと大幅に引き上げられました。
・201.6万円の壁:
妻の年収が201.6万円を超えると、夫の配偶者特別控除が適用外となります。この金額を超えると、夫婦ともに受けられる税金・社会保険の免除はなくなります。
社会保険料の壁
社会保険料の壁とは、妻の収入が一定金額を超えると健康保険や厚生年金への加入義務が発生する基準を指します。
社会保険の金額は大きいので、この壁を超えると手取りが減る場合があります。その一方で、将来受け取る年金額が増えたり、傷病手当金や出産手当金などの保障を受けられたりするメリットもあります。
・130万円の壁:
夫の扶養を外れて自身で社会保険(勤務先の社会保険や国民健康保険など)に加入し、保険料を負担することになります。
参考記事:ママ薬剤師が産休・育休でもらえるお金を自動計算!産休・育休のポイントも
パート薬剤師は年収の壁の範囲内のほうがお得?
「パートで働くなら、年収の壁を超えないほうが得」と考える方は多いですが、薬剤師の場合、必ずしもそうとは限りません。
薬剤師は時給が高く、勤務時間を増やせば収入を大きく伸ばせる職種です。短時間勤務であってもすぐに壁のラインに到達してしまいます。
年収の壁を意識しすぎて勤務を抑えるよりも、ある程度働いて社会保険に加入したほうが、手取り収入も増え、将来の年金額も増えるメリットがあります。
一方で、子育てとの両立や保育料との兼ね合いから、あえて扶養内を選ぶ家庭もあります。
どちらがよいかは家庭ごとの状況によって異なるため、手取り額がいくらになるかをきちんと計算し、ワークライフバランスや将来の保障も含めて判断することが大切です。
【確定申告の基礎知識】扶養内の薬剤師でも申告は必要?

働き方を変えた際に、確定申告が必要になるのか気になる方もいるでしょう。
どのような場合に確定申告が必要なのかについて解説します。
そもそも確定申告とは
確定申告とは、1年間の所得と税額を計算し、税務署に申告する手続きです。
1月1日から12月31日までの1年間に得たすべての所得とそれに対する税金を計算し、翌年の2月16日から3月15日までの間に税務署へ申告・納税します。
納めすぎた税金が戻ってくる還付の手続きも、この確定申告に含まれます。
会社員やパート勤務の場合は勤務先が税金の計算を行うため、自分で税金を申告する機会はあまりありません。しかし、一定の条件に当てはまる場合は確定申告が必要になります。
年末調整と確定申告の違い
給与所得者の場合、所得税は源泉徴収されています。
年末調整は、勤務先が1年間の所得税の過不足を精算し、正しい税額となるように還付や徴収を行う手続きです。
一方、確定申告は本人が税務署へ申告する手続きであり、年末調整で反映できなかった控除や所得を申告できます。
会社員やパートの多くは年末調整で手続きが完了しますが、例外的に確定申告が必要になるケースもあります。
扶養内勤務なら原則として確定申告は不要
1か所の勤務先で働いており、勤務先で年末調整を受けている場合は、基本的に確定申告は必要ありません。
そのため、調剤薬局や病院でパート勤務をしているママ薬剤師の多くは、勤務先の年末調整だけで手続きが完了します。これは、所得が扶養内であっても扶養を外れていても同様です。
参考記事:現在の状況別 お金と制度解説 「育休復帰前~復帰後」篇
扶養内の薬剤師でも確定申告が必要になるケース

では、扶養内であっても確定申告が必要になるのはどのような場合かを確認してみましょう。
2か所以上の職場を掛け持ちしている
薬剤師のなかには、ダブルワークやスポット勤務をしている方もいます。
複数の勤務先から給与を受け取っている場合、年末調整だけでは税額が正しく計算されないことがあります。そのため、確定申告が必要になる場合があります。
年の途中で退職し、年末調整を受けていない
年の途中で退職し、その後再就職していない場合は年末調整を受けられません。
源泉徴収された所得税が払い過ぎになっていることもあるため、確定申告を行うことで還付を受けられる可能性があります。
医療費控除を適用したい
出産などで一定額以上の医療費を支払った場合は医療費控除を受けられる可能性があります。この控除を利用するためには確定申告が必要です。
多くの場合、家族全員の1年間の医療費が10万円を超えると、医療費控除によって税金が軽減されます。 特定のOTC医薬品を年間12,000円以上購入した場合に適用できる「セルフメディケーション税制」もあります。
確定申告のステップ

上記のような確定申告をするケースにあてはまった場合、「確定申告って難しそう…」と感じるかもしれません。しかし、現在はデジタル化が進み、確定申告の手続きも簡単になっています。確定申告のステップについて解説します。
1 必要な書類を集める
まず、確定申告の内容によって以下のような書類を準備します。
・源泉徴収票
・マイナンバーカード
・医療費の領収書やレシートなど(医療費控除の該当者)
・各種控除証明書(生命保険料控除証明書、寄付金受領証明書など)
事前に準備しておくとスムーズに申告できます。
2 国税庁の「確定申告書等作成コーナー」でスマホ・PCから入力して提出
現在は税務署へ行かなくても、スマートフォンやパソコンから申告できます。
国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を利用すれば、画面の案内に従って入力するだけで申告書を作成できます。
画面の案内に従って、源泉徴収票の金額や医療費の金額、住所・氏名などを入力していくだけで、自動で税金が計算され、提出書類が作成されます。
書類作成後は、マイナンバーカードがあればe-Taxでそのまま提出できます。
ママ薬剤師は制度を理解して、賢い働き方を選ぼう

扶養内での勤務は、子育てと仕事を両立したいママ薬剤師にとって気になる選択肢でしょう。
ただ、薬剤師はパートであっても時給が高いため、想定より早く扶養の範囲を超えることがあります。目先の手取り収入だけでなく、社会保険の保障や将来のキャリアも踏まえながら働き方を考えることが大切です。
薬剤師のメリットと、扶養に関する制度を正しく理解し、自分と家族にとって最適な働き方を選んでくださいね。



