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業界研究 ~製薬企業編~

製薬企業業界について「業界概要」「業界展望」「職種と業務」「働き方とキャリアパス」についてご紹介します。

業界概要:日本の医薬品市場は10兆円規模に。国内外企業の再編が進む

厚生労働省によると、2015年時点の国内の医薬品市場(国内出荷金額)は10兆4785億円(対前年比109%)。国内生産金額は6 兆8204億円(同103.5%)とともに増加しました。生産金額のうち医療用医薬品のシェアは87.9%ですが、その割合は年々減少。一方、一般用医薬品(OTC医薬品)はシェアを拡大しています。近年は、利益の少ない長期収載品(特許切れで後発医薬品が販売されている先発医薬品)を他社に売却し、新薬開発に注力する企業も増えています。
2015年時点で、国内の製薬企業329社のうち内資系企業は292社、外資系企業は37社。規模拡大のために外資系企業がM&Aを積極的に実施しており、今後も業界の再編が進みそうです。

業界展望:画期的な新薬開発が続く一方で、国は薬剤費抑制の動き

日本製薬工業協会は「産業ビジョン2025」のなかで、「創薬イノベーション」と題し、画期的な新薬の開発に取り組む意向を示しています。しかし、国は高騰する薬剤費を抑えるため、薬価の引き下げを推進していく構え。「イノベーションへの投資を阻害する」として、業界と国のせめぎ合いが続いています。

バイオ医薬品

近年、製薬企業はがんや認知症といったアンメット・メディカル・ニーズ(有効な治療法や医薬品がなく、満たされていない医療ニーズ)に応える薬の研究・開発に力を入れています。なかでも活発な動きを見せているのがバイオ医薬品市場。2016年の世界の医薬品売上高上位10品目のうち7品目をバイオ医薬品が占めています。バイオ医薬品とは、遺伝子組み換えや細胞培養などのバイオテクノロジーを用いてつくられる医薬品。iPS細胞技術を活用した創薬開発を手がける企業にも期待が高まっています。

デジタル医薬品

デジタル医薬品とは、デジタルの力で服薬データを管理できる医薬品のこと。2017年11月に大塚製薬株式会社の向精神薬「Abilify MyCite®(エビリファイマイサイト)」が世界で初めて米国で承認されました。
錠剤に極小のセンサーが取り付けられており、服薬すると胃液に反応して信号を発信。その信号を身体に取り付けた検出器が受け取り、専用のアプリに服薬データを送信する仕組みです。
日本ではまだデジタル医薬品の承認例はありませんが、認知症患者や生活習慣病患者をはじめとした服薬管理への効果に注目が集まっています。

薬価制度改革

国は高騰する薬剤費を抑えようと、薬価改定について抜本的な改革を進めています。従来2年に1回だった薬価改定は2021年度から毎年改定へと見直し。また、革新的な新薬の価格の引き下げを一定期間猶予する「新薬創出加算・適応外薬解消等促進加算制度」の要件が厳しくなるなど、製薬業界にとっては向かい風の状況が続いています。

製薬企業の職種と業務

製薬企業ではMR や創薬研究職の他、臨床開発職や学術職、生産管理職など多岐に渡る職種が活躍していますが、ここでは製薬企業の医薬情報を医師や薬剤師に提供するMR(Medical Representative /医薬情報担当者)と、探索・製剤に取り組む創薬研究職、治験業務にあたる臨床開発職について紹介します。

MR

  • 医薬品の情報提供・収集・伝達
  • 自社医薬品の普及

医療関係者に対して日常の診療活動に役立つ情報を提供するとともに、情報を収集・伝達する他、営業職として医療機関を訪問し、自社商品の営業活動を行います。医薬品関連企業への就職において薬学生が選ぶ職種として多いのがMR。MRは薬剤師資格が不要ですが、医薬品に関する専門知識を要することから、薬剤師のニーズは少なくありません。MR 認定センターによると、2016年度のMR6万3185人のうち薬剤師資格の保持者は約10.2%を占めています。

創薬研究職

  • 創薬標的分子の探索
  • 薬効、薬理業務
  • 前臨床試験製剤研究
  • 製剤研究

創薬標的分子の探索や、製剤研究などを行います。基礎から臨床まで幅広い研究を実施します。

臨床開発職

  • 臨床試験実施計画書(プロトコル)の作成
  • 臨床試験(治験)の実施
  • モニタリング

医薬品としての可能性が認められた化合物について、人体への有効性と安全性を臨床試験(治験)で調べます。

製薬企業での働き方とキャリアパス

製薬業界には外資企業も多いですが、国内・外資企業いずれも働き方・キャリアに大差はありません。

働き方

基本的に休日は土・日・祝日。創薬研究職や臨床開発職の場合は転勤や異動も少ないです。ただし、MRは全国転勤を伴う場合がありますので、企業説明会などで採用担当者にきちんと確認しておきましょう。雇用形態は正社員がほとんどですが、MR に関しては「コントラクトMR」も最近は増えています。コントラクトMR は、製薬企業ではなくCSO企業( 製薬企業から業務を受託している企業)に属し、CSO 企業を通じて製薬企業で業務に従事します。契約期間は2~ 3 年でプロジェクトごとに勤務先が異なります。

キャリアパス

「いずれの職種も、専門職で経験を積み、マネジャー職へとキャリアアップします。MR の場合は担当するエリアや施設数を拡大し、営業所長やマネジャーなどマネジメント職に就きます。MR認定センターによると、2016年度の調査では製薬企業に勤める女性管理職182人中114人が外資企業に、68人が内資企業に所属しており、外資企業の方が女性の管理職登用に積極的といえそうです。

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【参考文献】
厚生労働省「平成27年薬事工業生産動態統計年報の概要」、日本製薬工業協会「産業ビジョン2025」、MR認定センター「2017年版MR白書」