業界研究 ~治験業界(CRO・SMO)編~
治験業界(CRO/SMO)業界について「業界概要」「業界展望」「職種と業務」「働き方とキャリアパス」についてご紹介します。
業界概要:CRO業界は堅調に市場拡大。SMO業界は4年振りのプラス成長!
治験とは、医薬品として国の承認を得るために、人における有効性と安全性を調べる臨床試験のことです。治験業界にはCRO(Contract Research Organization / 開発業務委託機関)とSMO(Site Management Organization/治験施設支援機関)の2種類の企業があります(図参照)。
CROとSMOの役割
CROは製薬企業から開発業務の委託を受けて、臨床試験実施計画書(プロトコル)の作成をはじめ、治験モニタリング業務などを行います。市場は順調に拡大しており、日本CRO協会によると同協会会員の2016年の総売上高は1925億円で、前年から11.7%増加しました。
SMOは治験を実施する医療機関に対し、治験システムの構築や関連文書の作成、治験関係者の教育のサポートを行います。近年はオーファンドラッグの開発が増加しており、長期化する治験の利益確保が課題となっています。
市場規模は2012年からマイナス成長が続いていましたが、2016年度の日本SMO協会加盟企業の総売上高は前年度に比べてプラス7.4%の352億円。ここからV字回復できるか注目が集まります。*オーファンドラッグ:患者数が少なく治療法が確立していない病気のための薬
業界展望:治験業界はグローバル化。国際競争で勝つためのコスト減が急務
製薬企業の研究開発費は拡大傾向にあり、臨床開発のアウトソーシングが進行中です。国際共同開発も増加しているため、海外の製薬企業との治験事業も増えていくでしょう。また、医薬品の開発は多様化が進むと同時に専門性も高まっており、CRO、SMOもそうした変化に対応していく必要があります。
◆治験の国際化
現在、国内で行われる治験の2 ~ 3 割を国際共同治験*が占めており、今後も治験業務の国際化はますます進んでいくでしょう。日本の治験企業が世界市場で生き残っていくには、業務効率化に伴うコスト削減と、治験の高品質化が必要といわれています。したがって、治験業務に携わるスタッフのスキルアップも重要となりそうです。*国際共同治験:複数の国又は地域で同時に行う治験のこと。共通基準のもと、くすりの効果と安全性を確認するのに必要な項目を統一した実施計画で同時に実施する
◆専門性の向上
オーファンドラッグの開発や再生医療など、新薬開発は多様化と同時に専門性も高まっています。その傾向はさらに強まるとされ、治験業務に携わるCRO、SMOのスタッフにも専門知識の習得が必要となりそうです。
CROの職種と業務
CROで活躍する主な職種がCRA(Clinical Research Associate/モニター)。
日本CRO協会に所属するCRAは2017年時点で7165人。CRAは製薬会社からの依頼を受けて、医療機関でのモニタリング業務をサポートします。医師や看護師、製薬企業の担当者との関わりが多い半面、被験者と関わることはあまりありません。
他にCROには、CRAが収集した情報をチェックしてデータ化するデータマネジメント(DM)、そのデータを生物統計で解析し、医薬品の有効性や安全性をまとめる統計解析(SA)、CRAが収集した情報の内容をチェックする品質管理(QC)といった職種もあります。
◆CRA
- モニタリング
- 症例データの解析
医療機関への治験依頼や、臨床試験が正しいプロセスで進行しているかの確認、報告書の作成といった一連のモニタリング業務を行います。また、海外の文献に触れる機会も多いため高い英文読解力も必要で、日本CRO協会が主催する治験実務英語検定試験もあります。
SMOの職種と業務
SMOで活躍する主な職種がCRC(Clinical Research Coordinator /治験コーディネーター)。日本SMO協会所属のCRCは3093人(2016年度)。CRCは被験者や医師、看護師などさまざまな関係者との連携が必要となります。
他にSMOには、医療機関との契約書作成や治験の運営、文書の作成など事務業務を担う治験事務局担当者(SMA)という職種もありますが、薬学の専門知識をあまり必要としないため、薬学系卒業者でこの職種に就く人は少ないようです。
◆CRC
- 治験資材の確認
- 被験者のスケジュール・体調の管理
- 治験データの管理
- 治験担当医師のサポート
治験責任医師の指示のもと、医学的判断を伴わない治験業務の支援を行います。
医療機関と被験者の間に立ち、治験がスムーズに進むように業務をサポートします。
CRO/ SMOでの働き方とキャリアパス
◆働き方
基本的に土・日・祝日が休みです。CROは依頼主である製薬企業が本社を構える首都圏にあるケースが多く、場合によっては出張もあります。一方、SMOは治験を実施する医療機関の近くに本社または事務所を構えることが多いため、出張も少ないようです。CRCに比べてCRAの方が残業時間はやや多いですが、どちらも深夜勤務は少なく、女性が働きやすい職種といえそうです。
◆キャリアパス
CRA、CRCそれぞれの職種で専門性を極めるパターンのほか、スタッフの育成やマネジメント業務にあたるマネジャー職を目指すパターンがあります。また、CRAの場合、DM やSA、QCといった他職種へキャリアチェンジも可能です。
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【参考文献】
厚生労働省「平成27年薬事工業生産動態統計年報の概要」、日本製薬工業協会「産業ビジョン2025」、MR認定センター「2017年版MR白書」