powered by m3.com

実務実習で薬学生が意識すべきポイント

CBT(客観試験)とOSCE(客観的臨床能力試験)に合格したら、いよいよ実務実習が始まります。
学習の一環とはいえ、実習先の病院・薬局は“本物”の臨床現場。患者さんからすると実習生もプロの医療従事者として目に映っています。学生という「甘え」は捨てて、「薬学のプロとして働くための第一歩」を価値あるものとしてください。

ここでは、実務実習のスケジュールや業務内容、到達目標について解説します。

「患者体験」を重視する4期制がスタート

まずは、実務実習の日程について。
2019年度より従来の3期制から4期制へと実習期間が変わりました。4期制への変更に伴い、実務実習の開始時期は約2カ月間早まり、学生によっては4年次の2月から実務実習が始まります。

表1:実務実習の開始時期


4期制において、薬学生は実習期間を2期連続にする必要があり、「Ⅰ期に薬局実習、Ⅲ期に病院実習」のように間を空けて選択することはできません。
その代わり、これまで「病院実習」「薬局実習」にそれぞれ設定されていた評価が統一され、病院・薬局に共通した業務は、いずれかの実習で修得していれば省略できるようになりました(詳細は後述の「実務実習」の章をご覧ください)。節約した時間を病棟業務やチーム医療、在宅医療などに充て、「患者体験」を重視した実習を進めることが4期制の狙いです。

そのほか、就職活動との両立にも注意しましょう。
多くの企業はインターンシップを5年生の夏~冬にかけて実施しています。約5カ月間は実習中心の生活になるため、志望する企業のインターンシップが実習と被らないように、しっかりとスケジュールを立てましょう。

実習内容

では、次に実習内容についてみていきましょう。
これまで、実務実習は「事前学習」「病院実習」「薬局実習」の3領域に分かれていました。しかし、2019年度から病院・薬局に共通している業務の評価が統一され、病院・薬局どちらかで修得すれば、再度同じ項目を学ぶ必要がなくなりました。統一後の項目は下記の通り。

薬学臨床の基礎 早期臨床体験 ※原則2年次修了までに大学で学習する事項
臨床における心構え
臨床実習の基礎
処方箋に基づく調剤 法令・規則等の理解と遵守
処方箋と疑義照会
処方箋に基づく医薬品の調製
患者・来局者応対、服薬指導、患者教育
医薬品の供給と管理
安全管理
薬物療法の実践 患者情報の把握
医薬品情報の収集と活用
処方設計と薬物療法の実践(処方設計と提案)
処方設計と薬物療法の実践(薬物療法における興亜と副作用の評価)
チーム医療への参画 医療機関におけるチーム医療
地域におけるチーム医療
地域の保健・医療・福祉への参画 在宅(訪問)医療・介護への参画
地域保健(公衆衛生、学校薬剤師、啓発活動)への参画
プライマリ・ケア、セルフメディケーションの実践
災害時医療と薬剤師


新しい実務実習のカリキュラムでは、病院・薬局に共通する業務はいずれかで重点的に学び、できるだけ患者体験に多くの時間を充てるよう設計されています。なかでも、「がん、高血圧症、糖尿病、心疾患、脳血管障害、精神神経疾患、免疫・アレルギー疾患・感染症」の8疾患について、紙面や模擬患者ではなく、実際に患者さんと継続的に関わることが推奨されています。これらの疾患と関連する検査値、またその治療薬について理解を深めておくと、より充実した患者体験ができるはずです。本稿の末尾に、付録として「看護師・医師がよく使う略語」「各検査の覚えておくべき基準値」「代表的8疾患の具体例」を掲載しているので、こちらを活用して実習への不安を解消してください。

それでは、各実習項目とその到達目標について説明していきます。

薬学臨床の基礎

臨床における心構え

到達目標

  1. 医療の担い手が守るべき倫理規範を遵守し、ふさわしい態度で行動する
  2. 患者・生活者の基本的権利、自己決定権について配慮する
  3. 薬学管理を実践する際に、インフォームドコンセントを得ることができる
  4. 職務上知り得た情報について守秘義務を遵守する

※大学で学ぶべき項目(旧カリキュラムにおける「事前学習」領域)については割愛(以下同)

医療人としての倫理観、ふさわしい態度について学びます。特に気をつけたいのは個人情報保護法、守秘義務について。実習を通じて知った患者情報はもちろん、薬局スタッフ、指導薬剤師に関する情報も個人情報です。悪意がなかったとしても、個人情報についてSNSに書き込むことなどは許されません。プライバシーを侵害しないように制度を正しく理解しましょう。

臨床実習の基礎

到達目標

  1. 病院における薬剤部門の位置づけと業務の流れについて他部門と関連づけて説明できる
  2. 代表的な疾患の入院治療における適切な薬学的管理について説明できる
  3. 入院から退院に至るまで入院患者の医療に継続して携わることができる
  4. 急性期医療(救急医療・集中治療・外傷治療等)や周術期医療における適切な薬学的管理について説明できる
  5. 周産期医療や小児医療における適切な薬学的管理について説明できる
  6. 終末期医療や緩和ケアにおける適切な薬学的管理について説明できる
  7. 外来化学療法における適切な薬学的管理について説明できる
  8. 保険評価要件を薬剤師業務と関連付けて概説することができる
  9. 薬局における薬剤師業務の流れを相互に関連付けて説明できる
  10. 来局者の調剤に対して、処方せんの受付から薬剤の交付に至るまで継続して関わることができる

病院・薬局それぞれで薬剤師が担う業務の概要を学びます。急性期医療および周術期医療、周産期医療など病院でしか学べない内容もありますが、終末期医療・緩和ケアは病院・在宅のどちらでも行われています。病院・在宅で薬剤師が果たす役割にどのように変わるのか意識してみると良いでしょう。

処方箋に基づく調剤

法令・規則等の理解と遵守

到達目標

  1. 調剤業務に関わる法的文書(処方せん、調剤録等)の適切な記載と保存・管理ができる
  2. 法的根拠に基づき、一連の調剤業務を適切に実施する
  3. 保険薬局として必要な条件や設備等を具体的に関連付けて説明できる

病院・薬局で働くにあたり、「薬剤師法」や「医薬品医療機器等法(薬機法)」、「毒物及び劇物取締法」「麻薬及び向精神薬取締法」「大麻取締法」「あへん法」「覚せい剤取締法」など関連法規は多岐に渡ります。国家試験対策も兼ねてしっかり学びましょう。

処方箋と疑義照会

到達目標

  1. 処方せんの記載事項(医薬品名、分量、用法・用量等)が適切であるか確認できる
  2. 注射薬処方せんの記載事項(医薬品名、分量、投与速度、投与ルート等)が適切であるか確認できる
  3. 処方せんの正しい記載方法を例示できる
  4. 薬歴、診療録、患者の状態から判断して適切に疑義照会ができる

実際の処方箋を教材にしながら、その妥当性を判断できるようになりましょう。注射剤は投与方法・投与時間、投与速度、投与間隔、配合変化など、内服薬に比べて確認事項が多く、確認漏れが起こりがち。一つひとつ意識して監査しましょう。
疑義照会については形式的な不備だけでなく、患者さんにとってより最適な処方を提案できないかを意識すると良いでしょう。

処方箋に基づく医薬品の調製

到達目標

  1. 主な医薬品の一般名・剤形・規格から該当する製品を選択できる
  2. 適切な手順で後発医薬品を選択できる
  3. 処方せんに従って計数・計量調剤ができる
  4. 錠剤の粉砕、およびカプセル剤の開封の可否を判断し、実施できる
  5. 一回量(一包化)調剤の必要性を判断し、実施できる
  6. 注射処方せんに従って注射薬調剤ができる
  7. 注射剤・散剤・水剤等の配合変化に関して実施されている回避方法を列挙できる
  8. 注射剤(高カロリー輸液等)の無菌的混合操作を実施できる
  9. 抗悪性腫瘍薬などの取扱いにおけるケミカルハザード回避の手技を実施できる
  10. 特別な注意を要する医薬品(劇薬・毒薬・麻薬・向精神薬・抗悪性腫瘍薬等)の調剤と適切な取扱いができる
  11. 調製された薬剤に対して、監査が実施できる

実際の処方箋にもとづき、散剤、水剤、軟膏、一包化、錠剤等の粉砕など適切な賦形等調剤業務および調製を終えた薬剤の監査について実践します。
麻薬など特別な注意が必要な医薬品の調剤は「法令・規則等の理解と遵守」で学んだ関連法規にのっとり、適切に行いましょう。

患者・来局者応対、服薬指導、患者教育

到達目標

  1. 患者・来局者に合わせて適切な応対ができる
  2. 患者・来局者から、必要な情報(症状、心理状態、既往歴、生活習慣、アレルギー歴、薬歴、副作用歴等)を適切な手順で聞き取ることができる
  3. 医師の治療方針を理解した上で、患者への適切な服薬指導を実施する
  4. 患者・来局者の病状や背景に配慮し、医薬品を安全かつ有効に使用するための服薬指導や患者教育ができる
  5. 妊婦・授乳婦、小児、高齢者等特別な配慮が必要な患者への服薬指導において、適切な応対ができる
  6. お薬手帳、健康手帳、患者向け説明書等を使用した服薬指導ができる
  7. 収集した患者情報を薬歴や診療録に適切に記録することができる

病院・薬局それぞれで、一連の患者対応を体験します。指導薬剤師の患者対応をよくみて、「服薬時の注意点をわかりやすく説明する工夫」「患者の悩みを聞き出すための話し方、態度」など、患者に寄り添った服薬指導について理解を深めましょう。

医薬品の供給と管理

到達目標

  1. 医薬品の供給・保管・廃棄について適切に実施できる
  2. 医薬品の適切な在庫管理を実施する
  3. 医薬品の適正な採用と採用中止の流れについて説明できる
  4. 劇薬・毒薬・麻薬・向精神薬および覚醒剤原料の適切な管理と取り扱いができる
  5. 特定生物由来製品の適切な管理と取り扱いを体験する

病院・薬局で取り扱う医薬品を把握し、発注や補充、棚卸しなど在庫管理について体験します。
在庫管理はいわゆる対物業務ですが、患者さんに適切な医薬品を提供するために欠かせない業務です。採用薬の選択の流れや、麻薬など特別な注意が必要な医薬品の管理と合わせて、実習先のルールや指導薬剤師の工夫について学びましょう。

安全管理

到達目標

  1. 特にリスクの高い代表的な医薬品(抗悪性腫瘍薬、糖尿病 治療薬、使用制限のある薬等)の安全管理を体験する
  2. 調剤ミスを防止するために工夫されている事項を具体的に説明できる
  3. 施設内のインシデント(ヒヤリハット)、アクシデントの事例をもとに、リスクを回避するための具体策と発生後の適切な対処法を提案することができる
  4. 施設内の安全管理指針を遵守する
  5. 施設内で衛生的な手洗い、スタンダードプリコーションを実施する
  6. 臨床検体・感染性廃棄物を適切に取り扱うことができる
  7. 院内での感染対策(予防、蔓延防止など)について具体的な提案ができる

実習先の安全管理体制について理解し、安全管理を意識しながら薬剤師業務を実践しましょう。実習期間中に体験したインシデントやアクシデントについて原因を議論して、失敗を繰り返さないための改善案を出すことも大切です。

薬物療法の実践

患者情報の把握

到達目標

  1. 基本的な医療用語、略語を適切に使用できる
  2. 患者・来局者および種々の情報源(診療録、薬歴・指導記録、看護記録、お薬手帳、持参薬等)から、薬物療法に必要な情報を収集できる
  3. 患者の身体所見を薬学的管理に活かすことができる

適切に薬物療法を進めるためには、診療録や検査値、お薬手帳などの各種媒体と患者の訴えから、正しく情報収集する必要があります。検査値の理解に不安がある人は、「各検査の覚えておくべき基準値」を使って実習前に暗記しておきましょう。

医薬品情報の収集と活用

到達目標

  1. 施設内において使用できる医薬品の情報源を把握し、利用することができる
  2. 薬物療法に対する問い合わせに対し、根拠に基づいた報告書を作成できる
  3. 医療スタッフおよび患者のニーズに合った医薬品情報提供を体験する
  4. 安全で有効な薬物療法に必要な医薬品情報の評価、加工を体験する
  5. 緊急安全性情報、安全性速報、不良品回収、製造中止などの緊急情報を施設内で適切に取扱うことができる

患者や他の医療職への医薬品情報の作成・提供について学びます。
情報提供と一口にいっても、患者相手と医療職相手では求められる表現は大きく異なります。指導薬剤師が相手によってどのように表現を使い分けているのか、注目すると良いでしょう。

処方設計と薬物療法の実践(処方設計と提案)

到達目標

  1. 代表的な疾患の患者について、診断名、病態、科学的根拠等から薬物治療方針を確認できる
  2. 治療ガイドライン等を確認し、科学的根拠に基づいた処方を立案できる
  3. 患者の状態(疾患、重症度、合併症、肝・腎機能や全身状態、遺伝子の特性、心理・希望等)や薬剤の特徴(作用機序や製剤的性質等)に基づき、適切な処方を提案できる
  4. 処方設計の提案に際し、薬物投与プロトコールやクリニカルパスを活用できる
  5. 入院患者の持参薬について、継続・変更・中止の提案ができる
  6. アドヒアランス向上のために、処方変更、調剤や用法の工夫が提案できる
  7. 処方提案に際して、医薬品の経済性等を考慮して、適切な後発医薬品を選択できる
  8. 処方提案に際し、薬剤の選択理由、投与量、投与方法、投与期間等について、医師や看護師等に判りやすく説明できる

「がん、高血圧症、糖尿病、心疾患、脳血管障害、精神神経疾患、免疫・アレルギー疾患・感染症」の8疾患を中心に、処方設計の提案、治療薬の変更・中止の提案等を体験します。 代表的8疾患の具体例については、末尾の「代表的8疾患の具体例」を参考にしてください。

処方設計と薬物療法の実践(薬物療法における効果と副作用の評価)

到達目標

  1. 医薬品の効果と副作用をモニタリングするための検査項目とその実施を提案できる
  2. 薬物血中濃度モニタリングが必要な医薬品が処方されている患者について、血中濃度測定の提案ができる
  3. 薬物血中濃度の推移から薬物療法の効果および副作用について予測できる
  4. 臨床検査値の変化と使用医薬品の関連性を説明できる
  5. 薬物治療の効果について、患者の症状や検査所見などから評価できる
  6. 副作用の発現について、患者の症状や検査所見などから評価できる
  7. 薬物治療の効果、副作用の発現、薬物血中濃度等に基づき、医師に対し、薬剤の種類、投与量、投与方法、投与期間等の変更を提案できる
  8. 報告に必要な要素(5W1H)に留意して、収集した患者情報を正確に記載できる
  9. 患者の薬物治療上の問題点を列挙し、適切な評価と薬学的管理の立案を行い、SOAP形式等で適切に記録する
  10. 医薬品・医療機器等安全性情報報告用紙に、必要事項を記載できる

「処方設計と薬物療法の実践(処方設計と提案)」と関連して、薬物治療の効果および副作用について学びます。患者の状態をモニタリングし、薬物治療の有効性が不十分な場合や副作用を確認した場合には対策を検討しましょう。

チーム医療への参画

医療機関におけるチーム医療

到達目標

  1. 薬物療法上の問題点を解決するために、他の薬剤師および医師・看護師等の医療スタッフと連携できる
  2. 医師・看護師等の他職種と患者の状態(病状、検査値、アレルギー歴、心理、生活環境等)、治療開始後の変化(治療効果、副作用、心理状態、QOL等)の情報を共有する
  3. 医療チームの一員として、医師・看護師等の医療スタッフと患者の治療目標と治療方針について討議(カンファレンスや患者回診への参加等)する
  4. 医師・看護師等の医療スタッフと連携・協力して、患者の最善の治療・ケア提案を体験する
  5. 医師・看護師等の医療スタッフと連携して退院後の治療・ ケアの計画を検討できる
  6. 病院内の多様な医療チーム(ICT、NST、緩和ケアチーム、褥瘡チーム等)の活動に薬剤師の立場で参加できる

カンファレンスや薬剤師が関連する医療チームへの参加など、他の医療スタッフとの連携を体験します。薬剤師がチーム内でどんな役割を果たし、また、他職種と円滑にコミュニケーションをとるためにどんな工夫しているのか、指導薬剤師の取り組みに注目しましょう。

地域におけるチーム医療

到達目標

  1. 地域における医療機関と薬局薬剤師の連携を体験する
  2. 地域医療を担う職種間で地域住民に関する情報共有を体験する

薬薬連携をはじめ、地域医療に関する多職種連携について体験します。退院後も薬物治療を継続するために、在宅医療に携わる各スタッフがどのように情報共有をしているのか学びましょう。

地域の保健・医療・福祉への参画

在宅(訪問)医療・介護への参画

到達目標

  1. 在宅医療・介護に関する薬剤師の管理業務(訪問薬剤管 理指導業務、居宅療養管理指導業務)を体験する
  2. 地域における介護サービスや介護支援専門員等の活動と薬剤師との関わりを体験する
  3. 在宅患者の病状(症状、疾患と重症度、栄養状態等)とその変化、生活環境等の情報収集と報告を体験する

薬局での在宅医療、居宅介護の支援業務について体験します。在宅医療はこれからの薬局薬剤師としてキャリアを高めていくうえで必須の業務です。可能な限り患者宅を訪問し、実際に服用している薬剤の管理状況を確認しましょう。薬局内のコミュニケーションだけではみえにくい、日常での療養状況について理解が深まるはずです。

地域保健(公衆衛生、学校薬剤師、啓発活動)への参画

到達目標

  1. 学校薬剤師の業務を体験する
  2. 地域住民の衛生管理(消毒、食中毒の予防、日用品に含まれる化学物質の誤嚥誤飲の予防等)における薬剤師活動を体験する

学校薬剤師業務を体験するほか、薬物乱用防止活動、禁煙活動、認知症サポートなど、地域住民の衛生管理に関する啓発活動に参加します。これらの「地域貢献」は、かかりつけ薬剤師の算定要件にもなっている薬剤師の大切な役割のひとつです。

プライマリケア、セルフメディケーションの実践

到達目標

  1. 薬局製剤(漢方製剤含む)、要指導医薬品・一般用医薬品、健康食品、サプリメント、医療機器等をリスクに応じ適切に取り扱い、管理できる。
  2. 来局者から収集した情報や身体所見などに基づき、来局者の病状(疾患、重症度等)や体調を推測できる
  3. 来局者に対して、病状に合わせた適切な対応(医師への受診勧奨、救急対応、要指導医薬品・一般用医薬品および検査薬などの推奨、生活指導等)を選択できる
  4. 選択した薬局製剤(漢方製剤含む)、要指導医薬品・一般用医薬品、健康食品、サプリメント、医療機器等の使用方法や注意点などを来局者に適切に判りやすく説明できる
  5. 疾病の予防および健康管理についてのアドバイスを体験する

地域住民のセルフメディケーションを推進する健康相談について体験します。健康相談では、一般用医薬品や健康食品の知識をはじめ、副作用・相互作用についての理解も求められます。顧客のニーズを丁寧に聞き取ったうえで、製品紹介、生活指導、受診勧告など適切な対応をできるように努めましょう。

災害時医療と薬剤師

到達目標

  1. 災害時における地域の医薬品供給体制・医療救護体制について説明できる
  2. 災害時における病院・薬局と薬剤師の役割について討議する

災害時の医療体制および薬剤師の役割について学びます。
他の項目と異なり災害時医療は机上で学ぶことになりますが、さまざまな災害の状況を想定し、必要な医薬品の備蓄、供給、保管や、多職種連携について議論しましょう。

「患者に寄り添う心」をもって対人業務を

いかがでしたしょうか。
CBT(客観試験)とOSCE(客観的臨床能力試験)を終えた皆さんならば、医薬品や業務内容について一通りの知識は頭に入っていることと思います。
しかし、患者さんが安心して最適な薬物療法を受けられるようにサポートするためには、知識だけでなく「寄り添う心」が大切です。
そして、それは実際に患者さんと関わらなければ身につかないもの。はじめはうまくいかないことも多いでしょうが、指導薬剤師のアドバイスを得ながら、積極的に対人業務にのぞんでください。

付録

ここでは実務実習に臨むにあたり、覚えておくべき略語と検査値、「8疾患」の具体例を紹介します。
取り上げた略語、数値は最低限知っておいてほしい必須級のものばかり。もし覚えていない項目があった人は必ず暗記しておきましょう。
当然ながら、これらに加えて医薬品の知識を増やすことも大切です。実務実習を迎える前に、自己研さんに励んでください。

看護師・医師がよく使う略語

臨床現場、特に病院実習で耳にする機会の多い略語をピックアップしました。
代表的なものを掲載していますが、実習先によっては職場内・チーム内だけで通用する略語が使われていることも。下記の略語に加えて先輩から情報収集しておくと、実習中の混乱を防げるかもしれません。

略語 欧文名 和文名
イレウス Ileus[ラテン語] 腸閉塞
ウロ Uterus[ラテン語] 泌尿器科
エント Entlassung [ドイツ語] 退院
カテ Catheterization カテーテル法
ケッチン - 赤血球沈降速度
サポ suppository 坐剤
しんカテ - 心臓カテーテル法
ドレナージ dränage [独] 排液法,誘導法、排膿法
ドレーン Drän [独] 導管、排液管
バイタル Vital signs 生命徴候(体温、血圧、脈拍、呼吸など)
バルーン Balloon catheter 尿路留置用カテーテル
ピーシー platelet concentrate 濃縮血小板

各検査の覚えておくべき基準値

検査値は患者情報を捉えるうえで、必要不可欠な指標のひとつです。
ここでは、日本臨床検査医学会が公表している「学生用共通基準範囲」から主要な項目をピックアップしました。図表の数値は診断学教育の効率化のため「きりの良い数字」となっています。皆さんが大学で習った基準値と異なる可能性があることを留意してください。

大領域 中領域 検査項目(略称) 単位 基準値
血液学的検査 出血・凝固検査 出血時間 min 5以下
プロトロンビン時間(PT) sec 10~12
% 70~130
INR 0.9~1.1
活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT) sec 30~40
フィブリノゲン mg/dL 200~400
フィブリン分解産物(FDP) μg/dL 5.0以下
D-Dダイマー μg/dL 1.0以下
ヘモグロビンA1c % 5.6以下
赤血球沈降速度 mm/hour 男性:10未満
mm/hour 女性:15未満
赤血球数(RBC) 106/μL 男性:4.0~5.5
106/μL 女性:3.5~5.0
血色素測定(Hb) g/dL 男性:14~18
g/dL 女性:12~16
ヘマトクリット値(Ht) % 男性:40~50
% 女性:35~45
平均赤血球容積(MCV) fL 80~100
平均赤血球ヘモグロビン(MCH) pg 30~35
平均赤血球ヘモグロビン濃度(MCHC) g/dL 30~35
網赤血球 % 0.2~2.0
白血球数 103/μL 3.5~9.0
血小板数 104/μL 15~35
末梢血液像 桿状核好中球 % 0~5
分葉核好中球 % 40~70
好酸球 % 1~5
好塩基球 % 0~1
単球 % 0~10
リンパ球 % 20~50
生化学検査 グルコース(BS) mg/dL 80~110未満
総蛋白(TP) g/dL 6.5~8.0
アルブミン(Alb) g/dL 4.0~5.0
蛋白分画 アルブミン % 60~70
α1-グロブリン % 2~3
α2-グロブリン % 5~10
β-グロブリン % 7~10
γ-グロブリン % 10~20
尿素窒素(UN) mg/dL 8~20
クレアチニン(Cr) mg/dL 男性:0.5~1.0
mg/dL 女性:0.4~0.8
尿酸(UA) mg/dL 男性:3.5~7.0
mg/dL 女性:2.5~6.0
総コレステロール(TC) mg/dL 130~220未満
トリグリセリド(TG) mg/dL 30~150未満
HDL-コレステロール(HDL-C) mg/dL 40~100
総ビリルビン(T-Bil) mg/dL 0.2~1.2
直接ビリルビン(D-Bil) mg/dL 0.4未満
間接ビリルビン(I-Bil) mg/dL 0.8未満
アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(ALT) U/L 10~35
アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT) U/L 5~30
ナトリウム(Na) mmoL/L 135~145
カリウム(K) mmoL/L 3.5~4.5
クロール(Cl) mmoL/L 100~110
カルシウム(Ca) mg/dL 8.5~10.0
無期リン(Pi) mg/dL 2.0~4.0
鉄(Fe) μg/dL 男性:60~200
μg/dL 女性:40~180
アンモニア μg/dL 50未満
チモール混濁反応(TTT) KU 5未満
硫酸亜鉛試験(ZTT) KU 4~12
乳酸脱水素酵素(LDH) U/L 120~220
アルカリホスファターゼ(ALP) U/L 100~350
γグルタミナルトランスペプチダーゼ(γ-GT) U/L 男性:10~50
U/L 女性10~30
コリンエステラーゼ(ChE) U/L 200~450
アミラーゼ U/L 40~130
クレアチンキナーゼ(CK) U/L 男性:60~250
U/L 女性;50~170

※大学で学ぶべき項目(旧カリキュラムにおける「事前学習」領域)については割愛(以下同)
https://www.jslm.org/committees/standard/ref_2011.html
https://www.jslm.org/committees/standard/referencerange110222.pdf

代表的8疾患の具体例

病棟業務や在宅医療等で実際に体験することが望ましいとされている、代表的8疾患(がん、高血圧、糖尿病、心疾患、脳血管疾患、精神神経疾患、免疫・アレルギー疾患、感染症)の具体例を記載しました。
具体例として挙げたすべての疾患の患者と出会えるとは限りませんが、知識不足の疾患がないかチェックし、可能な限り弱点をなくしておきましょう。

がん
  • 白血病
    急性(慢性)骨髄性白血病、急性(慢性)リンパ性白血病、成人 T 細胞白血病(ATL)
  • 悪性リンパ腫および多発性骨髄腫
  • 骨肉腫
  • 消化器系の悪性腫瘍(胃癌、食道癌、肝癌、大腸癌、胆囊・胆管癌、膵癌)
  • 肺癌
  • 頭頸部および感覚器の悪性腫瘍(脳腫瘍、網膜芽細胞腫、喉頭、咽頭、鼻腔・副鼻腔、口腔の悪性腫瘍)
  • 生殖器の悪性腫瘍(前立腺癌、子宮癌、卵巣癌)
  • 腎・尿路系の悪性腫瘍(腎癌、膀胱癌)
  • 乳癌
  • 皮膚癌


※がんの支持療法、緩和ケアを含む

高血圧症
  • 高血圧症
    本態性高血圧症、二次性高血圧症(腎性高血圧症、腎血管性高血圧症を含む)
  • 肺高血圧症
糖尿病
  • 1型糖尿病
  • 2型糖尿病
  • 妊娠糖尿病
  • その他の糖尿病
  • 糖尿病の合併症
  • 耐糖能異常
心疾患
  • 不整脈
    上室性期外収縮(PAC)、心室性期外収縮(PVC)、心房細動(Af)、心房粗動(AF)、発作性上室頻拍(PSVT)、WPW 症候群、心室頻拍(VT)
    心室細動(Vf)、房室ブロック、QT 延長症候群
  • 洞不全症候群
  • 急性および慢性心不全
  • うっ血性心不全
  • 左室不全
  • 虚血性心疾患
  • 狭心症、心筋梗塞
  • 心筋症
  • 心筋炎
  • 心膜炎
  • 慢性リウマチ性心疾患
  • 心原性ショック
  • 弁膜症
  • 先天性心疾患
脳血管障害
  • 脳内出血
  • 硬膜下出血
  • くも膜下出血
  • 脳梗塞
    脳血栓症、脳塞栓症
  • 一過性脳虚血発作
  • 無症候性脳梗塞
  • 脳実質外動脈閉塞及び狭窄


※予防ならびに後遺症への対応を含む

精神神経疾患
  • 統合失調症
  • うつ病
  • 躁病
  • 双極性障害
  • 全般性不安障害
  • 持続性気分障害
  • 神経症性障害
  • 多動性障害
  • 器質性人格障害
  • 強迫神経症
  • 摂食障害
  • 知的障害
  • 適応障害
  • てんかん
  • 認知症
  • Narcolepsy(ナルコレプシー)
  • 薬物依存症
  • アルコール依存症
  • せん妄
  • 幻覚症
  • 不眠
  • 睡眠覚醒リズム障害
免疫・アレルギー疾患
  • アトピー性皮膚炎
  • 蕁麻疹
  • 接触性皮膚炎アレルギー性鼻炎
  • アレルギー性結膜炎
  • 花粉症
  • 消化管アレルギー
  • 気管支喘息
  • 薬物アレルギー
    Stevens-Johnson(スティーブンス-ジョンソン)症候群、中毒性表皮壊死症、薬剤性過敏症症候群、薬疹
  • アナフィラキシーショック
  • 尋常性乾癬
  • 水疱症
  • 光線過敏症
  • ベーチェット病
  • 臓器特異的自己免疫疾患
    バセドウ病、橋本病、悪性貧血、アジソン病、重症筋無力症、多発性硬化症、特発性血小板減少性紫斑病、自己免疫性溶血性貧血、シェーグレン症候群
  • 全身性自己免疫疾患
    全身性エリテマトーデス、強皮症、多発筋炎/皮膚筋炎、関節リウマチ
  • 臓器移植(腎臓、肝臓、骨髄、臍帯血、輸血)における、拒絶反応および移植片対宿主病(GVHD)
感染症
  • 細菌感染症
    呼吸器感染症、消化器感染症、感覚器感染症、尿路感染症、性感染症、 脳炎、髄膜炎、皮膚細菌感染症、感染性心膜炎、胸膜炎、耐性菌による院内感染、全身性細菌感染症(ジフテリア、劇症型 A 群 β 溶血性連鎖球菌感染症、新生児 B 群連鎖球菌感染症、破傷風、敗血症)
  • ウイルス感染症およびプリオン病
    ヘルペスウイルス感染症、サイトメガ口ウイルス感染症、インフルエンザ、ウイルス性肝炎、 HIV 感染症および後天性免疫不全症候群、伝染性紅斑(リンゴ病)、手足口病、伝染性単核球症、突発性発疹、咽頭結膜熱、ウイルス性下痢症、麻疹、風疹、流行性耳下腺炎、風邪症候群、クロイツフェルト-ヤコブ病
  • 真菌感染症
    皮膚真菌症、カンジタ症、ニューモシスチス肺炎、肺アスペルギルス症、クリプトコックス症
  • 原虫
    マラリア、トキソプラズマ症、トリコモナス症、アメーバ赤痢
  • 寄生虫感染症
    回虫症、蟻虫症、アニサキス症

http://www.jshp.or.jp/cont/18/0222-1-3.pdf