投資家向け情報(IR情報)を使った企業研究の仕方①
企業研究をする際、確認をしてほしいのは投資家向けの情報(以下、IR情報)です。
IR情報を見ることで、企業をとりまく市況や企業の抱える課題への対応を知ると同時に、数字による客観的な企業状況をつかむことができます。
上場企業であればIR情報の公開が義務付けられていますが、上場をしていない企業でも、自社の活動報告として情報を公開している場合があります。
就職活動は、あなたが一生働くことになるかもしれない企業を選ぶ大切な時間。納得のいく就職活動を実現するためにも、企業を判断する目を養いましょう。
本ページ「投資家向け情報を使った企業研究の仕方①」では“IR情報とは/IR情報に掲載されていること”のテーマでご説明、「投資家向け情報を使った企業研究の仕方②」では“IR情報を深く見てみよう~「財務健全性」とは~”のテーマでご説明します。
IR情報とは
IRはInvestor(投資家)Relations(関係)の略称で、自社の財務状況や戦略が記載されています。
企業にとって、事業を行うのにはお金(資金)が必須。
つまり、出資者に自社の健全性や魅力をアピールし、お金を出してもらうための説得材料なのです。
IR情報に掲載されていること
以下は一般的なIR情報例です。一つずつ、見てみましょう。
トップメッセージ
企業代表者からのメッセージで、企業理念が書かれているケースが多くあります。
また、自社で行っている取り組みや強みが記載されている場合もあります。
IRニュース
決算説明資料の発表日や、役員の変更について書かれています。
薬局やドラッグストアの場合、新規店舗開局の情報が掲載されている場合もあります。
財務ハイライト
売上高や営業利益など、企業のお金に関する情報が過去数年分に渡り掲載されています。
グラフ化されていることが多く、売上が伸びているのか、利益は出ているのかといった内容分かりやすく記載されています。
IRカレンダー
IR情報に関する年間の予定や、決算説明会など、イベントに関する情報が掲載されています。
IRライブラリ
IR情報といえば、IRライブラリに掲載されている情報が一番重要で、「決算短信」、「有価証券報告書」、「決算説明資料」の3種類で構成されています。
これらの情報は「会社の1年間の成績表」と考えると良いでしょう。
1年間でどの位の売上や利益が出たのか、お金はどのように調達し、保管しているのか、事業を進めてきた結果はどうだったのかなど、企業の運営の結果が余す所なく記載されています。
資料の前に「四半期」という言葉がついていますが、これは3ヶ月間という意味です。
学校の成績表が学期毎に出るように、企業の成績も1年間を4分割して、各社それぞれのタイミングで発表します。
ちなみに、第1四半期というのは1年が始まって最初の3ヶ月間という意味です。
4月がスタートとなる企業では第1四半期は4~6月、第2四半期は7~9月、第3四半期は10~12月となります。
第4四半期では1年を通した企業の結果を出すため、第4四半期資料というものは出さずに、年間を通した結果を発表します。
決算短信
決算短信とは、証券取引所の適時開示ルールにのっとり作成された、決算速報のことを指します。 「貸借対照表」と「損益計算書」の2つの資料で構成されており、会計期間毎の企業の成績が記載されています。
■貸借対照表
別名、「バランス・シート(B/S)」と呼ばれています。
企業の運営に必要なお金などをどのように調達したのか、どのように保管しているのか、どのように使用しているのかを示しています。
■損益計算書
別名「Profit&Loss Statement(P/L)」と呼ばれています。
一定期間内の収益と支出の状態を表しており、収益(稼ぎ)と支出(コスト)を対比して、どの程度の利益(儲け)が出ているのかが分かる資料です。
有価証券報告書
企業のお金(資金)、従業員数の変化、事業や営業活動の状況、設備状況、財務状況などが記載されています。
決算説明資料
投資家向けの説明会などで使われる資料で、有価証券報告書に記載されている内容を分かりやすくまとめたものです。
【参考文献】
並木秀明(2013)『マンガ 財務諸表入門』サンマーク文庫、國貞克則(2011)『ストーリーでわかる財務3表超入門』ダイヤモンド社