投資家向け情報(IR情報)を使った企業研究の仕方②
IR情報を深く見てみよう ~「財務健全性」とは~
貸借対照表(B/S)を用いた、「財務健全性」の見方をお教えします。
財務健全性とは、「どれだけ自分のお金で事業を行えているか」を判断するものです。
企業経営には、莫大なお金が必要ですが、そのお金の多くが借りたものであると、いずれ使えるお金がなくなり、倒産にもつながります。
長く働く会社を選ぶ際は、その企業の財務状況が健全であるのかを知るのは重要なことです。
財務健全性を確認しよう
まずは、貸借対照表から説明します。実際の貸借対照表には細かな項目がありますが、基本的な枠組みは以下のようになっています。
資産の部 | 負債の部 |
集めたお金をどのように保有、使用しているかを表しています。 | 他人から集めたお金で、返済をしなくてはいけません。 |
純資産の部 | |
自分のお金で、返す必要がありません。 |
例えば、あなたがパソコンを使って何か事業を始めると仮定します。
パソコンが20万円で、自身の貯金から15万円、親から1年以内に返す約束で10万円を借りて事業を開始します。
その状況を貸借対照表にならって表すと以下のようになります。
単位(千)
資産 | 負債 | ||
現金 パソコン |
50 200 |
親から借りたお金 | 100 |
純資産 | |||
自分の貯金 | 150 |
表の右側がお金をどのように集めたかを表しており、左側はその集めたお金をどのような形で保有しているかを表しています。
事業を開始したもののまったく儲からず、1年が経ってしまった場合は、親から借りた10万円を返すことができず、事業を続けられなくなります。
しかし、もし、自分の貯金が30万円あった場合、お金を借りる必要はないので、事業を続けられなくなる懸念はありません。
そして、以下が企業の財務健全性を見る指標で、自己資本比率と呼ばれているものです。
さきほどの例に合わせて式を表すと以下になります。
数字をあてはめてみると、下記のようになり、自己資本比率は60%となります。
次に見るポイントは、この60%という値が高いか、低いかという点です。
この自己資本比率の適正値は業界によって違いがあり、市況に応じて変動します。
数値が適正であるかどうかを判断するためには、経済産業省が発表している「企業活動基本調査速報」を見てください。
産業別、1企業当たり総資本、純資産、自己資本比率、自己資本当期利益率、総資本当期利益率という資料の中に、小売業-医薬品・化粧品小売業という産業区分があります。
薬局やドラッグストアはここに属しており、最新データでの自己資本比率の標準値は42.2%となっています。
自己資本比率がこの42.2%と上回っている場合は、財務健全性が高いと言えます。
最後に
応募する企業を選ぶ際、どうしてもイメージだけが先行し、間違った認識を持ってしまうケースは少なくありません。
例えば、「CMを流している会社=大きい会社=会社として問題がない」というようなケースです。
企業の実態を知り、適切な判断を下すためにも、可能な限りIR情報はチェックするようにしましょう。
【参考文献】
並木秀明(2013)『マンガ 財務諸表入門』サンマーク文庫、國貞克則(2011)『ストーリーでわかる財務3表超入門』ダイヤモンド社