
女性が多く働いている薬剤師にとって、産休や育休は普通のことになりました。ただ、入社してすぐに妊娠がわかった場合には、どう伝えればいいか動揺してしまうのではないでしょうか。また、できれば早く子どもが欲しいけれど、入社・転職してまだ間もないからと迷っている方がいるかもしれません。
本記事では、特に育休にスポットを当てて、育休の基本条件や産休との違い、入社1年未満でもらえる手当・もらえない手当について解説します。職場に相談する際の注意点にも触れているので参考にしてください。
記事のポイント
・育休は入社1年未満だと取れない場合がある。
・入社1年未満だともらえない出産・育児関係の手当もある。
・自社の制度に関してきちんと調べて相談していくことが大切。
【ママ薬剤師の基本を確認】産休と育休の違いとは?

「産休」と「育休」は出産に関わる休暇で同じように思われがちですが、法律上の位置づけや対象となる条件には違いがあります。まずはこの2つの違いを整理しましょう。
産休は働く女性なら入社1年未満でも取れる
結論から言うと、産休(産前・産後休業)は、入社期間や雇用形態に関わらずすべての女性薬剤師が取得できます。
労働基準法で保障された権利であるため、正社員だけでなく、パート、契約社員、派遣社員など、どのような雇用形態であっても働いた期間に関係なく取得可能です。
産休には、産前休業と産後休暇があり、原則として出産翌日から8週間まで取得が可能です。
そのため、「入社してすぐだから産休が取れないかも…」という心配は不要です。
関連記事産休・育休取得前~取得後篇
育休を取るには取得条件がある
一方、産後休業が終わった翌日からスタートする育休(育児休業)は、産休とは異なり、誰でも無条件で取れるわけではありません。
育休は育児・介護休業法に基づく制度ですが、会社との雇用関係や在籍期間によって、取得できるかどうかの条件が設けられています。
ママ薬剤師が育休を取れる条件
法律で定められた育休を取得するための条件は以下の通りです。
・1歳未満の子を養育する労働者であること
・子が出生した日から起算して、1年6ヶ月を経過する日までに労働契約が満了することが明らかでないこと(有期雇用の場合)
以前は取得の条件に「入社1年以上」がありましたが、法改正によりこの要件は撤廃されました。つまり、育休も産休と同様に、原則としては入社1年未満でも取得できます。
ただ、産休と違って育休には、会社の取り決めによって取得が制限されるケースが今も存在しています。それが次の「1年以内で育休が取れないケース」です。
入社1年未満で育休が取れないケース

法改正で「入社1年未満でも育休が取れる」のが原則となりましたが、会社が労使協定を結んでいる場合、入社1年未満の従業員を育休の対象外とすることができます。
実際の運用は企業によって異なりますが、人手不足の企業ではこの労使協定が結ばれているケースが多くなっています。
正社員の場合
正社員は基本的には法律面でも福利厚生面でも手厚い扱いを受けています。
しかし、正社員であっても、勤務先に「入社1年未満の従業員は育休対象外」という労使協定があれば、残念ながら入社1年未満での育休取得はできません。
パート、契約社員、派遣の場合
パートや契約社員、派遣といった有期雇用に関しては、以前は正社員との待遇に大きな違いがありました。現在はその違いは撤廃される流れのなかにありますが、育休に関しては大きな違いがあります。
まず、法律面で、子どもが1歳6ヶ月になるまでに契約が終了し、更新されないことが確実である場合は、育休の対象外となります。これは正社員との大きな違いです。
また、この条件をクリアしたとしても、前述した労使協定が結ばれている場合は、正社員と同様に入社1年未満での育休取得はできません。
派遣薬剤師の場合、育休の適用は、実際の就業先(薬局など)ではなく、雇用主である派遣会社から受けることになります。
派遣会社の労使協定がどうなっているか、契約更新の見込みがあるかが基準となります。
男性の「産後パパ育休(出生時育児休業)」も1年未満で取れる?
パパ薬剤師が子の出生後8週間以内に最大4週間まで取得できる「産後パパ育休(出生時育児休業)」も、女性の育休とルールは同じです。
正社員であれば原則として産後パパ育休は取れますが、会社が労使協定で制限している場合、入社1年未満の男性薬剤師は産後パパ育休を取得することができません。
夫婦で育休の計画を立てる際は、夫側の職場の就業規則も必ず確認してもらいましょう。
関連記事育休復帰前~復帰後篇
入社1年未満でもらえる手当・もらえない手当

育休中は給料がなくなるので、一番の不安はお金の問題となります。
産休や育休は子育て支援の流れで取りやすくなりましたが、出産関連の手当に関しては、入社1年未満だと受給できないものもあります。手当ごとに確認していきます。
出産育児一時金
出産費用をサポートする手当で、健康保険(被扶養者を含む)に加入していれば、入社期間に関わらず一律で子ども1人につき原則50万円が支給されます。
出産手当金
産休中の生活を支える手当で、職場の健康保険に加入していれば入社1年未満でももらえます。
ただし、支給額は「直近12カ月の標準報酬月額の平均」をもとに計算するため、入社1年未満の場合は「現在の職場の平均」と「全被保険者の平均」のいずれか低い額が基準となり、1年以上勤務した場合より少なくなる場合があります。
育児休業給付金
給与の出ない育休中を金銭面で支える手当です。
育休中の貴重な収入源ですが、受給には「育休開始前2年間に、雇用保険の被保険者期間が通算12カ月以上あること」が必要です。
つまり、入社して1年未満の場合、この条件を満たせないので給付を受けることができません。
転職して今の職場で1年未満の場合は、転職前の働き方によって給付されるかどうかに違いがあります。前職と通算して12カ月以上働いていて、前職を退職してから今の職場に入社するまでのブランクが短ければ、前職の期間を通算できるため、受給できます。
ただ、ブランクの間に失業保険を受給した場合は通算することができないので注意が必要です。
出生時育児休業給付金
男性の産後パパ育休に対応する給付金です。
これも育児休業給付金と同様に「育休開始前2年間に、雇用保険の被保険者期間が通算12カ月以上あること」という条件があります。
関連記事産休・育休とは?期間・給付金額の自動計算と知るべきポイント
【ママ薬剤師になるために】入社1年未満で育休を取得する際の注意点

入社1年未満というタイミングで妊娠がわかった場合、まわりの目も気になってしまうでしょう。職場との関係を良好に保ちながらスムーズに産休・育休に入るためには、以下の3つの行動が大切になります。
会社の就業規則をチェックする
まずは自社の「就業規則」や「育児・介護休業規程」を確認しましょう。
「入社1年未満の従業員を育休の対象外とする」という労使協定の有無によって、自分が育休を取れるかどうかが変わります。
なるべく早めに人事や上司へ相談する
薬剤師の現場は少人数で回している店舗が多く、一人の欠員がシフトに大きく影響します。安定期に入る前であっても、つわりなどの体調変化を考慮し、妊娠がわかった段階で早めに直属の上司や人事へ相談しましょう。
早めに相談することで、職場も人員の補充などについて対応しやすくなります。
感謝の気持ちを示す
薬局や病院であれば育休を取ったママ薬剤師も多くいますし、育休は法律で認められた権利ですが、入社直後の長期休業は、少なからず職場のメンバーにシフトのカバーなどで負担をかけることになります。
「入社間もない時期にご迷惑をおかけして申し訳ありません」 「お休みに入るまで、できる限り仕事を覚えて業務を精一杯行います」といった、周囲への配慮と感謝の言葉をしっかり伝えましょう。それが、復職後の働きやすさにもつながります。
正しい知識を持てば入社1年未満でも安心してママ薬剤師になれる

入社してすぐにママになることは、タイミングとしてあせりや申し訳なさを感じるかもしれません。
しかし、自分が取得できる制度やもらえる手当の仕組みを正しく知っておけば、冷静に次の準備を進めることができます。
特に、育休は産休と違って誰でも無条件に取れるわけではありません。
入社1年未満で育休が取れなかったり、育児休業給付金がなかったりする場合は、どのように対応するかを事前にしっかり考えましょう。
現在はパパの育休も推奨されているので、パートナーと分担することを考えてもいいでしょう。
薬剤師は国家資格であり、ライフステージの変化に合わせながら柔軟に長く働ける素晴らしい職業です。仕事はこの先も長くつづきます。不安を抱え込まず、制度を上手に活用しながら、安心してママ薬剤師としての一歩を踏み出しましょう。



