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業界研究 ~病院編~

病院業界について「業界概要」「業界展望」「職種と業務」「働き方とキャリアパス」についてご紹介します。

業界概要:医療機関は減少するも病院薬剤師は増加。拡大する薬剤師の職域

医療費の増加と少子高齢化による医療ニーズの変化に適応するため、国は入院医療から在宅医療への移行を図っており、2025年までに16~20万病床を削減する意向です。人口や患者層の変化に伴い病院は徐々に減少、2016年度調査では前年から0.4%減の8442施設でした。

一方、病院に勤める薬剤師数は増加傾向。2016年の調査では5万2145人(対前年比6.5%増)の薬剤師が病院で調剤・病棟業務を担っています。従事者増加の理由は、効率的な医療提供、医療の質の向上について薬剤師の貢献が評価され、需要が高まったためと考えられます。

業界展望:チーム医療だけでなく、院外との連携も視野に

2016年度診療報酬改定において「病棟薬剤業務実施加算2」が新設。ICU(特別集中治療室)をはじめとした救急医療における薬剤師の薬学療法が評価されました。
また、「地域包括ケアシステムの推進」のもと、院内だけでなく院外での活躍も期待されています。

病棟薬剤業務

薬剤師が入院患者の服薬状況や副作用の有無などを確認することで、医師は新規患者や重症患者の対応にあたれるため、効率的に医療を提供できます。さらに、投薬過誤やポリファーマシーを防ぐ効果もあります。

院外連携

入院期間は規則正しく服薬できていた患者が、退院後に服薬を怠ることで再入院へと至るケースは決してめずらしくありません。こうした事態を防ぐために、病院薬剤師と薬局薬剤師が情報共有を行い、継続的な服薬指導を行うことが求められています。
また、介護施設に入居している高齢者も年々増加しており、ソーシャルワーカーとの連携も今後ますます重要になるでしょう。

専門・認定薬剤師

がんや糖尿病の病棟では、専門知識が豊富な専門薬剤師を配置する病院も増えています。高い専門知識を生かしてチーム医療に貢献します。(例:がん薬物療法認定薬剤師、がん専門薬剤師、感染制御認定薬剤師、感染制御専門薬剤師、妊婦・授乳婦薬物療法認定薬剤師、妊婦・授乳婦専門薬剤師、栄養サポート専門薬剤師)

病院薬剤師の業務

主な業務

  • 調剤
  • 製剤
  • 注射剤調剤
  • 外来化学療法室業務
  • 病棟薬剤業務
  • 薬剤師外来(外来がん治療など)
  • 救急救命(ICU)調剤
  • 医薬品情報(DI)業務

基本業務は調剤や製剤、注射剤調剤です。今後はチーム医療のなかでも薬剤師の専門性を発揮する業務が増えていくでしょう。
また、病棟業務についても引き続き重視されています。従来の病棟に加え、ICUでの薬学管理も評価され、業務領域が広がりました。そのほか、医師の業務負担軽減と医療の質向上から「薬剤師外来」も注目を集めています。

病院薬剤師の働き方とキャリアパス

病院は提供する医療機能や規模(病床数)によって、働き方やキャリアパスが異なります。働き方やキャリアパスは早期退職を防ぐ重要なポイント。病院見学の際には忘れずに質問しましょう。

病院の医療機能とその内容

高度急性期
・急性期の患者に対し、状態の早期安定化に向けて、診療密度が特に高い医療を提供する
急性期
・急性期の患者に対し、状態の早期安定化に向けて、医療を提供する
回復期
・急性期を経過した患者への在宅復帰に向けた医療やリハビリテーションを提供する
・特に、急性期を経過した脳血管疾患や大腿骨頚部骨折などの患者に対し、ADLの向上や在宅復帰を目的としたリハビリテーションを集中的に提供する
慢性期
・長期にわたり療養が必要な患者を入院させる
・長期にわたり療養が必要な重度の障害者、筋ジストロフィー患者又は難病患者などを入院させる

働き方

高度急性期や急性期医療を提供する病院(特定機能病院など)は、残業や夜勤、当直が多くなります。
一方、回復期や慢性期医療を提供する病院は、比較的ゆったりとした職場環境といえるでしょう。また、職員用の託児所を完備するなど、女性が働きやすい環境を整えている病院もあります。

キャリアパス

最初は調剤や製剤業務などの基本業務を経験し、病棟業務や外来業務といった業務にあたります。その後は、人材や医薬品を管理するマネジメント職、薬剤部だけでなく病院の経営管理にも関わる薬剤部長へとステップアップ。他に、専門・認定薬剤師の資格を取得してスキルアップを目指す人もいます。
また、大規模病院の場合は、業務ごとに担当者を分けている場合が多く、中小規模病院は、1人の薬剤師がさまざまな業務を兼任している場合が一般的。ですから、スペシャリストを目指すなら大規模病院、ゼネラリストを目指すなら中小規模病院がおすすめです。

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【参考文献】
厚生労働省「平成28年医療施設動態調査」「平成28年医師・歯科医師・薬剤師調査の概況」、「平成29年度病床機能報告 報告マニュアル①」