東京都内の病院
調剤スペシャリスト志向
医療と生活をつなぐ、回復期・慢性期病院の薬剤師の魅力
齋藤 千夏
(さいとう ちなつ)
東京都内の病院
公益社団法人地域医療振興協会(JADECOM)
台東区立台東病院/
台東区立老人保健施設千束
東北医科薬科大学卒業
齋藤 千夏
(さいとう ちなつ)
東京都内の病院
公益社団法人地域医療振興協会(JADECOM)
台東区立台東病院/
台東区立老人保健施設千束
東北医科薬科大学卒業
病院薬剤師の中でも、回復期から療養期を含めた慢性期までの医療を行う病院に勤務する薬剤師の不足はとりわけ深刻な課題です。台東病院に勤務する齋藤千夏さんは、レジデント制度によりさまざまな医療機能の病院で研修を積むなかで、回復期・慢性期医療の魅力に気づいたと話します。急性期や薬局とは異なる、そのやりがいについてうかがいました。
Career Step
キャリアステップ
2021年 JADECOM薬剤師レジデントとして、東京ベイ・浦安市川医療センター(千葉県)に入職。その後、研修で台東区立台東病院(東京都)に3ヶ月間配属
2022年 研修のため伊東市民病院(静岡県)に3ヶ月間配属
2023年 2年間のプログラム修了後、台東区立台東病院に異動、主に回復期リハビリテーション病棟を担当
2023年 NST(栄養サポートチーム)に所属
2024年 NST専門療法士の臨床実地修練を修了
Interview
インタビュー
レジデント研修を通じて、回復期・慢性期への印象が変わった
学生時代は、回復期・慢性期に惹かれる今の自分を想像していませんでした
Q. 
就職活動で意識していたことを教えてください
最も意識していたのは「急性期から慢性期まで、一通り全部を経験できる環境に身を置きたい」ということです。当時はまだ自分のなりたい薬剤師というものが明確にあるわけではありませんでした。しかし、将来ライフステージが変わっていくときに、「どこでも、なんでもできる」自分になっていたいなと考えるようになりました。
そこで、急性期から慢性期まで経験できるレジデント制度を探すなかで、JADECOM薬剤師レジデントと出会いました。
Q. 
当時から回復期・慢性期に興味をもっていたわけではないのですね
はい。恥ずかしながら、学生時代には病院で働くなら急性期が”花形”で、慢性期は薬剤師が活躍しにくい環境なのではないかと思っていました。しかし実際に研修するなかで、それは大きな誤解だとすぐに気づきました。回復期・慢性期医療は、患者さまを病院から生活の場へとつなげる大事な段階であり、薬剤師が早期の在宅復帰やその後の生活のためにサポートできることがたくさんありました
薬剤師が介入することで、患者さまの生活をサポートできる
回復期や慢性期の患者さまは身体の機能だけでなく精神面も日々変化するため、多職種との連携会議は患者さまの状態を正しく把握できる貴重な場です
Q. 
回復期・慢性期病院で働くことの魅力について、詳しく教えてください
急性期病院で働いていたときは、患者さまの退院後の生活まで意識が向いていませんでした。
しかし、回復期・慢性期病院では生活の場で誰が薬を管理するのかを考えます。患者さまご自身なのか、ご家族なのか、介護施設なのかで、薬の数やまとめ方が変わります。ご自身で管理するのであれば、継続して服薬できることを第一に考えますし、介護施設ならば看護師や職員が管理するので、治療的な面でもう少し考慮できるかもしれません。私たち薬剤師が患者さまと過ごす時間は看護師やリハビリセラピストと比べると限られていますが、薬剤師ならではの関わり方で患者さまの生活を支えることができると感じています。

また療養期では看取りの段階に入っている方に、痛みや苦しさを減らして過ごしてもらうためには何ができるかや、薬を継続する必要性について考えます。これらは薬局や急性期病院では経験しにくいことであり、医療従事者としての視野が広がりました。
Q. 
今の業務について教えてください
現在、私が主に担当しているのは回復期リハビリテーション病棟です。基本的に3ヶ月から半年かけてリハビリで身体機能を戻して、在宅医療に移行する準備を整えます。薬はリハビリとも関係が深く、たとえば痛み止めの有無で患者さまのリハビリに対するモチベーションは変わります。逆に薬の副作用で眠くなったり、ふらつきが出たりすることでリハビリに悪い影響が出る危険性もあります

急性期病院では医師とコミュニケーションを取る機会が多かったのですが、ここでは医師はもちろん、看護師、理学療法士や作業療法士など、多職種との連携が必要です。いろんな職種の人と話さないと適切な薬が見えてこないので、そこは大変でありやりがいを感じる部分でもあります。当院はコンパクトな病院なので多職種の方々と話しやすい環境です。毎日の看護師カンファレンスにも顔を出すようにしており、日々の患者さまの状況を細かく把握しています。
Q. 
療養病棟での薬剤師の役割について詳しく教えてください
現在、私が主に担当している病棟は回復期リハビリテーション病棟ですが、療養病棟に入ることもあります。療養病棟では治療の視点だけではなく、今感じている痛みを解消するための緩和をどうするか、患者さまに最適な剤形や投与方法は何かなど、リハビリとは別の難しさがあります。また、療養期は麻薬を使う患者さまが比較的多い点も特徴で、薬剤師として医薬品の知識を生かせる場面が多くやりがいがありますね。さまざまな知識や経験が求められるため大変ではありますが、勉強になることも多く幅広い経験を積めることは魅力です。
NST専門療法士として「栄養」の視点ももてる薬剤師へ
積極的に先輩に質問して、疾患や薬に関する知識を日々アップデートしています
Q. 
今後の目標を教えてください
目の前の目標としては、NST専門療法士の取得を目指しています。栄養は言わずもがな生活に一番結びついている部分ですし、薬によって食欲が減退したり、逆に増進したりする場合もあるので、そうした点も併せて考える必要があります。回復期・慢性期の治療に携わり、患者さまの生活について意識するなかで、もっと栄養について専門的な知識を学びたいと思うようになりました。
Q. 
回復期・慢性期病院を目指す学生に向けてメッセージをお願いします
回復期・慢性期病院は、急性期病院に比べて急変が少なく、比較的慌ただしくない働き方ができるのは事実です。しかし、そうした理由で現場に入るとギャップを感じるかもしれません。回復期・慢性期病院の患者さまは、基本的に急性期病院から転院してくるため、これまでの治療の経緯や薬についての知識が求められます。私自身、急性期の経験はレジデントの限られた期間だけだったので、当院に異動してから勉強会に参加したり、先輩に質問したりと学びの毎日です。能動的に学べる人にとって回復期・慢性期病院はとてもやりがいのある職場だと思います。
Message
薬学生へのメッセージ
私自身、学生時代は慢性期について色眼鏡で見ていた部分がありました。しかし、リハビリ、在宅医療への移行、緩和ケアなどさまざまな領域で薬剤師だからこそ活躍できる場面があり、日々やりがいを感じています。ぜひ急性期病院だけでなく回復期・慢性期病院の施設見学にも参加して、薬剤師としての視野を広げてみてください。