東京都内の病院
調剤スペシャリスト志向
今後いっそう活躍できる「精神科の薬剤師」という働き方
木下 舞
(きのした まい)
東京都内の病院
医療法人社団積信会
長谷川病院
東京薬科大学卒業
木下 舞
(きのした まい)
東京都内の病院
医療法人社団積信会
長谷川病院
東京薬科大学卒業
「意思疎通が難しそう」「暴力を振るわれるのではないか」など、ネガティブな印象をもたれがちな精神科病院。しかし、木下舞さんは精神科病院こそ患者さまと向き合い、薬剤師としてのやりがいを感じられる環境だと話します。学生時代から精神科病院への勤務を志望していたその理由と精神科の薬剤師の働き方についてうかがいました。
Career Step
キャリアステップ
2023年 昭和大学横浜市北部病院(神奈川県)に臨床研修薬剤師として入職
2024年 昭和大学附属烏山病院(東京都)に異動
2025年 長谷川病院(東京都)に入職
Interview
インタビュー
「強みとなる専門分野をもちたい」と精神科に照準を合わせる
学生の頃から精神科を専門にすると決めていました
Q. 
就職活動の際に意識していたことを教えてください
当時から自分の強みである「専門分野」をもちたいという意識がありました。外科のように医師の手技が中心となる科目より薬物療法が中心となる科目はなにかと考えるうちに、興味をもったのが精神科でした。
とはいえ、いきなり精神科に身を置くと知識が偏りすぎてしまうのではないかという不安もありました。そこで、精神科を含んだ総合的な知識を身に付けられるレジデント制度を探しました。そうして見つけたのが昭和大学(現・昭和医科大学)の臨床研修プログラムでした。
2年間のプログラムの中で、がん、内科、外科の3領域を回って、基礎的な知識をおさえた後、烏山病院で精神科を経験することができました。その後、より本格的に精神科の経験を積むために長谷川病院に入職しました。
Q. 
精神科に注目した理由を教えてください
「精神科」はニッチな領域に見られがちですが、現代社会はストレス社会であり心療内科に通う人も年々増えています。また、病院においてもがん患者の緩和ケアなどで精神科の薬を使う機会はあり、精神科病院だけでなく総合病院でも知識を生かせる場は多いです。精神科の知識をもつ薬剤師の需要は高まっていくのではないかと思いました。
患者の背景を把握したうえでの処方提案にやりがい
患者さまに最適な薬を提案できるように、日々インプットを心がけています
Q. 
精神科の薬剤師のやりがいや魅力について教えてください
精神科は他科目に比べて医師に薬の提案をする機会が多く、薬剤師の意見に耳を傾けてもらえる環境だと感じています。
たとえば、ギャンブル依存症の患者さまに対して、アリピプラゾールが処方されていたケースがあります。この方の場合、ギャンブルをしていないときは落ち着いていたため、D2受容体への部分刺激作用があるアリピプラゾールの服用によってかえって衝動性を高める可能性があることを考慮し、減量・中止を提案しました。このように作用機序から考えて薬の提案ができたときは、やりがいを感じますね
Q. 
精神科の薬剤師の難しさや大変さについて教えてください
患者さまとのコミュニケーションについては難しさを感じるケースがあります。特に妄想や幻覚がある患者さまへの伝え方には注意が必要です。たとえば、「これは妄想を治す薬です」と伝えたとしても、患者さまに妄想の自覚がない場合には反感を招いてしまいます。患者さまの状態を見極めながら、どんな言葉を投げかけるのかは気を付けていますね。
精神科薬物療法認定薬剤師を目指し、より患者貢献できる自分へ
職場は人間関係がよく、わからないことは気軽に質問できる環境です
Q. 
今後の目標を教えてください
現在は、精神科薬物療法認定薬剤師の資格取得を目指しています。精神科の薬剤師として専門性を高め、より患者さまの症状改善に貢献できる自分になることが目標です。
精神科は症状の劇的な改善というものはなかなかありませんが、「気持ちが落ち着いた」「おかげさまで昨夜はよく眠れた」など声をかけていただくことは本当に嬉しいです。
これからも患者さまとのコミュニケーションを大切にし、目の前の症状だけにとらわれずその背景にまで目が向けられる薬剤師を目指していきます。
Q. 
薬学生に向けてメッセージをいただけますか
学生さんのなかには、精神科病院と聞くと鉄格子の檻のような隔離施設をイメージする人がいるかもしれません。しかし、現在の精神科病院ではそのようなことはほとんどありません。また、自制の利かない患者さまから暴力を振るわれるのではないかという声もあるようですが、法律に基づいた適切な対応が行われています。先入観による思い込みに囚われず、精神科病院でできる経験や薬剤師のやりがいについて目を向けてもらえたら嬉しいです。
Message
薬学生へのメッセージ
「精神科の患者さまとは、意思疎通ができないのではないか」と言われることがあります。しかし、精神科病院では急性期よりも患者さまとしっかりコミュニケーションをとれるため、患者さまと信頼関係を構築できる機会はむしろ多いです。一人ひとりの患者さまとじっくり向き合いたいという人にとっては、やりがいを感じられる職種です。