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HYUGA PRIMARY CARE株式会社 黒木代表取締役

福岡から全国へ。日本の在宅に革新を

企業ビジョンの実現が、業界の抱える課題を解決に導く。
福岡でいち早く在宅医療に着手した「きらり薬局」の次なる一手とは

薬局業界は重度患者のケアが課題に

――2015年は、調剤薬局に関するニュースが多い年でした。調剤薬局の薬歴未記載問題や、「かかりつけ薬局」「健康サポート薬局」の要件確定、そして「患者様のための薬局ビジョン」の策定。今(取材時は2015年11月上旬)も2016年度調剤報酬改定に関して、活発な議論がもたれています。このような状況をふまえ、今後、調剤薬局業界はどのように変化していくとお考えですか。

黒木哲史(くろき てつじ)
Hyuga Pharmacy株式会社
代表取締役 薬剤師

来る2025年の超高齢化社会に向けて、国の方針は一貫しています。キーワードとなるのは地域包括ケアシステムの推進、病棟から在宅への医療現場の移行です。これは、2015年9月に厚生労働省が発表した「かかりつけ薬局」や「健康サポート薬局」の要件からも明らかです。
こうした国の方針のもと、薬局業界は「増加する在宅患者への対応」、特に「重度の患者へのケア」が課題になると考えています。
2025年までに後期高齢者(75歳以上)は人口の約20%、認知症患者は700万人に及び、介護医療費は21兆円にまで倍増するという試算が出ています。これに対して国は保険対象者の絞り込みを図っており、その思惑が顕著に表れているのが2015年度の介護報酬改定です。15年度改定では、9年ぶりに平均報酬単価が引き下げとなり、特別養護老人ホームや介護老人保健施設は「利益率が高すぎる」として大幅に減算、特別養護老人ホームの入居基準は「要介護3」以上に変更されました。一方、訪問看護、24時間の定期巡回などは報酬アップとなり、その重要性が明確に打ち出される結果に。塩崎厚労相は改定について「重度・中度の要介護者のケア、認知症への対応に配慮して加算した」と述べており、その傾向は強まっていくものと思われます。 したがって薬局経営においても、在宅医療への対応、とくに重度患者への対応が課題になると考えています。

――そのような業界展望をふまえ、Hyuga Pharmacy(ヒューガファーマシー)はどのような成長ビジョンを描いているのでしょうか。

弊社のビジョンは「24時間365日、患者様に薬が届く世の中をつくる」、そして「処方箋を元気に変える」です。これは国の方針や業界動向がどうであれ、決して変わりません。ただし、ビジョンを実現することが、結果的には薬局業界が抱える課題を解決に導くと確信しています。
ビジョンの一つ目、「24時間365日、患者様に薬が届く世の中をつくる」とは、社会の仕組みを変えるという意味です。具体的には、ヤマト運輸が日本の流通を変えたように、「きらり薬局」が日本の在宅医療を変えたいと思っています。「クロネコヤマト」が誕生したことで、私たちは短時間で安く荷物を輸送できるようになりました。在宅に置き換えると、薬を必要としている人のもとに必要な薬が必要な量だけ届き、適切な指導のもと薬が服用されること――それが「当り前」な社会をつくりたいのです。
二つ目の「処方箋を元気に変える」とは、質の高い対人サービスを提供すること。たんに調剤をして患者様に薬を届けるだけでなく、患者様が元気になるようなサービスを提供したい。話し方や笑顔といった接遇や患者様一人ひとりに適した情報提供など、患者様を元気にする方法に正解はありません。「患者様の元気」のためには何が必要で、患者様は何を求めているのか、薬剤師が自分で考えて行動することが大切だと思っています。

さらに、このビジョン実現は10万人とも言われる介護離職者の減少にも貢献できると考えています。今後、在宅医療における重度患者の比率が上がるにつれて、介護離職者もますます増加するでしょう。しかし、在宅医療の質が向上すれば、介護のために仕事を辞める人も少なくなるはず。「きらり薬局」が質の高い在宅医療を提供することで、介護離職抑制の一端を担えればと思っています。

在宅医療において高品質なサービスを提供するための施策とは

――それら二つのビジョン実現のための施策について教えてください。

「店舗規模の拡大」と「介護との連携を強化したサービスの向上」です。
まず、社会の仕組みを変えるには、質とともにボリュームも必要ですから「店舗規模の拡大」は必須。将来的には全国展開も視野に入れています。これまで福岡県内での出店がメインでしたが、その足掛かりとして2014年には関東1号店を千葉に出店しました。現在、福岡県14店舗、佐賀県と千葉県に各1店舗の計16店舗を展開しており、目下は年間5店舗のペースで出店していく計画です。なお、出店スタイルはドミナント展開が基本。在宅では24時間対応の必要がありますので、店舗間で人やモノを相互に扶助しやすい出店スタイルを採っています。
当然今後も、外来だけでなく在宅にも力を入れるスタンスは変えません。2008年の創業以来、福岡県の在宅医療においてはフロントランナーで有り続けたという自負があり、1店舗当たり数十人の患者様をケアしています。
引き続き、これまで培ってきたノウハウを駆使して、新規出店エリアでのシェア拡大を図っていくつもりです。
もう一つ、質の高いサービスの提供のためには「介護との連携を強化したサービスの向上」がカギだと考えています。先ほど「これからは在宅医療の中でも、特に重度患者への対応が課題になる」とお伝えしました。この重度患者へのケアで忘れてならないのが、介護との関わりです。「処方箋を元気に変える」ためには、医療と薬だけでなく介護保険の仕組みやサービスについても知っておく必要があります。これは、ヒューガファーマシーが展開する居宅介護支援事務所「ケアプランサービスひゅうが」(以下、ケアプランサービス)を通じて、サービスの向上を図っています。

――ケアプランサービス設立の経緯を教えてください。また、それが薬剤師のサービス向上にはどのように影響するのでしょうか。

ケアプランサービスを設立したのは2010年のこと。当時、在宅服薬指導で訪れた認知症の高齢女性のお宅での経験がきっかけでした。訪問初日、患者様のお宅のドアを開けると部屋は足の踏み場もなくゴミが散乱。部屋から出てきた患者様はおむつ姿で、私の服薬指導に対しても曖昧な反応でした。その日の夜、ご家族に介護制度やサービス申請の説明をしたことで状況は改善すると安心していたのですが、数日後、患者様が薬を誤飲して病院に搬送される事態に。それを聞いた時、「在宅は薬剤師が薬の説明をするだけじゃだめだ」と大きなショックを受けました。「介護側と一緒になって取り組む」ことの必要性を痛感し、それならいっそ自社でサービスを立ち上げようと決意したのです。
現在、ケアプランサービスは5事業所あり、すべて「きらり薬局」に隣接しています。そのため、薬剤師はケアマネジャーや介護士との距離が近く、介護に関する不明点をすぐに質問して、正しい知識を身に付けることができます。さらに、修得した知識を実際の在宅の現場で活用した後もケアマネジャーらからすぐにフィードバックを受けられるので、スキルアップが早いのです。また、ケアマネジャーの資格取得支援制度を利用して、現在、5人の薬剤師がケアマネジャーの資格を取得。知識と経験を駆使して在宅の現場を引っ張ってくれています。
チーム医療での薬剤師の役割の一つは「他職種が求めている情報を提供する」こと。その役割を果たすには、職種の敷居を取り払って「チーム」の意識を持つこと、「教える」のではなく「一緒にやる」姿勢が大切です。日常的に介護職種と関わっている「きらり薬局」の薬剤師は、知識や実務スキル、そしてコミュニケーションスキルの習得という点で、業界で圧倒的優位に立っているのではないでしょうか。

――サービス向上のため、御社では業務の効率化や教育制度の整備も進めていますね。

はい。サービス向上はハード面とソフト面の両方から取り組んでいます。ハード面の取り組みといえるのが「業務の効率化」。数年前から一包調剤機や自社開発した報告書システムの導入などを積極的に進めています。 一方、ソフト面の取り組みとして力を注いでいるのが「教育制度の整備」です。重度の患者様に対応できる薬剤師を育成するため、研修や資格取得のサポートを実施。認定薬剤師やケアマネジャーの資格取得支援や、介護カレッジ、緩和推進プロジェクトなど、薬剤師のスキルアップのために充実したカリキュラムを用意しています。また、「薬剤師力」のみならず「社会人力」強化を目的とした研修もあります。その一つが「一般常識勉強会」。業界知識や社会人としての一般知識を養うための場で、私が講師として登壇することも。先日はミルトン・フリードマンの「資本主義と自由」をテーマに年金制度や職業免許制度について話しました。社会という大きなスケールの中で自分の仕事を捉えることで、幅広い視野で業務に臨める社員を育てたいと考えています。

企業ビジョンに賛同してくれる薬剤師とともに在宅医療を進化させる

――ビジョン実現のために求める薬剤師像を教えてください。

「素直で明るい人」そして「社会の仕組みについて目的をもって分かろうとする人」です。
チーム医療ではいくら知識があっても、それだけでは求められる役割を果たせません。先ほどお伝えした通り、「他職種が求めている情報を提供する」スキルが、薬剤師に求められています。それに応えるには、素直さと明るさは非常に大切。素直に他人の話を聞く人は、知識や技術の習得も早い。そして明るい人の周りには人が集まり、人が集まると情報が集まってくるのです。「他職種が何を求めているか」の情報がないことには、薬剤師も情報を提供できません。情報提供のための情報収集には、素直さと明るさが必要なのです。
もう一つの「社会の仕組みについて目的をもって分かろうとする人」は、弊社のクレドにも記していること。目の前にある自分の業務を社会の枠組みの中で捉えて理解しようとする人は、広い視野をもって仕事に取り組める。結果的に患者様によりよいサービスを提供できると考えています。
薬剤師を含めて人材は会社にとってかけがえのない宝。ですから、社員ができるだけ長く働けるよう定年は設けていませんし、雇用形態も4パターンを用意して多様なライフスタイルに柔軟に対応できるよう体制を整えています。
「日本の在宅医療を変える」という大きなビジョンを達成するには、薬剤師一人ひとりのスキルアップが不可欠。そのための資金と時間の投資は惜しみません。弊社のビジョンに賛同してくれる社員をしっかりサポートしていくつもりです。

――取締役を社内投票で決定する「役員選任投票制度」など、ユニークな社内体制もビジョン実現に関係があるのでしょうか。

もちろんです。弊社では入社年次や年齢に関わらず、当人の成果に応じて給与や役職を評価しており、実力があれば企業の経営にも早期に携わることができます。こうした流動的な体制を採用する理由は、社内の活性化を図るため。若い人でも会社の舵取りができれば、社員のモチベーションアップにもなります。会社にとって大切なのは、ビジョンを達成すること。達成までの最短ルートを社員一丸となって模索しているところです。
これから店舗規模を拡大していくにあたり、薬剤師の採用を一段と強化する計画です。もちろん、店舗のマネジメントを担ってくれる管理薬剤師も積極的に採用していきます。先ほど申し上げた通り、きらり薬局は研修制度が充実していますから、経験の有無は問いません。日本の薬局業界を変えたいと思っている方たちとともに、ビジョン実現に向けて取り組んでいく考えです。 医薬分業が進展した今、「調剤薬局」の必要性が問われています。薬局の活動に対する世間の認知度は低く、「薬剤師が自宅まで薬を届けてくれる」ということすら知らない人がほとんどです。「調剤薬局は病院の前にある箱のようなもの」という認識の人も多く、なかには「二度手間」「負担が高い」など否定的な意見も少なくありません。 われわれのようなベンチャー企業がそして若い薬剤師が、先人の薬剤師がつくり上げた「医薬分業」、薬局を進化させなければならない、という使命感がヒューガファーマシーにはあります。大手のチェーン薬局企業に比べれば、私たちの会社の規模は言うまでもなく小さい。しかし、だからこそ新しいことに挑戦できるスピードと柔軟性を備えているのです。大規模な組織では二の足を踏んでしまうような「業界の課題」に挑戦する。それが社会における「きらり薬局」の役割だと私は考えています。 「大企業なら安心」「薬剤師資格があるから安定」――そんな時代は間もなく終わります。「安心」や「安定」は時代の変化に対応できなければ得ることはできません。激流の川のような世の中の流れを読み、それに対応するスピード感と柔軟性を持つことが本当の意味で「安定」を手に入れる最短距離です。 さあ、一緒に頑張りましょう。

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