日本調剤株式会社
創業以来変わらない「生きる」に向き合う姿勢
取締役 上席執行役員
前田 直也
(まえだ なおや)
取締役 上席執行役員
前田 直也
(まえだ なおや)
調剤薬局業界をけん引するリーディングカンパニーのひとつである日本調剤株式会社。2025年に株式の非公開化を公表し、大きな話題となりました。この体制変化の背景にはどのような思いがあり、今後の事業戦略や薬剤師の働き方にどのような影響を与えるのでしょうか。前田直也取締役にお話をうかがいました。
業界の変革に柔軟に対応し、中長期的な成長を目指す
2022年、事業の多角化に合わせて新たに日本調剤グループ理念を制定した
Q. 
御社の経営理念について教えてください
調剤薬局業界は外部環境の変化が激しく、もはやスケールメリットのみに頼った事業展開は通用しない状況だと言えるでしょう。今後その変化の幅がさらに広がっていく見込みであり、各企業には柔軟な対応が求められています。一方、どれだけ外部環境が変わっても、薬剤師に求められる役割として変わらないものもあります。それは「患者さま一人ひとりに真摯に向き合う」という姿勢です。これこそ日本調剤が創業以来大切にしている「真の医薬分業の実現」を叶える基本姿勢であり、その体現として「すべての人の『生きる』に向き合う」をグループ理念における「私たちの使命」に掲げています。
Q. 
2025年、株式の非公開化に踏み切られました。どのような狙いがあるのでしょうか
外部の知見、特にヘルスケア領域の知見や、最適な経営を行うためのガバナンスのノウハウを柔軟に取り入れることが目的です。また非公開化により単年度という短い期間で業績を出すのではなく、一定期間投資を行い、それを施策化して成果を出していく選択が可能になります。3年、5年単位の中長期的な視点での、攻めの対応として理解していただければと思います。

要医療人口がピークを迎える2040年に向けて中長期的に成長していくことが、最終的には患者さまと結びつき、「すべての人の『生きる』に向き合う」という理念の実現にもつながります。
Q. 
現場で働く薬剤師にはどのような影響がありますか
普段の日常業務が非公開化によって原則変わることはありません。むしろ各店舗の特性を踏まえて調剤業務の専門性を高め、プラスアルファの価値を積むための準備や投資を行えるようになります。店舗単位の特性を踏まえ、個性を出しやすい環境を得たと言えるでしょう。
真摯さと専門性を武器に、医療DXと在宅医療
「外来がん治療認定薬剤師」「外来がん治療専門薬剤師」は138名(2026年5月時点)在籍しており、業界最多を誇る
Q. 
今後の事業戦略における注力分野を教えてください
当社の従来からの強みは、「専門性の高さ」と「医療DXに対する積極的な取り組み」の2点です。

まず専門性については「教育の日本調剤」と評価いただいている通り、薬剤師の専門知識をさらに高めるため、社内でステップアップしながら教育する人材育成制度の充実とバージョンアップを図っています。特にがん分野に関しては、外来がん治療認定(専門)薬剤師が138名在籍しており、業界最多です(2026年5月時点)。当社の薬局はがんや希少疾患に注力する病院の近くに立地していることが多く、専門性を存分に発揮できる環境が整っています。教育と実践の場を合わせたところが強みであり、人の正に『生きる』に直面する重要な場面で患者さまをサポートし、「『生きる』に向き合う」ことを体現しています。

がん領域だけでなく、他の希少疾患への対応にも自信をもっています。希少薬のラインナップは業界有数であり、実際にこうした薬を扱うことで専門性を高める環境が各所にあります。また、医療データを扱う子会社と協同し、新薬の開発に貢献する取り組みも行っています。目の前の仕事だけでなく、創薬を含めた広い範囲に関わっていると実感する薬剤師も多いと思います。
Q. 
医療DXについては、どのような取り組みを進められていますか
以前から自社開発で「お薬手帳プラス」やオンライン服薬指導サービス「NiCOMS」といったアプリを運用しています。現在は、現場の知見を取り入れた自社開発の調剤システムをリリースしており、これらを融合させて現場のDX化を進めていきます。

また、AIを使って業務の効率化を進め、作業的な時間を圧縮することで、薬剤師が本来果たすべき「対人業務」の時間を最大化できます。AIを活用することで、薬歴や服薬指導の記録などの作業にかかる時間や労力が大幅に削減されています。その時間を患者さまへの実のある服薬指導に充てたりすること等につなげています。

電子処方箋やオンライン診療についても、規制緩和のペースを見極めて対応していきます。一歩先のタイミングで投資・行動することが重要です。世の中で起きる変化を受け入れる体制をあらかじめ作っておき、波に乗っていきたいと考えています。
Q. 
在宅医療については、どのような展開をお考えでしょうか
厚労省が構想する地域医療支援体制の中で、薬局の大きな役割が在宅医療です。我々にとっても、薬剤師が専門性を発揮できる場所であり、日本調剤が成長するための大きな柱のひとつです。

一包化調剤をはじめとするさまざまな調剤業務の効率化と安全性を実現した「在宅支援センター」は全国に70店舗ほどあり、今後も増やしていく予定です。薬剤師が地方自治体や医師と連携し、医療人として地域医療に貢献できるよう引き続き注力していきます。
Q. 
社員の働きやすさやキャリア形成については、いかがでしょうか
長時間働くことが貢献ではなく、一人ひとりが異なる環境の中で薬剤師としてのパフォーマンスを最大限発揮できることが重要です。生産性を高め、時間を濃密に過ごせるよう、休暇の取得やシフト勤務の柔軟性を確保しています。本社であれば今後はフレックス制を活用するなど、メリハリのある働き方ができるように支援しています。

現在、当社は女性が7割を占めており、店舗責任者以上の管理職の3割以上が女性になりました。産休育休を取得しても働き続けられる環境を整え、マネジメント層の意識も明らかに変わってきています。

また、新卒社員のモチベーションを保つ仕組みとして、リアルな場での人間関係づくりを重視しています。壁にぶつかったときに話せる先輩や同僚がいる環境をつくるため、新卒の集合研修や階層別研修など、顔を合わせる機会を設けています。オンラインだけでは難しい人間関係の構築をベースに置くことで、成長を止めず、課題を乗り越える力になると考えています。

さらに、日本調剤の社員が病院で勤務する「社外ジョブチャレンジ制度」も継続します。病院の現場を知ることで視野が広がり、医師や看護師との関係構築、地域医療における調剤事業への提案など、得られた経験を薬局に持ち帰って生かすことができます。
Q. 
新卒の薬剤師にはどのような姿勢を期待しますか
当社の社員は、医療に対する姿勢が極めて真摯で真面目な人が多いです。そこから派生して、各々が先進性や専門性を追求しています。学生の皆さんには、向上心を持ち、現状維持ではなくチャレンジできる人であってほしいです。

ただ、最初から多くを求めるわけではありません。まずは目の前にあることをしっかりこなし、先輩の指導や患者さまの悩み一つひとつと真摯に向き合い、地力をつけてください。そのうえで専門性を高め、先進的な取り組みが加わることで、より社会に貢献できる薬剤師への道が拓けていきます。「真摯×専門性」というキーワードに共感し、意欲を持って挑戦する人を全力でサポートする環境が、日本調剤にはあります。
就活アドバイザーからひと言
変革を恐れず、本質的な医療を追求できる環境
薬学生の就職先選びにおいても人気の高い「安定性」。これからの時代の「安定」とは単なる企業の規模ではなく、社会のニーズに応え続ける変化への対応力です。日本調剤が株式非公開化という選択をしたのは、目先の利益にとらわれず、数年先を見据えた医療インフラへの投資を行うためでした。これは薬剤師が専門性を磨き、腰を据えてキャリアを築くための強固な地盤となります。

また、AI導入による業務効率化を「患者さまと向き合う時間」や「ワークライフバランスの向上」に直結させている点も注目すべきポイントです。充実した教育制度、産休育休への理解、そして何より「真摯さ」と「専門性」を大切にする同社は、自らの価値を高め、社会に貢献したいと願う薬学生にとって、間違いなく魅力的なフィールドと言えるでしょう。