初めまして。ドラッグストアと一般用医薬品(以下、OTC医薬品)をこよなく愛する鶴見健です。連載を通して身近な症状を例に、「薬剤師がお客様にOTC医薬品をすすめる時のコツ」についてご紹介します。第2回は「胃腸の痛みを訴える患者さんにはどう対処するべきか」です。前回は前篇として「胃(腹痛)」について紹介しましたが、今回は後編として「腸(便秘・下痢)」についてお話しします。

国民病の便秘

腸の不調を訴える方の大半は便秘や下痢で悩んでいます。その中でも便秘で悩む方は多くいます。便秘とは排泄の回数が少なく、排泄物がお腹の中に滞っていることです。毎日便通があっても、苦痛や残便感があれば便秘といえます。一方、毎日便通がなくても、苦痛と感じなければ便秘とは言いません。

便秘の種類と原因

便秘は、器質性便秘(腸に明らかな原因のある便秘)と機能性便秘(腸の働きの調節がうまく行われない便秘)の2つに大別されます。さらに、機能性便秘は弛緩性便秘・緊張性便秘・直腸性便秘の3種類に分類できるので、今回はこの4種類に分けて特徴をご説明いたします。

器質性便秘

イレウス、大腸がん、腸管癒着などの器質的な原因により、消化管(小腸・大腸)に通過障害が起こるタイプの便秘です。「急にひどい便秘になる」「便が黒くなる」「便に血が混ざる」「便が変形する」「尿から便臭がする」「尋常ではない違和感などが生じる」といった場合は、器質性便秘が疑われます。この他、激しい腹痛、嘔吐などが起こる場合もあります。器質性便秘の疑いがある場合は、すぐに医療機関の受診を促しましょう。なお、腸管穿孔を起こす恐れがあるので、下剤は使用してはいけません。

機能性便秘

◆弛緩性便秘
腸管の緊張が緩み、蠕動運動が十分行われないことから大腸内に便が長く留まり、水分が過剰に吸収されて便が硬くなるタイプの便秘です。便秘の中でも起こりやすく、女性や高齢者に多くみられます。「お腹が張る」「残便感」「食欲低下」「肩こり」「肌荒れ」「イライラ」などの症状があり、 運動不足、水分不足、食物繊維不足、腹筋力の低下、極端なダイエットなどが誘因となります。

◆緊張性便秘(痙攣性便秘)
副交感神経の過度の興奮によって腸管が緊張し、便がうまく運ばれず、ウサギのフンのようなコロコロとした便になります。また、便秘と下痢を交互にくり返すこともあります。食後に「下腹部痛」「残便感」などの症状があり、精神的ストレス、環境の変化、過敏性腸症候群などが誘因と考えられます。

◆直腸性便秘
便が直腸に達しても排便反射が起こらず、直腸に便が停滞してうまく排便できなくなるタイプの便秘で、習慣性便秘とも言われます。高齢者や寝たきりの人、痔や恥ずかしさなどにより排便を我慢する習慣がある人に多くみられます。主な症状は、「常に下腹部付近が張ることで痛む」「意図せず頻繁にガスが出る」などです。便が硬いため、無理に排便すると痔の原因となるので、注意が必要です。

お客様へのアプローチ方法

ドラッグストアや薬局で便秘の原因疾患を診断することはできません。しかしお客様に対するアプローチとして、症状を詳しく聞くことは可能です。
◆薬剤師からのお客様への質問一覧

1.急に便秘になりましたか?それとも定期的に便秘になりますか?
2.下腹部に痛みはありますか?その痛みは食後によく起こりますか?
3.便はコロコロしていますか?細くてヒョロヒョロしていますか?
4.お腹はぽっこり出ていますか?
5.ガスが頻繁に出る、もしくは、ガスが溜まった感じはありますか?

これら5つの質問をすることで、便秘に適切なOTC医薬品をすすめることができます。余裕があれば痛みが悪化・軽減する要素(脂肪の多い食事か否か、運動や飲酒の頻度、月経など)についても聞いておきましょう。

1.急に便秘になりましたか?それとも定期的に便秘になりますか?

1は器質性便秘か機能性便秘かを大別する質問です。急な便秘の場合は器質的病変が疑われます。慢性的便秘の方でいつもと様子が違う場合は、他の質問も併せて検討しましょう。

2.下腹部に痛みはありますか?その痛みは食後によく起こりますか
3.便はコロコロしていますか?細くてヒョロヒョロしていますか?

2と3は緊張性便秘か弛緩性便秘かを探る質問です。
食後に痛むことがよくあり、便の形状がコロコロしている場合は緊張性便秘を疑うと良いでしょう。腸管が緊張して痙攣していることが多いので、膨張性下剤か塩類下剤、浸潤性下剤など、便を柔らかくして排泄しやすくするタイプのOTC薬を選択します。例えば、膨張性下剤としてウィズワン(ゼリア新薬工業)、サトラックス(佐藤製薬)などがおすすめです。

塩類下剤には、ミルマグ(エムジーファーマ)、3Aマグネシア(フジックス)、スラーリア(ロート製薬)などがあります。ミルマグは錠剤、液状、ドリンクなど剤形も豊富なのでお客様の要望に合わせやすい薬です。浸潤性下剤のジオクチルソジウムスルホサクシネート(DSS)は界面活性剤で、この成分自体は排便作用が弱いため、ビサコジルと合わせてOTC薬に使用されています。

便が細くヒョロヒョロとした形状の場合は弛緩型便秘を疑いましょう。腸管自体の蠕動運動が弱いために起こることが多いので、刺激性下剤を選択します。成分としてはビザコジル、センナ、ダイオウ、ピコスルファート、ラキソナリンなどが有名ですが、メーカーによって成分の配合が異なるのできちんと確認してください。例えば、コーラック(大正製薬)、ビューラック(皇漢堂製薬)、スルーラックS(エスエス製薬)などが有名です。

4.お腹はぽっこり出ていますか?
5.ガスが頻繁に出る、もしくは、ガスが溜まった感じはありますか?

4と5は直腸性便秘の可能性を探ります。
お腹のガス溜りや放屁が多い時は、ガスコンの主成分ジメチルポリシロキサンを含むOTC薬が良いでしょう。例えば、ガスピタン(小林製薬)や、整腸剤に付加されているタイプのザガードコーワ(興和新薬)などがあります。ただし、ザガードコーワには納豆菌が入っているので、ワルファリンなどを服用している方にはすすめないようにしてください。もし、症状が辛いようであれば、浣腸などを用いると良いですが、多用しないように伝えましょう。

OTC薬の浣腸は、主剤であるグリセリンの量(10~40g)によって複数種類があります。また、ノズルもロングタイプなど多種ありますから、年齢や症状に合わせて適宜おすすめしましょう。寝たきりの方や浣腸が苦手な方には坐薬タイプがおすすめです。医療用と同じ名称でもある新レシカルボン坐剤(ゼリア新薬)や、コーラック坐薬(大正製薬)が挙げられます。

浣腸は、使用してから約5~10分、坐薬は約10分~30分で効果を発揮します。坐薬は炭酸ガスで直腸内を刺激して排便を促す仕組みになっているので、浣腸と比べると作用は穏やかです。そして、便のかさを増やす「不溶性食物繊維」や、大腸の働きを活発にする便秘薬は、直腸の負担を増やし、症状を悪化させる場合があるので注意してください。また、カフェインや香辛料、アルコールなどの刺激物の摂取も症状を悪化させる可能性があります。

便秘薬は服用タイミングに注意する

便秘薬で注意してほしいのが服用タイミングです。基本的に便秘薬の服用タイミングは就寝前。その理由は、朝が一番便意の強い時間だからです。しかし、近年は一般的に就寝時間が遅く、睡眠時間は短い傾向にあります。特に、若い方の睡眠時間は3~4時間ということも少なくありません。刺激性便秘薬は腸溶製剤になっている場合が多く、6~10時間で大腸に届き、作用するように作られています。したがって、昨今の生活習慣では就業中や学校の授業中、昼食時に便意を伴う腹痛に見舞われることも考えられます。ですから、就寝前に薬を飲むという服用指導だけでは不十分。就寝時間や睡眠時間も確認したうえで薬をすすめましょう。

また、最近は夕食直後に就寝するという話を若い方からよく聞きます。その場合も注意が必要です。腸溶製剤は腸管内を中性から弱アルカリ性で溶解するように作られています。食後は胃内のpHが酸性から中性付近に変わるため、食後すぐに薬を飲むと、本来、腸で溶けて作用するものが胃で溶けてしまうことがあるのです。胃と腸は同じ平滑筋という筋肉で覆われているため、薬剤も同じように作用することがあり、夜中に胃が締め付けられるように痛み出し、救急車を呼ぶ事態になった方もいます。
服薬指導の際は教科書通りではなく、患者の生活パターンなども同時にうかがいましょう。それが、OTC薬の正しい選択と適正使用につながります。

下痢の時の対処法

下痢の時もOTC薬で対応できる場合があります。一般的に下痢といえば「正露丸」が有名ですが、正露丸は一つの処方名みたいなもので、メーカーによって処方が異なります。OTC薬に正露丸と名の付く商品は20種類以上あり、ロートエキスの含有量によって「胃腸薬」と「止瀉薬」に大別されます。なお、ロートエキスが入っているものは、抗コリン薬に禁忌のある方は服用できません。また、緑内障、前立腺肥大症などの既往歴がある方にも禁忌になりますので、販売時、患者へのヒアリングが重要となります。

その他にも、海外旅行の常備薬として、比較的衛生状態が良い国に行く場合は「胃腸薬」、衛生に不安のある地域に行く場合は「止瀉薬」の正露丸をすすめると良いでしょう。正露丸以外のOTC薬では、ロペラミドが入ったピタリット(大正製薬)、トメダイン(興和新薬)、シグナル下痢止(エスエス製薬)などがあります。トメダインはフィルムタイプの剤形もあり、水なしですぐに服用できるうえ即効性があるため、IBS(過敏性腸症候群)をお持ちの方や、電車やバスなどに乗ると腹痛に襲われる方、緊張するとお腹が痛くなる方などに適しているでしょう。

ところが、下痢の原因が細菌などの場合、むやみに「下痢止め」を飲むとかえって症状が長引く可能性があります。下痢は、細菌や細菌が作り出す毒素などを体外へ排泄しているのですが、その働きを薬が妨げてしまうのです。
原因がウイルス性なのか細菌なのかで対処薬は異なりますが、重要なのはどのように道筋を立ててどの薬をすすめるか考えること。こうしたトリアージはこれからの薬剤師に重要なスキルの一つ。OTC薬は複合剤ですので、症状や用途によってすすめる薬を変えてください。

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専門家プロフィール

鶴見 健

鶴見 健(つるみ けん)

徳島文理大学大学院 薬学研究科薬学専攻 博士前期課程修了(薬学修士) 神奈川県生まれの、関西大好き人間。大学院時代にアルバイトでドラッグストアを経験し、その難しさと奥深さに感銘し、地域医療のあるべき姿をドラッグストアに求め就職。販売に従事する傍ら、バイヤー・販促・教育・採用など多岐にわたる職種を経験。