日本で薬学部のある大学の数は74校。規制緩和により2003年以降、薬学部の新設ラッシュが起き、全国に27の薬学部が設置されて現在に至っている。薬学部が増えたことで、新設校を中心に学生の定員割れや偏差値の開きなど、さまざまな問題も出てきている。

さらに、近年話題となっている薬剤師国家試験の合格率低迷も見逃せない。問題の難問化も指摘されているが、そうした中でも高い合格率を維持する大学もある。
その一つが金沢大学薬学類だ。同校の新卒の合格率は、第99回が97.22%、100回が94.29%と、東京大学の新卒合格率100%に次ぐ好成績を収めている。新卒の合格率30~40%台という大学もある中で、こうした高い合格率をキープする背景には、その教育内容にどのような工夫があるのだろうか。

その件について、金沢大学薬学系長の国嶋崇隆教授に聞くと「正直、国家試験に焦点を当てた授業は行なっていません。むしろ卒業研究に力を入れています」と答えが返ってきた。卒業研究の発表は夏~秋に行なう大学も多いなか、金沢大学では12月半ばに実施。「薬学とは薬と生体の関わりを多方面から研究することで健康と福祉に貢献する学問であり、薬剤師養成はその一つ。大量の基礎知識は必要ですが、それを使って問題を発見し、解決する能力の方が重要。その能力を鍛えられるのが卒業研究であり、学生にはじっくり取り組んでもらいたい」と国嶋教授は研究に注力する理由を述べる。
さらに、もう一つ同大学の特徴として挙げられるのが、同学附属病院での実習だ。「病院薬剤師と薬学系の実務家教員との密接な連携のもと、全学生が病棟薬剤師によるマンツーマンの実習と症例発表を経験。学生のスキル、知識はもとよりモチベーションも大きく向上しており、それが合格率につながっているのかもしれません」(国嶋教授)。

実は、国家試験偏重の大学講義に神戸大学の平井みどり教授も警鐘をならしていた(「新コアカリキュラムで問われる大学教育力の今後」)。そして、問題の難問化と言われる理由の一つが、出題内容が「思考型」にシフトしていることにある。
その点、卒業研究には大量の知識とともに、思考力を要される。また、病院での実践的な経験も問題解決力の鍛錬になるに違いない。金沢大学の合格率の高さは、その教育方針によって学生の思考力が鍛えられた結果といえよう。

当然のことだが、薬剤師の「思考力」「問題解決能力」は国家試験合格のためではない。現場の薬剤師にこそ必要なものだ。服薬指導や疑義照会など、多角的な見方や判断力が必要な場面は日常茶飯事だろうし、そうしたスキルを国民も求めている。
合格率の低下は、「薬剤師の役割」が変化していることを学生にも現役薬剤師にも伝えているのだ。

薬キャリ編集部Y.K.

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