「災い転じて福と成す」きっかけに

2015年は薬局の不祥事から始まったように感じる。 2月には大手ドラッグストアの子会社による薬歴未記載問題が発覚し、続いて別の企業でも同じような事例が報告。さらに、調剤薬局による無資格調剤も表面化した。

このことは、最近相次いでいる調剤バッシングの動きを助長させ、規制改革会議や経済財政諮問会議、財政制度等審議会などにおける「医薬分業の在り方論」にも波及している。これらの会議では医薬分業の費用対効果や患者のメリットに対する厳しい意見が出ており、16年度の調剤報酬改定に暗い陰を落としている。

薬局関係者はこうした現状をどう受け止めるべきなのだろうか。そもそも、現在の調剤バッシングは、ダブルチェック機能を主体とした薬物療法の安全確保のための医薬分業制度そのものを否定しているのではなく、「調剤の在り方に対する批判」であることを理解しておかなければならない。

もし、医薬分業を全面的に否定するのであれば、院外処方を院内処方に戻す方策が議論されるはずだが、実際の動きはその方向にはない。むしろこれを機に「かかりつけ薬局」の定着にどう結び付けるかという議論が進んでいる。もちろん、現在の厳しい財政事情から調剤報酬全体の費用の抑制は避けられないが、これで真の意味での医薬分業の定着が図られるならば、『災い転じて福と成す』転換は必ずしも不可能ではない。

そういう意味でも今回のテーマである「2015年薬局業界のトレンド」は真の医薬分業を目指す序章が始まったということができるのだ。

問題が解消されないままにしたツケが回っている

今後は、調剤を巡る論議に注視しながらも、個々の薬局がいかに「あるべき分業の姿」に向かって邁進するかがポイントになるだろう。しかし、実はここに重要な課題がある。

これまでも院内処方を単に院外処方にしただけの流れ作業の調剤や薬剤師不在、お薬手帳に変わるシールの配付、点数優先の請求のあり方など、いくつかの問題が指摘されてきた。ところが、これらの問題は時間の経過とともに関係者の記憶から薄れ、いつの間にか元の木阿弥となった。今回発覚した薬局の不祥事も、過去に取り沙汰された問題が一向に改善されないまま放置され、ツケとしてまわってきたといえるのではないだろうか。
ここで「今回もまた、喉元過ぎれば熱さを忘れるだろう」などと思ったら、大間違いだ。

日常業務に真摯に取り組もう

では、薬剤師個人としてなすべきことは何か。処方箋受付時に患者の服薬状況と残薬の有無や後発医薬品の使用意思などの「先確認」の徹底、薬歴記載など、まずは調剤業務の徹底である。そうすることで、調剤の見える化につながり、患者から信頼を取り戻せるのではないだろうか。

もちろん、無資格者の関与を徹底排除することも重要だ。実際、薬を取り揃えるピッキングには明確な判断はなく、事務員でも対応可能とされているが(※注1)、「混合」などの行為は狭義の調剤行為であり、薬剤師以外は行えない。

また、薬歴は「薬剤師が処方箋に基づいて調剤を行った理由書」であり、記憶が薄れない段階、できればその場で直ちに記載する必要がある。処方箋自体は単なる紙きれだが、これを「医薬品」に代える判断は薬剤師の専権事項であり、薬歴という理由書に明記にしておく必要があるからだ。

かかりつけのキーワードは「在宅」と「24時間調剤体制」

これらを踏まえたうえで、厚労省が進めようとしている「かかりつけ薬局」について考えてみよう。そもそも、かかりつけ薬局の議論は、厚労省が規制改革会議健康・医療ワーキンググループで示したもので、5月21日の同会議では、かかりつけ医と連携した服薬管理や処方薬の一元的・継続的管理を評価する仕組みが提案された。

また、門前薬局に対する評価を再度見直す考えも示されている。これについては今後、中医協で具体的に検討し、16年度改定以降に対応していく方針だ。ワーキンググループの委員会からも特に大きな異論は出なかったため、規制改革会議は「かかりつけ薬局の推進」を本年6月の答申に盛り込む。

具体的には「在宅での服薬管理・指導や24時間対応など、地域のチーム医療の一員として活躍する薬剤師」「かかりつけ医と連携した服薬管理」「処方薬の一元的・継続的管理」「専門性を生かした後発医薬品の使用促進」を評価することで、薬物療法の安全性・有効性の向上と、多剤・重複投薬の防止や残薬解消による医療費の適正化を実現したい考えを示した。

ポイントとなるのは「在宅」と「24時間調剤体制」。14年度に改定された基準調剤加算2(36点)であり、特に目新しいものではないが、これを進めることで、門前薬局との違いを明確にする狙いが見て取れる。

ただし、基準調剤加算2の施設基準届け出状況は、14年9月現在で3500施設(全体の6.3%)にとどまり、基準調剤加算1の届け出状況は約2万6000施設の47%と、大きな格差があるためハードルは高い。しかし、基準調剤加算1であっても「近隣の薬局との連携」がスムーズにいけば、かかりつけ薬局の機能を果たすことになるはずだ。

今後の在宅ニーズの増加を勘案すれば、薬局が在宅に関与することは必須であり、これに対応できないと薬局は舞台から消える運命になるだろう。薬局を取り巻く環境は、分業バブル時代とは大きく異なっていることにそろそろ気づいてほしい。あるべき薬局機能、薬剤師の職能を発揮し、「地域になくてはならない存在」となるためにも今こそ、一丸となって奮闘することが望まれる。

(※注1)事務員が行うピッキングについては非公式会合で厚労省担当者から「必ずしもNOとはいわない」との発言があったと伝えられる。しかし「事務員のピッキングはOK」との正式文書は存在せず、現在はグレーゾーンと解されている。

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専門家プロフィール

藤田 道男

藤田 道男(ふじた みちお)

中央大学法学部卒。医薬関係の出版社、㈱じほう編集局に勤務し、各種媒体の編集長を歴任。退職後フリーの医薬ジャーナリストとして取材・執筆、講演活動を行う。
2010年、薬局薬剤師の教育研修のために「次世代薬局研究会2025」を立ち上げ、代表を務める。

◆主な著書
「かかりつけ薬局50選」・「残る薬剤師 消える薬剤師」・「薬局業界の動向とカラクリがわかる本」