薬局の役割・機能の再構築のスタートに

少子高齢社会の進展とともに、薬局を取り巻く環境が大きく変化しようとしています。2014年は薬局の役割と機能を見直し、次世代における新たな存在感を示すスタートの年にしたいものです。
現在、薬局は全国で55,000施設を数えます。分業元年(1974年)以降、国策としての分業推進策もあり、処方せんの受取率(分業率)は全国平均で66.1%(2012年度)まで進展しました。
しかし、現在のビジネスモデルは「分業推進」というフォローの風がもたらしたものです。分業バッシングに見られるように、薬局調剤に関してはアゲインストの風が吹いていると言っても過言ではありません。
一方で、高齢化が進む中で薬局薬剤師への期待も高まっています。地域社会で確固たる存在感を示すために、薬局の役割を見直し、機能を再構築することで調剤特化型の経営スタイルを転換させるきっかけにしたいものです。

2025年を見据えた社会保障制度改革

政府の高齢白書によれば、2012年の高齢者人口は3079万人(前年2975 万人)で、高齢化率は24.1%でした。わが国は総人口が減少する一方、高齢者人口は2042年の3878万人まで増加の一途をたどります。少子化の影響もあり、高齢化率は2060年の39.9%まで増えると推定されています。
わが国の社会保障制度は戦後の高度成長期に確立した「1970年代モデル」が基本になっていますが、少子高齢化の進行、財政の逼迫、世代間格差等々の問題が待ったなしの状況を迎えていることを踏まえ、持続可能な社会保障制度の再構築に向けて団塊世代が後期高齢者となる2025年を見据えた「2025年モデル」への改革を強く訴えています。
日本経済の再生に向け、新たに策定された成長戦略(日本再興戦略)では「国民の健康寿命の延伸」を図るために医療・医薬品産業を日本経済の牽引産業に位置付け、活力ある社会の実現を目指しています。
さらに2013年8月に提出された社会保障制度改革国民会議の最終報告書に基づき、医療・介護・年金・健康支援等の制度改革が計画されています。
具体的には、①負担能力に応じた給付②女性、若者、高齢者、障害者のすべてが働き続けられる社会の実現③医療機能の分化・連携と地域包括ケアシステムの構築④大病院の受診を抑制とかかりつけ医の活用、地域医療連携―などが示される方向です。
また、国民の健康の維持増進、疾病の予防及び早期発見等を積極的に促進する必要性から、医療関連情報の電子化・活用のインセンティブを医療提供者に持たせるように取り組むとともに、保険者が積極的に加入者の健康維持・疾病予防に取り組み自発的な健康づくりへのサポートの在り方等も進める方針です。疾病の治療だけでなく、健康づくりや未病段階での取り組みを促進することで健康寿命の延伸を図る狙いです。これらを骨子とする社会保障改革法は年末に成立し、さらに関連法案が順次通常国会に提出されます。

分業市場は限界に近づいている

分業の状況については、近年は伸び率が鈍化しています。分業率は70%を間近に控えていますが、逆の見方をすれば、分業の限界が近づいていることの証左です。分業率が最も高い秋田県では、12年度の分業率は82.7%で、11年度の83.0%から0.3ポイント下がり、処方せん枚数も約15 万枚減少しました。他にも北海道、青森、山口、福岡などの先進地区で処方せん枚数が前年比割れとなっています。
今後は、病院の外来規制が強化されることにより、特に大病院の患者数が減少することが予想されます。病院の外来規制については、1996年から200床以上の病院を受診した場合は、初診料に加えて各医療機関が定めた特別料金を徴収できる特定療養費制度が導入され、2012年診療報酬改定では、特定機能病院や地域医療支援病院に患者が紹介状を持たずに受診した場合に、病院が受け取る初診料を引き下げ、その分を患者から徴収する仕組みが導入されました。今回は「紹介状なしの定額自己負担」を2016年度から実施する方針です。
薬局は外来患者の処方せんを待つだけの業務内容から、積極的に薬局外に出て行き、患者をケアする役割を果たすことが求められます。

地域の健康ステーション機能

日本再興戦略や社会保障制度改革国民会議の報告書では、健康維持や疾病予防対策の重要性が指摘されています。また厚労省の2014年度予算案でも予防・健康管理の推進に305億円を計上しています。その中で薬局を地域の健康情報拠点と位置付けたモデル地区事業が2.9億円の予算で実施されます。地域住民の健康支援・相談対応として、薬局等での情報発信機能を推進する狙いです。
具体的には食生活、禁煙、心の健康、介護ケア、OTC、サプリメント、健康食品の情報提供・相談(適切な受診勧奨)、一般用医薬品の適正使用に関する情報提供・相談、在宅医療に関する情報提供・相談等―が想定されています。
薬局が地域住民の健康や介護問題のフロントラインとして機能することで、処方せん調剤やOTC薬販売、在宅医療の受け皿になり、回り道のようですが、かかりつけ薬局に結び付く事業になります。
現在の薬局の多くは「処方せんなしには入れない」業態になっています。患者自身にもそういう認識が定着しています。薬局が持つ多様な役割・機能を発揮しないのは患者や生活者にとって不幸なことであり、薬局経営の上からも得策とはいえません。
今後、医療や介護の分野ではICTの活用によって医療・介護情報が多職種で共有化される時代を迎えます。関連団体や民間企業と連携し、すべての国民の医療情報をデータベース化し、全国どこでも過去の診療データに基づいた診療を受けられ、そのデータを医療機関から受け取り、自らそのデータを管理・活用ができる「どこでもMY病院」構想が現実化します。
医療機関、薬局、療養施設、患者が医療情報を共有して活用するためにより効率的で良質な医療が期待されます。そうした時代が2~3年後には実現します。その意味でも薬局は改めて本来持っている健康管理機能も含め、高齢社会に貢献する機能・役割を追求すべき時期に来ていると言えるのです。

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専門家プロフィール

藤田 道男

藤田 道男(ふじた みちお)

中央大学法学部卒。医薬関係の出版社、㈱じほう編集局勤務。各種媒体の編集長を歴任。退職後フリーの医薬ジャーナリストとして取材・執筆、講演活動を行う。
2010年、薬局薬剤師の教育研修のために「次世代薬局研究会2025」を立ち上げ、代表を務める。

◆主な著書
「かかりつけ薬局50選」・「残る薬剤師 消える薬剤師」・「薬局業界の動向とカラクリがわかる本」