「薬局の求められる機能とあるべき姿」に関する報告書

薬局の機能とは何か、薬剤師の職能とは何か――。超高齢社会における薬局・薬剤師の役割が期待される中、調剤偏重体質からの脱却が求められている薬局業界に変化を促す報告書が出されました。2013年度厚生労働科学研究「薬剤師が担うチーム医療と地域医療の調査とアウトカムの評価研究」の研究班による「薬局の求められる機能とあるべき姿」(分担研究者=吉山友二・北里大教授)がそれです。
この報告書は、「薬局が備えるべき基本的体制」と「薬局における薬物療法(学的管理)」の2点について提言しているものです。高齢化の進行やチーム医療推進等の近年の社会情勢を踏まえ、医療の質向上及び医療安全の確保観点から、薬局・薬剤師が最適な薬物療法を提供する医療の担い手として役割が期待されているとしながらも、医療連携やセルフメディケーションの取り組みが不十分であり、医療用医薬品の供給のみに偏重している姿は求められる薬局・薬剤師像と大きく異なっていることを指摘しています。

薬局が備えるべき基本的な体制

■ 休日・夜間、在宅医療、OTC薬対応等

まず、薬局が備えるべき基本的な体制として望ましいのは、保険薬局の指定以外にも、各種公費医療制度(自立支援、生活保護等)による指定、麻薬小売業者の免許、高度管理医療機器販売業の許可及び管理医療機器の販売業・貸与業の許可。毒物劇物一般販売業の登録を受けていることとしています。
開局時間については、午前8時から午後7時までの時間帯に8時間以上連続して開局していることや、開局時間以外であっても、休日・夜間等における緊急時の連絡先を患者に情報提供する(自薬局で対応できない場合には、他の薬局と連携し、休日・夜間等の対応が可能である体制を整備している)こと等を挙げています。特に在宅薬剤管理指導の充実を図る観点から、個々の薬局における休日・夜間等の緊急時の対応の即応性を考慮すると、24時間対応可能な体制を整えることはより望ましいものと考えられるとしています。
医薬品等の備蓄では、処方箋の円滑な受け入れに加え、後発医薬品の積極的な使用の妨げにならないように必要な医薬品を備蓄・供給できる体制を構築することや、第1類医薬品を含む一般用医薬品を販売していることを求めました。
構造・設備については服薬指導等での患者のプライバシー保護の視点からパーテーション等を設けることや、クリーンベンチ等無菌調剤を実施できる設備を持つことが必要だとしています。
薬局の人的機能では、必要人員数については触れていないものの、主として薬剤師としてのスキル向上を求めています。調剤に伴う手技(無菌調剤に係る手技等)や技能の向上、薬物療法の個別最適化、効果や副作用の確認等に必要な薬理学、製剤学、薬物動態学、フィジカルアセスメント等についての最新情報の収集、医療を中心とした社会保障制度等に関する理解、適切な一般用医薬品の選択や生活上の指導を行うのに必要な能力の向上等に取り組んでいること。各種認定薬剤師・専門薬剤師の取得をすることが望ましいとしています。

薬局における薬学的管理

残薬確認や薬剤減量の提案、健康管理機能を求める

薬局における薬物療法(薬学的管理)の実施については、副作用の発現状況や期待される効能の発現状況の確認を行い、薬学的見地から処方せんを確認し、医師に対し疑義照会を行うとともに、薬剤の変更や減量等の提案を行っていること、特に緩和ケアにおける医薬品の適正使用の確保も念頭に、麻薬・向精神薬が処方されている患者に対しては、薬学的管理とともに、残薬の適切な取扱方法も含めた保管取扱い上の注意等に関し、必要な指導もあわせて行っていることを求めました。
在宅医療への取組みについては患者や地域住民をはじめ、近隣の医療機関や介護事業者、自治体等に周知するよう求め、他職種との情報共有等の連携の重要性を指摘しています。
後発品の使用促進では、厚生労働省の「後発医薬品のさらなる使用促進のためのロードマップ」を踏まえ、調剤される医薬品に占める後発品の数量シェアが60%を超えていることが求められています。
健康情報拠点としての役割については、地域住民が日常的に気軽に立ち寄ることができるという薬局の特性を活かし、薬局利用者本人又はその家族等からの健康や介護等に関する相談を受け、解決策の提案や適当な行政・関係機関への連絡・紹介を行っていること。栄養・食生活、身体活動・運動、休養、こころの健康づくり、飲酒、喫煙等生活習慣全般に係る相談についても応需・対応し、地域住民の生活習慣の改善、疾病の予防に資する取組みを行っていること。薬剤師が医療・保健・福祉・介護等に関する知識を十分に有するよう、介護支援専門員等の各種関連資格を取得することが望ましいとしました。

【解説】

厚労省研究班の報告書は、特に目新しいものではありません。しかし、現在の薬局の機能が外来患者の処方せん受け入れに偏重している状況について、客観的立場から提言していることに注目する必要があります。国民・患者から求められる薬局像とかけ離れているのではないかとの指摘は真摯に受け止める必要があるでしょう。
報告書は、薬局が医療提供施設という医療法で規定されていることを根拠に休日・夜間応需体制、在宅医療、他職種との連携等を求めたほか、健康人から治療中の患者まで幅広く対応できる存在であることを踏まえ、一般用医薬品の取り扱い、身近な健康相談機能等を求めています。高齢社会の進行に伴う医療費増もあり、調剤報酬の伸びは期待できません。しかし、在宅医療・介護の需要増、健康管理や未病対策ではマーケットの広がりが予想されます。医療提供施設としての薬局、医療の担い手としての薬剤師が真に社会から信頼され、必要とされる存在になり得るかどうか。報告書で指摘されたような体制づくりに急ぎ取り組む必要があるでしょう。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

専門家プロフィール

藤田 道男

藤田 道男(ふじた みちお)

中央大学法学部卒。医薬関係の出版社、㈱じほう編集局に勤務し、各種媒体の編集長を歴任。退職後フリーの医薬ジャーナリストとして取材・執筆、講演活動を行う。
2010年、薬局薬剤師の教育研修のために「次世代薬局研究会2025」を立ち上げ、代表を務める。

◆主な著書
「かかりつけ薬局50選」・「残る薬剤師 消える薬剤師」・「薬局業界の動向とカラクリがわかる本」