2015年3月12日、規制改革会議の公開ディスカッションが行われた。「医薬分業における規制の見直し」をテーマに厚生労働省や日本医師会、日本薬剤師会などから有識者が登壇し、医薬分業、薬局サービスの在り方について議論が交わされた。

登壇者は次の6人。厚生労働省(吉田審議官)、今村聡氏(公益社団法人日本医師会副会長)、白川修二氏(健康保険組合連合会 副会長)、森昌平氏(公益社団法人日本薬剤師会 副会長)、川渕孝一氏(国立大学法人東京医科歯科大学大学院教授)、狭間研至氏(一般社団法人日本在宅薬学会理事長)(登壇順)

議題の論点は「利便性(構造)」と「コストとメリット」。病院内や門内での薬局設置と、院外処方によるコスト増に見合ったサービスの提供、について話し合われた。

なお、規制改革推進室が一般人1036人に行なった調査によると「医療機関と薬局の建物が離れている方が望ましいか」という質問に対し、「思う」が31.4%、「思わない」が28.9%、「どちらともいえない・わからない」39.8%と回答。また、「処方された薬を飲んでも効かないときや、体調が悪化したとき、どこに相談しますか」という質問には「薬を処方した医療機関」と回答した人が75.8%を占めた。また、「医薬分業のメリット」については「特にない・分からない」という回答が最も多いという調査結果も見逃せない。

会議のまとめ

厚生労働省は省令で「薬局が『医療機関と一体的な構造や経営』となること」を禁じているが、委員会からは「患者の利便性を考えると、病院内に薬局がある方がよい。院内薬局でも経営的独立は保たれるのでは」という意見があり、構造的独立について引き続き検討されることになった。一方、医薬分業による調剤費増加に見合ったサービスが提供されていないという意見には、日本薬剤師会の森氏も「後発医薬品推進や残薬削減に貢献している」と触れながらも、OTC医薬品推進をはじめとするセルフメディケーションの取り組みなど、地域の「かかりつけ薬局」としての役割を強化していく必要があると述べた。
医薬分業については全員が肯定的な姿勢だが、薬剤師に対しては「さらなる活躍を期待する」という意見が多いように感じた。

登壇者の発表内容(抜粋)

◆厚生労働省(吉田審議官)

医薬分業とは、医師と薬剤師がそれぞれの専門分野で業務を分担し国民医療の質的向上を図るもので、そのメリットは「かかりつけ薬局による薬学的管理」と「薬剤師による服薬指導」である。現状、薬剤師は「残薬解消」「後発医薬品の推進」への貢献は高いが、今後は「セルフメディケーション」や「地域包括ケア」推進への取り組みも必要。一方、病院と薬局は経営的な独立性が必要であり、それには構造的な独立性が重要だ。

◆今村聡氏(公益社団法人日本医師会副会長)

利便性という点から、医療機関と薬局の構造上の独立が必要という点には疑問。医薬分業による調剤医療費の増加に関連しては、薬剤師、薬局の数が適切なのか見直す必要がある。そもそも医薬分業は面薬局と地域のかかりつけ薬局を増やすことが目的であり、国が進める地域包括ケア推進のために、薬剤師の役割をしっかり果たしてもらいたい。また、国民に対し制度の内容を周知することも必要だろう。

◆白川修二氏(健康保険組合連合会 副会長)

医薬分業は基本的に推進の立場だが、調剤費増と効果が見合っていない。「薬局の求められる機能とあるべき姿」と比較すると、病院との連携や在宅医療の実施、「健康情報の拠点」としての役割は不十分だろう。後発医薬品は使用促進が進んでいるが、シェア65%以上の薬局が少ないことから、単に点数を稼ぐのが目的のように感じる。今後は、チェーン薬局における薬歴未記載の問題解決や特定の保険薬局への誘導禁止、後発医薬品の促進、リフィル処方箋の導入が課題。

◆森昌平氏(公益社団法人日本薬剤師会 副会長)

薬局業務は時代とともに変化しており、在宅医療や後発医薬品の調剤、モニタリング(経過)、他職種連携など業務範囲が増えている。医薬分業制度は利便性よりも安全性を重視したもので、疑義照会は薬剤師の義務。現在、疑義照会される処方箋は全体の3%で、飲み合せや患者禁忌の他、患者の生活や職業などを踏まえた疑義も行なっており、年間82億円の節減効果がある。また、残薬整理や後発医薬品の普及にも薬剤師が貢献している。

◆川渕孝一氏(国立大学法人東京医科歯科大学大学院教授)

経済的、機能的独立性を担保したうえで院内薬局をつくってはどうか。とにかく国民の立場から現在の医薬分業にメリットがあるのかを考えたい。「待ち時間」「薬の説明」「重複投与の発見」「疑義照会」など国民はメリットを享受できているのか。「処方箋1日40枚に薬剤師1人」という基準は時代遅れではないか。「努力する薬局が報われる」ことを基準に考える必要がある。

◆狭間研至氏(一般社団法人日本在宅薬学会理事長)

服薬後の専門家として薬剤師には新しい治療戦略を見込めると考えている。私が経営する薬局の在宅サービスでは、薬剤師が医師との同行訪問と、単独訪問とを月2回ずつ行なっている。薬剤師の単独訪問時に患者の数値検査やフィジカルアセスメントを行ない、その結果をもとに医師が薬を処方するフローにしたところ、患者一人当たりの薬剤費が減少したという実績もある。一方、現状の薬学教育と実務内容の乖離には課題があると考えている。

ディスカッション

医療機関と薬局の構造的な一体性について

翁委員
医療の質を向上するには、医療機関と薬局の双方が独立していることは大事だが、それが保たれるのであれば、門内薬局も可能ではないか。
森氏
分業の目的は安全性、医療の質の向上を確保すること。門内薬局では機能的に特定の医療機関のものになる可能性が否めない。幅広い医療機関からの処方箋を受け付けられる「かかりつけ薬局」をめざす。
今村氏
医療機関を多数受診する高齢者が多く、実際はかかりつけ薬局で一元管理できていない。院内にあっても経営が独立するのなら問題ないのでは。
厚生労働省
面分業、かかりつけ薬局が本来の医薬分業の姿だと考えている。かかりつけ薬局の薬剤師が患者が服用する薬をすべてチェックして、継続的に観察ことが大切。
森下委員
物理的な問題だけで患者に負担を強いるのは疑問だ。病院内にコンビニなどが入っていても、経営の独立性は保たれているはず。経営の独立性や斡旋がないことを大前提として、患者のメリットを考えることが大事ではないか。もっと患者の立場に立ち、実態に即した解決策を求める。

コストとメリットについて

翁委員
患者にとってメリットを高めるにはどうするか。薬剤師の機能を活かすということについて、コストとメリットという観点から意見をうかがいたい。
林委員
かかり薬局機能にシフトするには、レセプトや処方箋の情報を一元的に薬局が確認できないと無理だと思う。マイナンバーなどITCの活用をどのように考えているのか。
厚生労働省
医薬分業のメリットはコストだけではない。リフィル処方箋については、現在も症状が安定している患者には長期処方を行なっており、導入も議論中だ。複数の医療機関から処方されている薬を薬局が一元管理するのがよい、というのは共通認識だと思っており、マイナンバー制度の活用においてはセキュリティ問題が課題である。
佐久間委員
院内、門内に薬局があれば患者にとっては便利。場所が同じだと経営で癒着が生まれる、というのは思い込みではないか。院内、門内の薬局は一年内に変えるなど、病院と薬局を同じ場所に置くという前提で考えてはどうか。
大田委員
厚労省に三つ質問がある。一つ目は医薬分業の費用対効果について。二つ目は薬剤師の専門サービスをきちんと提供している薬局に点数をつける体制にしてはどうかという点。三つ目は、医薬分業を義務化について。
厚生労働省
一つ目については本日データを持ち合わせていない。二つ目については、その通りだと思う。現在もやっている薬局とそうでないところを評価するスタイルは同じだ。三つ目に関しては、患者が自由に病院を選べるフリーアクセスを認めているので、薬局だけ義務にするのはどうかと思う。
森氏
患者のメリットと医療提供者が提供するものが一致するのかについては考える必要がある。安全な薬物治療を施すための業務が調剤室で行なわれるので、患者がメリットを感じにくいのでは、と思う。構想的な独立性については、なぜ構造的なルールができたのかという背景を忘れないでほしい。

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