2014年度調剤報酬改定が実施されてから3ヶ月が経過しました。薬局業界では改定の影響が現れ始めています。 ──「当薬局は基準調剤加算、後発医薬品変更等がすべてプラスに作用しています。これまでの取り組みが認められて良かったと思っています」と、取材した私に語ってくれたのは、関東圏のとある薬局経営者。同薬局はかねてから休日・夜間対応や在宅業務に取り組んでおり、後発医薬品への変更調剤も積極的に対応してきたため、今回の改定が収益増につながると自信を示しています。 しかし、こうした例はごく少数であり、多くの薬局は厳しい現実に直面しているのが実情です。2014年度改定では調剤基本料の「特例追加」(2500回超、集中率90%超)、「未妥結減算」の新設、基準調剤加算の厳格化、後発医薬品調剤体制加算の要件引き上げ、薬剤服用歴管理指導のお薬手帳なしの場合の減額等が盛り込まれました。従来通りの対応では減収は必至です。

基本料の特例、未妥結減算等大手に影響大

調剤基本料の特例追加や未妥結減算の新設は、大手調剤薬局チェーンの大型門前薬局を狙い撃ちにした内容であると見られています。旧点数で調剤基本料41点を算定していた店舗が25点に減額となり、それに伴い基準調剤加算も算定できなくなったことが影響しています。また、安易に手帳なしの患者にシールで対応していた薬局は41点から34点に減額となりました。 後発医薬品の変更調剤については、大手チェーンは従来からも積極的だったことから、少なくとも変更率55%以上はクリアできる薬局が多いようです。ただし、処方元の病院の意向で後発医薬品への変更が制限されているケースもあり、こうした薬局では55%の達成は困難と見られています。 調剤基本料や基準調剤加算への対応としては、集中率を下げるために新たに自局の近隣に薬局を開設して処方箋を分散させる、または在宅業務を拡大する等の取り組みに着手する企業も出てきています。 いずれにしても、薬局として従来通りの対応で進んだ場合、大幅な減収は免れません。いくつかの大手チェーンの決算説明会では「減収の影響を最小限に抑えるべく、後発医薬品使用促進や在宅対応の強化等に取り組む」との方針が示されています。

調剤手順の変更で窓口業務の見直しも

さらに悩ましいのは薬剤服用歴管理指導料算定要件に加えられた「調剤手順の順守」の項です。14年度改定では「服薬状況並びに残薬状況の確認及び後発医薬品の使用に関する患者の意向の確認」のタイミングを、「調剤を行う前」と見直されました。 これまで調剤薬局では、処方箋を受け付けた後、そのまま薬歴照合を行い、調剤に着手する流れが一般的でした。今後は処方箋受付時に服薬状況等の確認を行うことになり、作業の流れの変更を余儀なくされています。作業の効率化のためにスタッフの作業動線を決めている薬局もあり、場合によっては店舗の改装も必要になるとの声も出ています。処方箋受付を薬剤師以外のスタッフが行っていた薬局では、窓口業務を薬剤師に変更せざるを得ません。薬剤師の増員を図るか、あるいは作業手順を見直すかといった問題も出ています。手順が変わったことによる患者の戸惑いや不満を解消するために、待合室にポスターを貼ったり、受付窓口に確認のためのシールを備えたりする等の対応を行う薬局が増えてきました。

中小薬局は地域薬局間の連携がカギ

14年度の改定が厳しい内容であるのは、中小薬局にとっても同じことです。調剤基本料は影響を受けませんが、基準調剤加算ではこれまで加算2で30点を算定していたものが、加算1の12点になるケースが続出しそうです。全国5万5000の薬局の多くはこうした中小薬局であり、大手チェーンと違って組織力やシステム化で対応できる余力はありません。 そのため、特に地区薬剤師会の支援が必要です。14年度改定で求められた24時間調剤・在宅業務体制、保険医療材料・衛生材料の供給体制等について、中小薬局が単独で対応するのは困難です。例えば24時間調剤体制は近隣の薬局とのシフトに必ず入る等、地域薬局間の連携で完結する体制が必要です。14年度改定で示された方向は、2025年を見据えた社会保障制度改革の一環であり、次回、次々回改定でも引き継がれることが確実です。薬局が医療提供施設として生き残れるかどうかが試されているわけでもあり、その意味でも地区薬剤師会がリーダーシップを発揮することが望まれます。

M&Aの案件が急増

14年度調剤報酬改定は、薬局業界再編の引き金になるとの見方が出ています。 ──「ここに来てM&Aの案件が増えています。従来は大手中心でしたが、中堅企業でも売りと買いが錯綜している状況です」と、M&Aを手掛ける企業関係者は語っています。 現在の薬局経営者の多くは1980~90年代に開局した創業者が多く、代がわりの時期を迎えています。こうした中、「後継者がいないために従業員も含めて引き受けて欲しい」と考える経営者が増えています。彼らが薬局を経営していた時代は国の分業推進策のバックアップもあったことから、比較的順調な経営を実現することができた時代でした。しかし時代が変わり、これまでのビジネスモデルが通用しなくなり、またこの厳しい状況を目の当たりにした次の世代が、経営を引き継ぐ意欲を失ってしまうという現状があります。

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専門家プロフィール

藤田 道男

藤田 道男(ふじた みちお)

中央大学法学部卒。医薬関係の出版社、㈱じほう編集局に勤務し、各種媒体の編集長を歴任。退職後フリーの医薬ジャーナリストとして取材・執筆、講演活動を行う。
2010年、薬局薬剤師の教育研修のために「次世代薬局研究会2025」を立ち上げ、代表を務める。

◆主な著書
「かかりつけ薬局50選」・「残る薬剤師 消える薬剤師」・「薬局業界の動向とカラクリがわかる本」