諸外国に比べ、ジェネリック医薬品の途上国ともいえる日本。しかし、将来の医療制度を考えるうえで、ジェネリック医薬品の普及率アップは避けては通れない課題です。そこで本連載では、日本ジェネリック医薬品学会の理事を務める漆畑稔先生に、ジェネリック医薬品の現状と課題についてお話いただきます。

はじめに

これまで後発医薬品(ジェネリック医薬品)の普及に深く関わってきた者の一人として、この連載では後発医薬品の使用促進の経緯、現状と課題について話したいと思う。
海外における後発医薬品事情についても詳しく説明したいところなのだが、国ごとに大きく異なる医療保険制度や医薬品価格、医薬品の保険給付の制度等状況を絡めながら説明する必要があるため、きわめて長文にならざるを得ない。そのため、一部は簡略に述べることをご容赦いただきたい。また、関連する社会保障や医療保険制度改革についても、若干ではあるが触れさせていただきたいと思う。

後発医薬品の使用促進は医療費削減の手段

ご承知の通り、後発医薬品の使用促進は医療費の抑制や効率化を目的とした、いわゆる医療費適正化政策の主要なひとつ、つまり手段である。我が国は現在人口の減少期に入ったにも関わらず、高齢化を主な理由に、医療費は相変わらず伸び続けている。その中で後発医薬品使用促進は、医療の質を保ったうえで医療費を抑制できる実行性の高い重要な手段なのだ。
しかし、それには医師や薬剤師、患者、保険者や被保険者など医療に関わるさまざまなプレイヤーの理解や努力、協力が不可欠。もちろん行政の役割も極めて重要である。さらに、後発医薬品の使用促進に限らず、医療費については、単に医療保険制度の財政論としないで、医療政策の一環として位置付け、検討することが重要だと思う。

後発医薬品の使用促進でキーを握るのが、処方を掌る医師である。そして医師に次ぐのが薬剤師である。患者とのインターフェイスとしての役割は当然のことながら、医師への医薬品の情報提供者としての役割が重要だ。医薬品の情報提供は、もちろんメーカー情報の受け売りではなく、患者の使用感や医学的、薬学的反応等の臨床情報を指す。これには、それなりの薬剤師の能力が必要であることは言うまでもない。

医療費の伸び率は調剤医療費が最多

さて、医療費の現状だが、我が国の医療費(公費を除く)は現在、38兆5850億円(2012年度)。国民1人当たりの医療費は30万7500円で前年度比+1.9%である。その主な内訳は医科、歯科、調剤がそれぞれ順に28兆円3198億円、2兆7132億円、6兆7105億円。このうち最も伸び率の高いのが調剤医療費だ。理由は医薬分業が進展途中にあることと、調剤医療費に占める薬剤費の割合が8割近いという現状による。余談になるが、病院団体をして「調剤医料費の伸び率は異常」と言わしめるなど、近年の医薬分業への風当たりの最大の理由がここにある。

ご承知の通り、医療費に関しては薬剤費についての議論が常にある。とはいえ、薬剤費の割合が40%を超えていた時代から比べると、現在は20%台にまでに縮小しており、大きな議論とはなっていないようだ。しかし、先進各国と比較した際に決して小さくないその割合は、更なる改善の余地を十分に残している。

先発医薬品からより安価な後発医薬品医に変更することで、薬剤費を下げることは確かに可能だが、一方で、われわれが抱える課題の一つ「多剤投薬」の解決には全くつながらない。これはこれで、関係者は改善に取り組むべきであると思う。医療費に占める薬剤費のボリュームは、先進各国でも大きな関心事となっている。関係者は薬剤が内科的治療の重要な手段であることを承知しながらも、主に財政面の理由から、薬剤費については抑制的な議論の対象とせざるを得ない状況だ。
加えて、さまざまな調査で指摘されている通り、我が国では、家庭内残薬と呼ばれる飲み残しの医薬品が多く、これが医療費の無駄遣いという声を更に大きくしている。

このことからも、後発医薬品の使用促進には、患者の意識改革もまた必須だ。自己負担や保険料の在り方も含めて、公的保険制度に基づく保険給付や医療費に対する意識を高める施策の充実が重要だろう。

新薬を悪者にしない後発医薬品の促進活動が必要

後発医薬品の使用促進や薬剤費抑制の議論や実行は、患者の療養の質に悪影響を及ぼさないことが大前提だ。新薬が高価であるがために邪魔者扱いされることもあってはならない。医薬品は患者にとっては治療手段である。この限りでは手術や処置と全く同等であることを関係者は十分に理解する必要がある。
その上で、後発医薬品の使用促進については、先発医薬品から安価な後発医薬品へ、及び、後発医薬品からより安価な後発医薬品に切り替えることの両方がある。また、後発医薬品の使用促進が、そもそも医療費の抑制を目的にしていることから、数量ベースでの目標設定や評価方法は目安にはなるものの、成果を評価するためにはまだ不十分だと考える。

次回以降は、後発医薬品使用促進に係るそれぞれの課題や変遷、私が行った調査結果などについて順番に述べさせていただくことにする。

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専門家プロフィール

漆畑 稔

漆畑 稔(うるしばた みのる)

日本ジェネリック医薬品学会理事。他に、日本薬剤師会相談役や日本医薬総合研究所取締役も務める。(有)ユーアイ薬局を開設後、静岡市薬剤師会理事や副会長、日本薬剤師会常務理事、副会長を歴任し、厚生労働省 中央社会保険医療協議会委員、社会保障審議会臨時委員も務めた。

◆主な著書
『薬剤師の疑義照会』『薬剤師と医療保険』(ともにエルゼビア・ジャパン)など