「女性」と「食」は切り離せないテーマ。生涯、健康で過ごすには、年代やライフステージに合わせた栄養管理と食習慣の推奨が重要です。そこで、住民が最もアクセスしやすい健康情報ステーションである薬局には、服薬指導やセルフメディケーションの指導の一環として、正しい食習慣づくりの支援にも取り組んでいただきたい。今回は「それぞれの患者に役立つ食習慣づくり」をテーマにお送りします。

薬剤師はエビデンスに基づいた情報を用いたアドバイスをすべき

はじめに、女性への指導に限らず、薬剤師が食習慣のアドバイスを行なう際は、服薬指導を薬学的視点で行うのと同様、常に「エビデンスに基づいた情報を用いる」ということを忘れないでほしいと思います。テレビなどメディアが報じる話題を、証拠もないまま患者に伝えることがあってならないのです。そこで、そのエビデンスを示した「日本人の食事摂取基準」をご紹介します。2015年から5年間、この基準が採用されることになっています。

皆さんは「日本人の食事摂取基準」をご存じですか。
日本人の食事摂取基準は、健康増進法(2003 年)の第30 条の2に基づき厚生労働大臣が定めるものとされ、国民の健康の保持・増進を図る上で摂取することが望ましいエネルギー及び栄養素の量の基準です。主な策定方針は次の通りですが、特に「アセスメントの重要性」と「エネルギーの摂取量及び消費量のバランス(エネルギー収支バランス)の維持を示す指標として、「体格(BMI : body mass index)」を採用したことが特徴で、2010年度版からの大きな改定ポイントとなっています。

◆主な策定方針

①日本人の食事摂取基準(2015 年版)では、策定目的として、生活習慣病の発症予防とともに重症化予防が加えられています。
②対象については、健康な個人並びに集団とし、高血圧、脂質異常、高血糖、腎機能低下に関して保健指導レベルにある者までを含むものとされています。
③科学的根拠に基づく策定を行うことを基本とし、現時点で根拠は十分ではないが、重要な課題については、研究課題の整理も行うこととされています。

妊娠適齢期の女性に的確なアドバイスができますか

◆妊娠適齢期の女性への的確なアドバイス

女性が特に食事に配慮すべきライフステージが、妊娠適齢期と言われる20代~30代です。
今、日本では、低出生体重児の比率が1割を超えています。これを改善するには食習慣の見直しが最も大切です。「妊娠」と「栄養」という話になると、若年女性に必須の栄養素として、やたら「葉酸」だけがクローズアップされがちですが、妊娠しやすい体づくりには、それ以外にも多種多様な栄養素が必要です。前回も紹介した細川モモ氏が主宰する「Luvtelli」が展開する「まるのうち保健室」などの取り組みもぜひ参考にしてみてください。

◆骨粗鬆症対策にカルシウムとビタミンDを勧めるだけで満足しない

薬局では、骨粗鬆症の薬物治療に関して服薬指導を行なう際、決まり文句のように「カルシウムやビタミンDを摂取するようにしましょう」と指導していませんか?
「骨の健康、強度や質の維持」に関わる栄養として、カルシウム、ビタミンDはもちろん大切ですが、その他にカリウムやビタミンKの摂取も重要です。さらに、アルコールの摂取量や体重によって前述の栄養素の摂取量は変わってきます。とはいえ、これらの栄養素をサプリメントから摂取すればよいかというと、そういうわけではなく、エビデンスも少なく賛否両論あるため、今も議論が続いています。ですから、基本は食事から採ることを推奨しています。つまり、患者一人ひとりで異なる食習慣を、「食事摂取基準2015」に基づいて個別アセスメントすることが必要といえるのです。
ちなみに、女性の骨量は20歳前後が最大骨量となるため、骨粗鬆症対策には20歳までの栄養摂取と骨づくりが大きく関係します。10代後半で骨づくりに必要な栄養素を十分に摂取して、適度なBMIを維持し、垂直荷重のある運動をすることが重要だと言えます。

目的別に異なる食習慣のアセスメント

医薬品の中には、食事療法後の服用を推奨するものもありますから、薬剤師には、服薬指導と合わせて食習慣指導を行なっていただきたいと思っています。
食習慣指導をする際に重要なのが、食事内容の調査(食事アセスメント)です。食事アセスメントは、その目的によって手段が異なります。代表的な方法は「食事歴法」「食事記録法」「思い出し法」「陰膳法」「生体指標」「食物摂取頻度法」の6種類で、今まで国内で最も使われてきたのが「食事記録法」です。ちなみに、食事を食品別に分け、その重量を秤で計るものを「秤量式食事記録法」と言い、もっとも正確な調査方法と考えられています。一方、簡易型自記式食事歴法質問票(BDHQ)などを含む「食物摂取頻度法」は、一般的には、簡易法として位置づけられています。
これらの調査法は一長一短あり、目的によって使い分けられています。短期間で調べることが目的の場合(例えば食中毒の原因を調べる場合)などでは「思い出し法」が使われますし、生活習慣病と強く相関すると考えられる場合は「食物摂取頻度法」や「食事歴法」が用いられます。

それから、健康診断の結果で、血圧とLDLコレステロールが高いという結果から、「塩辛いものや揚げ物に注意してください」とか「コレステロールの多い食品に気をつけてください」といった食事指導をしている場面をよく見ます。しかし、臨床検査の結果のみから食習慣指導をするのは推奨できません。
食習慣の改善には、臨床検査だけではなく食事アセスメントをすることが重要なのです。

右の図は、女性に多い疾患とされている骨粗鬆症の食事指導箋(食事アセスメントの結果)のー例です。このような個別アセスメントの結果があれば薬局で薬剤師が的確なアドバイスができるようになります。
医薬品の「処方箋」のように「食事指導箋」を用いて、管理栄養士が薬剤師とともに食事指導と服薬指導を行なえば、薬局の健康情報ステーションとしての役割はもっと増すはずだと確信しています。
この食事アセスメントに使用された質問票は、東京大学大学院医学系研究科の佐々木敏博士が開発したもので、DHQサポートセンターが運営するEBNJAPANのHPにも掲載しています。また、医療者向けに、この質問票の利用に関する研修会も実施していますのでぜひ参加してみてください。
食習慣について薬剤師心をくすぐる、科学的な見解ができるようになると思います。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

専門家プロフィール

宮原  富士子

宮原 富士子(みやはら ふじこ)

NPO法人HAP(Healthy Aging Projects For Women) 理事長、(株)ジェンダーメディカルリサーチ代表取締役社長、NPO法人疾病管理・地域連携支援センター事務局など多方面で活躍。また、自身が経営するケイ薬局では、在宅担当薬剤師も担う。また、HAPでは、更年期出前講座技術移転講座で技能の技術移転を行っている。