女性の体は年齢とともに増減するホルモンの働きによって変化します。本連載では女性の健康支援に取り組む薬剤師の宮原富士子氏に「女性の健康維持に対して薬剤師ができること」についてお話していただきます。今回は「月経」をテーマにお送りします。

薬剤師は働く女性の月経トラブルを解決する救世主?!

まずは月経の仕組みを理解

月経に関する悩みは女性にもっとも多いトラブルの一つです。言いかえれば、薬剤師のサポートが必要とされる機会も多いのです。しかし、女性自身ですら月経の仕組みやホルモンの働きをきちんと理解している人は少ないものです。また、産婦人科の基礎知識を十分に学ぶ機会が少ない薬剤師も、つい「および腰」になりがちです。でも、知識を得てきちんと理解すれば、自信を持って女性を支援できるはず。まずは月経の仕組みをわかりやすく患者に説明できるようになりましょう。

右上の図は月経の仕組みと、主に関連する4つの女性ホルモンの相互関係を示しています。この図を参考にしながら、月経の仕組みとホルモンの作用について復習してみましょう。そして、これらを患者に説明できるようにスタッフ同士で練習してみてください。患者と信頼関係を築くには、最初のきっかけがとても大切です。このような図とともに月経について説明することで、患者の信頼を得られるだけでなく、もう一歩深い相談内容に踏み込めると思います。患者も自分の体について知りたいと思っているのです。

月経の仕組みを理解したうえで症状を評価・アドバイス~受診勧告を

20代~40代の女性にとって、月経は「痛み」をはじめとする不快な症状が伴うため「煩わしいもの」として扱われる傾向にあります。ですからテレビコマーシャルなどをうのみにして、頭痛や腹痛があるとすぐに薬局で鎮痛薬を購入してしまう。しかし、原因も分からずただ痛みを取るためだけにOTC医薬品を服用することは、将来の妊娠や出産にも影響を与える危険性をはらんでいます。

また、医薬品のインターネット販売解禁により、OTC医薬品をインターネットで購入するのか、店頭で薬剤師に相談して購入するのかは、患者自身の選択になっています。とはいえ、女性から月経に関して相談された際、薬剤師全員が相談内容の原因を分かりやすく説明できるかといえば疑問が残ります。月経とトラブル、その原因についてきちんと説明し、気づきを与えるような指導で、女性の健康づくりに貢献できる薬剤師が増えてほしいと思います。

前述の「月経の仕組についてわかりやすく説明ができる」はあくまで基本の「キ」。その知識と状況から患者のトラブルを評価し、その原因を探ってケースごとにフォローし、ときには医師の受診勧告を含めるなど、長期間にわたってアドバイスしてみてください。そのためには、近隣の産婦人科医や保健所における女性の健康相談の日程などを確認し、具体的な情報を提供できるよう努めることが大切です。

低出生体重児や子宮頚がんなど妊娠にまつわるトラブルにも対応を

妊娠適齢期 (20代~30代)の女性に的確なアドバイスができますか

近年、初産の高齢化が問題になっていますが、もう一つ注目してほしいのが、低出生体重児(出生体重が2600g以下)が全体の1割を占めているという事実です。これには「若年女性の痩せ」の増加も関係しています。「若年女性の痩せ」は、国が改善を取り組む項目の一つですが、当該年齢の女性たちには、そのことが胎児にも大きく影響を与えるということまでは理解が及んでいないように思えます。

体重が気になり十分な栄養を摂取できていない妊婦は、低栄養あるいは偏りのある食事になっている可能性があります。また、増加傾向にある妊婦の喫煙による影響も否めません。妊娠適齢期の女性に対しては、バランスのとれた食事や禁煙に関する支援で、自身の体と将来の赤ちゃんについて考えるきっかけづくりを薬局で行ってほしいと思います。

また、低出生体重児の減少を目的としたプロジェクトもあります。社団法人Luvtelli(ラブテリ) では、女性にバランスのとれた食事の重要性を知る機会を提供し、将来の妊娠・出産に耐える体づくりのコツを伝えています。東京・丸の内にある「まるのうち保健室」では、骨量測定や食習慣アセスメント、啓発活動を行う他、それらの最新情報をまとめた書籍を発売しています。薬剤師にも役立つ内容ですので、ぜひ手にとって読んでみてください。

子宮頸がん検診の受診率の向上に貢献できる薬剤師

日本では今、子宮頸がんワクチン接種に関してその是非が盛んに討議されています。毎日約7人の女性が子宮頸がんで命を落としており、マザーキラーとも呼ばれています。20代~30代女性の発症率が高いのですが、検診による早期発見で生存率を大きく伸ばせるのです。薬局で健康情報第一線にいる薬剤師の方には、一人でも多くの若年女性に子宮頸がんの受診をすすめてほしいと思います。市民へ適正な情報を提供することで、受診率は伸ばせます。子宮頚がん検診をできる場所を薬局内に掲示するなど、地域住民に向けた情報提供を積極的に行い、子宮頚がんの早期発見にぜひ協力していただきたいと思っています。

地域住民からウィメンズヘルスサポーターとして期待される薬剤師に

10年前に「薬剤師がウィメンズヘルスサポーターになりうるか?」というアンケート調査を実施したところ、薬剤師がサポーターになることを「期待しない(薬剤師に相談しない)」という回答が7割以上も占める残念な結果が出てしまいました。ただ一方で、1度でも薬剤師に相談した患者は、その後も薬剤師に相談するという結果も得られたのです。また、別の調査ではウィメンズヘルス関係の製品や妊娠検査薬などの検査キット購入の際に、薬剤師から説明を受けていない比率が高いことが報告されていますが、これは大変に残念なこと。「聞かれなかったから説明しなかった」という受け身の態度では、薬剤師はいつまでたってもヘルスサポーターにはなり得ないでしょう。

月経を含めた女性の体に関する知識とそれを説明するスキルを身につけ、地域の健康情報ステーションとしての薬局、そして専門家としての薬剤師の職能を発揮すれば、日本の健康力は向上すると確信しています。なお、HAPでは女性の健康支援に関する「技術移転講座」を全国で出張講演を開催し、女性の健康講座の講師になってくれる薬剤師を養成すべく活動しています。女性から頼られる薬剤師が今後増えることを期待しています。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

専門家プロフィール

宮原  富士子

宮原 富士子(みやはら ふじこ)

NPO法人HAP(Healthy Aging Projects For Women) 理事長、(株)ジェンダーメディカルリサーチ代表取締役社長、NPO法人疾病管理・地域連携支援センター事務局など多方面で活躍。また、自身が経営するケイ薬局では、在宅担当薬剤師も担う。また、HAPでは、更年期出前講座技術移転講座で技能の技術移転を行っている。