女性の心身に大きく影響を与える女性ホルモン。10代、20~40代、50代以降と、女性の体はホルモンの増減によって変化します。そのため、女性特有の病気や精神面での不調などが年齢とともにあらわれてくるのです。こうした女性の心身の不調に対し、薬剤師として役に立てることはあるのでしょうか。女性の健康支援に取り組む薬剤師の宮原富士子氏が語ります。

女性の健康力は地域健康づくり戦略の要であり、日本の底力

2007年4月に策定された「新健康フロンティア戦略」において、「女性の健康力」がその柱の一つに位置付けられた。女性が健康で明るく、充実した毎日を自立して過ごすには、生活の場(家庭、地域、職域、学校)を通じて、女性のさまざまな健康問題を総合的に支援することが重要である。そこで厚生労働省は、毎年3月1日~8日を「女性の健康週間」と定め、女性の健康づくりを国民運動として展開している。
また、10月18日は世界メノポーズデーである。「メノポーズ」とは閉経の意味で、世界メノポーズデーは、「21世紀を目前に高齢化社会の到来を受け、今後更年期の健康に関わる情報を全世界へ提供する日」として、第9回国際閉経学会において採択され、誕生した。

患者が満足できる医療を提供するためには、患者の安心感、充足感を高める問題解決手法も重要だが、潜在している疾病の早期発見や治療による健康寿命延長、患者自身の健康増進へのモチベーション強化も重要な役割である。まさに「薬局」と「薬局に立つ薬剤師」は、女性の健康支援のゲートキーパーといえるだろう(もちろん、知識と技術を携えてこそだが)。

生涯にわたる女性の健康支援には、個別にあたる必要がある

そこで、私がリーダーとして活動しているNPO法人HAP(Healthy Aging Projects For Women)では、以下の5つのコンテンツを中心に女性の健康出前講座を展開している。
(1)小学校高学年の女児を持つ保護者のための思春期心構え講座
(2)20歳前後の女子への女子力アップ講座(月経マネジメント、婚活・妊活を念頭においたライフスタイルを考える講座)
(3)30代前後の女史のための自分の健康~ライフプランの考え方
(4)40代からの心とからだの健康づくり講座(親の介護、自分の生き方)
(5)中高年女性を広く対象とした生き方・ロコモサルコぺニア等を踏まえたライフスタイル(新しい食習慣・ロコモ体操・コンチネンス他)

また、最近では在宅医療の現場に中高年女性が多いことから、全国各地の在宅医療現場における女性の健康支援講座も展開している。

幅広くアンテナを張る――ウイメンズへルス情報の拠点となる

国が力を入れる施策の一つである在宅医療には、患者のみならず、介護をする家族、ケアマネジャー、ヘルパー、薬剤師、訪問看護師などが専門職連携の名のもとに結集し、患者の「住み慣れた我が家での療養」を支援している。しかし、その専門職種間の連携も「言うは易し、実施は壁多し」という状況だ。その働き手、担い手の大半が更年期以降の女性であり、彼女らが健康でなければ、体制を維持できないことは一目瞭然である。

閉経や更年期障害は女性にとってごく一般的な現象だ。このことを念頭に置けば、常に更年期症状を感じている、あるいは家事や仕事に支障がある更年期障害を持ち合わせる女性は、常的に多く存在すると考えられる。そこで、医療や介護に近い女性を対象に更年期障害についての適正な情報提供をすることは、潜在的に心身が辛く、その理由が分からずにいる女性たちにとって救いの手となるだろう。
ちなみに私の地元、浅草では、在宅介護に関わるさまざまな職種やその知人友人が集い、「更年期出前講座」を頻繁に開催している。正しい情報を共有し、わが身を振り返ることで、理由なき心身疲労の解決に明るい光が当てられることも少なくない。更年期障害の治療にはいくつかの選択肢があるが、その一つとして「更年期について知識があり、気を許せる相手に自分の話をする。それもずっと遡って長いこと話をする」ことの効果をこれまで多く見てきた。

更年期障害における傾聴は、患者の話を聞いた後、専門家として「情報を整理」し、「不足する知識、誤解には適正な情報で対応しつつ解決に選択があること」を示すこと。そして「選択をすることに対する良き支援者」であり、「選択をした後のフォローアップを継続」する、長期間にわたる支援が必要である。
そして、薬剤師はこの支援においてとても向いている職業であると考えている。

薬剤師ができる具体的な支援と技能

薬剤師が地域の女性に対して提供できることを以下に紹介する。
(1)女性ホルモン関連(月経、妊娠、避妊、出産、授乳、更年期、閉経以降の健康のあり方)に関して質問を受けた時に適正に語る。
(2)地域において住民が利用できる「婦人科系がん検診」「乳がん検診」「甲状腺疾患の検査」「特定健診」「骨量検診」などの施設情報を絶えず、調査し、住民や顧客が見やすいところに掲示したり、服薬指導の際に情報を提供するような体制を作る。
(3)女性が40歳を超えてさまざまな症状により複数科受診や、多くの生活習慣病関連の医薬品の服用を開始した際には、「更年期という体の変わり目であること」に理解してもらえるような説明と女性のヘルスケア専門医への受診や、長期的視点に立ったヘルスケアのアドバイスを行う。
(4)地域の医療介護従事者と連携をして更年期などに関する健康講座を開催できる仲間づくりの拠点となる。
(5)ゆっくりと30分程度、個人情報が守られる場所で話を聞き、その中で情報整理をして適正な情報を提供する環境を作る。

薬局薬剤師の一人ひとりが、地域の女性にとって健康支援の拠点になる。そして、更年期障害を共に支え、その後の健康寿命延長もふまえた継続的な支援をすることが大切だと思う。

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専門家プロフィール

宮原  富士子

宮原 富士子(みやはら ふじこ)

NPO法人HAP(Healthy Aging Projects For Women) 理事長、(株)ジェンダーメディカルリサーチ代表取締役社長、NPO法人疾病管理・地域連携支援センター事務局など多方面で活躍。また、自身が経営するケイ薬局では、在宅担当薬剤師も担う。また、HAPでは、更年期出前講座技術移転講座で技能の技術移転を行っている。