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北米の薬剤師6北米の薬剤師6

日本で調剤薬局、ドラッグストアでの薬剤師勤務を経て、その後カナダの薬局でテクニシャンとして経験を積んだ五味さやかさん。その経験をもとに、現在お住まいのカナダ・ブリティッシュコロンビア州から、北米の薬剤師・テクニシャン事情をレポートしていただきます。
Contact :http://w-oasis.co.jp/globalpharmacist/contact/

カナダの医療者数

カナダの薬剤師6
カナダと日本の薬剤師数比較
(Canadian Pharmacists Association、厚生労働省のデータをもとに作成)

カナダには現在、約3万9000人の薬剤師が存在します。2009年~2012年の間にその数は10%増え、人口および労働人口の増加率(両者とも4%以下)をしのぐ勢いで伸長。人口10万人に対する薬剤師数は95人に達しています(なお医師は209人、看護師は1046人)。
なお、厚生労働省の「医師・歯科医師・薬剤師の調査 平成24年」によると、日本の場合は、人口10万人に対する薬剤師数は219.6人。医師数は237.8人です。

薬剤師数は年々増加していますが、平均年齢(43.5歳)は数年前からほとんど変化がありません。50歳以上の薬剤師は3割以上、日本同様に女性薬剤師の割合が多く、6割をしめています。

薬剤師の勤務先とその割合

カナダの薬剤師6
薬剤師の勤務先
(Pharmacist Workforce, 2012)

各州の薬剤師の勤務状況を調査した「Pharmacist Workforce, 2012」によると、勤務中の薬剤師のうち8割強(85.3%)はフルタイム(正社員・パートタイム)で勤務しており、自営は1割弱(7.6%)、残りは派遣を含む臨時的な雇用形態で雇用されています。
勤務先は、薬剤師約3万9000人のうち、薬局が2万7500人、病院が6500人、残りの5000人が製薬会社や政府、大学の他、NOPやNGO団体、弁護士やジャーナリスト、コンサルタントとして活躍しています。
なお、日本の薬剤師は、「薬局の従事者」が15万3012人(総数の54.6%)。「薬局勤務」の割合は年々増加しており、「病院・診療所勤務」は平成8年以降横ばいです。

しかし近年は、都市部における薬剤師の就職難が問題になっています。2012年の調査では、登録薬剤師のうち8%は未就業で、その3分の2以上は求職中でした。
実際、筆者が知る薬剤師の話では、ブリティッシュ・コロンビア州のバンクーバー市内では新卒の就職が困難で、大学卒業およびコースを修了後、ほとんどの人が全国規模で就職活動をしているそうです。郊外や引越しを伴う派遣先での勤務経験を経て、市内へ戻ってくるケースも多くあります。

給与

Payscale.comによると、カナダの薬剤師の平均年収は、ボーナスや残業代なども含めると平均約748万円(C$1=¥92.66で換算)で、平均時給は約4165円(2015年時点)。これらは、勤務している地域によっても異なり、年収で約590万円~1057万円、時給で3274円~4964円程度のばらつきがあるようです。
また、5年以下の薬剤師と20年以上の薬剤師とでは約100万円の差があり、最も給与の高い都市と最も安い都市とでは、150万以上の差がみられます。

<経験年数による薬剤師の平均給与の差>
・5年以下の新入り:約825万
・20年以上のベテラン:約936万

<都市による薬剤師の平均給与差>
・最も給与が安い都市(バンクーバー):約750万
・最も給与が高い都市(カルガリー):約908万

外国人薬剤師の実態

外国人薬剤師(国外で薬剤師資格を取得した後、カナダの薬剤師資格を取得した外国人)の割合は、全薬剤師数の4分の1(24.5%)に上るそうです。国別にみると、上位5ヵ国はエジプト、アメリカ、インド、イギリス、フィリピン国籍で、外国人薬剤師の全体の3分の2を占めています。

外国人薬剤師の就業比率が最も高いのがトロント市のあるオンタリオ州で、2012年にオンタリオ州で勤務していた薬剤師の約4割(39.6%)が外国人薬剤師であったそうです。なお、ブリティッシュ・コロンビア州は15.6%、アルバータ州は15.4%。また、海外薬剤師の9割近くが「薬局」に勤務しています。

薬剤師免許取得への道

薬剤師やテクニシャンの資格試験を実施しているのはNPO法人のThe Pharmacy Examining Board of Canada(PEBC)ですが、資格を与えるのは各自が所属する州政府のため、薬剤師資格が全国すべての州で有効というわけではありません。これは、州によって法律や医療制度が異なるためです。異なる州で薬剤師として働く際は、実務実習や語学力、法律の知識などに関する試験に合格すれば、新たにその州での資格を取得することができます。
州によって多少異なりますが、一般的に薬剤師資格取得の条件は以下の通り。
カナダの大学(現在10の大学が認められている)において薬学士、もしくは薬学博士課程を修了
薬剤師免許試験(筆記・実技)および各州の薬事法試験に合格
一定期間の実務実習を終了
一定レベル以上の英語もしくはフランス語能力を証明(試験の要件を満たす)

カナダの大学で学士もしくは博士課程を修了していない場合でも、書類審査により同等のレベル(学位証明、成績証明、免許証、語学力等)が保証された場合、海外薬剤師にも資格取得の機会が与えられます。
3種類の試験を受験し、必要な時間数の実務実習を受けるのが一般的です。

◆審査試験(Pharmacist Evaluating Examination)

他国の大学で受けた薬学の知識が、カナダの薬学部の教育レベルに達しているかどうかをチェックするための試験です。選択マーク式で、全300問中60%以上(180問)の正答率で合格できます。

◆国家試験1-筆記試験(Multiple Choice Question)

選択マーク式で全300問を出題。合格のための基準正答率は設けておらず、試験の難易度に応じて適当な合格ラインが定められています。

◆国家試験2-実技試験:オスキー(OSCE)

日本で実施されているオスキーよりもレベルの高いカウンセリング力が求められます。合計約12個の課題が出題され、各問題の解答時間は7分間。出題内容は、服用歴の確認や処方せん監査、薬剤に関連した問題の解決、服薬指導、フォローアップ内容の考案などで、問題によっては一般用医薬品や医療機器の選択や推奨も含まれます。ほとんどが患者や患者家族、医療従事者等との対話形式で行うものですが、一部医薬品情報(DI)の回答や処方せん内容に関する問題点等の指摘と推奨医薬品の提案など、記述問題も含まれます。

費用と時間

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資格取得までにかかる時間と費用(Cost and Time to Licensure by NAPRA)

資格所得までに要する時間と費用をWebサイト「Cost and Time to Licensure by NAPRA」で試算したところ、すべての試験に1回で合格した場合、以下のようになりました。
ただし、それぞれの試験を1回で合格している人の割合が少ないのも事実で、以下の内容に、さらにOSCE試験(1回$1500)や実務実習の時間、生活費などを考慮に入れると、200万〜300万円以上かかることが予想されます。

各州が提供している実技演習プログラムや政府が支援している公式のWebサイトなどではさまざまな情報が提供されています。
※詳細は、以下のサイトをご覧ください。
National Association of Pharmacy Regulatory Authorities (NAPRA)
The Pharmacy Examining Board of Canada (PEBC)

変わりゆく薬剤師の世界

カナダでは、昨今、政府の政策により移民の受け入れを進めています。一方、その移民の人口増加率をしのぐ勢いで薬剤師が増加。特に外国人薬剤師の割合が増えているという事実は、興味深い内容です。仮にこの事態が日本で起きた場合、皆さんはどのように感じるでしょうか。日本で移民の数が増加し、海外医療従事者達が皆さんの身近なところで活躍している姿を、頼もしいと感じますか、それとも脅威と感じますか。
また、薬剤師増加に伴い、都市部における就職難という新たな問題が生まれています。目下、大学側は薬学部の学習項目の拡大や修学年数の増加を検討しており、そうした動向からも、今後はさらに薬剤師の「質」に重点が置かれると思われます。
外国人薬剤師の増加や、都市部での就職難など、カナダの薬剤師業界が抱える課題は、日本にも起こりうる事態。ぜひカナダだけでなく、諸外国の薬剤師事情にも目を向け、考える機会を作ってみてください。

参考:
“Pharmacists in Canada”:Canadian Pharmacists Association
Pharmacist Income (Canada) : Payscale.com

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