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創薬研究員、薬局薬剤師、学習支援・薬局研究部門のマネジャーを経て、シドニー大学大学院で薬学博士号の取得を目指す藤田健二先生に、オーストラリアの医療制度および薬局実務を読み解きながら、今後の日本の保険薬局のあり方について考察していただく本連載。第4回は、「調剤実務(医薬品分類・調剤業務の流れ・箱出し調剤・リピート処方せんなど)」についてお話しいただきます。

医薬品の分類

オーストラリアでは、医薬品および毒物はSchedule1-9 (S1-S9)とUnscheduledの計10種類に分類されています(表1)。

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表1. 医薬品および毒物の分類区分
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写真1.一般販売薬 (Unscheduled/写真右)および薬局義務薬 (S2/写真左)

この中で、実際に薬局で取り扱っている医薬品の分類は、Unscheduled、S2 (Pharmacy Medicine)、S3 (Pharmacist Only Medicine)、S4 (Prescription Only Medicine)、S8 (Controlled Drug)の5種類です。同じ成分・規格用量の医薬品であっても包装単位によって区分が異なる医薬品もあり、例えばパナドール(成分名:パラセタモール)500mgは、48カプセル包装はS2ですが、20カプセル包装はUnscheduledに分類されます(写真1)。

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写真2. 麻薬・向精神薬 (S8)の保管場所(金庫内)

薬局では、UnscheduledとS2に区分される医薬品は、患者の手の届く商品棚に陳列されています。S3とS4は患者の手の届かない投薬カウンターの奥に陳列されており、S8は調剤室エリアの金庫内に保管されています(写真2)。

表1から分かるように、薬局薬剤師はUnscheduled、S2、S3に分類される医薬品は処方せんなしで患者に提供することができます。近年、セルフメディケーションの推進および医療費抑制策の一環として、スイッチOTC化が進んでいるため、一般医とは異なり予約なしで来局することができる薬局は、体調不良を訴える患者のファーストアクセスの場所としての存在意義が徐々に高まっていくことが予想されます。

薬局経営者の職能団体であるThe Pharmacy Guild of Australia (PGA)や薬局経営者に雇用されている薬剤師の職能団体であるオーストラリア薬剤師会(The Pharmaceutical Society of Australia/ PSA)は、軽疾患を訴える患者への対応方法を学習するためのサポートツールをweb上で公開したり、薬剤師以外の薬局従業員に対する医薬品販売についての研修を実施したりしています。この研修の受講は、薬局が提供するサービスの質を認定する制度 (The Quality Care Pharmacy Program/ QCPP、本連載第2回参照)の認定要件の一つとして組み込まれており、これにより薬局で提供するサービスの質を高い水準で維持できるよう努めています。

調剤業務の流れ

オーストラリアの処方せんのサイズは通常縦18cm×横12cmであり、日本の一般的な処方せん(A5: 縦21cm×横14.8cm)よりも小さいのが特徴です。1枚の処方せんには最大3種類の医薬品を記載できます。処方せん受付後、ピッキングを行う前に、薬剤師がQRコードリーダーで処方せん情報をスキャンし、服薬状況や体調変化、残薬状況および後発医薬品への変更希望などについて確認します。次に、処方内容の妥当性を確認後に印刷される指示書に沿って、テクニシャンがバーコードリーダーを用いて医薬品を棚から取り出し、服用方法などが書かれたラベルを医薬品の箱に貼ります。これを薬剤師が鑑査した後、テクニシャンが医薬品の服用方法などについて患者に説明をして、医薬品の交付を行います。 なお、ピッキング前に服薬状況などを確認することは全薬局で実施できているわけではなく、薬局によっては旧来の調剤鑑査後の服薬指導時に服薬状況などを確認する業務フローを採用しているのが現状です。また、日本でいう薬剤情報提供書やお薬手帳は存在しません。

ただし、各医薬品の服用方法、考えられる副作用、保管方法などの情報が詳細に記載された患者向けの医薬品情報書(Consumer Medicine Information /CMI)がWeb上で公開されており、初回投薬時や服用量が増加した場合など、薬剤師が必要と判断した場合はCMIを用いて患者に情報提供を行うことが義務付けられています。 さらに、日本の場合は、薬剤服用歴の記録が薬学管理料の算定要件の一つに入っていますが、オーストラリアでは、患者から聞き取った内容や指導した内容の記録は調剤報酬とリンクしていません。ただし、患者の体調や服薬状況を聞き取った結果、薬学的介入が発生した場合に限り介入内容を記載・保管する必要があり、それが別途サービス提供料として加算されます。実際はこうした薬学的介入が発生する頻度は高くないため、日本と異なり業務終了後に薬歴が溜まってしまう状況は起こりません。

箱出し調剤

1箱に入っている医薬品の錠数は、急性期疾患で短期間だけ使用する医薬品(5錠や10錠)や慢性疾患で長期間服用する医薬品(30、50、100錠)など医薬品によってさまざまです。原則、医師は箱に入っている薬剤数単位で処方するため、上述したように薬局側は処方された医薬品にラベルを貼って患者に渡します。そのため、日本とは異なり、箱を開封してシートをハサミで切ったり輪ゴムで止めて薬剤数を数えたり、薬袋を作成したりといった必要はありません。 ただし、急性疾患に対する処方で包装単位より少ない量の医薬品が処方されるケース(例:14錠包装の抗生剤が10錠処方される)はまれにあります。その場合は、箱を開封してハサミで切り、処方日数分の医薬品を無地の白箱の中に入れてラベルを貼り患者に渡します。残りの医薬品はオリジナルの箱に入れて保管します。このように、箱出し調剤をすることによって、ピッキング時間とその調剤鑑査の時間短縮につながるだけでなく、調剤過誤の軽減や患者自身が使用期限を確認できるメリットがあります。

リピート処方せん

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写真3. 患者に手渡すリフィル処方せんのコピー(裏面)

海外の先進諸国で一般的なリフィル処方せんですが、オーストラリアでは「リピート処方せん(Repeat prescription)」と呼ばれています。リピート処方せんとは、症状の安定している慢性疾患患者に対して出される処方せんで、1枚の処方せんで複数回繰り返し使用できるものです。リピート回数は最大5回までに制限されている医薬品が多く、例えば処方日数が1ヶ月分でリピート回数が5回の場合は、初回分とリピート分を合わせて6ヶ月間は一般医(General Practitioner/ GP)の診察を受けずに薬局で調剤をしてもらうことができます。

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写真4. 左から医薬品、Repeat Authorisation Form、処方せん原本

患者からリピート処方せんを応需した薬局は、処方せんの原本を保管する義務があります。代わりに、患者の氏名・医薬品情報・調剤日・調剤した薬局の情報が印字されたシールを裏面に貼った処方せんのコピー(写真3)と、最終調剤日や残りのリフィル回数などを記載した証明書(Repeat Authorisation Form)を一緒にホチキスで止めて患者に返却します(写真4)。

後日、リピート処方せんで調剤を依頼する患者は、このリピート処方せんのコピーとRepeat Authorisation Formをセットで薬局に提示しなければいけません。リピート調剤時、薬局側は最終調剤日と残りのリピート回数などの情報を更新したRepeat Authorisation Formを再発行し、処方せんのコピーの裏面に前述のシールを貼って患者に返却します。リピート処方せんはリピート回数がゼロになるまで使用できます。リピート処方せんを利用している期間は、GPの診察は通常受けないため、薬剤師は患者の状態変化を確認し、必要に応じてGPへ受診勧奨を促すためのスキルが求められます。PSAは、オンライン上でさまざまなツールを薬剤師に提供することで、薬剤師の職能開発のサポートをしています。

調剤業務を見直してヒントを見つける

今回ご紹介したように、オーストラリアの調剤業務は、箱出し調剤、薬学的介入が発生した場合のみの薬歴作成、必要に応じた薬剤情報提供書を用いた服薬説明という3点で日本とは異なる特徴があり、シンプルで合理的な調剤工程であると言えます。加えて、テクニシャンと調剤業務を分担することで、薬剤師は薬学的知識が必要な処方鑑査や患者応対に多くの時間を費やすことができます。リピート処方せんは患者の利便性の面では優れている仕組みですが、GPへの受診頻度が少なくなる分、患者の薬物治療に対する薬局薬剤師の責任が問われることになります。近年では、処方せんに記載されているQRコードをスマートフォンで読み取り、来局日時や後発品変更希望などの情報を薬局に送信することで、待ち時間なく医薬品を受け取れるサービスも一部の薬局で導入されています。本連載の第2回で、オーストラリアの薬局は、1店舗当たりの調剤業務を担当する従業員数は日本よりも2.4倍多いものの、4倍量の処方せんを応需していると解説しましたが、少ない人員で多くの処方せん調剤ができるのも、こうした調剤業務の違いに起因するものと考えられます。

しかし、今回解説した内容は、日本の調剤業務もオーストラリアと同様にすべきだと結論付けるものではありません。お薬手帳、薬歴、薬袋、薬剤情報提供書を用いた服薬説明など、服薬情報の一元的・ 継続的な把握とそれに基づく薬学的管理・指導の観点から日本の薬局が誇るべき業務も多くあります。今後、OTC薬を用いたセルフメディケーションの推進や在宅対応など、健康サポート薬局として地域から求められる役割が拡大する中、いかに時間を捻出して薬剤師でなければできない業務に注力できるかという議論も重要になると考えます。私たちが普段当たり前のようにやっている調剤業務を一度見直して、オーストラリアの調剤業務を導入しようとした場合に起こり得る問題を抽出して課題を明確化すると、次に行動すべき具体的なアクションが分かるかもしれません。次回は薬局サービス(分割調剤・一包化・臨床的介入など)について考察していきます。お楽しみに!

こちらの記事に関する問合せは「kfuj2522@uni.sydney.edu.au」まで。

【主な参考文献】
Duckett, S., and Wilcox, S. (2015). The Australian Health Care System (5th ed.). South Melbourne, Vic: Oxford University Press.
Hattingh, L., Low, J. S., & Forrester, K. (2013). Australian pharmacy law and practice (2nd ed.). London: Elsevier Health Sciences APAC.
The Pharmacy Guild of Australia. (2015). Retrieved January 31, 2016, from http://www.guild.org.au/

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専門家プロフィール

藤田 健二

藤田健二(ふじた けんじ)

昭和薬科大学大学院卒業後、杏林製薬株式会社に入社し、新薬の探索研究に3年間従事。その後、薬樹株式会社の薬局薬剤師として3年、同社における社内外の学習支援・薬局研究のマネジメント業務に4年従事した後、渡豪。2015年6月にシドニー大学大学院臨床疫学プログラム修了。2016年3月より同大学院博士課程へ進学予定。36歳。