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薬剤師の資格取得方法、業務内容、責任範囲、収入は国によって実にさまざまです。
今回は、アメリカ労働統計局が発表している「OCCUPATIONAL OUTLOOK HANDBOOK」(2012年度版)をもとに、薬剤師の職業について紹介します。教育制度や医療保険制度など、その背景の違いも大きく関係しており、一概に比較はできませんが、海外の「薬剤師」の職業を知ることで、日本の薬剤師の職域や社会的意義を考えるうえで、参考になることがあるかもしれません。

薬剤師の業務内容

■ 義務

薬剤師は一般的に下記の業務を行う。

  • 薬の処方内容と、患者の投薬量に関する医師の指示が適正であるかを確認。
  • 薬の処方内容が、患者が現在服用している別の薬または患者の健康状態にネガティブに作用しないかを確認。
  • 患者に対して、服薬の方法とタイミングを指導する他、副作用の可能性について説明する。
  • 食生活やエクササイズ、ストレスマネジメントの他、健康上の問題にもっとも効果的な健康器具や健康関連グッズについて患者に助言。
  • インフルエンザの予防接種と、ほとんどの州ではその他の予防接種も実施。
  • 保険証券用紙に記入し保険会社と協力して患者に必要な薬を提供する。
  • 調剤技師(Pharmacy Technicians)と研修中の薬剤師(インターン)の監督。
  • 記録の管理やその他の管理運営上の業務を実施。
  • 他の医療従事者に対して、患者への適正な薬物療法を教育。

薬局の経営もしくはチェーンの薬局を運営している薬剤師は、在庫管理などビジネスに関わる業務も行う。また、薬理学の最新の進歩に遅れないように、生涯のキャリアを通して教育を受け続けなくてはならない。

薬剤師は大半の薬を製薬会社が指定する基準量に従って使用する。しかし中には自分たちで成分を混ぜて薬を調合する薬剤師もいる。

■ 薬剤師の種類の例

薬局薬剤師(Community pharmacists)
チェーンのドラッグストアや独立系の薬局などの小売店で働く薬剤師のこと。患者に薬を提供し、処方箋やOTC医薬品、患者が抱える健康上の心配など、あらゆる質問に答える。また、インフルエンザの予防接種の実施など、プライマリ・ケアも提供する場合もある。

臨床薬剤師(Clinical pharmacists)
病院、診療所や他の医療環境で働く薬剤師のこと。処方箋の調剤業務も担当するが、大半の時間は患者の直接ケアに携わる。また病院では、医師やヘルスケアチームと院内を巡回することもある。患者に処方する薬の提言の他、服薬の用量やタイミングの管理、健康診断の実施と患者へのアドバイスも行う。例えば、糖尿病クリニックで働く薬剤師は、患者に対して薬の用法の説明、健康的な食事の選び方の提案、患者の血糖値のチェックなどを行っている。

コンサルタント薬剤師(Consultant pharmacists)
患者の薬物治療または薬局サービスの向上について、医療施設や保険業者にアドバイスをする薬剤師のこと。高齢者の処方箋管理などに関しては、患者に直接アドバイスをすることもある。

製薬業界の薬剤師(Pharmaceutical industry pharmacists)
マーケティング、営業、リサーチと開発などの領域で働く薬剤師のこと。治験の設計や実施を担い、新薬の開発に携わることもある。また、薬の安全規定の制定や、薬の品質管理保証にも携わっている。

これら以外に、大学教授として薬学生への講義または研究指導を行う薬剤師もいる。

■ 労働環境

薬剤師の主な就職先

2012年時点、就業している薬剤師の数は28万6400人であった。
同年の薬剤師の主な就業先は以下の通り。

薬剤師はスーパーマーケットやドラッグストアを含む薬局の他、病院や診療所、中には政府や軍のために働く薬剤師もいる。ほとんどの職場において、薬剤師は立ち仕事である。

■ 勤務スケジュール

24時間営業の薬局が多く、夜間や週末勤務の薬剤師もいる。2012年時点、薬剤師の大半は常勤だが、パート(アルバイト)勤務が20%を占めているのはそのためである。

薬剤師になる方法

薬剤師は認定された薬学博士課程で薬学博士号を取得しなくてはならない。さらに、薬剤師試験と法律に関する試験の両方の試験に合格して得られる薬剤師免許も必須である。

■ 教育

薬剤師になるには、大学院博士課程の専門学位、薬学博士号を取得しなくてはならない。2012年7月時点で、薬剤師教育認証審議会(ACPE)に正式認可された薬学博士課程(Doctor of Pharmacy programs)は124プログラムあった。

プログラムによって入学に必要な条件は異なるが、全てのプログラムにおいて、志願者は化学、生物学、解剖学などの高等教育を経ていることが必須である。また、ほとんどのプログラムは、大学に2年以上在籍していることを入学条件としているが、中には学士号を必要とする場合もある。さらに、志願者が薬学部受験用試験(PCAT)を受験しなければならないプログラムも多い。

プログラムの受講期間は通常4年間だが、中には3年間のものもある。また、高卒の学生に関しては、6年制のプログラムに入学を許可する学校もある。薬学博士課程には化学、薬理学、医学倫理学の課程も含まれる。そして、生徒たちは病院や小売薬局などさまざまな環境において、監督者の下で就業体験(時にはインターンシップとも呼ばれる)を経験する。

薬局を経営している薬剤師の中には、薬学博士の学位に加えてMBAを取得する人もいる。他に公衆衛生の学位を取る人もいる。

■ 研修

プログラム卒業後、臨床薬剤師や研究職などの上位職をめざす場合は1~2年間の研修をしなければならない。2年間の研修を受けた薬剤師は、追加で内科医学や高齢者医療などの専門分野の研修も受けることができる。

■ 資格、証明書、登録

全ての州において薬剤師は免許制である。薬学博士課程の修了後、薬剤師免許取得のためには二つの試験に合格しなくてはならない。一つ目は北米薬剤師免許試験(NAPLEX)、二つ目は薬局法学試験(MPJE)または各州独自の薬事法に関する試験である。

特定の分野における高度な知識レベルを示すため、専門分野を学んだ証明書を取得する薬剤師もいる。例えば、全米糖尿病教育認定機構(NCBDE)が認定する糖尿病療養指導士や、薬学専門職委員会(BPS)から発行される栄養学や腫瘍学といった特定分野の修学証明書である。どちらの場合も証明書の取得には、試験の合格や費用の支払いの他、各証明書に応じて異なる職務経験が必要となる。

■ 重要な特性

分析スキル
薬剤師は安全な薬を効率的に提供しなくてはならない。患者のニーズ、処方者の指示を評価し、薬を処方するため、効能や適切な状況について広範囲にわたる知識が必要である。

コミュニケーションスキル
薬剤師は患者に対し、副作用の説明を含め服薬方法などについてこまめにアドバイスする必要がある。また、調剤技師と研修生に対して明確な指示を出さなくてはならない。

PCスキル
薬剤師は自分の働く組織が採用している電子薬歴システム(EHR)を使いこなすPCスキルが必要である。

詳細にこだわる志向
薬の不適切な使用は深刻な健康リスクを生じる可能性があるため、調剤する処方箋が正確かどうか確認する責任がある。薬剤師は患者に最適な薬を選ぶのに必要な情報を見つけなければならない。

マネジメントスキル
特に薬局を経営する薬剤師は、在庫品管理や従業員の管理を含むマネジメントスキルを要する。

■ 給料(賃金)

2012年5月時点で、薬剤師年収の中央値は1190万340円(2014年8月14日時点$1.00=102円で換算)。年収の中央値とは、薬剤師の半分はそれ以上の金額を稼ぎ、残り半分の薬剤師はそれ以下であったことを示している。なお、下位10%の年収額は910万6560円以下であり、上位10%は1488万2820円以上であった。

年収の中央値

2012年5月時点の上位5業態における薬剤師年収の中央値は以下の通り。

上位5業界の年収中央値

将来の見通し

■ 就職の見通し

2012~2022年の雇用変化率予測

2012年から22年にかけて、薬剤師の雇用は14%(全職業の平均と同程度のスピード)伸びると予測されている。その根拠となるいくつかの事実は次の通りだ。

高齢化が進行し、一般的に若年層より高齢層の方が処方薬を多く使用する。さらに、年齢を問わず糖尿病などの慢性疾患患者の割合が増加していることもまた、処方薬の需要増加を引き起こすだろう。また、科学の進歩に伴い、新薬の開発も増進する。医療が複雑になり、複数の薬を服用する人の数も増えるにつれ、安全かつ効果的な薬の使用方法を患者にアドバイスしたり、調剤をしたりといった業務に携わる、より多くの薬剤師が必要となる。

政府の医療保険制度改革法が制定されれば、保険の利用者は増えるだろう。(※医療保険制度改革法は2014年1月から適用され、3月には加入者700万人を達成している。)保険適用範囲内の利用者が増えるに従い、調剤業務や患者の薬の相談に対応する薬剤師がさらに求められるはずだ。

病院や診療所を含むさまざまな医療現場においても薬剤師の需要はさらに高まるだろう。これらの施設では患者に投与する薬の管理と、血糖値やコレステロール値の測定といった患者ケアのため、薬剤師の需要が高まると考えられる。

近年、薬学部の増加に伴い、薬学部卒業生の数も増えているため、就職の競争率が上昇している。研修プログラムを修了した生徒は、さらなる経験を積むことでより就職に有利となるだろう。また、薬学専門職委員会(BPS)が発行する特定分野の修学証明書や、糖尿病療養指導士の認定資格もまた、雇用者側から好感を持たれるであろう。

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