2015年3月17日、イギリスのBBCが医師不足の緩和のために薬剤師の役割を拡大する動きがあると報道した。

きっかけは英国家庭医学会(Royal College of General Practice)と英国薬剤師協会(Royal Pharmaceutical Society)から提唱された計画だ。日本と同様に高齢化が進むイギリスでは、General Practitioner(GP・「家庭医」「総合診療医」などと訳される)の人材不足問題に直面している一方で、スキルのある薬剤師は需要過多という状況。そこで、イギリス全土で薬剤師の活動領域を広げ、GPの負担を軽減するべきだ、という意見が出ている。

イギリスの医療サービスはGP制度を採用しており、国民保健サービス(NHS)の下、国家歳入によって維持されているため、基本的に自己負担額はゼロ(歯科・処方薬は除外)。国民は、まず一次医療として自らのGP practices(家庭医診療所)を受診してから、必要であれば二次医療として病院の専門的医療を受ける。しかし、GP不足のため、患者がGPの予約をとるだけでも1週間以上待たされるという深刻な事態に陥っている。

既に、糖尿病、喘息などの慢性的な病気に関しては、薬剤師が定期健診を手伝っている診療所も一部にはあるが、今回の提言はイギリス全土の診療所を対象としている。さらに、薬剤師が追加の研修を受講すれば、抗生物質など一般的な医薬品の処方を薬剤師が担えるようにするべきだという意見もある。こうした薬剤師の職域拡大により、GPはより複雑な症状を抱える患者の診療と治療に集中することができる他、薬剤師が医療に積極的に関わることで処方ミスを防ぐといった効果も期待されている(もちろん患者が希望すれば、GPへの受診もできる)

本来は医者の診療が必要な患者が、薬剤師の方に行ってしまうのではないか? と懸念の声も中にはあるが、世論はこの薬剤師の活動領域拡大に対して肯定的なようだ。
BBCの記事には「深刻ではない体調不良でも安心感がほしいとき、私は以前から薬局に行くようにしている。入店すれば列もなく、予約も不要とはすばらしい。何故このアイデアが何年も前に実施されていないのか驚いている」「私は薬学生2年生だが、調剤以上のチャレンジングな内容を学んでいる。診療所で患者の対応をするのに十分な研修を受けていると感じる」といったコメントも寄せられている。

日本同様、他の先進国でも高齢化や医療人材不足の問題は深刻だ。その中で、「調剤だけではもったいない」と薬剤師のスキルは評価されており、より積極的に医療に携わることが期待されている。

薬キャリ編集部K.S.

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