2015年6月から厚生労働省で進んでいた「健康情報拠点薬局(仮称)のあり方に関する検討会」が、9月24日に発表された報告書をもって幕を閉じました。「健康情報拠点薬局」の正式名は「健康サポート薬局」に決定。年内に策定予定の「患者のための薬局ビジョン」との関係性もありますが、概ね「かかりつけ薬局機能」と「積極的な健康サポート機能」を備えた薬局というイメージで固まりました。

なぜ薬局機能の再構築が必要なのか

分業元年(1974年)以降、薬局はその受け皿として、一定の役割を果たしてきました。一方で、大半の薬局が調剤に特化し、医療機関近隣に立地する門前型であったため「処方箋がなければ入れない」と地域住民から認識されるようになったのです。
この背景には、薬局がOTC医薬品などの「物販」においてドラッグストアに対抗できなかったことや、医師がOTC医薬品に難色を示す傾向が強かったことがあります。

しかし、本来薬局は「すべての医薬品の供給拠点」であり、薬剤師は「医薬品の供給責任者」としての役割があります。処方薬を服用している患者が、OTC医薬品やサプリメントを服用することもあります。それらの併用による相互作用などの有害事象を防止するためには、要指導医薬品を含むすべての医薬品やサプリメントの知識が必要になります。これまで「OTC医薬品は扱わない」「処方薬しか知らない」という姿勢をとっていた薬局は、薬局機能や薬剤師職能という点からも不十分であることは明らかです。

高齢化と健康寿命延伸策

また、先進諸国に例を見ない急速な高齢化に直面しているわが国では、医療や介護ニーズの増大と、それを支える社会保障制度の財政基盤が揺らいでいます。このため、政府の日本再興戦略では「国民の健康寿命の延伸」が大きな課題として取り上げられ、病気や要介護者にならない健康づくりが打ち出されています。

薬局に関係する事項としては、「経済財政運営と改革の基本方針2015(骨太方針)」で、「かかりつけ薬局の推進のため、薬局全体の改革について検討するとともに、薬剤師による効果的な投薬・残薬管理や医師との連携による地域包括ケアへの参画を目指す」と記述されました。さらに、規制改革会議などでは薬局の在り方に関して厳しい指摘があり、厚労省が独自に「患者のための薬局ビジョン」の策定に着手。より幅広い薬局機能確立を目指して「健康情報拠点薬局(仮称)のあり方に関する検討会」が設置されたのです。

「健康サポート薬局」に取り組む必要性

ここで「健康サポート薬局」という名称決定までの流れをお伝えしておきます。討論会スタート当初の「健康情報拠点薬局」という名称は、積極的に健康サポート機能を発揮する薬局を目指して暫定的に「健康づくり支援薬局」(仮称)に変更されました。これは「拠点」ではなく「健康づくり支援」と明記することで、一部で指摘された違和感を解消し、広義でのサポート機能を打ち出したものといえるでしょう。そして、最終的には「地域住民による主体的な健康の維持・増進を支援するという役割や機能が分かりやすく伝わることが重要」との考えから、「健康サポート薬局」に決まりました。

では、これまでに議論に挙がった注目ポイントを取り上げたいと思います。
一つ目は、かかりつけ薬局の要件は「かかりつけ薬剤師」の存在を前提としていること。患者にとっては、病気も含めて自分のことをよく知っている薬剤師に相談したいと思うのは当然です。毎回異なる薬剤師が応対したのでは、打ち解けて話をする気にはなれません。ですから、薬局は、かかりつけ薬剤師がその役割を発揮できるよう、業務管理や構造設備、品質管理などを適切に行う必要がある、とされました。

二つ目は、かかりつけ薬剤師は、患者の服薬情報や残薬管理とともに、患者に対する24時間対応が求められ、かかりつけ薬剤師が対応できない場合は、連携している薬剤師と情報共有しておく必要があります。他に、OTC医薬品やサプリメントの知識、在宅実績などもかかりつけ薬剤師に求められる要件となっています。

かかりつけ薬剤師は小規模薬局には高いハードルという意見も

こうして見ると、かかりつけ薬剤師には幅広い分野で、かつ専門的な技能・知識が求められていることが分かります。一人薬剤師の場合や、転勤を伴う企業で働く場合はどうするのかなど、課題も少なくありません。
また、個人情報保護のためのパーテ―ション設置や、健康サポート薬局の掲示などは比較的取り組みやすそうですが、要指導医薬品や一般用医薬品の取り扱い、平日の8時間開局、土・日曜日の一定時間開局などは個人経営の薬局には、ハードルが高いといえます。

とはいえ、いずれにしても薬局が「調剤特化型」のままで存在し続けるのが難しい状況であることは一目瞭然。かかりつけ薬剤師育成の研修制度や人員体制の整備など、具体策の検討を早々に進めていくことが望まれます。

健康サポート薬局の要件案(概要)
1.かかりつけ薬剤師・薬局としての機能
①服薬情報を一元的に管理する機能
②24時間対応、在宅対応を行える機能
③かかりつけ医を始めとした医療機関との連携機能
2.積極的な健康サポート機能
①地域における連携体制の構築
②薬剤師の資質
③薬局の設備
④薬局における表示
⑤医薬品の供給体制
⑥開局時間
⑦健康相談・健康づくり支援

※厚生労働省:「健康づくり支援薬局(仮)に関するこれまでの議論の整理について」より抜粋

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