薬局の在り方や調剤報酬の見直しについて俎上に上がった「規制改革会議」や「経済財政諮問会議」などの議論が一段落しました。いよいよ次は「規制改革の実施計画」や「経済財政改革の基本方針(骨太の方針)」に反映され、具体化に向けた取り組みが始まります。

政府は2020年度までに、基礎的財政収支(プライマリーバランス:PB)を黒字化する目標を掲げており、日本の歳出面において、社会保障費の抑制が重点課題になっています。とくに財務省は「医療・介護関係の制度改革と効率化」を進め、3年間で1兆3000億円の財政効果を生み出そうとしているのです。そこで今回は「医薬品に関する問題」を取り上げ、今後どのような施策が実施されるのかについて考えます。

後発医薬品数量目標80%の実現に向けて

現在の後発医薬品の普及状況は、2014年第4四半期(2014年4月1日~2015年3月末)の数量シェアは全体で52.0% (日本ジェネリック製薬協会:平成26年度通年及び平成26年度第4四半期ジェネリック医薬品シェア分析結果について)、薬局単体では2015年2月分で58.2% (厚労省:最近の調剤医療費の動向 平成27年2月号)まで増加しています。

これまでも後発医薬品の使用促進に関しては、さまざまな議論が行われてきました。なかでも、財務大臣の諮問機関である「財政制度等審議会」では、現在の後発医薬品のシェア率目標を前倒しして「2018年度中にシェア率80%にする」という姿勢を打ち出したのです。しかし、その後「骨太の方針2015」において「2018年度から2020年度末までの早い時期にシェア率80%以上とする」という結論に至りました。

これに伴い、診療報酬上の措置が採られる見通しです。具体的には、薬局における「後発医薬品調剤体制加算」、医科点数の「後発医薬品使用体制加算」、DPC病院における「後発医薬品指数」などの要件変更の他、処方箋の「変更不可」や後発医薬品の銘柄指定は、その理由の記載が必要になると思われます。従って、医療機関や薬局は、これまで以上に後発医薬品への取り組みが要求されることは間違いありません。

後発医薬品の生産体制が追いつかない

一方、「数量シェア80%」の目標に対して「生産が追いつかないのでは」と、実現性を危ぶむ声があります。日本ジェネリック製薬協会の調べでは、2017年度末の「医療用医薬品の実生産想定数」は1200億錠と試算されていましたが、既に約720錠が生産されています。実際、数量目標80%を達成するならば、さらに240億錠の増産が必要で、一つの工場での生産能力が年間20~25億錠とされる中では、単純計算で工場は新たに10施設必要ということになります。そのうえ、後発医薬品は少量多品種生産のため、効率化の点でも限界があります。生産が追いつかないということは、後発医薬品において重要である「安定供給」へ支障をきたすことになりかねません。

後発医薬品使用促進は国策とはいえ、生産(製薬)、流通(医薬品卸・販売企業)、消費(医療機関・薬局)のそれぞれが有機的に連動して進める必要があり、単に目標数値を掲げれば済む話ではありません。この問題をどのように調整していくかが、今後の課題となるでしょう。

保険給付対象は「後発医薬品価格まで」となるか

また、「保険給付」についても厳しい内容が検討されています。先発医薬品を選択した患者については、保険給付は後発医薬品の価格までとし、先発医薬品との差額は患者が追加負担するというものです。仮にこの仕組みが導入されれば、受診にかかる他の負担(紹介状なしの大病院受診料など)と併せて、患者負担が急増し、一気に後発医薬品への変更が進む可能性があります。
そのうえ、市販品類似薬の保険適用除外も俎上に挙がっており、「湿布薬」「漢方」「目薬」「ビタミン剤」「うがい薬」は完全除外を求められています。

そして、薬価調査については、消費税10%への引き上げに合わせて、2年に1度の改定のほかに消費税対応改定として2016~18年度まで3年連続で行われる可能性があります。これは、中央社会保険医療協議会(中医協)薬価専門部会では薬価の頻回改定が議論になった経緯があり、今回の議論では経済財政諮問会議や財政制度等審議会からも声が挙がったのです。「課税仕入れに係る消費税負担増に対する対応が必要」という理由ですが、2014年度改定と同様、「診療報酬本体を含む他の経費は財源としない」方針です。

こうして見ると、医薬品関係だけでも薬剤師への影響はかなり大きいと予想されます。もちろん実現までには中医協などの議論が必要ですが、最近は官邸主導型の政策が強まる傾向があり、厚労省など既存の管轄官庁だけでは統御しきれない状況です。薬剤師はこれらの議論の推移を注視し、当事者意識を持って考える必要があるでしょう。

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専門家プロフィール

藤田 道男

藤田 道男(ふじた みちお)

中央大学法学部卒。医薬関係の出版社、㈱じほう編集局に勤務し、各種媒体の編集長を歴任。退職後フリーの医薬ジャーナリストとして取材・執筆、講演活動を行う。
2010年、薬局薬剤師の教育研修のために「次世代薬局研究会2025」を立ち上げ、代表を務める。

◆主な著書
「かかりつけ薬局50選」・「残る薬剤師 消える薬剤師」・「薬局業界の動向とカラクリがわかる本」