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スポーツファーマシスト、挑戦の時 メインビジュアルスポーツファーマシスト、挑戦の時 TOPビジュアル

(株)アトラク 代表取締役 遠藤敦氏
東京薬科大学薬学部卒。国立病院・調剤薬局を勤務後、2011年に(株)アトラクを設立。
資格:公認スポーツファーマシスト/公認ウェルネスファーマシスト

スポーツファーマシストとは

スポーツファーマシストとはドーピング防止を主な目的とし、薬に関する教育、指導に取り組む薬剤師のことで、日本アンチ・ドーピング機構認定の資格である。日本ではアメリカほど社会問題にはなってはいないドーピングだが、2014年6月12日に一般用医薬品のネット販売が解禁され、大半の市販薬が処方せんなしに購入可能となった他、薬の個人輸入も拡大が進むなど、スポーツ選手が禁止薬物を入手しやすくなったいま、ドーピング問題はもはや対岸の火事ではない。

2020年には東京オリンピックが開催されるなど国際的な注目が集まる中でスポーツファーマシストは日本のスポーツ界、医療業界にどう貢献すべきか。ドーピング防止の専門コンサルタント会社㈱アトラク代表取締役であり薬剤師の遠藤敦氏にスポーツファーマシストの仕事と今後の展望についてうかがった。

情熱を胸に薬剤師の新たな道を切り開く

―スポーツファーマシストの仕事について教えてください。

(株)アトラク 代表取締役 遠藤敦氏 インタビュー

仕事の主軸はアンチ・ドーピング活動です。私の例であれば、プロのスポーツチームと契約し、選手が薬を服用する際や、薬やサプリメントに関する疑問が発生した際に相談にのっています。他に、メディカルチームの一員としてチーム専属のスポーツドクターと共に処方内容を検討することもあります。

また、青少年に対する教育事業としてアンチ・ドーピング活動をきっかけとして、㈱リバネスさんとともに高校生を対象にした実験教室も開催しています。12年に中学校で義務化された「くすり教育」と比べ、もっと薬の基礎知識から教育する内容となっており、薬学生を中心とした医療系の学生と一緒にプログラムを組んで薬の有用性、医療人としての仕事や思いなどを高校生に紹介し、医療の本来の魅力を伝えています。

―遠藤先生がスポーツファーマシストをめざしたきっかけは何ですか。

(株)アトラク 代表取締役 遠藤敦氏 ラクトファーマシー正面

公認スポーツファーマシストの資格ができて2期目の時に、趣味の自転車を通じてスポーツファーマシストの資格を知ったのです。その後資格を取得して実際に働こうとしたのですが、そのために必要な情報や制度が整っておらず、どうしたらいいのか手探りの状態。顧客の開拓、情報発信の手段、そのための準備など、すべて一から切り開かなければいけない状況でした。しかし環境が整うのを待っていてはその間にも失格になるアスリートが増えていくと思い、一念発起。自分と同じようにスポーツファーマシストをめざしている人たちのロールモデルになればと11年2月に活動をスタートしました。

その半年後の11月11日に仲間とともに㈱アトラクを創業し、現在、弊社には4人のスポーツファーマシストが在籍しています。全員がトライアスロンや水球、野球、フットサルなどのスポーツ経験者で、各自の経歴に合わせてスポーツチームを担当しています。

自分で思考し、挑戦する情熱が不可欠

―仕事のやりがい、大変な点を教えてください。

これまでスポーツファーマシストというサポーターがスポーツチームに存在しなかったこともあり、選手たちから「薬剤師の方がいて助かった」と言ってもらえると嬉しいですね。

一方で大変なのは、「薬剤師はすべての薬の専門家である」と選手たちが認識しているため、幅広い知識を要求されることです。薬剤師といっても、調剤薬局勤務なら内服薬関係、病院勤務なら注射薬、ドラッグストア勤務ならOTCと、業種によって得意分野が異なるのが一般的ですが、当然選手には関係ない。医薬用薬品から市販薬まであらゆる商品に関する知識を求められますから、常に勉強が必要です。私も新しい薬の情報収集などは怠りません。

―スポーツファーマシストに向いているのはどんな人ですか。

ひと言でいえば情熱を持った人。前例の少ない領域において、選手が求めていることも正解すらもわからない状況下で、自分の持つ知識と情報を駆使して仕事に取り組める人がこの仕事に向いていると思います。スポーツファーマシストはアンチ・ドーピングの専門家ではありますが、基本的にドーピングをする選手はいないので、健康に関する総括的な知識の方が大切です。

それよりも、風邪薬を飲む時に相談してほしいと選手に言っても、「薬は飲まない、気合いで治す」とか言われてしまうんです(笑)。そういった時に、では私たちは何ができるのかと試行錯誤しながら答えを見つけなければならない。言われたことを淡々とこなす人よりも、道なき場所に道をつくる開拓者タイプの薬剤師にはぜひ活躍してもらいたいですね。

スポーツファーマシストの挑戦ははじまったばかり

―14年2月に「うっかりドーピング防止マニュアル」(リバネス出版刊)が発売されましたね。

「うっかりドーピング防止マニュアル」
「うっかりドーピング防止マニュアル」

本書はスポーツファーマシストとして働く人のためのツールとして制作しました。スポーツファーマシストの研修は2日間ですが、実務で選手と接する際はより深い知識が必要となります。本書がスポーツファーマシストの教科書のような存在になればいいですね。書籍は、ドーピングの歴史から制度の話、薬の分類、使用禁止に至る経緯といった内容で構成されており、ドクターやトレーナーなどからの評判も上々です。

―今後の展望を教えてください。

目下の目標は20年の東京オリンピックで、選手を支えるコーチやトレーナー陣とともにスポーツファーマシストも活躍することです。選手たちに混ざりさまざまな思いを共有し、喜びを分かち合う薬剤師を増やしたいと思っています。6年後のオリンピックまで時間はありません。険しい道だとは思いますが、同時に喜びも大きい仕事ですから、薬剤師の新たな活路を開きたいと思っている方と一緒に挑戦したいと思っています。

また、長期目標としてはアジアを中心とした海外展開も視野に入れています。薬剤師とは環境衛生を通じて国民の健康に寄与する存在ですから、衛生環境が整っていない諸外国には薬剤師が活躍できるフィールドが十分に残っていると考えています。

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