「ITで面倒な作業が減れば在宅に取り組む薬剤師はもっと増えるはず」と、在宅業務のIT化について徳永薬局株式会社の小林輝信氏にお話をうかがう連載も最終回。今回は在宅医療における”面倒”な作業を快適に行なうためのITシステムについてです。

第5世代の薬局・薬剤師に求められるものとは

薬局における調剤業務の変化は第1世代が用法指示、第2世代が処方内容の確認・医―薬連携、第3世代が患者インタビュー・薬歴管理・服薬指導、第4世代が薬歴管理から活用、薬―薬連携、そして今はカウンセリング・モニタリング、他職種連携などの第5世代に突入しています。
第5世代の薬局・薬剤師には、日本医療薬学会が公表している「薬局・薬剤師に求められる機能に関する基本的な考え方」(表1)で示されるように、薬局での通常業務をしながら、さらに在宅医療・他職種連携などが求められています。

図1)在宅業務の流れ

しかし、在宅医療に対しては「大変そう」「24時間対応で忙しそう」といったイメージを抱く薬剤師も多いのではないでしょうか。
在宅業務は大きく図1のような流れで行われています。

これをご覧いただくと、必要業務の中で「計画書」「薬歴簿」「記録簿」「報告書」(記録簿兼報告書とする場合もある)といった書類作成作業の多さに気付くと思います。さらに、退院時共同指導などに出席した場合は、これに加えてカンファの同意書・報告書も必要となります。店頭での通常業務に加え、在宅医療(個人在宅や施設への管理業務)を行えば、時間がいくらあっても足りない、というのが状況になってしまいます。
ですから、業務を効率化して意識的に時間をつくらなければ、仕事がまわりません。これが「在宅は大変そう」というイメージの理由ではないかと思います。

それでは、効率化はどうしたら実現できるのでしょうか。

手間のかかる文書作成。内容は充実させて時間は短縮を

薬局における業務の効率化といえば、薬歴記載の簡素化を思い浮かべる方がいるかもしれません。しかし、それでは必要な情報が薄くなってしまうリスクがあります。スピードを追求して雛形に沿って画一的に薬歴を記載するのでは、本来の薬歴記載の意味がありません。
そこで、有効なのがITシステムの活用です。
私たちが株式会社EMシステムズとともに開発した「ランシステムNEXT」は、レセコンと完全連動することにより、訪問先によって異なる書式や報告書・記録簿・薬歴簿まで一括作業でき、紙での作成に比べて所要時間を3分の1~2分の1短縮できます。在宅業務における業務の効率化とは、患者さんごとの生活状況のチェックや、薬剤の早期副作用の発見、個人ごとの指導内容などを、いかにスムーズに行なうか、ということなのです。

そして、この効率化によって生まれた時間を、在宅患者や外来患者への対応や、健康相談業務、薬剤師の自己研鑽にあてて有効活用することで、国民に対する薬剤師として責務を果たせるというわけです。

システムを使って情報を管理しますから、休日や夜間の緊急時にも住所・連絡先・保険情報といった患者の情報や、薬歴・報告書の閲覧が薬局外でも可能です。
また、一人の患者に対して複数人の薬剤師がケアしている場合、前回訪問時の指導内容などをメンバー間でシェアできるのもメリットの一つです。在宅業務を薬剤師一人ですべてまかなっているのならば情報共有は不要でしょうが、それはそれで問題が多いと思います。

在宅未経験者でも使えるシステムであることが重要

というのも、一人で在宅業務を行うということは、365日24時間対応を一人で行なうことを意味します。私が知る範囲でも、在宅医療は、多かれ少なかれ薬剤師の自己犠牲のうえに業務が成り立っており、この状況に慣れてしまっている面もあります。訪問内容を紙やファイルで保存するには時間がかかるため、業務が深夜に及ぶことも多いでしょう。
実は私も7年間ほど在宅業務を一人でやってきた経験があります。周囲からは「いつも忙しそう」、「好きだからできることだね」「私は同じようにやるのは無理だな」などと言われていました。
そんな折、ケガをして入院する事態になったのです。入院して初めて、誰もが在宅業務に携われるように、システムと組織を作りなおさなければならないと痛感しました。

そもそも、「在宅業務は複雑でスキルも必要だからできる人が少ない」という状態が、「一人在宅薬剤師」の状態を招いているのではないでしょうか。ですから、「誰でも使いやすいシステム」であることは、在宅業務をシステム化するうえで重要な要件だと思っています。

しかし、薬局がシステムを変更する際の課題は大きく二つあります。それは「周囲の理解」と「コスト」です。まず「周囲の理解」については、業種全般に言える事ですが、従来の業務内容を新しいやり方に変える時、特にシステムを導入・変更する際には周囲の反対があるもの。「パソコンでの作業をするなら辞めます」「ITは分からないから無理」といった意見も多く出るでしょう。しかし、ちょっと思い出してみてください。携帯電話やアプリなど、説明書がなくても、使いながら使い方を覚えるということは結構あると思います。
ITと言うと堅苦しいですが、要はタッチするだけの操作です。私が手がけたシステム開発においても、「誰でも簡単に・早く・シンプル」をコンセプトとしてきました。

それから「コスト」。前回のコラムでも述べましたが、よいシステムでも費用が高ければ導入に躊躇するのは当然です。ランシステムNEXTを販売する際、このコスト面についてはかなり努力して、多くの人が導入しやすいようにかなり低く設定しました。コストの課題をクリアすれば、導入に踏み切る薬局も増え、在宅医療に携わる薬剤師が増えると思っています。

ランシステムNEXTは、必要書式の雛形が兼備されており、体調チェックフローチャートに従った質問形式になっているため、在宅未経験の薬剤師でも、フローに従って患者に質問すれば在宅業務を遂行できますし、説明書が無くても使用できる点も強みです。
ITシステムを積極的に在宅業務に取り込むことが、今後の薬局の裾野を拡げて行くのだと思っています

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専門家プロフィール

小林 輝信

小林 輝信(こばやし てるのぶ)

徳永薬局株式会社 在宅部 統括部長 薬剤師・ケアマネージャー。在宅部立ち上げのため2010年に徳永薬局に入社。現在は4店舗運営の統括部長として活躍。