「ITで面倒な作業が減れば在宅に取り組む薬剤師はもっと増えるはず」と、在宅業務のIT化に取り組む徳永薬局株式会社の小林輝信氏。今回は在宅医療におけるSNSの活用についてお話しいただきます。

高齢化社会では在宅医療における薬局の活躍に期待が高まる

2025年に向け日本は超高齢化社会に向かっています。
急増する認知症患者(2013年時点で認知症患者470万人のうち、約16%にあたる約43万人が独居の認知症患者)をはじめ、日中独居老人世帯、老々介護世帯、高度在宅医療を必要とする終末期患者や末期癌患者など、在宅移行患者は年々増加しています。
そうした状況の中、地域の調剤薬局は今後増加する外来受診者数に加え、このような在宅患者をフォローしていかなくてはならないのです。

点滴療法や高カロリー療法以外の在宅医療では内科的治療が中心ですが、内科的治療の要は服薬です。症状の緩和や進行抑制には確実に薬を飲んでもらうことが必要。では、どうしたらきちんと薬を飲んでもらえるか。それが課題となります。

たとえば「薬剤数が多い」という場合、不要薬剤の検討や服薬タイミングの統一、合剤による剤数の抑制で対応できます。また、「複数科を受診していて管理できない」という場合には、科目ごとの一包化やカレンダーなどのツールを使用するという方法もあります。場合によっては、ジェネリック医薬品など同一薬効薬剤のチェックを行なうのも有効です。

質の高い在宅医療を提供するには多職種間の情報共有が必須

薬剤師による訪問管理指導は月4回までとなっています(末期の悪性腫瘍の患者及び中心静脈栄養法の対象患者については、週2回かつ月8回まで)。ですから、手持ちの薬を整理して患者に見合った一包化をしたり、服薬カレンダーなどのツールを使ったり、医療機関と相談して薬を簡素化したりと、「きちんと服薬してもらう」ための施策を打ったとしても、薬剤師の訪問日以外の服薬に関しては管理が不十分になる事があります。
では、薬剤師は患者のためにどのような対応をすべきなのでしょうか。

そこで必要になるのが「多職種連携」です。医師や訪問看護師はもちろん、服薬介助・服薬確認をお願いするヘルパーも含め、さまざまな職種のメンバーとスケジュール調整や状況報告など連携をとり、薬剤師が訪問しない時でも患者がきちんと服薬できるような体制をつくることが重要です。さらに、患者・家族の意向などをチーム内で共有することも忘れてはいけません。

たとえば、病院の入院患者に対してであれば、院内の他職種がチームを組み、患者の意向のもと、医師を中心に医療計画や治療方針を確定して毎日のカンファレンスや申し送りなどを行ない、患者の容態や精神的変化にもスムーズに対応しています。
一方、高度在宅医療を必要とする患者に対しても、病状の変化に伴い治療方針が変更になる事は多々あります。そこで必要になるのが多職種間の情報共有です。カンファレンスは重要ですが、在宅ではチームメンバー全員が同時に集まることはなかなか難しいと思います。というのも、在宅医療・介護の現場においては、メンバーがそれぞれ別の事業所で勤務しています。つまり、時間と空間を超えて共有できるツールが必要となるのです。

医療介護専用SNSを活用し、誰でも手軽に安全に交流

そこで私が使用しているのが「メディカルケアステーション(MCS)」という完全非公開型の医療介護専用SNSです。

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「メディカルケアステーション(MCS)」

多職種連携の情報共有ツールはさまざまなタイプがありますが、私は「安心して、誰でも簡単に使え、コスト負担が軽い」ことが重要だと思います。使い勝手が良くてもランニングコストが高いとか、コストが低くてもセキュリティーレベルが低いといったことでは、医療情報に関連するSNSとしては不適当でしょう。皆さんもご存じの「Facebook」や「LINE」といったSNSツールは無料でかつ使いやすいという点で利用者も多いですが、セキュリティ面の理由から医療・介護向きとは言い難いです。
一方、MCSも登録やメンバー招待の操作が簡単です。また無料サービスなので、気軽に導入することができます。また前述のSNSと異なるのは医療用に作られたサービスなのでセキュリティ面に十分配慮しているという点もおすすめする理由です。

MCSを利用することで、他業種が訪問した際の患者の容態やケアした内容、ドクターの治療内容や指導内容、既往歴などをリアルタイムで共有できるため、服薬指導、生活指導が治療方針に沿って行うことができます。
たとえば、医師が訪問時に薬剤変更・量の増減をしても、必ずしも薬剤師に報告があるわけでなく、多くの場合、患者さんに医師の意図を教えてもらわなければなりません。しかしMCSを使えば、医師の訪問内容(カルテ)を確認できるので、薬剤師は患者宅で薬剤の服薬指導から開始できるのです。さらに、注射療法やペインコントロールを要する患者には、他業種との情報共有により緊急対応が減少するなど成果が出ています。

他業種の仕事を知らずして在宅医療の円滑化はありえない

よく、多職種連携、地域包括ケアといいますが、私は他職種の業務内容を知らずして連携は成り立たないと感じています。たとえば、医療におけるヘルパーの職能の範囲は? 報酬単価は? ケアマネジャーの業務とは? これらにすぐ応えられる薬剤師はどれくらいいるのでしょうか。ちなみに、ヘルパーの職能範囲としては、一包化された薬剤の服薬は可能ですが、1種類でもヒートのままの薬があれば服薬介助はできません。さらに、貼付剤の貼付は可能だが、経皮吸収剤の貼付は不可なのです。このように他のメンバーの業務内容が分からなければ、各々が自分の業務だけを押し付ける現状が出てきてしまいます。

多職種連携では、まず他のメンバーの業務内容を知らなければならないと思います。「face to face」を根底とし、情報共有に有効なツールがあれば、さらに多職種間の情報共有による連携が可能となるのではないでしょうか。

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専門家プロフィール

小林 輝信

小林 輝信(こばやし てるのぶ)

徳永薬局株式会社 在宅部 統括部長 薬剤師・ケアマネージャー。在宅部立ち上げのため2010年に徳永薬局に入社。現在は4店舗運営の統括部長として活躍。